Interview

崎山つばさが、舞台『LOOSER~失い続けてしまうアルバム~』で新撰組を生きる。「演劇は素晴らしい」と感じた理由とは?

崎山つばさが、舞台『LOOSER~失い続けてしまうアルバム~』で新撰組を生きる。「演劇は素晴らしい」と感じた理由とは?

品川プリンスホテル ステラボールにて6月6日(木)から上演される舞台『LOOSER~失い続けてしまうアルバム~』(以下『LOOSER』)。
『LOOSER』は、2004年に「TEAM NACS」が上演した舞台。北海道を拠点に活動していた彼らにとって初の歴史モノで、初の東京進出となった。札幌と東京、合わせて21公演で計15,000人を動員。幕末の新撰組と長州藩の確執をもとに、日本を変えようと奔走する男たちの“誠”を描いたストーリーだ。チョンマゲも本格的なチャンバラもない5人だけの芝居で、歴史的な要素に現代のリアルを混ぜ合わせた演出は、多くの観客を感動の渦に巻き込んだ。
今作では、演出をTEAM NACS SOLO PROJECTでも馴染みの深い福島三郎が手がけ、ミュージカル『刀剣乱舞』をはじめ、様々な映画やドラマで活躍する崎山つばさが主演を務め、かつて戸次重幸が演じた幕末にタイムスリップしてしまう30歳の男・シゲ 役に挑む。また、大泉 洋が演じた「土方歳三」を演じるのは鈴木裕樹、森崎博之が演じた「近藤 勇」は磯貝龍乎、音尾琢真が演じた「沖田総司」には木ノ本嶺浩、安田 顕が演じた「芹沢 鴨」を劇団プレステージのメンバー株元英彰が務める。
主演の崎山つばさに今作の魅力、そして役者としての挫折、夢、希望を聞いた。熱い息吹がほとばしるインタビューを届けよう。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 冨田望


プレッシャーがないといえば嘘になる

「TEAM NACS」の作品はいつもとんでもない熱量をひしひしと感じる印象を受けます。今作は、新撰組をモチーフにした「TEAM NACS」の2004年の作品であり、まったく新しい5人でのバージョンになります。まずは、「TEAM NACS」の作品に挑戦する気持ちを聞かせてください。

プレッシャーがないと言えば嘘になりますね(笑)。「TEAM NACS」のファンの方が観て、懐かしさと2019年らしくなった部分が融合して、最終的に面白かったと思っていただけるようにしたいです。それでいて、今作からご覧になる人も楽しめるように、「TEAM NACS」の『LOOSER』を尊重しつつ、かといってあまり「TEAM NACS」を意識せずに、僕ら5人だけでできる『LOOSER』をつくりたいと思います。

「TEAM NACS」の印象はありますか。

北海学園大学の演劇研究会出身で、1996年に旗揚げしたときから同じメンバーが揃って今でも続けている。『LOOSER』もDVDで拝見して思ったのですが、“笑い”のテンポがすでに出来上がっていて、それが「TEAM NACS」の空気感として存在していると思います。僕らの座組みは、今回初めて集まった5人なので、「TEAM NACS」の雰囲気を出すことは難しいかもしれませんが、彼らに少しでも近づきたいと激しい稽古をしています。

つい先だっての舞台「幕末太陽傳 外伝」(以下、「太陽傳」)では初座長を務めましたが、今回はどのようにまとめていこうと思いますか。

人見知りをしないので、なるべくみんなで話したり、時には飲みに行ったり、台詞合わせをする時間を積極的につくっていきたいと思います。『LOOSER』は役者は5人だけで、早替えもあるし、役も変わります。しかも“笑い”の要素がたくさん散りばめられているので、難しいお芝居を要求されますが、お客様にキツそうだと思ってもらいたくないし、それすらも余裕で演技をしていると感じていただけるように、ネガティブにならずにポジティブな雰囲気の座組みにしたいです。

演劇ならではのトリックを使って“笑い”を生み出したい

五人芝居という面白さがありますね。

おっしゃるように面白さもありますが、それぞれ早替えや役が何回も変わって大変ですね。僕が演じるシゲも同様で、幕末では演じ分けをしなければいけないシーンがあります。つまり、舞台上の役と客席で見る役が違う演劇的な仕掛けがあります。舞台の土方歳三(鈴木裕樹)や近藤 勇(磯貝龍乎)にしたら新撰組の隊士に見えないといけないし、客席からはタイムスリップをしてきた現代人のシゲに見えないといけない。演劇ならではのトリックを使って“笑い”を生み出したいです。

少数精鋭のお芝居の魅力を感じますか。

これほど少人数のお芝居は初めてで、顔合わせのときに「少なっ!」と思って(笑)。

(笑)。出欠表も5人分しかなかったですからね。

そうですね。今作は歳が近いメンバーが揃っていて。5人しかいないぶん、話しやすい空気が自然に生まれるし、台詞の読み合わせも簡単にできます。疑問に思ったらすぐに集まることもできるから、一緒に作品をつくっていく楽しさをより感じています。少人数のお芝居は、舞台になると輝きますよね。限られた空間で、5人だけで何役も演じるのは大変だけれど、それらを今作では逆に“笑い”に変えてしまうパワーがあるのが魅力だと思います。

先ほど脚本を手にとったのですが、分厚さと膨大な量の台詞に驚きました。

本当によく話して動いています。「TEAM NACS」は、幕末の世界を面白おかしく観客の目の前で起こっているように表現していました。なので、真面目なシーンが、“笑い”の要素で活きています。そんな物語を脚色の福島三郎さんが現代に見合った脚本にしてくださったと思います。

ここまでの稽古はいかがですか。

まだ手応えはないです!(笑)頭がパンパンですね。細かいミザンス(役者の立ち位置)を付けて、膨大な台詞を頭に入れる作業に必死です。なので、稽古を繰り返して、台詞が身体に入ってから、お芝居を客観的に見られるようになると思います。脚本3ページ分の長台詞があるのですが、そういった経験も初めてなので、これからどうやって台詞と対峙していくのか試行錯誤しています。

演出の福島さんから言われたことはありますか。

顔合わせのときに福島さんとお食事に行って「それほど前作を意識しなくてもいいよ」とおっしゃっていただきました。「TEAM NACS」には「TEAM NACS」の良さがあるから、自分たちの『LOOSER』色を出そうと。シゲを演じた戸次重幸さんを参考にしながら役づくりをすると思いますが、ピッタリ真似をしないように心がけたいと思います。

今作は役者として試される瞬間がある

本作は時代考証とは関係なく、チョンマゲもなく殺陣もない、“あえてそうしない”という演劇的な面白さがあると思います。

「TEAM NACS」の演劇は、幼稚園のお遊戯会の延長線上のような悪ふざけのノリがあるけれど、それがお芝居の良さに通じていると思います。真面目に遊んでいるからこそ、演劇の醍醐味になっている。そのおかげで、現実は幕末の世界ではないですが、舞台上では新選組のお芝居に見えてくるので、自然とストレスなく楽しく観ることができる作品に仕上がっている。それらがすべて詰まっている舞台が今作だと思うし、情報が少ないからこそ、身体の表現や役者のアイデアが大切だと思います。それは、役者として試される瞬間でもあり、とてもやりがいがあります。

崎山さんから何度もお話が出ましたが、今作も「太陽傳」のコミカルな作品に次ぐ、“笑い”が重要な作品ですね。

僕は前作から今作へと“笑い”を大切にする作品が続いて良かったと思います。もちろん、気持ちをリセットする部分はありますが、「太陽傳」で感じたことや学んだことがあったので、前作で“笑い”の型をもらったとしたら、『LOOSER』ではその型を三角にしたり四角にしたりできる遊べる感覚を持ちたいですね。

ちなみに、今作が決まる前から、新撰組に惹かれていたそうですね。

新撰組に携わるお仕事をしたことがなかったので、ビジュアル撮影のときに浅葱色の羽織に袖を通すと興奮しました(笑)。新撰組は誰しもが知っていますし、僕も寺院巡りが好きなので、新撰組のゆかりの地である京都の壬生寺を訪れたこともありますよ。

新撰組が現代まで愛されている理由を分析されるといかがですか。

幕末から何百年と経つにつれて、脚色されていくところもあるでしょうから、時代によってイメージが異なっているのが新撰組だと思います。ただ、隊士たちの心の芯の強さや、今では絶対に考えられない武士の世界や、刀で命をやり取りしながら幕末を生き抜いた隊士たちの普遍的なかっこよさが、どの時代の人も強く惹きつけるのだと思います。

崎山さんが演じるシゲという役どころを教えてください。

お客様が最も感情移入できるキャラクターで、物語を運んでいく役を果たしています。現代にいる30歳の男性ですが、自分の中で変わりたいと思っていることがあるのに変われない葛藤を持ってなんとなく時代に流されて生きていたときに、とあるきっかけで幕末にタイムスリップしたことで、シゲの行動も表情も変わっていく。多くの方が共感できるキャラクターなので、シゲの成長していく姿を楽しんでもらいたいですし、物語に引き込めるような存在になりたいです。

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