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「悪には悪の正義がある」──鈴木勝吾&平野良らが挑むミュージカル『憂国のモリアーティ』

「悪には悪の正義がある」──鈴木勝吾&平野良らが挑むミュージカル『憂国のモリアーティ』

ミュージカル『憂国のモリアーティ』が、5月10日(金)に東京・天王洲 銀河劇場にて開幕した。
「ジャンプSQ. 」(集英社)連載中でコミック累計100万部突破の人気漫画を原作とする本作は、コナン・ドイルの『シャーロック・ホームズ』を原案に、ホームズ最大の宿敵であるモリアーティの視点で描かれ、ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ役を鈴木勝吾、シャーロック・ホームズ役を平野良がW主演で演じるほか、アルバート・ジェームズ・モリアーティ役を久保田秀敏 ルイス・ジェームズ・モリアーティ役を山本一慶、ジョン・H・ワトソン役を鎌苅健太ら、人気の若手実力派キャストが多数出演。楽器の生演奏と共に魅せるミュージカル作品となっている。 脚本・演出は『メサイア』『遙かなる時空の中で』シリーズや『ダンガンロンパ3 THE STAGE 2018 ~The End of 希望ヶ峰学園~』など人気舞台を手がけてきた西森英行、音楽は多くのCM曲のほか、有名アーティストのレコーディングやライブにも演奏家として参加している、ただすけが担当。
初日公演を前に行われたオフィシャル会見&ゲネプロの模様を届けよう。

取材・文・撮影 / 近藤明子


僕たちもこの舞台を通じて皆様に問いかけたい

ゲネプロ前のオフィシャル会見には、鈴木勝吾、平野良、久保田秀敏、山本一慶、鎌苅健太が登壇し、作品に込めた想いや意気込みを語った。

ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ役:鈴木勝吾
ヴァイオリンとピアノによる生演奏で届けるということで、芝居や音楽面にいろんなタスクがあって、今日まで稽古場でみんなでつくり上げてきました。本番でそれを余すことなく届けたいですし、カンパニーで勝負したいという思いがすごくあります。
漫画原作ではありますが、演出の西森英行さんを中心に“階級社会”というテーマで“虐げられている人々”と“その上にいる貴族たち”、その貴族の中でも大英帝国を憂いている僕らモリアーティ兄弟の想いと、好奇心のままに絡んでくるシャーロック・ホームズの生き様……いろんなものが交錯している様を、ぜひ皆様に見ていただきたいなと思います。

シャーロック・ホームズ役:平野良
ミュージカルなのでアンサンブルを含めて全員の熱量が届きやすいと思っています。物語もそうですし、音楽性も素晴らしいので、そこをどう聴かせるかということですね。個人的にはシャーロック・ホームズという昔から憧れていた人物を演じるということで、緊張と、ワクワクと、へっちゃら感というか(笑)……以上、意気込みでした!
見どころは、登場人物がみんなキラキラしているところ。“魅力という極上の謎”を提供できるのではないかと思います(ドヤ顔)。

アルバート・ジェームズ・モリアーティ役:久保田秀敏
今回の作品は、世界的にも有名な『シャーロック・ホームズ』を題材に敵(かたき)役の目線で描いた新しいつくり方をしているので『シャーロック・ホームズ』を知っている方にも新しい目線で見ていただけるんじゃないかと思っております。それをピアノとヴァイオリンの生演奏で、ミュージカルとして初上演しますので、皆様ぜひお楽しみにしてください。
本作の見どころは、シャーロック・ホームズの敵役として位置付けられているモリアーティ兄弟ですが、シャーロックに正義があるように、敵には敵の正義があるという、“見えない正義の戦い”を見ていただければと思います。

ルイス・ジェームズ・モリアーティ役:山本一慶
『憂国のモリアーティ』という作品自体にすごく空気感があって、僕もその雰囲気が好きです。謎解きもいろいろあるので、緊迫感というか、緊張の糸が途切れちゃいけない……役者としてはそこが一番大変なんじゃないかなという作品でもあるので、気合いを入れて筋を一本通して皆さんに届けられたらなと思います。
モリアーティ側とホームズ側の駆け引きや戦いっていうのは、演じている僕自身すごくワクワクしたり心躍らされるところがあるので、そこがこの作品の見どころかなと思います。

ジョン・H・ワトソン役:鎌苅健太
原作『憂国のモリアーティ』の世界観……この時代の美しさや、つらさとか醜さとか、脆さ、いろんなものをミュージカルで見せるということへの挑戦です。それらを皆様にお届けできるように僕らはアンサンブルを含め、世界観を広げるようにやってきましたので、大阪公演まで駆け抜けたいなと思います。
ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ役の鈴木勝吾とシャーロック・ホームズ役の平野良が双璧なので、そこに僕らがどう絡んでほどけていくか、それが見どころだと思います。カンパニーとしても一丸となって、どこも手を抜くことなく、なんとか“生きよう”としているので、それが現代にもリンクして繋がる物語になればいいかなと思います。

また「個人的にモリアーティ派? ホームズ派?」との質問には、「甲乙付けがたいけど、探偵が好きなのでホームズに一票」と鈴木。平野も「ダークヒーローも魅力的なので心の中ではモリアーティチームだけど、ビビリな自分はワトソンに近いと思う」とホームズ派と回答。
久保田は「ダークヒーローに憧れる」との理由で迷うことなくモリアーティ派を選び、山本は「仕掛けた謎を簡単に解かれるとイラッとするので、謎を解く側がいい」とホームズ派を選択。
鎌苅は「ワトソンを演じていて楽しいし、モリアーティは精神的にシンドイと思うのでホームズ派です!」とキャラ愛爆発で即答し、モリアーティ派が1票、ホームズ派が4票という結果となった。

ちなみに会見中「魅力という極上の謎」というワードを連発した平野は、共演者から「見出し狙い?」「なんとか使ってもらおうとしているでしょ?」とツッコミの集中砲火を浴び、鎌苅が「絶対に使わないでくださいよー」と取材陣に釘をさし笑いを誘う一幕も。

最後に鈴木が「“体制に反旗を翻す”というテーマは、ある種演劇に通じるものがありますし、階級社会に生きる人たちへのテーゼ(=命題)だったりもするので、見に来てくださるお客様には今の時代に投影して見ていただけたらと思います。ミュージカルの舞台は大英帝国ですが、今の日本におけるいろんなことを僕たちもこの舞台を通じて皆様に問いかけたいなと思っているので、この作品を通じて“何か”感じていただけたら」とコメントし、会見を締めた。

「敵には敵の正義がある」。アンチヒーローとしての格好よさ

続いてゲネプロが行われた。
19世紀末の大英帝国(ロンドン)を舞台に、完全階級制度による差別を取り除き、理想の国をつくろうとするウィリアム・ジェームズ・モリアーティ(鈴木勝吾)と、彼を支える兄・アルバート(久保田秀敏)、弟・ルイス(山本一慶)、そして後に“宿敵”となる名探偵シャーロック・ホームズ(平野良)との出会いのシーンなどが描かれていくのだが、冒頭からアンサンブルによる迫力の群舞とキャスト陣の歌声に圧倒された。

ストーリーは交響曲になぞられ3つの楽章で構成されており、第一楽章「モリアーティの誕生」は、モリアーティ家が屋敷を移した町で、横暴な領主・ダブリン男爵(山岸拓生)に恨みを抱く夫婦に出会ったことから“犯罪相談役(クライムコンサルタント)”として動き出すウイリアムの姿と、3兄弟の絆を描く序章の物語。

第二楽章では、エンダース伯爵(小南光司)ら貴族による“人狩り”を阻止せんと、豪華客船ノアティック号の処女航海に乗り込んだモリアーティ兄弟がシャーロック・ホームズと運命の出会いを果たす、原作でも人気のストーリー「ノアの箱舟」をステージ上に再現。
第三楽章「シャーロック・ホームズの研究」は、ホームズとワトソン(鎌苅健太)との出会いと、ふたりが初めてタッグを組んだ推理でホームズの無実を暴き、犯人を捕まえるまでを描いている。

知的で紳士的な振る舞いのウイリアムだが、内なる怒りを込めた鈴木勝吾の力強い歌声が観客の意識をステージへと向かわせ、一時たりとも目が離せない緊張感を漂わせる。
一方、平野良が演じるホームズの子供のような自由奔放な振る舞いや、時にヴァイオリン奏者をも巻き込む演出は、ダークな色合いの作品の中にクスッと笑える癒しを醸し出していた。

久保田秀敏が演じるアルバートの正義感が繋ぐモリアーティ3兄弟の強い絆や、山本一慶が演じるルイスのウイリアムに対する絶対的な信頼、モリアーティ家の使用人で完全犯罪を手助けするセバスチャン・モラン(井澤勇貴)とフレッド・ポーロック(赤澤遼太郎)らのウイリアムへの忠誠心。皆、振る舞いは一見すると冷静にも見えるのだが、その内には自身の正義を燃やしている様が、彼らの歌やふとした演技から見事に浮かび上がってくる。

鎌苅健太が演じるワトソンは、変わり者のホームズに振り回されながらも医師の知識と観察眼で事件解決に協力するなど、ふたりのコンビネーションもバッチリだ。
また、アクションシーンなどもあり、随所に見どころが満載。

ほかにも、ダブリン男爵を演じる山岸拓生の存在感、エンダース伯爵を演じた小南光司の狂気、ジェファーソン・ホープ役の山﨑雅志が見せる絶望と怒り、ホームズの部屋の家主・ミス・ハドソン役の七木奏音のキュートな魅力、ジョージ・レストレード警部役の髙木俊のコミカルな芝居など、キャストそれぞれがキャラクターの特徴を際立たせ舞台上に存在していたのが印象的だった。

体制に反旗を翻すためには殺人をもいとわないモリアーティ兄弟の考え方は“悪”であることに変わりはないが、会見で久保田が言った「敵には敵の正義がある」という信念を貫く様は、それはそれでアンチヒーローとしての格好よさがあると思う。

スリリングな心理戦。ピアノとヴァイオリンの生演奏でシーンを彩るバラエティに富んだ楽曲。漫画を原作とする2.5次元作品とひと括りにするのとはまた違う、スタイリッシュなクライム・サスペンス作品として描かれている本作は、原作コミックのファンはもちろん、本家『シャーロック・ホームズ』ファンをも夢中にさせるに違いない。

ミュージカル『憂国のモリアーティ』は、東京公演の後、5月25日(土)と5月26日(日)に柏原市民文化会館リビエールホール 大ホールにて大阪公演が上演される。そして9月11日(水)に早くもBlu-ray/DVDの発売が決定した。

ミュージカル『憂国のモリアーティ』

東京公演:2019年5月10日(金)〜5月19日(日)天王洲 銀河劇場
大阪公演:2019年5月25日(土)〜5月26日(日)柏原市民文化会館リビエールホール 大ホール

STORY
時は19世紀末、大英帝国最盛期(バクス・ブリタニカ)のロンドン――。
古くから根づく完全階級制度により、上流階級の人間たちに支配されている「大英帝国」。
生まれ落ちたときから一生涯の身分が決まるこの社会制度は、必然的に人間同士の差別を生んだ。そんななか、階級制度による悪を取り除き、理想の国をつくろうとする青年がいた。
これはジェームズ・モリアーティ、
あるいは、シャーロック・ホームズの敵(かたき)の話――。

原作:構成・竹内良輔 漫画・三好 輝『憂国のモリアーティ』(集英社「ジャンプSQ.」連載中)
脚本・演出:西森英行
音楽:ただすけ

出演:
ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ 役:鈴木勝吾
シャーロック・ホームズ 役:平野良

アルバート・ジェームズ・モリアーティ 役:久保田秀敏
ルイス・ジェームズ・モリアーティ 役:山本一慶
セバスチャン・モラン 役:井澤勇貴
フレッド・ポーロック 役:赤澤遼太郎

ジョン・H・ワトソン 役:鎌苅健太

ミス・ハドソン:七木奏音
ジョージ・レストレード:髙木俊

レニー・ダブリン男爵 役:山岸拓生
ジェファーソン・ホープ 役:山﨑雅志
ブリッツ・エンダース伯爵 役:小南光司

安島萌 荒木栄人 伊地華鈴 大澤信児 貴嶋美愛 今野晶乃 佐々木駿也 下道純一 白崎誠也 藤井竜也 堀部佑介 松谷嵐

Piano:境田桃子
Violin:林周雅

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@mu_moriarty)
オフィシャルInstagram(@mu_moriarty)

©竹内良輔・三好 輝/集英社
©ミュージカル『憂国のモリアーティ』プロジェクト