Interview

新世代が拓くアップデートした音楽。さなりの『SICKSTEEN』。16歳のラップアーティストが切り取る今

新世代が拓くアップデートした音楽。さなりの『SICKSTEEN』。16歳のラップアーティストが切り取る今

昨年10月、15歳のときにSKY-HIがプロデュースを手がけた「悪戯」でデビューを果たしたラップアーティストのさなり。ミュージックビデオが現在230万再生を超える「Prince」や「Mayday」といった楽曲を発表しながら、Abema TVのリアリティショー『オオカミくんには騙されない』に出演し、10代のリスナーの間で急速に支持を広げている彼のデビューアルバム『SICKSTEEN』が完成した。
アルバムタイトルにあるとおり、この作品は誰もが病みを抱えた社会、その日常をメロディアスなラップと多彩なトラックで映し出した楽曲に、16歳となったさなりならではの眼差しが感じられるアルバムとなっている。音楽家として第一歩を踏み出したばかりの彼は果たして、この先どこに向かうのだろうか。

取材・文 / 小野田雄 撮影 / 関信行


いろんなタイプの曲をやることで自分に何ができるのかを挑戦したかった

去年10月、15歳のときにリリースした配信シングル「悪戯 / キングダム」から8ヵ月が経ちましたが、デビューから今までを振り返ってみていかがですか?

あ、こういう感じなんやって。こういう感じなんだろうなっていう自分のイメージどおりだったので、驚きはなかったですね。

イメージしていたということは、もともと、ミュージシャンになりたかった?

そう考えるようになったのは、デビューする1年くらい前、中3のときですね。オーディションを受けて事務所に入ったんですけど、「デビューしたいな」って思ってオーディションを受けたら、そのとおりにそこで優勝して……半年くらいで思ったことが実現したんです。でも、自分はやろうと思ったことを形にできる環境にずっといたので、それに対して驚きはなかったんですよね。

その環境というのは?

“これはやっちゃダメ”という親の束縛もなく、インターネットやパソコンも使えましたから、自分のやりたいことが自由にできて、そのやりたいことのひとつに音楽があって、それをただやっただけなんです。

音楽を始める以前、小学生の頃はYouTubeに動画をアップして、YouTuber的な活動をしていたんですよね?

そうですね。自分が夢中になれることを見つけた順番がそうだっただけというか。動画を撮ったり編集したりするのも特に勉強したわけではなくて、純粋に遊びでやっているうちに自然とできるようになっただけですし。音楽に関しては、中1のときに周りでフリースタイルラップが流行っていて、自分もSKY-HIさんやCreepy Nutsさんを聴いたりしつつ、先輩から誘われて、遊びの一環でフリースタイルラップを始めたのが最初なんですよ。そして、中2から曲を作るようになるんですけど……最初は曲を作るといっても、ネットに無料のビートをアップしている人がいるので、そのビートをもとに歌詞を書いてラップを乗せるくらいで。本格的に音楽をやろうと思ったのは、中2のときに地元から引っ越したら、今まで遊んでいた友達とも会えなくなり、ひとりになった、ってことが大きなきっかけですね。そこから自分で無料ソフトのGarageBandでビートを作ったり、ラップを録音するようになっていきました。オーディションの優勝賞金で、スピーカーや鍵盤を買ったりして、機材をアップグレードしたんです。

それこそ、SKY-HIさんがプロデュースしたデビューシングル「悪戯」はストレートなラップに挑んだ曲ですよね。ラップを好きになるきっかけとなったSKY-HIさんと一緒にお仕事をしてみていかがでしたか?

ラップを始めた頃は、SKY-HIさんがやっていた早口のラップをカラオケで歌うのが楽しくて。自分にとってSKY-HIさんは、歌っていて気持ちいい、口ずさんでいて楽しいラップの魅力を教えてくれた方なんですけど、そういう人との作業を通じて、ラップの乗り方、韻の踏み方……トラックも作っていただきましたし、ひと言でいえば、すべてが勉強になりました。

さなりくんは、普段、曲はどういうプロセスで作るんですか?

まず、トラックを作ってから、そこに適当な言葉を歌いながらメロディを付けて、その完成したメロディに具体的な言葉を当てはめながら歌詞を完成させるんです。歌詞の内容に関しては、制作を進めていくうちに浮かんでくるイメージを形にしている感じですね。

今回のデビューアルバム『SICKSTEEN』は、今のトレンドであるトラップから90年代のヒップホップの影響が感じられるビート、そして、ヘビーなバンドサウンドまで、幅広い音楽性ですよね。

僕は小学生のときからYouTubeを観てきたんですけど、YouTubeには音楽動画がなんでもあるじゃないですか。だから、ボカロだったり、そこから急に洋楽を聴いたり、K-POPを聴いたり……聴いている音楽はその時々でバラバラで、それが幅広い音楽性につながったのかな(笑)。そのなかでも、今、僕がやっているようなメロウなラップ、言葉数が多くてメロディがしっかりあって、それでいて韻もきっちり踏んでいるものが一番好きだったりはして、そのうえで今回のアルバムはいろんなタイプの曲をやることで自分に何ができるのかを挑戦したかったんです。

今回の作品テーマは、“すぐに病んでいると言われがちなこの社会に、10代なりの言葉と音楽で風刺した作品”ということですが、そこにはどんな思いがありますか。

“病み”というのは、みんなに当てはまるというか、それが当たり前だと思うんですよ。この作品はそういう現状を変えたいと思って作ったわけではなく、ただ現状を形にしただけであって、べつに変わったことをやっているわけではないんです。自分のことで言うと、昔からいくらハッピーに書こうと思っても、気づいたら、そこには悲しい感情が含まれている。日々悲しいことがあるわけでもないし、病んでいるわけでもないんですけど、昔から僕はハッピーエンドが好きじゃないというか、そこに違和感を感じていて。だから、そういうことも影響している気がしますね。

このアルバムは、さなりくんなりの現状のリアルな写実だと。ただ、デビューしたことで今は作品を聴くリスナーもいるわけで、作品を作るにあたって、聴き手は意識しましたか?

そうですね。そのバランスは意識しました。今はやりたいことを何でもやってみるというスタンスなので、聴き手を意識して曲を書くことも楽しんでますし、実際、このアルバムでは、メロディのキャッチーさであったり、僕の周りの10代男子の間で流行っているK-POPやR&Bの要素も盛り込もうと意識してました。ラップなのか歌なのかも意識せず好きに歌っちゃってますね。

最後に、順調にここまで到達した今回のアルバム『SICKSTEEN』以降、どんな音楽をみんなに届けたいですか?

全然まだまだなので、今回試したいろんなタイプの曲を土台に、作品のクオリティーを高めていきたいですね。自分でミュージックビデオも撮ってみたいですし、音楽とは直接関係ないかもしれないですけど、アニメや漫画のストーリーを作ってみたり、その時々でやりたいことを形にしていきたいなと思います。

さなり 1st TOUR 「SICKSTEEN」

10月19日(土)東京
10月22日(火・祝)大阪
10月26日(土)北海道
11月2日(土)福岡
11月8日(金)名古屋
11月17日(日)東京

*詳細情報は後日発表

さなり

2002年11月16日生まれ。小学校低学年時にYouTubeに出会い、オリジナル動画の投稿を開始。中学に入り、フリースタイルラップで友達と遊び始め、中学2年生の頃からオリジナル音源の制作をスタート、再度、動画投稿を始めるようになる。2018年10月に「悪戯 / キングダム」、2019年1月に「Prince / ただのスパイス」を配信リリースしている。恋愛リアリティ番組『白雪とオオカミくんには騙されない♡』に出演し話題に。

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