LIVE SHUTTLE  vol. 346

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小田和正「Tour 2019“ENCORE!! ENCORE!!”」最速レポート。単なる再演とは異なるファンとの絆の深め方

小田和正「Tour 2019“ENCORE!! ENCORE!!”」最速レポート。単なる再演とは異なるファンとの絆の深め方

まず話を整理したい。2016年、小田は「君住む街へ」と題したツアーを行う。オールタイム・ベスト『あの日 あの時』が出た時期であり、オフコース時代とソロになってからの名曲が、惜しげもなく披露された。

「ENCORE!!」と銘打たれたツアーが実現したのが昨年だった。新曲「この道を / 会いに行く / 坂道を上って / 小さな風景 」をセットリストの要所に配した。ツアー・タイトルの意味合いとしては、好評につき“ツアーをやるという行為をアンコール”したということだろう。

さらに今回である。“ENCORE!!”の文字が、もうひとつ加わった。「Kazumasa Oda Tour 2019 “ENCORE!! ENCORE!!”」である。初日、5月14日の横浜アリーナへ行ってきた。

最初に書いておくと、基本的には「ENCORE!!」に準じた内容であった。これは誰もが予想した、というか、追加公演であれば当然だ。ただ、まんまの“再演”ではなく、小田のファンなら“オーッ!!”と思う、セットリストの変更がみられた。

「会いに行く」で幕開けて、最初のMCの時、小田からこんな話があった。曰く…、前回のツアーも終盤に差し掛かったころ、「このツアーを、もう少し続けていたいな」と、そう感じたのだという。そんな気持ちになることは「以前はなかった」そうで、まわりのスタッフに相談してみたところ、みんな「やりましょう!」と賛同してくれたという。

小田和正 エンタメステーション ライブレポート

しかし、いざ日程が近づくと、「もしかしてお客さんは、“もう、いいんじゃないの”って思ってたかもしれない。なので不安になって…」。そう正直に告白した。でも、蓋を開けると横浜アリーナは超満員だ。客席からは、万雷の拍手が。そして小田は、「追加公演をしたいなと思った時の素直な気持ちに戻って、このオジサン、一生懸命やります!」と、ユーモア混じりで宣言したのだった。

以下、印象に残ったシーンについて綴っていく。「夏の終わり」を歌う前のことだった。夏の夕暮れに、ヒグラシが“カナカナカナ”と鳴く、その風情がとても好きだと語る。やがて演奏へ。この話のあとだったので、例えばストリングスの響きが、あの切ないヒグラシの鳴き声を想起させもした。

この曲に続けて、「秋の気配」を歌う。ここで実に興味深い考察を。“夏の終わり”と“秋の気配”は、カレンダー上では、どちらが先なのか? 小田の見解は“夏の終わり”が訪れたからこそ“秋の気配”を感じ取れるので、この順番の通り、というものだ。同感だ(笑)。しかしそれより、夏と秋の狭間の微妙な空気のグラデーションをテーマに、こんな素敵な2曲を作るなんて、どんだけこのヒト、この季節に“感じ入って”創作意欲を高めてきたのだろう、とも思った。

「愛を止めないで」の後奏の、小田と稲葉政裕によるツイン・ギターの、とことん“弾き倒す”シーンは何度観てもカッコいい。演奏し終わると、思わず二人は“グー・タッチ”を交わした。スポーツ選手だけじゃない。ギタリスト同士も指は大切にしなければならないので“グー・タッチ”が推奨される。

小田和正 エンタメステーション ライブレポート

横浜レンガ倉庫前から始まる御当地紀行は、主に前回のツアーのダイジェストだが、毎回思うのは、これまでの素材を繋ぐだけで、中編くらいの劇場公開映画になるのではなかろうか、ということだ。スタッフの撮影なのだが、カメラの動きという間合いといい編集といい、まさに絶妙であり、市井の人々との触れあいにより、小田の人柄が見事に“演出”されるのだ。

「ENCORE!!」との違いを言うなら、今回は「the flag」が入っている。この曲は、小田のオリジナルのなかでも聴き手の具体的な反応を得てきた。まず、問題意識が高い青春時代を過ごした、小田と同世代へ届いた。そもそもこの歌は、サルトルのアンガージュマンではないが、傍観者意識を突き動かし行動へ誘うところもあり、世代を問わず、強く訴えかける。なので、この歌が演奏される数分間は、場内が他の曲とはまた違った空気感となるのだ。この日、改めてその事実を確認した。

小田のライブは、まさにその場の全員が歌う、もちろん本人が大いに歌う。バンドのメンバーは演奏のみならず、他では考えられないくらい高度なハーモニーを見事にキメまくる。客席に突入し、お客さんにマイクを向け、歌ってもらうのもお馴染みの光景だ。その際、“真剣に歌ってもらおう”とする。その証拠を目撃した。小田はあるファンに、歌うタイミングを示すため、手で指揮をした。ひとりのファンのために…。

さらに「YES-YES-YES」では、コンサートに携わる様々なスタッフが、ステージの上手に登場し、本気でコーラスするのである。つまり、この場に居て、歌っていない人はいないのだ。客席からの歌声は、この日、ひときわ大きかった。思えば冒頭のMCで、小田は「歌えるところはぜひ歌って欲しい、歌っている姿をみると、自分も元気になれるから」と言った。もしやこの言葉も効いたのかもしれない。

小田和正 エンタメステーション ライブレポート

本編の最後。「君住む街へ」を歌う前に、「このあとの追加はありません!」と、場内の笑顔を誘った小田だったが、今後に関しては、いつまた会えるのかは「まったくわからない」と言っていた。この言葉を、特に強調して伝えたいわけじゃない。ただ、これがまさに偽らざる“現状報告”なのだろう。

アンコールで「風のようにうたが流れていた」をやってくれたのも、前回とは違っていた。「あなたにとって音楽とは?」。もしこんな質問をされたとして、小田からの見事な答がこの曲そのものなのだろう。そういえば、同名番組の特別な春編を、矢野顕子などのゲストを招き、制作したばかりでもあった。歌う直前、「(この歌を)知ってたら…」と呟き、客席を歌唱へと誘ったが、ここばかりはみんな、歌わずに聴き入っていた。

「さよならは 言わない」の時 、小田がピアノの弾き語り中に、マイクの位置を修正し、近づける場面があった。弾き語り中ということは、両手は鍵盤の上。どうしたかというと、その瞬間、左手でマイクを直した。右手さえ弾いてれば、音楽的に成立すると咄嗟に判断したのだろう。そして恙なく、パフォーマンスは進んでいった。誠に些細なことだが、なんというか、そこにこのヒトのキャリアを感じた。

終演後、小田に楽屋で会った。

「小田さん、弾き語りを止めず、マイク直してましたよね。キャリアを感じましたよ」

小田 「おー。そういうとこも、見て欲しいんだよな(笑)」

たまには筆者の私的も、“芯を食う”ようである。

取材・文 / 小貫信昭 撮影 / 菊地英二

フォトギャラリー

ライブ情報

Kazumasa Oda Tour 2019 “ENCORE!! ENCORE!!”

05/14(火)神奈川・横浜アリーナ
05/15(水)神奈川・横浜アリーナ
05/21(火)福岡・マリンメッセ福岡
05/22(水)福岡・マリンメッセ福岡
06/01(土)三重・四日市ドーム
06/02(日)三重・四日市ドーム
06/19(水)長野・長野ビッグハット
06/20(木)長野・長野ビッグハット
06/26(水)埼玉・さいたまスーパーアリーナ
06/27(木)埼玉・さいたまスーパーアリーナ
07/04(木)宮城・宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
07/05(金)宮城・宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
07/18(木)兵庫・ワールド記念ホール
07/19(金)兵庫・ワールド記念ホール
07/30(木)愛媛・愛媛県武道館
07/31(水)愛媛・愛媛県武道館

リリース情報

小田和正
この道を / 会いに行く / 坂道を上って / 小さな風景

発売中
(CD)FHCL-3008 ¥1,389+税

<収録曲>
1. この道を
2. 会いに行く
3. 坂道を上って
4. 小さな風景

いきものがかり水野良樹とコラボ作品

HIROBA
1st Single「YOU (with 小田和正)」

発売中
初回生産限定盤(CD+DVD)ESCL-5220〜5221 ¥1,389+税
通常盤(CD)ESCL-5222 ¥926+税

<収録曲>
(CD)
1.「YOU (with 小田和正)」作詞・作曲・編曲:水野良樹・小田和正 弦編曲:小田和正
2.「I」作詞・作曲:水野良樹 編曲:eji
(DVD)※初回生産限定盤のみ
「YOU」レコーディングメイキング〜水野良樹×小田和正スペシャル対談


全曲ストリーミングサービスの詳細はこちら

https://www.kazumasaoda.com/streaming/

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