Interview

松下優也「自分に言い訳のできない舞台になる」。舞台『黒白珠』で演じる勇から見えてくる彼の人となり

松下優也「自分に言い訳のできない舞台になる」。舞台『黒白珠』で演じる勇から見えてくる彼の人となり

青木 豪の書き下ろし最新作を河原雅彦が演出する舞台『黒白珠(こくびゃくじゅ)』。1990年代の長崎を舞台にある家族の秘密が暴かれていくミステリーだ。その物語にて母の顔を知らない双子の兄・勇を演じるのは、俳優としてだけでなくダンス&ボーカルユニット“X4”としても活躍する松下優也。2008年にソロアーティストとしてデビューし、翌年にミュージカル『黒執事』で初舞台・初主演を務めて以降、ミュージカルをはじめ舞台、映像と数多くの作品に出演している。そんな彼が今作でどんな立ち振る舞いを見せるのか。その意気込みを語ってもらった。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 増田慶


起こることすべて、芝居に繋がっているんだなって思いながら、日々生活している

ストレートプレイで主演を務めることに関してはどんな思いがありますか?

純粋に嬉しいですし、楽しみです。舞台はデビュー当時から10年ずっとやらせてもらっていますが、ストレートプレイやミュージカル、映像作品にしても臨む気持ちは全部一緒なんですけど、見せ方がそれぞれ異なってくると思っていて。ミュージカルに関しては、僕は音楽活動もしているので、とはいえ、自分がやっている音楽とミュージカルは全然違うものではあるんですけど、お芝居だけをやっている方に比べたら、もしかしたらパフォーマンス力があるかもしれないと当初思っていたところがあって。だから振り返ってみると、ある意味、言い方は悪いけどごまかせていた部分があったかもしれないなと思うんですよね。でも、歌とダンスから始めたキャリアのなかで、どんどん芝居っていうものを好きになっていって、ここ数年、ちゃんと芝居を追求したいっていう思いが強くなってきていて。音楽に関係なく、芝居という部分だけで自分がどこまでできるのか、って考えていたので、今回もいい経験になると思いますし、自分に言い訳のできない舞台になると思っています。

芝居を好きになったきっかけは何かありましたか?

歌とダンスだけをやっている頃は、表面的なところしか見ていないというか、カッコいいか/カッコよくないかっていうところだけの判断でしかなかったような気がするんですよ。10代の頃は特に。でも、デビューすると同時にお芝居をやらせてもらうようになり、いろんな演出家と出会ったり、共演者の方を見たりしていくうちに……歌で言うと、うまく歌うことがもちろんいいことではあると思うんですけど、それよりもソウル、魂の部分が大事なわけで、それは芝居も同じで、ある意味共通してるものだなってわかってから芝居がどんどん好きになりました。あと、振り返ってみると、小さい頃から、自分が違う誰かになったりすることも無意識のうちに好きだったなって思います。嘘をつくという意味じゃなくて、人を欺くというか。

欺く?(笑)どういうことですか?

虚言的なことではなくて、自分を違う人に見せること。本当の自分は別にして、自分がイメージする「俺ってこういう人」って見せたりとか。本当の自分は人見知りなんだけど、目立つことは好きだっていうのも、ある意味、近いかなと思いますね。

根本では共通する部分があった?

そうですね。音楽の場合はストーリーテラーになることもあるけど、基本的には自分のことを歌で伝えていて。自分をさらけだして、生き様を見せる部分があると思うんですよ。芝居をやっているキャリアも全部含めて、その全部の皮をめくった本当の芯にある自分を出しているというか。芝居は役を演じているので、自分の生き様そのものではないけど、その芝居がどれだけ本物に見えるかは、演じているその人がどういうふうに生きてきたかが大事だと思うんです。やっぱり芝居においても自分を超えるということはなかなかできないと思うので。そういう意味では芝居にも、直接は見せないものだけど、生き様は出てしまうものだから、面白いなと思いますね。

日々をどう過ごしてきたかが滲みでたり、透けて見えたりしますよね。

出ると思いますね。だから、何事も経験だなっていう意識に変わってきました。普段、しんどいことや嫌なこと、ネガティブな気持ちになることもあるけど、そういうときに、自分がこういう気持ちになるんだとか、人はこういう反応をするんだとか、すべてが大事な経験だと思うようになりました。リアルに起こることすべて、芝居に繋がっているんだなって思いながら、日々生活しています。まあ、時には、脚本よりも面白いことが起こりますけど(笑)。

今回は不思議なくらい自然と勇に入っていける

(笑)では、本作の脚本を受け取ってどう感じられましたか? 脚本は『花より男子 The Musical』でご一緒した青木 豪さんです。

青木さんはすごい物腰の柔らかい方で、僕と同じく、ちょっと人見知りな方かなっていう印象があります。『花より男子』のときは原作があるものだったので、青木さんの書き下ろしは初めてですね。青木さんは「誰がやるか決まらないと脚本が書けない」とおっしゃっていたので、脚本をいただく前は、僕のどういうところを見られているんだろうって気になってドキドキしていました(笑)。

どう見られていると感じました?

当て書きなところはあると思いましたね。僕らがインタビューで話していたことがそのまま本になっているような感じもあって。なんというか……いつもは演じる役柄を理解する工程が必要なんですけど、今回は不思議なくらい自然と勇に入っていけるんですよね。自分が普段思っていることとわりと近い部分があるからなのか。だから少し変な感じがしています。

近い部分というのは?

もちろん、全然自分とは違うなっていう部分もありますよ。ただ、双子の勇と光は、本当の母親のことを知らない。僕は母子家庭なので、本当の父親を知らない。光は母のことを知りたくて求めているけど、勇には会いたい気持ちはない。そこは僕もそうなんですよね。知らないことは知らないままでいい。だから自然と「そうやな。俺もそうやし」って思えたというか。そこにもうリアルがあるんですよね。もちろん状況は勇とはまったく違いますけど、近い部分はあるなと思っていますね。

双子の兄の勇は地元で職を転々としながらも家族と恋人を守っていて、弟の光は地元を出て東京の大学に進学しています。

光のことも理解できるんですよ。勇は地元を出たことがないけど、僕は逆で、わりと早くに地元を出たので。実際、久々に地元に帰ったら「何こいつ!? 標準語混ざっちゃって」って、都会にかぶれてるように見られてるとも思うから(笑)、ある種、光のようにも見えるんだろうなって思います。だから、光にも共感できる部分があるし、理解できない存在ではないですね。本当に、壮ちゃん(平間壮一)はやりやすいですね。

弟の光 役の平間壮一さんとはどんな関係なんですか? 河原雅彦さん演出の舞台『THE ALUCARD SHOW』で共演されてますよね。

本来はまず、名前を覚えて、挨拶をして、何かを喋ることもあれば、何も喋らずに芝居をスタートして、稽古を重ねていく。そうやって段階を経ないと、なかなか相手に突っ込んではいけないじゃないですか。僕が人見知りだからというのも大きいんですけど(笑)。でも、壮ちゃんとはもうすべての段階を超えているので、芝居のことを話すところからさっそくスタートできるし、芝居をしていても、壮ちゃんがどういう感じでくるかがわかるんですよ。だから、やりやすいですね。弟が壮ちゃんで良かったなって思います。

演出の河原雅彦さんにはどんな印象を持たれていますか?

舞台『THE ALUCARD SHOW』の初演と再演でご一緒させてもらったんですけど、基本的には優しい方ですね。もちろん厳しい面もあるんでしょうけど。河原さん自身が、演出だけじゃなく、演者としてもやられているので、僕ら役者のことをすごく考えてくれてるなって思います。容赦なくいろんなことを要求される演出家の方もいらっしゃいますけど、どちらかと言うと、河原さんは役者に無茶をさせないイメージがありますね。限られた時間の中で質の高いものをつくる。ご自身でも以前「自分が演者の気持ちをわからなかったらもっと理不尽にできるけど」っておっしゃっていたことがありましたけど(笑)本当にそうだなって思います。

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