Interview

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』TVアニメ化で唯一変更された“重要なセリフ”とは? プロデューサーが明かす「全13話版」再編集の現場

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』TVアニメ化で唯一変更された“重要なセリフ”とは? プロデューサーが明かす「全13話版」再編集の現場

<『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』谷口 理プロデューサーインタビュー・前編>
「ファーストガンダム」と呼ばれ、ガンダムシリーズの礎となっているTVアニメ『機動戦士ガンダム』(1979~1980)は、誕生から40周年を迎えた。その『機動戦士ガンダム』でキャラクターデザイン、アニメーションディレクターを務めた安彦良和が、同作品へと至るまでの歴史を刻んだコミック作品が『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』だ。

これをOVAとしてアニメ化し、2015年からイベント・劇場上映された『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』は、全6話の物語で多くのガンダムファンの心を改めて掴んだ。その物語が全13話に再構成され、TVアニメシリーズ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』としてNHK総合で現在放送中。本作について、プロデューサーである谷口 理氏に話を聞いた。

取材・文 / えびさわなち


40年間『ガンダム』に関わってきた人たちが紡いできたものを、また紡いでいくこと

『機動戦士ガンダム』の誕生から40周年の今、谷口プロデューサーご自身としてはこのコンテンツに対してどのような想いがありますか?

『ガンダム』に関わりだしたのは、僕がサンライズに転職した6年前くらいからで、40年の歴史の中のたかだか5~6年なんです。40年間いまだに続く作品は、世の中を見渡してもなかなかないですよね。そういう意味ではプロデューサーとして関わらせていただけることが光栄でもありますし、プレッシャーもあります。40年間『ガンダム』に関わってきた人たちが紡いできたものを、また僕も紡いでいかなければいけない。その1ページに加われたことが光栄です。

そして次の1ページを誰か後輩後進に作ってもらえたなら、と。本に例えるなら、まだまだ続編がたくさんあってほしいし、続いていけるような作品にしていかなければいけない、という想いがあります。『THE ORIGIN』で僕のところで終わらせるわけにはいかない、というモチベーションでプロデューサーをやらせてもらっていますね。

未来への懸け橋にもなる感覚というか……。

そうですね。懸け橋というほどでもないんですが(笑)。先人たちに認めてもらえる作品を作るということと、後人たちが僕らの作品を超えて行けるように、ハードルを上げていかなきゃいけないな、という想いです。

ちょうど僕が『THE ORIGIN』を作る前に『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』(以下、『UC』)という作品がありまして、それがものすごくヒットをしたんですね。それをなんとか超えてやろう、という気持ちで制作していました。なので後人たちが、「『THE ORIGIN』を超えてやろう」と思ってくれたらうれしいです。

何度もOVAを観た方も、TVシリーズを改めて楽しく観られるように

全6話に及んでイベント・劇場上映されるOVAとして制作された『THE ORIGIN』を、TVシリーズとして改めて放送しようと思われたのはどうしてだったんですか?

TVシリーズも作ろうかなとはサンライズ社内でも思っていたんです。ただ、放送媒体が変わることや、切り口も変えたいという想いもあって「さて、どうしようか」と思っていたところに、NHKさんからお話をいただいたんです。「よかった」という想いもありつつ、外部の方からお声が掛かったのでこれは乗ろうと思いました。

それにNHKではこれまで『ガンダム』が放送されたことがなかったですし、今後、またNHKで『ガンダム』を放送するきっかけになればいいな、とも思いましたので、TVシリーズにさせていただいた感じです。

TVシリーズにすることはNHKから声が掛かる以前から考えていたんでしょうか。

そうですね。アニメーションというのは一次利用があって二次利用があるんですが、制作したのなら二次利用として販売しなくてはいけないんですけれども、やっぱりTVシリーズがいちばん売りやすいんです。それも1クールよりも3クール、4クールと長ければ長いほどみんな買ってくれる。

今回もTVシリーズにすると発表したことで、海外からも買い付けが来ました。そういうこともあってTVフォーマット版にすることは考えていました。30分の尺で複数回に分けて3ヵ月ぐらいで観られるので。そうすると作品としては売れやすいんですよね。

だとすると全6話で制作されていたときから、この先に13話なり26話なり、分割することは考えていましたか?

それに関しては制作が終わってから考えました。『UC』は、OVAとしては全7話あったんですが、それを全22話に分けてテレビ朝日で放送させてもらいました。サンライズでTVフォーマットにして、どこかに買ってもらおうという話をしていたんです。

すべての作品がそういう形式ということではないんですけれども、次の引き出しを開けてあげるために、そういったフォーマットにして世に出すことは、サンライズとしてはよくやることだと思います。

もともとOVAだったものを13話に分割される際に最も心をくだいたのはどんな部分でしょうか。

いちばんは、OVA全6話でトータルが7時間強あったので、それを13話に収めるために1時間半ほどの映像を切らなくてはいけなくなったことですね。そうしないと、16話や18話になってしまい中途半端になりますので「ここは切ってしまおう」ということになりました。

そこで、まずはOVAよりもテンポをよくしようと思ったんですね。OVAではかなりしっかりといろいろなところを見せていたけど、テンポをよくするために、かなり物語を摘まんでいきました。実際にこのTVシリーズに関しては安彦さん(安彦良和。OVA版では総監督)は関わっていなくて、総作画監督をやっていた西村博之さんに権限を持ってもらったんです。

そこで、安彦さんのテイストを失わず、物語がしっかりわかるように映像を入れ替えたり、切ることができるシーンは切っていきました。ただ、その切る作業がすごく大変で。そこは難しかったです。セリフは多少なりとも切れるんですが、映像を切ったことで劇伴(音楽)は全部付け直さなければいけなくなったので、そういうところは音響監督さん(藤野貞義氏)と話をしながら苦労して作っていった感じでした。

劇伴を付け直すことによって、雰囲気が変わることなどはあるんですか?

ありましたね。劇伴も、OVAとはまったく違うものに聴こえるんです。音楽は同じなんですが、入り方とか想定していた尺より短くなったり、違う場所につけたりもしているので、何度もOVAを観た方も、TVシリーズを改めて楽しく観られるようになっていると思います。

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