連続テレビ小説『なつぞら』特集  vol. 6

Interview

『なつぞら』で朝ドラ初出演を果たした岡田将生。 愛すべき「ダメ兄ちゃん」咲太郎への思いを語る!

『なつぞら』で朝ドラ初出演を果たした岡田将生。 愛すべき「ダメ兄ちゃん」咲太郎への思いを語る!

節目となる100作目、そして令和最初の“朝ドラ”という節目の一作でもある連続テレビ小説『なつぞら』。放送第8週から広瀬すず演じるヒロイン・奥原なつがアニメーターを志して上京、第2章とも言える「東京編」がスタートし、ますます“視聴熱”が高まっている。そのなつが9歳の時に生き別れ、18歳になるまで音信不通だった兄・奥原咲太郎も、今後はストーリーに絡んでくる模様。演じるは、朝ドラ出演を目標にしてきたと話す岡田将生だ。歌とタップダンスを愛し、文化の開拓者たちが集う街・新宿で奮闘するヒロインの兄を、岡田はまっすぐ情熱的に演じている。なつの運命の行方を握るキーパーソンとしても注目を集めることが必至ということで、咲太郎という役どころや撮影時に感じていることなど、ざっくばらんに語ってもらった。

取材・文 / 平田真人


役が僕に近づいているのか、僕が役に近づいているのかがわからなくなるくらい、自然と咲太郎になれた気がします

以前、収録スタジオを訪問する機会をいただきまして、なつと咲太郎が再会して天丼を食べるシーン(第5週)の撮影を見学しました。その時、長いシーンをワンカットで撮っていることを知ったのですが、何でも「朝ドラ」ではおなじみの撮り方だそうで…。

僕も『なつぞら』が初めて参加する朝ドラなので、あのシーンを撮っているころは、まだシステムを今ひとつ把握していなかったんです。そこに関して最初は驚きましたけど、流れで芝居をしていけるのはいいなと思いましたし、毎週(収録の前にまとめて)リハーサルをやっていく中で、監督やキャストの方々といろいろコミュニケーションをとれるので、安心しつつも、いい緊張感をもって撮影に臨んでいけるのが素敵だなと感じました。

その前後のシーンで、長い間離れていた妹・なつと再会を果たしたわけですが、広瀬すずさんとご一緒されてみて、どういったことを感じられているのでしょうか?

なつと咲太郎として会えた時は、シンプルにうれしかったです。撮影が進んでいくにつれ、役が僕に近づいているのか、僕が役に近づいているのかがわからなくなるくらい、なつと話していると自然とお兄ちゃんになれる感覚があって。咲太郎は、どこか抜けていてダメなところがあるキャラクターでもあるので、現場では自然体でお芝居できるように…空いている時間も(広瀬とは)一緒にいるようにしているつもりです。なつと対峙すると、自然にお芝居モードになる──いい関係性で現場にいさせてもらっていると、自分では感じています。
誤解がないように言いたいんですけど…広瀬さんを見ていると、「人は、“若い”とか年齢といったモノサシでは測れないんだな」と思わされるんです。僕も「カメラがまわったら、先輩後輩は関係なく対等だ」と先輩に言われてきましたけど、『なつぞら』の現場は、それがまさによくわかると言いますか。広瀬さんは真ん中にどっしりといてくれて、みんなの中心としてお芝居も現場の雰囲気も引っ張ってくれているので、本当に素敵な女優さんだと思います。

役とリンクするというお話がありましたが、咲太郎に岡田さんご自身と似ている部分を感じとったりするのでしょうか?

僕自身にも妹がいますが、その思いと咲太郎がなつを思うのとでは、厳密には違っているのかな、と。咲太郎からすると、なつのことが絶対的に一番なんです。一度、はなればなれになって再会したというのもあって、なつへの思いがいっそう強いというか。それがどんどん空回りしていく役どころなので、妹のことを大事にしたり、心配する気持ちは現場を離れても個人的に意識しているところはあります。たとえば、広瀬さんに対しても「大丈夫かな、疲れていないかな?」といった感じで、お兄ちゃん目線で見ている自分がいたりします。
そういった意味では、家族に対する思いの深さというところで共感していますし、家族じゃなくても人と人が助け合い、支え合って一生懸命に生きていた時代だったという背景についても、10代のころから「誰かが困っていたら助ける」という、現場で学んだことに通じてくるところもあるので…咲太郎ほどストレートに情熱を表面に出すわけじゃないですけど、僕自身も知らず知らず影響を受けてもいて。思っていることはハッキリ言って、「自分はこうしたい」と伝え、発信していくことの大切さもわかっているんですけど、咲太郎の場合は方法として間違ってしまうことの方が多い気がします(笑)。でも、その不器用なところが好きですし、人としていいなと思っています。

第30話より ©NHK
窃盗の疑いをかけられ、警察に捕まる咲太郎。

なつに柴田家という拠り所があるように、咲太郎にも母親がわりのような岸川亜矢美がいます。その亜矢美を演じている山口智子さんと共演されて、どのように感じていらっしゃいますか?

山口さんとご一緒して、あらためて「お芝居って自由なんだな」ということを、現場で教わった気がしています。どうしても、「この役はこういう性格だから、こうするんだろう」みたいに、理詰めしていく自分がいたりもしたんですけど、山口さんのお芝居を見ていると、「一瞬一瞬を生きることが芝居になる」と体現されているように思えるんです。そんなふうに学ぶこともたくさんありますし、最初から芝居を固めずにフラットな状態で現場に臨んだ方がいいんだなということを、最近はよく感じていて。何より、お芝居していてすごく楽しいです。

そこを踏まえまして、咲太郎という役を演じていて感じる興味深い点や、楽しさについてもお話いただけるでしょうか。

なつと同じように、咲太郎も少しずつ成長していくんですけど、面白いなと思うのは…咲太郎は自分ではなく他人のために生きている人だというところなんです。僕自身も、自分のことよりもまず他人のことを考えるという人間でありたいと思っているんですけど、なつや亜矢美さん、周囲の人たちのことをまず考える咲太郎の生き方はすごく興味深いですし、演じるにあたっても、「相手の役者さんが動きやすいようにしよう」とか、まず他人の気持ちを考えてからお芝居をするようにと心がけていて。そのやり方が自分の中でも面白く感じられていますし、今までに演じたことのない役としてとらえられるようになってきました。

また、咲太郎は歌とタップが大好きという設定で、少年時代を演じた渡邉蒼さんも回想シーンなどで見事な歌とタップを披露していますが、岡田さんご自身は…?

そこは…コメントを控えさせてもらっても…(笑)。でも、時間がある限り練習はしました。元々、歌もダンスも得意じゃなくて、結構心の中で「勘弁してくれ」と叫んでいたんですけど、今回の役を表現するパーツとしては面白いなと思っているので、僕なりに頑張らせていただきました。昨年は落語家の役を演じたりと座っている稽古が多かったので、単純に立って動けるというのがうれしかったのと、タップもパシッと動きと音がきれいに決まると爽快感があって、「ああ、咲太郎はこのリズムで生きている人なんだな」と、キャラクターを掘り下げることができたという点でも大きくて。とはいえ、胸を張って得意ですとは言い難いので、温かい目で観ていただけるとうれしいです(笑)。

第29話より ©NHK
9年ぶりの再会を果たすなつと咲太郎。

話が前後しますが、キャスト発表の時に「朝ドラ出演は目標の一つだった」とお話していましたけれども、実際に現場に入られてみて、どのような思いを抱かれているのでしょうか?

日本で朝ドラを視聴習慣にしている方って、すごく多いじゃないですか。大河ドラマも同じですけど、そういう「誰もが知る」ドラマ枠の作品に出てみたいと10代のころから思ってはいたんです。ただ、朝ドラとはなかなかご縁がなかったので、今回こうして出演させていただけていることを、本当にうれしく思っていて。それからヒロインのお兄ちゃん役ということで、いろいろな経験ができるだろうなという期待もありました。何より、親やおばあちゃんが喜んでくれたというところで、『なつぞら』に出演できたことがうれしいです。現場そのものは…撮影期間の長さに比例してスタッフさんの意図だったり、キャストの表現したいことがマッチしていくのを、感覚的に味わえるのがすごく楽しいです。いろいろディスカッションしていくと、どんどんアイデアがわいてきますし、「こうしてみたい、ああしてみたい」という役者側の発想を、監督やスタッフさんが面白がってくださったり、あるいは「それはちょっとやめておきましょう」って、ちゃんと判断してくれるのが、ありがたくて。それって長期間一緒にやっているからこそだと思うんです。そのぶん、撮影を終えた時の達成感も大きいだろうと想像しますし、広瀬さんとは撮影の待ち時間もふくめて、クランクアップまでずっと兄と妹のような関係性でありたいですね。

きっと全部撮り切った時に「この現場にいることができて、よかったな」と思うんだろうなと、何となく今から想像できたりもするんです

『なつぞら』出演が決まる以前と以後で、岡田さんの中で意識や視点に変化があったりはしたのでしょうか?

これまでの役者生活の中で、いろいろな台本を読んできましたけど、朝ドラの台本は、自然と物語の中にスッと入っていけると言いますか、自分も物語の一部分になれるうれしさを感じられるんです。もちろんヒロインを応援したいという気持ちもあって…それがお兄ちゃんとしての目線と、それ以外の目線からも読み進めていけるので、「視聴者の方々はヒロインのことを、こんなふうに観ているのかな?」といった感じで、いろいろと考えられるのが、朝ドラならではなのかな、と思いました。
連続ドラマの撮影は、時に追われるように日々が進んでいくこともあるんですけど、『なつぞら』は台本が先々までいただけていて、いろいろな視点を楽しみながら読ませてもらっているので、今までにない感覚を味わっています。また、実際に現場に入ってからも、どこか複数の視点で物語を見ている感覚があって、新しい台本を渡されるたびに「面白いなぁ」と思って読んでいますし、咲太郎が登場していない週も、いち視聴者として楽しませてもらって、気づいたらオンエアを観て自然に泣いていました(笑)。そんなふうに観るのと同時に、「キャストのみなさんは、どのように演じられるんだろう」といった楽しみもあって。そういう感覚は今までになかったかなと思っています。

ちなみに、他人のことを気づかい誰に対しても優しい咲太郎は、女性を誤解させてしまうというエピソードも先々に出てきますが、その辺りはどう感じていらっしゃいますか?

そこは自分なりにバランス良く演じようと思っていますので、朝から不快な思いはさせないように気をつけます(笑)。咲太郎の名誉のために言うと、そういうところだけじゃなくて、人として愛されるキャラクターにしたいなという気持ちがあります。人それぞれに愛情のカタチは違っていて、咲太郎の伝え方と接し方が、たまたま受け取る側からすると…いや、演じている僕も感じてはいるんですけど、「相手に快く思われる」ところを突きたいなと思っていて。今のところは、それができているんじゃないかなと(笑)。咲太郎のそういうところを、なつがツッコんでくれるというのもあるので、構図としては面白いですし、咲太郎に対するなつの当たりがどんどんキツくなってくるんですけど、そういったところも含めて、愛すべきダメなお兄ちゃん的なキャラクターにしていければと考えています。僕自身としては、女性を誤解させてしまうような振る舞いは良くないと思いますけど、演じる以上はそこも含めて楽しみたいですし、ちゃんと相手のことを考えるのが咲太郎という人でもあるので、観ていただくうちに人柄が伝わるんじゃないかな…と。

第29話より ©NHK
ステージに立ち、歌とタップダンスを披露する咲太郎。

そこを踏まえまして、咲太郎というキャラクターの演じ甲斐って、どこになるのでしょうか?

咲太郎の不器用でまっすぐな部分に関しては、突っ走れば突っ走るほど面白くなると思いますし、まっすぐストレートにやっていくほど周りが動いてくれるキャラクターでもあるので、自分だけじゃなくて相手のリアクションもふくめてお芝居を構築していけたらと考えていて。以前にも頑張るほどに空回りする役を演じたことがあって、経験として培ったものもあるので、そこはいい案配で出せればと思っています。

その大森さんの脚本について、木村隆文チーフディレクターいわく「読みやすさに油断していると、後々以前から伏線が張られていることに気づかされて、驚くことが多々ある」と。岡田さんもそういったことを感じたことはあるのでしょうか?

はい、すでにあります(笑)。でも、そこで「あ、あれはそういうことだったのか!」ってブレてしまうと支離滅裂になってしまうので、それこそ木村さんをはじめとする演出部の方々とお話をして、うまく擦り合わせていこうとは思っています。
ただ、「そこまで深く台本を読み込めていなかったな…」と反省はしました。とはいえ、先ほどもお話したように一瞬一瞬を生きているように演じている部分があるので、その時に自分が感じたことに対して後悔をしているわけではなくて。でも、こういう感覚って、ほかの現場では味わったことがなかったので、そこに朝ドラの面白さがあるのかなと思いますし、長期の撮影の中で関係性を構築できるからこそ表現できるお芝居も多々あって、きっと全部撮り切った時に「この現場にいることができて、よかったな」と思うんだろうなということが、何となく今から想像できたりもするんですよね。

岡田さんは同じように長きに渡って撮影する大河ドラマにも出演歴(『平清盛』の源頼朝役とナレーション)がありますが、感覚的に違ったりするものなのでしょうか?

いえ、撮影のスパンとしてはほぼ同じですし、同じ役を長く演じられることの面白さを大河ドラマでは知ることができたので、咲太郎という役をどうやって年齢とともに生きていくかという感覚は、すでに自分の中にあると思っています。
ただ、意外と落とし穴になるのが、相手役のキャラクターの年齢も咲太郎と同じくらいかなと思って喋っていたら、全然年上だったりする場合があるので、その設定はちゃんと把握しておかないといけないなって(笑)。でも、そういったところも含めて楽しめたらいいなと思っています。

第46話より ©NHK
なつが北海道の家を追い出されたと勘違いをし、川村屋にいるなつを訪ね「迎えに来た。」と咲太郎。

100作目の朝ドラということに対する意気込みは、あったりするのでしょうか?

そうですね…今までの朝ドラももちろん素敵な作品ですし、そのうえで『なつぞら』を盛り上げていきたいなという気持ちがありますし、ヒロインのなつを支えたいなと思います。みなさんの記憶に長く残る作品にしたいですし、咲太郎という役がたくさんの方に愛されるように演じたいですね。現場でも目標があって、みなさん「咲太郎さん」と呼んでくださるんですけど、撮影が終わるころには「咲(さい)ちゃん」と親しげに呼んでもらえようになりたいなと思っているんです。

あるいは、これを聞いてしまうとイメージが限定されかねないかもしれないんですが、咲太郎となつは、「男はつらいよ」の寅次郎とさくらの兄妹のような関係なんでしょうか?

それは言わないでください…。というのは、プレッシャーになってしまうので…。でも、実は最初のころに、イメージとして「寅さんと、さくらのような」と言われていて、「これは難しいリクエストだな…」と思ったんです。もちろん、応えられるようにがんばってはいるんですけど…。

変なことを聞いてしまって、すみません! では、『なつぞら・東京編』の見どころを最後にお願いします。

スタッフさんから「今後、こうなっていきます」っていう話を聞くんですけど、割りと急に言われることが多いんです。「咲太郎さんですけど、この後こうなりますよね?」と、僕が知っている前提で話してくださることがあるんですけど、「えっ! そうなんですか!?」と、おそらく視聴者のみなさんも同じようにリアクションすると思います。しかも、放送自体も長いドラマなので、いろいろなところで話が絡まっていきますし、自分の役がどうなっていくのかを敢えて聞かなかったところもあったぶん、驚くことも多くて。ただ、そういった中で、なつの成長していく姿は本当に素敵だなと思っているんです。大森さんの描かれるシナリオの温かさには朝から癒やされますし、勇気や元気をもらえる物語になっているんですけど、先々の設定を聞いてビックリしたことが何度もあるので、回を追うごとに予想外の展開になっていく部分も楽しんでいただければと思います。

2019年度前期
連続テレビ小説『なつぞら』

放送(全156回):
【総合】[月~土]午前8時~8時15分/午後0時45分~1時(再)
【BSプレミアム】
[月~土]午前7時30分~7時45分/午後11時30分~11時45分(再)
[土]午前9時30分~11時(1週間分)
【ダイジェスト放送】
「なつぞら一週間」(20分) 【総合】[日]午前11時~11時20分
「5分で『なつぞら』」 【総合】[日]午前5時45分~5時50分/午後5時55分~6時

作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人 /
岡田将生、吉沢 亮 /
安田 顕、音尾琢真 /
小林綾子、高畑淳子、草刈正雄 ほか

制作統括:磯 智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中 正、渡辺哲也、田中健二ほか

オフィシャルサイト
https://www.nhk.or.jp/natsuzora/
Twitter(@asadora_nhk)
Instagram(@natsuzora_nhk)

岡田将生

1989年生まれ、東京都出身。
主な出演作に、映画「悪人」、「銀魂」シリーズ、「そらのレストラン」、ドラマ「小さな巨人」、「ゆとりですがなにか」シリーズ、「大誘拐2018」など。NHKでは、大河ドラマ「平清盛」、「絆~走れ奇跡の子馬~」「昭和元禄落語心中」などに出演。2019年には、舞台「ハムレット」「ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~」が上演予定。

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