Interview

the peggies 一つ大人になったバンドを見せられたという“切なくてエモーショナルな”新作について北澤ゆうほに訊く。

the peggies 一つ大人になったバンドを見せられたという“切なくてエモーショナルな”新作について北澤ゆうほに訊く。

the peggiesはアニメ『さらざんまい』のEDテーマとして書き下ろしたニューシングル「スタンドバイミー」をもって新たなフェーズへと突入したようだ。アニメ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』のOPテーマしてヒットした前シングル「君のせい」までが明るくて前向きな胸キュンポップ版のthe peggiesだとすると、同曲を収録したメジャー1stフルアルバム『Hell like Heaven』を挟み、約4ヶ月という短いタームでリリースされる本作は、エモくて切ないオルタナロック版のthe peggiesと言っていいほどの変化を遂げている。現在、キャリア史上最大規模となる全国16公演に及ぶ全国ツアー中の北澤ゆうほ(Vo&Gt)にバンドの変化の理由を聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 石ヶ森三英


明らかに変わった演出をしなくても、バンドの中の熱量っていうのは必ずお客さんに伝わるものなんですよね。それがバンドとして一番大事なこと

ツアー初日の渋谷クラブクアトロ公演を拝見させていただいたんですが、これまでにないほどの盛り上がりと一体感のあるライブになってましたね。

私たち自身、今までにないくらい、ライブやってるっていう感じが強かったですね。実はツアーが始まる前に、メンバーみんなで、一人一人がステージを作っているんだっていう意識を強く持ってやろうっていう話をしてて。セットリストを含め、何か1つのことを決める時に、それぞれがちゃんと意見を持って話し合うようになったんですね。

メンバー一人一人の意識が違っただけで、ライブがあんなに変わるんですね。

めちゃめちゃ根本的なことなんだけど、だからこそ、気づけなかったんですよね。むしろ、ここ1年くらいの自分たちがやってきたことの足りてなさを痛感させられた思いもしてて。結局、明らかに変わった演出をしなくても、バンドの中の熱量っていうのは必ずお客さんに伝わるものなんですよね。それがバンドとして一番大事なことだったんだなって再確認させられたし、ツアーの1本目から形としても現れてきているので、自分たちの自信にも繋がっていて。もちろん、まだ足りてない部分はいっぱいあるけど、今のところは、バンド内の空気がすごくいい状態でまわれてるなって思いますね。

初日のアンコールで新曲「スタンドバイミー」を初披露しました。明と暗、ポジティブとネガティブ、大人と子供、インディーとメジャーという、一見対極にあるように見えて混在している両面をエモーショナルに体現したアルバムを経て、次の作品というのはどう考えてました?

やっぱりアルバムでできたアプローチがあったからこそ、この曲もより一層みんなに響きやすくなってるかなと思います。今までの明るくて元気でみずみずしい感じのイメージとは違う面を見せれたかなと思ってるし、アルバムで設けた階段をこの曲で大きく上がれたかなっていう感じはします。

少し大人になったペギーズを見せたいなっていう気持ちはありましたね

それはどんな階段ですか?

私的に人生80年って考えたら、まだみんな24歳で全然超若いんですけど、15歳くらいからライブハウスに行ってライブをやってて。3人仲良くてキャッキャしてる雰囲気って、いくつまで引っ張っていいのかな? って(笑)。もうちょっと大人になってもいいんじゃないかなって思って。少し大人になったペギーズを見せたいなっていう気持ちはありましたね。

アルバムのインタビューでも「変わりたい」「違う側面を見せたい」ということはなんどもおっしゃってました。

わかりやすく言えば、ずっと1つのイメージにとらわれているわけじゃなくて、変わっていきたい。その、変わっていくということの1つが、今回は、大人になるという階段であるということを見せれたかなって思います。いままでみたいな可愛い可愛いだけじゃなくて……もちろん、「可愛い」っていう言葉は素敵だけど、愛でるためだけの可愛いが土台にある状態から、1つ、大人になれたかなって。そういう意味の階段は、この曲をはじめとして、今年、1つずつちゃんと上っていきたいなっていう気持ちがあります。

大人のザ・ペギーズの1曲目というイメージなんですね。この曲はアニメのEDテーマになってますが、そもそもの楽曲の制作はどんなところから始めたんですか?

完全に書き下ろしですね。まだ脚本もなくて、大まかなストーリーとコンセプト、キャラクター像を資料でいただいた状態で作ったんですけど、結構、量を作りました……。めちゃめちゃ作ったんだけど、なかなかピンとくるものがなくて。「君のせい」っていう、かなり耳に残るものを作ってしまった後だったから。

久しぶりに曲名から作ったんです

完成した曲を聴いてる身としては、この曲のサビもかなりキャッチーですよね。1回聴いただけで覚えられるし、聴いた瞬間にペギーズだってわかるし。

みんなもペギーズの曲はすごくキャッチーで覚えやすいサビみたいなイメージがあると思うんですよ。それは、すごくいいことだと思うから、そこの期待にはちゃんと応えたいなと思って。だから、チームで納得するものができるまでに時間がかかって。なんなら、「Fortune」も元々は『さらざんまい』のために考えて作った曲だったんですよ。

そうだ! 今覚えば、アニメの舞台になってる「夜の浅草で神田川沿いをぼうっとしてた時に書いた」と言ってましたね。

そうなんですよ。夜の雷門とか、隅田川を見てる絵を思い浮かべながら書いて。他にもいっぱい作ったんだけど、最後の最後、締め切り的にも最後だぞっていうひと絞りでやっとできた感じで。「スタンドバイミー」っていうタイトルの曲、みんな作るじゃないですか。灯台下暗しで、「スタンドバイミー」があった、これ使おうと思って、久しぶりに曲名から作ったんです。みんなで悩みに悩んでやっとできた。難産だったからこそ、大事にしたいなっていう曲になりました。

あのアルバムがあったからこそ、この歌詞に行き着けたかなって思っていて

サビは「君のせい」同様にキャッチーですけど、歌詞はアルバム後だなっていうトーンになってますよね。

そうですね。「君のせい」と「スタンドバイミー」の真ん中に、あの半々のアルバムがあって。ペギーズの持つ瑞々しい可愛らしさと、儚くて切なくてエモーショナルな感じが合わさった1枚が間にあるのは自然の流れで、あのアルバムがあったからこそ、この歌詞に行き着けたかなって思っていて。相変わらず、1回聞いただけで意味もちゃんとみんなに届くようなわかりやすい歌詞ではあるんですけど、所々でこだわりというか、ペギーズの独特の雰囲気が伝わればいいなと思って、歌詞の言葉は選びましたね。

アニメには寄せてますか?

具体的に寄せたところは特にないんだけども、一話のタイトルが「繋がりたいけど、偽りたい」っていうことだけは聞いていて。今のネット社会を風刺してる言葉だなと思って、めちゃめちゃ共感したんですね。繋がってるようで繋がれていない、でも、君のところに行きたいっていう。普通に自分の中でもある感情をそのまま書ければいいかなと思ったから、インプットはしたけど、そこまで寄せずに書きましたね。あとは、もともとのサビの歌詞には<翼>っていう言葉があったんだけど、空じゃなくて、川の流れが感じられるような歌詞だといいなっていう話になって。

カッパとカワウソの話ですからね。

そう。『さらざんまい』だから、“さら”って入れたいなと思って。<雨ざらし>だと安直すぎるから、いろいろ考えて、<涙が雨にさらわれていく>にしました。

失う前の段階に対する疑問とか寂しさも書けたらいいなと思ってましたね

ちゃんとひらがなになってますね。このフレーズだとアニメを見てる人にも見てない人にもすんなり入ってきます。歌詞の中の“君”と“僕”の関係はどう考えてました? 二人は離れ離れになってますよね。

君を失った悲しさはありつつも、果たして、最初から繋がっていたんだろうかっていう、失う前の段階に対する疑問とか寂しさも書けたらいいなと思ってましたね。その前から僕たちはちゃんと繋がれていたんだろうかっていう問いは、きっと、みんなも恋愛で感じる瞬間があるかもしれないし。それこそ、過ぎてしまったことに疑問を持ってもどうしようもないし、取り返しがつかないからかこそ、すごい寂しくなったり、モヤモヤしたりする。そういう悶々とした……誰かを求めたいっていう気持ちと、でも、踏み出せずに、結果、失ってしまったっていう。本当にどうしようもないけど、この世にはありふれているみんなの気持ちみたいなのを書けたらなと思ってました。

この曲の中の君と僕は例えばカップルだったら付き合ってはいたんですよね。

それでも僕たちは本当に一緒にいたって言えるんだろうか? っていう距離感ですね。嫌われることの恐ろしさになかなか打ちかてずに、お互いに踏み込めずにいた。それに気づいていたけれども、ほっといてしまった結果、終わってしまった、失ってしまったよねっていう。あやふやで曖昧な距離感をかきたくて。

例えば、電球がチカチカして、消えそうだなって思いながらも、今、消えるわけじゃないしってほっておくと、いつの間にか消えて部屋が真っ暗になってるじゃないですか。Aメロに書いてるんですけど、それがすごい象徴してるなと思って。もしかしたら明日消えてるかもしれないけど、ま、消えないでしょっていう安心感が、あとあと猛烈な寂しさとなってくるんだよなっていう気持ちを書いてますね。

求められたいと同じくらいに、求めたいけど求められない、みたいな。どっちもが絶対にあるなと思って

<スタンドバイミー>だけじゃなく、<スタンドバイユー>とも歌ってるのはどうしてですか?

アニメのキャッチコピーで<欲望を手放すな>っていうのがあって。求められたいとか、認められたいという欲望は、絶対にベースであるけども、本当は求めたいのに、求めきれない自分に対するむしゃくしゃもあるんじゃないかと思って。絶対にみんな、気づいてないだけで、いろんな違和感を持ってて、悩んだりしてるなと思うんですよね。だから、<そばにいてほしい>っていうことだけが悩みの根元ではなくて。<そばにいたいのに、なんで私はこの人を好きになりきれないんだろう>みたいな。それって、多分、みんな意外と気づいてないけど、絶対に欲望の1つとして大きくあって。求められたいと同じくらいに、求めたいけど求められない、みたいな。どっちもが絶対にあるなと思って。そばにいてほしいだけじゃなくて、そばにいたいのにいられないのは何故なんだろうっていう悩みもあるなと思ったから。さりげなくそこで言えたらなと思いましたね。

そこにも『Hell Like Heaven』感がありますね。

考えれば考えるほど、あのタイトルは私にとって、いろんな考え方の根源だなって思いますね。

全体的に今までとは違う、切なくてエモーショナルな感じが出せたかなって思いますね

アレンジは歌詞が際立つようにシンプルになってます。

そうですね。シンプルな演奏の方が歌が映えるかなと思って。あと、最後のサビはポツンと一人きりになって、外で祈るように歌ってるイメージ。ギターソロは、下北の駅を歩きながら、なんとなく鼻歌を歌いながら作ってます。メロディを考えるときみたいなテンションで作ったので、歌ってる感じのソロになったし、全体的に今までとは違う、切なくてエモーショナルな感じが出せたかなって思いますね。

MVもすごくシンプルですよね。演技などはなく、ほぼ演奏シーンのみっていう。

絵コンテもなくて、ロケ地の説明だけを受けた感じですね。私はいろんなところで歌ってるんですけど、ミクとまーちゃんは1箇所で、小一時間くらいの感じで終わって。すぐに帰りました(笑)。私は移動して、サスペンスドラマの撮影現場のような、誰もいない真っ暗なところに連れて行かれて。しかも、晴れの日を選んだはずなのに、雨が降ってしまって。<涙が雨にさらわれていく>っていう歌詞に合ってるからいいんじゃないっていう話になったんですけど、足めっちゃ出してるし、薄着だし、マジで寒すぎて。撮影中はアドレナリンが出てるから平気なんだけど、なかなか体張ったなって思います(笑)。

(笑)そして、カップリング「Dive to love」は一転して、ネオアコやスウェディッシュポップを想起させる、かなりおしゃれなサウンドになってます。

渋谷系にしようってなったんですよ。そういう話になったのは「なつめきサマーEP」でラブサマちゃんと一緒にやったことがきっかけで。ラブサマちゃんは渋谷系にめちゃくちゃ精通してるから、あんなに弾けてる「ちゅるりらサマフィッシュ」をおばあちゃん家の縁側でゆったりしてる感じの空気に変えてくれて。意外と自分の声も合ってるなと思ったし、ちょっと渋谷系に挑戦してもいいタイミングかなって思ったんですよね。元々はめっちゃゴリゴリのやつを想像して作ってた曲なんだけど、意外とこれ、渋谷系に行けるんじゃないかってアレンジしたらハマって。

初めて使うコードも登場させることができたから、冒険してる感じがあって

サビにはゴリゴリのロック感が残ってます。

そうそう。ちゃんとペギーズの色が残せたかなって思うんだけど、イントロは初めての分数コードになってて。しかも、いつもは歪ませて弾いててるから、全然歪ませないで弾くってなると、ごまかし効かないんですよね。ベースのまーちゃんとか、歪ませずに、サステインなしの丸めの音で弾くのが初めてだったから、「恥ずかしい」って言ってて(笑)。こういうサウンドこそ、ほんとに技量がいるんだなって痛感しました。リズム感もだけど、左手の指の押さえ方や動きも顕著に出るんだなって思って。初めて使うコードも登場させることができたから、冒険してる感じがあって、レコーディングはめちゃめちゃ楽しかったし、すごい勉強になった曲でしたね。これも1つ、ペギーズの新しい色。可愛いとか、カッコいいとかの概念じゃなくて、完全にジャンルとして新しいところを出せたかなと思います。

歌詞には<好き!好き?>というフレーズがありますね。

そうなんですよ。<好き>って言葉は、初めて曲を作った中学3年生の時から、ずっと使わずにいて。<好き>という言葉に甘んじたくないっていう気持ちがあったんだけど、いつの間にか私、「そうだ、僕らは」で使ってて。人に言われて、気づいたんですけど、初めて作ったのが<好きという言葉、詐欺師の常套句>っていう悲しい使い方をしちゃって(笑)。まだ、がっつりラブソングで、<君が好きだ>っていうのは、自分の心の準備ができてないけど、こういう軽いノリのものだったら言っていいかなって。躁状態な感じで、メッセージをそこまで込めない、聞き流せる歌詞ですね、これは。ノリというか、三話くらいで完結する少女漫画くらいの気持ちで書きました(笑)。

私たちの前向きなメッセージは、どこか儚さや切なさがあるっていうのを、今回のシングルで分かりやすい状態で曲に込められた気がする

(笑)2曲揃って、バンドにとってはどんな1枚になりました? 

本当にどっちも、全く違うベクトルで、新たなペギーズを出せたかなって思います。毎回、言ってるけど、シングルを出すたびに、「これは挑戦したぞ」っていう意識があるのはいいことだなって思ってて。1曲目はイメージとして、2曲目はジャンルとして、新しいというか、1つ大人になったペギーズを見せられたかなと思うし、このシングルがこれから先のベースになるといいなと思いますね。

私たちの前向きなメッセージは、どこか儚さや切なさがあるっていうのを、今回のシングルで分かりやすい状態で曲に込められた気がするので、「ペギーズって……明るいんだけど、切なくて、なんかエモいよね」っていうイメージがみんなに伝わればいいなと思うし。自分たち自身にとっても、成長しましたっていうのに収まらない、大人になるというすごく大事な階段を上ったシングルになったなって思います。

その他のthe peggiesの作品はこちらへ。

ライブ情報

the peggies tour 2019 Hell like Heaven trip

6月5日(水) 静岡 UMBER
6月7日(金) 名古屋 CLUB QUATTRO
6月8日(土) 大阪 梅田CLUB QUATTRO
6月15日(土) 赤坂 マイナビBLITZ赤坂

the peggies

北澤ゆうほ(Vo&Gt) 石渡マキコ(Ba) 大貫みく(Dr)からなる3人組ガールズバンド。
中学校の同級生で結成し高校時代から都内ライブハウスを中心に本格的に活動を開始。
2014年11月に初の全国流通音源「goodmorning in TOKYO」をタワーレコード限定でリリース。
2015年11月にリリースされたNEW KINGDOMのリード曲「グライダー」がYouTubeの再生回数100万回を超えるなど大きな話題となり、2016年7月に行われた渋谷club asiaでのワンマンライブはソールドアウト。
2016年10月には初のインディーズシングル「スプートニク/ LOVE TRIP」をリリース。そして、2016年12月8日に行った渋谷クラブクアトロでのワンマンライブでメジャーデビューを発表。
2017年5月10日に「ドリーミージャーニー」でメジャーデビューし、全国各地のラジオ局、TV局、音楽専門チャンネルでのパワープレイを獲得!6月から全国ツアー「the peggies ドリーミージャーニーツアー2017~野生のペギーズが現れた!!!~」を開催。2017年、9月にはセカンドシングル「BABY!」をリリース。
2018年、初のミニアルバム「super boy ! super girl !!」をリリース、iTunesロックアルバムチャート2位を記録。そのミニアルバムを引っさげたthe peggies史上最大規模の全国ツアー「the peggiestour 2018 super boy ! super girl !!tour~SUPERMARKET TRIP!!!~」では全国10箇所をめぐり、ファイナルはマイナビBLITZ赤坂を成功させた。
2018年、メジャーデビュー2年目を迎える。7月5日、「なつめきサマーEP」を配信限定リリース、iTunesロックアルバム1位、総合アルバム3位を記録!11月7日、3rd Single「君のせい」をリリース、iTunes単曲総合13位、ロック単曲1位を記録。
2019年2月6日、メジャーファーストアルバム「Hell like Heaven」をリリース。そのアルバムからは、ロート製薬「SKIN AQUA TONE UP UV」、TV-CMソング「マイクロフォン」、Honda「バイクに乗っちゃう?」、TV-CM出演&CMソング「そうだ、僕らは」、二階堂ふみ主演の2019年公開映画「生理ちゃん」主題歌「する」と、多くのタイアップに起用されている。

オフィシャルサイト
https://thepeggies.jp

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