Interview

「面白さとは何か?」「最終回まで観たくなるアニメとは?」 幾原邦彦監督が語る『さらざんまい』、その膨大な情報量に秘められた本質

「面白さとは何か?」「最終回まで観たくなるアニメとは?」 幾原邦彦監督が語る『さらざんまい』、その膨大な情報量に秘められた本質

「作品の幅を作りたかった」音楽へのこだわり

そんな度肝を抜くそれぞれのバンクで印象的なのが音楽です。「さらざんまいのうた」「カワウソイヤァ」の作詞は、幾原監督とシリーズ構成の内海照子さんが担当。毎回、出てくるゾンビに合わせて歌詞が変わるのが面白いですね。

幾原 「さらざんまいのうた」は、メインボーカルも変わります。1話~2話では一稀、3話は燕太、4話は悠。それぞれがメインで歌って、実は“ブーメラン”な説教をする(笑)。合いの手も、その話ごとのゾンビに合わせて変わっています。

吾妻サラの「ラッキー自撮り占い」のときに流れる「放課後カッパー」は、2番まで聞くと歌詞にゾッとします。最初はイジメられて「透明な存在」になっている歌なのかと思うと、実は本当に死んでいるという展開が明らかになります。

幾原 この曲は少女式ヱリス(本作で吾妻サラ役も演じている帝子が所属する音楽グループ)の持ち歌で、もともとは「放課後ヤッホー」という曲でした。掛け声の「ヤッホー」という部分を「カッパー」にアレンジしてもらっています。この内容で聴いていて「かわいい」と感じるし、ストーリーがあるのが魅力ですね。

この歌はダブルミーニングだと思っていて。ストレートに聞くと「実は死んでいる」と解釈できるけど、もっと考えれば「学校で無視されて、自分を死んだ存在と思うことにした」とも読み取れるじゃないですか。そして最後に「でも、一番仲良しな君だけは友だちだよね?」と結ぶという……。

最後のフレーズに対して「呪いの歌だ……!」と考察しているファンもいたようです。

幾原 呪いの歌(笑)。僕は、これはやっぱり「友だちの歌」だと思っています。

挿入歌が癖のある曲ぞろいな一方で、オープニングテーマ「まっさら」(KANA-BOON)とエンディングテーマ「スタンドバイミー」(the peggies)はすごくさわやかな曲ですね。

幾原 「まっすぐにしてください」とお願いをしました。オープニングは、聞いていてわくわくするようなスカッとした感じ。エンディングは毎話の“引き”を受けるので、メロディアスで切ない感じで、と。この作品の説明をしただけだと、アーティストさんたちは「ディープでエキセントリックな感じがいいんだろうな」と考えるのではないかと心配していました。そこをあえてまっすぐ作ってもらうことで、作品の幅を作りたかったんです。

第6話が“クライマックス”になったワケ

以前、エンタメステーションのインタビューで、矢逆一稀役の村瀬 歩さんが「6話が神回になる」とおっしゃっていました。

幾原 なるほど……(笑)。6話はある意味では一稀の“ひとつのクライマックス”なので、村瀬さんは特に思い入れがあるのかもしれませんね。

6話では一稀が抱えていた家族を巡る悩みが解決に向かい、中学生組3人の関係も大きく変わる予感がありますね。シリーズ全体の真ん中にこうしたクライマックスを作ったのはなぜでしょうか。

幾原 初めは、6話までの話を1つのシリーズでやろうと思っていたんです。ただ、そうすると『さらざんまい』の物語が一稀だけのお話になってしまう。だから、ずっとやりたいと思っていた「友だちの話」をこの3人でやろう――と、今の構成になりました。

一稀の秘密にひとつの決着がつく6話までで、いわば“第1部”と言えるかもしれません。後半は、一稀たち3人の友情の話と、玲央と真武の関係の話が対比的に展開されていきます。後半もいくつか衝撃的なシーンが待っていると思います。

これからは第2部ということですね……! 「最近の視聴者は詰まった展開を好む」と評されることがありますが、そういった視聴者の変化を考えての構成かと思いました。

幾原 視聴者の変化に合わせるとか、そんな器用ではないですよ(笑)。やりたいようにやっているだけ。構成を変更したことで、1クールで描くべきことが多くなって、当初はもっとじっくりやろうとしていたところが入らなくなったのが、結果的にテンポ感やスピード感につながっているのかもしれません。

特に前半部分は、(メインキャラ)3人の生活のディテールをもっと盛りだくさんに描き込んでいたんですが、なかなか入らなくて……。かなり削りました。例えば燕太がどんな生活をしているのかとか、悠がどのような裏家業をしているかとか。その辺りは小説版『さらざんまい』には残っていたりもしますね。やっているときは「こんなに落としてしまって大丈夫かな」と心配でしたが、いい意味でテンポが早いと受け取ってもらえているのであればよかったです。

『ユリ熊嵐』のときから、時代は変わったのか?

幾原監督の作風は、「時代性」を反映していると評されます。先述の「幾原邦彦展」も、時代性との関連を重視した展示でした。『ユリ熊嵐』も本作と同様に「つながり」をひとつのテーマにしていると思いますが、この4年間で時代性の変化を感じているでしょうか?

幾原 変化したような気はしますね。目に見えるところでいうと、オリンピックが近づいたり、元号が変わったりで、「何かが変革されそう」というムードはありますよね。時代の変節期という空気がある。でもそれに対して「ちょっと浮かれてるな」と思うところや、「そこに乗っていきたくない」という気持ちが僕個人にはあります。

『輪るピングドラム』や『ユリ熊嵐』のころは、東日本大震災をはじめとして日本に“沈んでいる”ことが多くて、その空気がこびりついていたと思います。いま、それを払しょくするために、さまざまな新しいイベントが組まれている感じがする。僕は新しいことが必ずしもいいことだとは思わないし、忘れることがいいことだとも思いません。“忘れない”ことも大事にしたい。

その話を伺うと、舞台が浅草なのがよりピッタリ来ますね。

幾原 最初はそういうことを考えたわけではなくて、カッパの“聖地”であることや、観光地でありつつも一歩入れば普通の人の営みがあることがアニメの舞台として面白いなと思ったからなんですけどね。でも、古いものと新しいものが混在している今の浅草の街は、タイミングとしてはよかったかもしれません。

フォトギャラリー

TVアニメ『さらざんまい』

毎週(木)24時55分より
フジテレビ “ノイタミナ”、アニマックスほか各局で放送中

【スタッフ】
監督:幾原邦彦
チーフディレクター:武内宣之
シリーズ構成:幾原邦彦/内海照子
キャラクター原案:ミギー
キャラクターデザイン・総作画監督:石川佳代子
コンセプトデザイン:柴田勝紀
助監督:松嶌舞夢
美術監督:藤井綾香 スタジオPablo
音楽:橋本由香利
原作:イクニラッパー
アニメーション制作:MAPPA/ラパントラック

【キャスト】
矢逆 一稀:村瀬 歩
久慈 悠:内山昂輝
陣内 燕太:堀江 瞬
ケッピ:諏訪部順一
新星 玲央:宮野真守
阿久津 真武:細谷佳正

©イクニラッパー/シリコマンダーズ

オフィシャルサイト

< 1 2