Interview

橘 ケンチが、自身の“闇”や“陰”を引き出す。舞台『魍魎の匣』上演に向けて

橘 ケンチが、自身の“闇”や“陰”を引き出す。舞台『魍魎の匣』上演に向けて

シリーズ累計1,000万部を超える京極夏彦の大人気小説「百鬼夜行シリーズ」。その中でも人気が高い「魍魎の匣」が、主演・橘 ケンチ(EXILE/EXILE THE SECOND)、脚本・畑 雅文、演出・松崎史也で舞台化され、天王洲 銀河劇場(6月21日~30日)、AiiA 2.5 Theater Kobe(7月4日~7日)にて上演される。
橘 ケンチが演じるのは、古本屋を営む“京極堂”こと中禅寺秋彦。副業である“憑物落とし”を駆使して、謎だらけの奇怪事件を解明していく。宗教、民俗学、妖怪、口碑伝承のなど、様々な分野の造詣に長けている男だ。また、中禅寺をはじめ、熱血刑事の木場修太郎(内田朝陽)、鬱気味の冴えない小説家・関口 巽(高橋良輔)、推理をしない探偵・榎木津礼二郎(北園 涼)、三流雑誌の記者兼カメラマン・鳥口守彦(高橋健介)など、癖はあるが魅力的なキャラクターが登場する。
そんな「魍魎の匣」の摩訶不思議な世界観をどのように生の舞台で表現していくのか。これまで映画化やアニメ化もされているが、今回の舞台『魍魎の匣』は、原作ファンも注目する舞台になることは間違いない。主演を務める橘 ケンチに、本作への意気込みを聞いた。

取材・文 / 松浦靖恵 撮影 / 増田慶


自分なりの“京極堂”をつくっていく作業は難しくもあり、楽しい作業

今回、橘 ケンチさんが主演を務める舞台『魍魎の匣』は、京極夏彦さんの大人気小説が原作です。その原作小説を読まれた感想を教えてください。読書好きのケンチさんがどのような感想を持たれたのかとても気になります。

僕は小説をそこまでたくさん読んできたわけではなく、しかも、一冊でここまでの超大作を読んだのは初めてだったので、とても読み応えがありました。登場人物たちがとても魅力的ですし、民俗学や論理学、妖怪など様々な分野の薀蓄(うんちく)がぎっしりと詰め込まれた不思議な世界観、伏線をどんどん回収していく物語にどんどん引き込まれました。小説を原作とした舞台をやるという経験がこれまであまりなかったこともあって、自分が演じさせていただく役が小説の中にいるんだという感覚がとても面白くて。この物語の中にいる人物たちに自分がどう近づいていけばいいのだろうという読み方をしていくことも、とても新鮮な経験でした。自分の中で中禅寺秋彦のようなキャラクターをどこかで欲していたところがあったんだなとも思いました。

というと?

これまで自分が立たせていただいた舞台は、激情型の熱い舞台や殺陣のある役が多かったのですが、今回演じさせていただく中禅寺秋彦はそこにすっと佇んでいるような人物で、なんとも不思議な雰囲気を漂わせている。知識がとても豊富で、自分の言葉や論理で相手をどんどん絡めとっていくような役柄は今までやったことがなかったので、とてもワクワクしています。今の自分の年齢的なところもあると思うんですけど、20代ではきっとこの役をいただいても、演じられなかったと思います。

本を通してたくさんの方たちと価値観や情報を交換しながら、本好きのみなさんと共有できる場所をつくりたいという思いで“たちばな書店”というプロジェクトを立ち上げたケンチさんが、古書店の店主である中禅寺秋彦を演じるというのは、何か不思議な縁を感じました。

もともと自分は読書好きですし、“たちばな書店”で本の活動もしているので、僕も古書店の店主である中禅寺秋彦に個人的にシンパシーを感じました(笑)。

原作を読まれてみて、中禅寺秋彦をどのように演じたいと思われましたか?

彼は出自をあまり見せないと言いますか、どのような生まれ育ち方をしたら彼のような人間になるのだろうというところを、これから自分なりに埋めていかなければいけないと思っています。人と関わることがそんなに好きでも得意でもないタイプのような気がしますし、つねに自分の中で考えを巡らせていて、自分の中にものすごく深い精神世界を持っている。なかなか規格外の人間なので、自分なりの“京極堂”をつくっていく作業は難しくもあり、楽しい作業でもあります。とてもやりがいを感じています。

晴明桔梗を染め抜いた羽織、黒足袋と赤い鼻緒など、“京極堂”の衣裳を身につけた感想を聞かせてください。

自分が思っていたよりもしっくりきてましたね(笑)。原作を読んで、自分の中でいろいろとイメージを膨らませていたんですけど、この衣裳を着ることでイメージがより広がりました。表面上で“京極堂”を捉えるというよりも、人物の奥底にあるものを掴んで内面を掘り下げていくのは楽しいです。ただ自分の中でイメージをつくりすぎても(観客に)伝わりづらいと思うので、いいバランスで役をつくり上げていければ、と。

オフィシャルのコメントで、ケンチさんは「明るく華やかな作品というよりは、観ていただく方々の心の奥底に深い衝撃を投げかけるような世界観になるのではないかと思っています」とおっしゃっていました。

「魍魎の匣」は人間の死生観が垣間見えるような作品ですし、魍魎や妖怪を通して、最後は人間の奥底に渦巻いているものが浮かび上がってくると思うので、十人十色の見え方がある作品になりそうだなと思います。お客さんが感じたままに捉えてくださいというような舞台になるのではないか、と。妖怪や魍魎を舞台という生の場所でどう見せていくのかという舞台ならではの演出方法も楽しみにしていただけたらと思いますし、観てくださる方の記憶に残る舞台になったら嬉しいです。

主演ということもありますが、かなり台詞量が多いと聞いています。

原作自体が1,000ページを超える長編小説なので覚悟はしていましたが、これまでで一番台詞量が多いので挑戦しがいがありますね。

ちなみに、台詞はどのように覚えていくんですか?

台詞を覚えるのに近道はないですね(笑)。舞台『熱海殺人事件』のときも精神的に追い込まれるくらい台詞量が多かったんですけど、時間をかけて繰り返し繰り返し覚えて、自分の中に沁み込ませていくしかない。今回の役は派手な殺陣もないですし、台詞量も多いし、自分にとっても記憶に残る舞台になると思います。

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