Interview

DENIMS 彼らは前作からの1年余りの間にバンドとしてどう深まり、その変化をどう新作に結実させたのか?

DENIMS 彼らは前作からの1年余りの間にバンドとしてどう深まり、その変化をどう新作に結実させたのか?

2017年12月にリリースした前作アルバム『DENIMS』がじわじわと支持を広げ、また地元・大阪を中心に着実にライブの動員を伸ばしている彼らが、2枚目のフルアルバム『makuake』を完成させた。黒人音楽をベースにしながらも、ロック・バンドとしての様々な表現を披露しているこの新作は、その名の通り、新しいステージの幕開けを飾るに相応しい1枚と言えそうだ。
ここでは、前作の反響と反省を踏まえて臨んだ新作の制作をメンバー4人に振り返ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 田中和彦


(前作が)出来た時はただ“出来たなあ”という感じで、どういう作品なのかということもよくわかってなかったような気がします。

前作の反応はいかがでしたか。

カマチュー(Vo、Gt) 思ってたよりも良かったですね。YouTubeがすごく回ったんです。「ゆるりゆらり」という曲のビデオが100万回以上回って、それでアルバムを聴いてくれた人もいたみたいで…。

「思ってたよりも」と言われましたが、それほどまでに聴かれるとは思っていなかったということでしょうか。

カマチュー そうですね。全く思ってなかったです。

おかゆ(Gt) けっこうバタバタとしてるなかで出来た作品だったし、正直バンド内もけっこうギスギスしたままで作ってたんで…。みんながみんな左隣のヤツに責任を転嫁していくような状況もあって、そこにはそれぞれの言い分があったわけですけど、それでもアルバムは作らなあかんし…、という状況のなかでみんなの精神状態があまり良くない感じやったんです。出来た時もただ“出来たなあ”という感じで、あんまり盛り上がる感じでもなかったし、あのアルバムがどういう作品なのかということもよくわかってなかったような気がします。でも、いい反応をいっぱいもらえたし、最近あらためて聴いたら、“いいアルバムではあったのかな”ということは思いました。

おかゆ(Gt)

客観的に聴いてみて、ということですか。

おかゆ そういうふうに聴けるようになったのは最近なんですけど、今回のレコーディングは楽しかったし、けっこう自信のあるものができたので、その精神状態で聴くと、“なかなかええんちゃうかな”って。

まっつんさんはどうですか。

まっつん(Ba) 最初に話がありましたけど、YouTubeがめちゃくちゃ回って、その曲を期待してライブに来てくれるお客さんがすごく増えたなということは感じました。「ゆるりゆらり」は、確かにめちゃくちゃ力を入れて作ったんですけど、それでもライブで“この曲を聴いてくれ”という気持ちであんまり演奏できてなかったので、もったいなかったですね。

アルバムは出したものの、聴き手が広がっていくことに対する心の準備がまだできていなかったんですね。

まっつん 全然できてなかったです。

もちろん、より多くの人に聴かれたり見られたりすることを望んで作品を発表するんだと思いますが、実際にそうなってみると、それはそれで大変なことがあるわけですね。

まっつん 本当に、そう思いますね。

えやま(Dr)

えやま(Dr) 今みんなの話を聞いてて蘇るのは、レコーディングに追われてたなあということで、“ちゃんと演奏しな”という気持ちがすごい強かったなと思いますね。今回は、曲を作ってる時も録ってる間もずっとワクワクしてたというか、単純に楽しかったんです。そこはかなり違うなと思いました。

今回レコーディングが始まる前に「ボヘミアン・ラプソディ」に刺激されてちょっと気持ちが入ったなというところもあるような気がしますね。

今作の制作にはどういうふうに入っていったんですか。

カマチュー 制作のスケジュールも全部、自分たちで決めてやってるんですけど、前作はライブもやるし、それぞれバイトしたりしてるなかで作り始めたんです。でも今回は、去年1年間にいろんなライブをやったりするなかで新しい曲のアイデアをいろいろ貯めていって、それで今年に入ったら、バイトも仕事も減らして、2ヶ月くらいアルバムの制作期間というのを設けたんです。

前作の経験から、そういう時期が必要だなと考えたんですね。

カマチュー そうなんです。今回はみんなでアルバムを作るということに向き合おうということで、まず2ヶ月ほど自分たちのスタジオでプリプロをやって、東京の下北沢HMCというスタジオで2週間レコーディングして完成させました。

音楽の内容に関して、あらかじめ考えたり、みんなで何か話したことはありますか。

カマチュー まず去年1年間にため込んでた曲のアイデアをプリプロで詰めていったんですけど、その時点でみんなの反応がすごく良い曲がいくつかあったんで…。曲ごとに、その時々でやりたかったことはあったと思うんですけど、それをみんなで詰めていって、自分たちなりに消化できたので、出来上がりはいろんな音楽が入ってるアルバムになりました。

つまり、みんなで「いい曲だ!」と盛り上がった曲をとにかくレコーディングしていこう、というのが基本的な考え方だったわけですね。

カマチュー そうですね。

えやま プリプロの段階では何十曲もあったんです。その中から、みんなが「いいな」というものをギュッと詰め込んだんで、そりゃいいよなって(笑)。

(笑)。アルバムとしてのまとまりみたいなことは考えましたか。

カマチュー そういうことはずっと考えてるんですけど、でも僕らは何でもやっちゃいがちというか、そういうところは昔からあるんです。ただ、“僕らがやったら、結局は僕らっぽくまとまりそうやな”という意識もあるから、だから何でもやっちゃおうと思ってたところもあると思います。

「僕らがやったら、結局は僕らっぽくまとまりそうやなという意識」は、最初からずっとあったことですか。

カマチュー 意識としてはずっとあったと思いますけど、でもやっぱり毎週自分たちのスタジオで合わせてますから、前やったら僕が持って行ったフレーズをさらにこねくり回して作り込むっていうこともけっこうあったのが、今はバンと合わせて一発目で100点!ということが増えてるんです。やっぱりバンドとしてどんどん練れていってるんやな、ということは感じてます。

まっつん(Ba)

それはやはり、ライブをたくさんやったり一緒に音を合わせる時間の積み重ねに因るものだと思いますか。

まっつん ひとつ思うのは、今回レコーディングが始まる前に「ボヘミアン・ラプソディ」に刺激されてちょっと気持ちが入ったなというところもあるような気がしますね。

「ボヘミアン・ラプソディ」は、4人で一緒に見に行ったんですか。

まっつん そうしようとしたんですけどスケジュールが合わなくて、それぞれ別々に行ったのにけっこう稲妻に打たれたような(笑)、そんな感じがあったと思います。

あの映画がみなさんを刺激したのは、バンドを続けていく上でのメンバー同士の精神的なつながりの重要性というようなことですか。

まっつん そう思います。演奏のひとつひとつのフレーズとか、そういうことは前に出来てたところもあるので、それでもこのアルバムがこういうふうに出来上がったのはそういう部分が大きいのかなという気がしますね。

おかゆ 今回はちゃんと制作期間を設けれたということも大きかったと思いますけど、多分みんなの中に“(前作の時のような)ああいう思いはしたくない”という気持ちもあったと思うんで。だから、今回はずっとみんながカマチューのことを気遣ったりして、それぞれが負担を分散しながらやれたと思います。

「夜にとけて」の歌を録った時には「ムッチャ、ええなあ!」って言ったんです。

前作は音楽的には原点回帰、つまりカマチューさんが本来好きだった黒人音楽を基調にしたグルーヴのある音楽をやろうという気持ちだったという話を前回のインタビューで聞きましたが、そういう意味での方向性というか制作の芯になったような気持ちが今回は何かあったでしょうか。

カマチュー ブラック・ミュージックを基本にして作ってはいるんですけど、でもいろんな国にブラック・ミュージックを消化して自分たちのアウトプットでやろうとしてる人がいろいろおったりしますよね。そういうものも昔から好きで聴いてて、そういうニュアンスは僕らも同じやなと思うんです。僕らも黒人じゃないですから。それでも、そういうグルーヴのあるものをがんばって作ろうとしてて、その上でアウトプットは「僕らはロック・バンドである」という出し方の、その塩梅みたいなものがオリジナリティにつながると思ってるんですけど、その「僕らなりのアウトプットはこういう感じやな」というものを今回はやりたかったんです。

カマチューさんが曲を作っていくなかで、今回のアルバムの柱になると感じた曲を1曲上げるとすればどの曲ですか。

カマチュー そういう曲が今回はたくさんあったんで、すごく気が楽やったんかなと思うんですけど…。でも、結局歌詞は大事し過ぎてギリギリまでかかったんですけど(笑)、2曲目の「Marching Band!!」、3曲目の「さよなら、おまちかね」、それから4曲目の「夜にとけて」は歌詞ができる前のプリプロの段階で“どれをリード曲にしようかな? 全部、ビデオにしたいな”というくらいの気持ちで作ってて。だから、質問の答えとしてはその3曲ですね。僕のなかで柱になるなと思ってたのは。

カマチュー(Vo、Gt)

まっつんさんは今回の制作を振り返って印象に残っているのは?

まっつん いまカマチューが言った3曲は、レコーディングしてる時に昔のベーシストを自分に憑依させるくらいの気持ちで表現できたかなと思ってて、そういう意味では思い入れが強いです。

えやまさんはいかがですか。

えやま プリプロでは僕が録音係をやってるんですけど、楽器が録れて歌を入れる段階になると、僕とカマチューと二人きりだったりするんです。カマチューが「こんな感じになったわ」とか言いながら歌って、僕が「ああ、ええんちゃう」って言う、みたいな感じでやってるんです。

わりと淡々とした感じなんですね。

えやま そうなんですけど、「夜にとけて」の歌を録った時には「ムッチャ、ええなあ!」って言ったんです。“この曲はほんまに大事にしよう”と思って、レコーディングも順番をいちばん最後にしてもらって、“全てを整えて100点のドラムを叩きたい”という気持ちがこもってますね。そうやって出来上がったこの曲を今、全国のクラブやライブハウスでDJをしてる人たちに無償で配布してるんです。そういうことをやりたいってカマチューが最初に言い出したんですよ。その時点ではtwitterで軽く募集するくらいのイメージやったんですけど、でも僕はもっと大々的に広めたいと思ったから、すぐにそのためのサイトを作ったり応募フォームを作ったりしたんですよね。

カマチュー 僕の最初のアイデアには抜け目がありまくってたんですけど、すごいしっかりした応募フォームを作ってくれました。それに、二人で歌を録ってる時に「めちゃめちゃ、ええやん」って褒めてくれたのが嬉しくて、それでもうその時点で、「これ、できたらDJにあげよう」って言ったんです。

(アルバム・タイトルは)とりあえず、ちょっとダサい感じがいいかなと思ってたんです。そういうニュアンスがあって、しかも前向きというか。

おかゆさんは今回の制作を振り返って印象に残っているのは?

おかゆ やっぱり「夜にとけて」はカマチューの歌詞が素晴らしいなあと思うんです。というか、歌の詞というよりも詩として素晴らしいなあと思うんですよね。それとギターの話をさせてもらえば、前作まではできるだけシンプルにということを意識してやってたんですけど、今回はほとんど指示がなかったせいもあって思うままにやったら、わりと弾き倒してて(笑)。“音数がめっちゃ多いギタリストなんやな”って、自分であらためて思いました。で、バンドをやってる先輩にこのアルバムを聴いてもらったら、「音もフレーズも、グレアム・コクソンみたいやった」と言ってくれて。それが一番うれしかったし、何も考えんとやったらそういう感じになったということはやっぱり僕っていうギタリストはそこなんやなって思いました。

「W.S.J.H」は、詞曲ともおかゆさんですね。

おかゆ あれは、家でひらめいて作って、“これはアルバムに入れたい”と思って提出したら、みんなに反対されて、でもゴリ押しして入れてもらいました(笑)。

カマチュー (笑)。結果、めっちゃ評判がええんですけどね。

おかゆ クレジットも何もない状態で聴いてもらっても、「あれ、おかゆが作ったやろ?」って、すぐバレるんですよね。

どうしてすぐわかってしまうんでしょう?

おかゆ どうしてなんでしょうね。僕としては、けっこう遊び感覚で作った曲なんですけど。

カマチュー おかゆが作ってくる曲は、もっと歌モノというか、メロディー重視でコード進行もどんどん変わっていくものが多いんですけど、この曲はDENIMSでやるということでループものというか、こういうシンプルなのを作ってきてくれたんかなと思って、僕は新鮮やったです。

「Rocinante」は、歌詞がおかゆさんで曲はカマチューさん、という分業になっています。

おかゆ あの歌詞は一瞬で書けました。

あらかじめ書きたいことがあったんですか。

おかゆ そういうわけでもないんですけど、童話っぽい世界観というか、難しい言葉は無しで言葉数も少なく、でもジーンとする、みたいな歌詞を一度やってみたかったんです。その感じがあの曲の雰囲気に合うなと思って。

♪世界はお前の手の平の中♪というフレーズは、自分たち自身に向けたフレーズのように思えました。

おかゆ それは、あるかもしれないですね。(タイトルの)ロシナンテというのはドン・キホーテが乗ってる馬の名前で、いわゆる駄馬なんですけど、ここでは走られへんフリをしてるという設定にして、「やったらできるんやから、やろうぜ」っていう。自分らに向かって言ってるっぽいですね。

カマチューさんが書いた「さよなら、おまちかね」の歌詞には♪新しい私♪という表現も出てきます。別の人間が二人とも前向きな、未来が開けているイメージを歌詞にしているということは、そのイメージがバンドの今の共通した気分ということなんじゃないですか。

カマチュー 確かに、今はみんなすごく前向きですよ。

『makuake』というアルバム・タイトルはどのタイミングで決めたんですか。

カマチュー いちばん最後ですね。

ローマ字表記ではありますが、言葉としてはすごくストレートで、それこそ前向きなイメージが広がるタイトルですね。

カマチュー そうですね。とりあえず、ちょっとダサい感じがいいかなと思ってたんです。どうしてもカッコつけきれないというか、そういう感じが僕らっぽいと思うんですけど、そういうニュアンスがあって、しかも前向きというか。「元気一杯やっていくぞ!」というニュアンスではないんですよ。むしろ感傷的というか、もっと言えば闇の部分みたいなところもあるからこそ次に行けるっていう。そういうイメージですね。

このアルバムがリリースされると全国ツアーが控えていますが、その後の活動については現時点ではどんなふうに考えていますか。

カマチュー 来年にはもう一つ上のレベルに行きたいなと思ってて…。前は、フワッと次のことを考えるくらいやったんですけど、最近は「次の予定」「その次の次の予定」と考えていって、“来年のこの時期にはこれをしたい!”というふうに考えていけるようになってきましたね。

ちなみに、前回同じような質問をしたら「ずっと音楽が続けていけたらいいな」と話されていましたが、考え方がちょっと変わってきたんでしょうか。

カマチュー “ずっと続けていけたらいいな”と思ってるだけのヤツは続けていけないということはわかってきました(笑)。続けていけるのかもしれないですけど、それにしても認められなかったらスネたりとか、良くない感じになっていくと思うんです。もちろん、音楽の力をいちばん信じているし、良い音楽を作ればより認められると思って音楽をもっと成長させていきたいと思っていますけれども、それをできるだけ多くの人に聴いてもらうためには、もっとテンポよく活動していかなあかんと思うし、もっと上を目指すということが続けていくモチベーションにもなるんだろうなと今は思っています。

先ずは、ツアーを楽しみにしています。ありがとうございました。

その他のDENIMSの作品はこちらへ。

ライブ情報

“makuake”リリース・ツアー

6月22日(土)熊本・熊本Django   w/MONO NO AWARE
6月23日(日)宮崎・宮崎SR BOX   w/MONO NO AWARE
6月26日(水)北海道・札幌COLONY   w/The Cynical Store
6月30日(日)香川・高松TOONICE   w/ナードマグネット
7月12日(金)宮城・仙台enn 3 rd   w/おとぎ話
7月13日(土)千葉・千葉LOOK   w/おとぎ話
7月21日(日)広島・広島4.14   w/ドミコ
8月1日(木))愛知・名古屋TOKUZO *ワンマン
8月2日(金)東京・代官山UNIT *ワンマン
8月12日(月・祝)福岡・福岡INSA *ワンマン
8月18日(日)大阪・梅田TRAD *ワンマン

DENIMS

カマチュー(Vo、Gt)、おかゆ(Gt)、まっつん(Ba)、えやま(Dr)。
2012年結成、大阪・堺出身の4人組バンド。2015年に自主レーベル“OSAMIstudio.”から初の全国流通盤となる1st ミニアルバム『Daily use』をリリース。2016年に2ndミニアルバム『iggy&pops』をリリースし、ツアー・ファイナルである東心斎橋CONPASSで行われた初ワンマンはソールドアウトを記録。同年、FUJI ROCK FESTIVAL’16にも出演を果たした。2017年、1stフルアルバム『DENIMS』をリリース。年明けには東名阪福という4都市のワンマン・ツアーを行い、全公演ともソールドアウトした。

オフィシャルサイト
http://denim-s.jp

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