Interview

PAELLAS アナログ録音をベースに新しいサウンドを提案。バンドのスタンスも示すストイックな音作りについて訊く。

PAELLAS アナログ録音をベースに新しいサウンドを提案。バンドのスタンスも示すストイックな音作りについて訊く。

R&B、インディーロック、ソウル、AOR、ハウスなど幅広いテイストを吸収しながら、斬新にして刺激的なハイブリッド・サウンドを体現し続けるPAELLASが待望のニューアルバムを完成させた。タイトルは『sequential souls』。“sequential(連続的な、続いて起こる)”と“souls(魂)”を並べたこの題名は、音楽の歴史を紐解きながら、現代のシーンに向けて新しいサウンドを提案しているPAELLASのスタンスを端的に示している。6月15日からは 全国7都市でのライブツアー“sequential souls RELEASE TOUR”もスタート。アルバムの制作とツアーについて、メンバー4人に聞いた。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 石ヶ森三英


アナログテープで録ったものをパソコンに取り込んで作業したので。大変だったけど、新しいやり方だなと(bisshi)

ニューアルバム『sequential souls』はPAELLASの独創的なスタイルをさらに推し進めながら、きわめて自然な変化も同時に感じられる作品だと思います。まず、音がめちゃくちゃ個性的ですね。

Ryosuke Takahashi(Dr) 今回、レコーディングの方向がだいぶ変わったんですよ。「D.R.E.A.M」(2017年)と「Yours」(2018年)は同じやり方だったんですけど、今回は全編、アナログテープで録っていて。それが良かったんだと思います。時間はかなりかかりましたけど。

bisshi(B) アナログテープで録ったものをパソコンに取り込んで作業したので。大変だったけど、新しいやり方だなと。

Takahashi もともとはギターのAnanが「ドラムをアナログテープで録りたい」って言いだしたんです。

Satoshi Anan(G) 「いま、そういうやり方は無理じゃない?」って言われたんですけど、絶対にいいものができると思って。いろいろ探してみたら、アナログで録音できるスタジオ(Studio Dede)があったんです。16チャンネルのアナログの卓とか、いい機材もいろいろ揃っていて。DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)で作った音源をアナログに通すやり方はよくあるけど、最初から全部アナログで録るのは贅沢ですよね。

確かに。アナログ録音によって、どういう効果を狙ってたんですか?

Takahashi いまの音楽はすべてデジタルできれいに処理されてるじゃないですか。それをやらないということですよね。雑味みたいなものをあえて残して。

bisshi 作業もアナログですからね。テープの回転スピードを手で調整したり。

Anan 「Ride」という曲のイントロはテープの逆回転なんですけど、それも手でやっていて。

bisshi ビートルズの「ホワイトアルバム」みたいな実験的なこともいろいろ出来て。楽しみながらやってました。

手法自体は60年代みたいですけど、音を聴くとまったくレイドバックしてなくて。むしろ現代の新しいサウンドとして聴こえるところがおもしろいな、と。

Anan エンジニアの人も現代的な音を知っている人だし、すべてアナログではなくて、「ここはプラグで処理しよう」みたいなこともあって。

bisshi 僕らと同世代なので、センスも共有できるというか。自分たちもそうなんですけど、機材オタクでした(笑)。

もともと自分の声のローが好きじゃないんですよ(MATTON)

MATTONさんはどうですか? サウンドが変わることで、歌のバランスにも影響があると思うんですが。

MATTON(Vo) 録るときからロー(低音)を切ってもらったんです。いままでとはかなり違うと思います。まあ、自分の趣味ですけど。

ローの成分が少ないほうが好みなんですね。

MATTON もともと自分の声のローが好きじゃないんですよ。何も言わないと、良かれと思ってローを出されたりするので、今回はちゃんと削りたいなと。今回のアルバムは自分で聴いていてもイヤじゃないです(笑)。

今回の曲はもっと平熱というか、そこまで高低差を付けてないんですよ。サビをサビっぽくしてなかったり(Anan)

全体的に音数が少なくて、ボーカルが際立ってますからね。当然、歌が重要になってきて。

Takahashi 歌を前に出すというのは、曲を作る段階から意識してましたね。

Anan うん。ただ、そこまで派手にしたくはなくて。前々作(「D.R.E.A.M」)、前作(「Yours」)はバンド全体に“派手にしたい”という気持ちがあったんですけど、今回はストイックな感じに戻りたいなと。それはメロディにも出ていて、前作はかなり抑揚を付けてエモーショナルにしてたんですが、今回の曲はもっと平熱というか、そこまで高低差を付けてないんですよ。サビをサビっぽくしてなかったり。

MATTON デモの段階からメロディもしっかり乗ってることが多かったんですよ、今回は。

Takahashi 前回はスタジオでセッションしながら作った曲もありましたからね。メロディはその場でMATTONが歌って。

Anan その前は作曲者がメロディを作ったんですけど、MATTONの声質をあまり考えてなくて、歌ってもらって「ちょっとイメージと違うな」みたいなこともあって。今回はそこもしっかり考えながら作れたと思います。

なるほど。確かに抑制が効いたメロディが中心ですが、ポップ感が失われたかと言えばそうではなくて。特にリード曲の「Horizon」はめちゃくちゃポップじゃないですか?

Takahashi そうですね(笑)。作っていたときは感じてなかったんですけど、最近聴いてみたら「山下達郎さん感があるな」と思って。

Anan そうかも(笑)。「RIDE ON TIME」の頃の雰囲気があって。

MATTON トラックリストが決まって、「Horizon」をリード曲にすることになったときに、「この曲だけは歌詞もわかりやすくしよう」と思って。

「勘違いや 自惚れじゃなくて あのころは どこへも行ける気でいた」もそうですけど、グッと入ってくるフレーズが多いですよね。

MATTON 他の曲はまったく(“わかりやすい”歌詞を)意識してないんですけどね。アルバム制作の終わりごろになって、Ananが急に「別の曲をリードにしたほうがいいんじゃないか」って言い出したときは、すぐ反対しました(笑)。

Anan (笑)最近の海外の音楽の流れとかを考えると、「in your eyes」のほうがいいのかなと思って。でも、「Horizon」で良かったと思います。

こうやって話しているときと同じように、意味を感じながら歌うのも大事だなと(MATTON)

海外のオルタナR&B、ネオソウル、ダンスミュージックなどの影響もかなりありますが、「Horizon」はJ-POPとしても成立しているし、誰もが楽しめる曲だと思います。以前は英語の歌詞もありましたが、今回のアルバムは100%日本語ですね。

MATTON 前回のミニアルバムでも、よく「日本語の歌詞が増えましたね」って言われたんですけど、自分としてはけっこう前からそうなってる気がしていて。いまはもう日本語でしか書けないですね。英語と日本語を混ぜるのも好きじゃないので。英語の歌詞だと、ライブのときに意味を考えず流れで歌っちゃうこともあって、それは良くないと思うんですよ。こうやって話しているときと同じように、意味を感じながら歌うのも大事だなと。

MATTONさん自身の思いやメッセージも伝えたい?

MATTON いや、それはあんまり…。歌詞を書いているときに思っていたことや気分みたいなものは出てるのかもしれないけど、自分のことだけを歌っているわけではなくて、友達から聞いた話とか本を読んで感じたことが元になることも多いので。あと、自分の思想はなるべく入れないようにしてるんですよ。誰にでも当てはまるような価値観が入ることはあるけど、特定の思想みたいなものは入れるつもりがなくて。

それはどうして?

MATTON 自分の思想に対して、未来永劫、100%の自信を持てるのであればいいんですけど、そこまで確かなものはないし、考え方も変わるので。ちょっと話がズレますけど、SNSで自分の思想を言いたくないのも同じ理由ですね。

なるほど。「sequential souls」というタイトルについては?

Anan どうやって決まったんだっけ? “sequential”はbisshiが入れたいって言ったんですよ。

bisshi “シーケンス”という言葉を入れたかったんですよね。“連続”とか“繰り返す”という意味なんですけど、音楽の歴史は、昔のものを持ってきて、それを新しくすることの繰り返しだなと。今回のアルバムは特にそういうところがあるし、何小節も同じフレーズを繰り返すことも多いですからね。

Anan 理由はわからないんですけど、俺も“シーケンス”がいいなと思ってたんです。そこから“sequential”になって、“Souls”と加えて。音楽のジャンルとしてのソウルでもあるし、“魂”という意味もいいなと思って。

歴史は繰り返すというか、過去の音楽を参照して、ほかの要素やアイデアを加えながら再構築してきたのが音楽の歴史ですからね。

Takahashi そうですよね。音楽に対する価値観もそうだと思うんです。もともと音楽は、演奏しないと聴けなかったじゃないですか。その後レコードと蓄音器が発明されて、聴かれ方が変わってきて。いまはストリーミングが発達してますけど、その一方では生演奏が大事になっていて。そういう意味では、音楽がもともとの価値観に戻ってるのかもしれないですよね。

日本も海外も、トップ・アーティストは絶対にライブがいいですからね。

Takahashi そうですよね。この前、ジョン・メイヤーのライブをAnanと一緒に観に行ったんだけど、それもすごく良くて。

Anan 最高でしたね。ジョン・メイヤーは来日するたびに観てるんですけど、もうけっこうなベテランなのに、どんどん上手くなってるんですよ。演出はほとんどなくて、演奏だけで持っていけるのもカッコ良くて。客を煽ったりも、ぜんぜんないんですよね。

Takahashi アンダーソン・パークみたいに派手にパフォーマンスするのもいいけどね。

Anan コーチェラ・フェスを観てると、ショーとして捉えているアーティストも多くて。Parcelsもいきなり踊ってましたからね。クールなバンドかと思ってたら、踊りだすっていう。

もっと演奏が上手くなる必要があると思っていて(Takahashi)

PAELLASはどっちのライブが理想ですか?

MATTON 理想のライブって言われると、難しいですね…。手本になるような何かがあるわけではないので。

bisshi そうだね。 

Takahashi メンバーの人間性に合っているかどうかですよね。

Anan 派手なステージが似合う人たちはやればいいし、ストイックにやるほうがよければ、そうしたほうがいいし。

Takahashi 今の自分たちのことで言えば、もっと演奏が上手くなる必要があると思っていて。PAでダブ処理をしてみたいとか、VJや照明の使い方も考えてるんですけど、まずはしっかり演奏することが大事かなと。

音源はそれぞれの音が“近い”と思うので、ライブでもそういう感じでやれたら(MATTON)

「sequential souls」の楽曲が入ってくると、ライブの雰囲気も変わってきそうですね。

MATTON ツアーは……どうなるんだろう?(笑)

bisshi 今日、初めてリハーサルしたんですよ(笑)。

MATTON 音源はそれぞれの音が“近い”と思うので、ライブでもそういう感じでやれたらいいなとは思ってますけどね。

Takahashi うん。最近のライブはMCがないんですよ。できるだけ音楽に没頭できるようにしたいし、しっかり集中してもらえるようなライブをやりたいですね。

その他のPAELLASの作品はこちらへ。

ライブ情報

sequential souls RELEASE TOUR

詳しくはオフィシャルサイトで。

PAELLAS(パエリアズ)

MATTON(Vo)、Satoshi Anan(G)、bisshi(b)、Ryosuke Takahashi(Ds)。
MATTON、bisshiを中心に大阪で結成。
2014年、東京に拠点を移し本格始動。
様々な年代やジャンルの要素を独自のセンスで解釈し、
都市の日常、心象風景にフィットするサウンドを生み出す。

オフィシャルサイト
https://paellasband.com

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