Interview

Tempalay 彼らは、時代の変わり目に届ける新作にどんな思いを込めたのか?

Tempalay 彼らは、時代の変わり目に届ける新作にどんな思いを込めたのか?

約2年ぶりのフルアルバム『21世紀より愛をこめて』が完成した。平成の最後に制作し、令和が始まってすぐにリリースするというタイミングで生まれたこの新作は、ノスタルジックな味わいと未来的な肌触りを、まさしく今のグルーヴでロマンチックに表現した意欲作だ。
ここでは、メンバー3人にその制作を振り返ってもらうとともに、そこに込めたメッセージや聴きどころを語ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 鈴木圭


なんとなく騒がれている感じが伝わってくるのは不思議な感じもありますね。

今回の新作は、フルアルバムとしては約2年ぶりですが、前作のミニアルバム『なんて素晴らしき世界』からは8ヶ月ほどのインターバルで、何曲か収録曲も重なっています。前作から続いている流れがあるんでしょうか。それとも、やはりこの新作として独立したきっかけがあったんでしょうか。

小原綾斗(Vo,Gt) 作り始めるきっかけですか? それは、レコード会社から「出せ」と言われたからです(笑)。というのは冗談ですけど、でもスタッフは戦略みたいなことも考えてたみたいです。

つまり、Tempalayを取り巻く状況がどんどん良くなっているから、このタイミングで新作を発表するのがいい、という意見があったということですか。

小原 そういうことですね。

小原綾斗(Vo,Gt)

メンバーの皆さんのなかにはそういう感覚はないですか。

小原 どうでしょう…。前作が思っていたよりは周りで騒がれたなという感じはありましたけど…。確かに、少しずつ環境の変化は感じています。

その変化の内容に関して、自分たちがカッコいいと感じているところがちゃんと伝わっている感触はありますか。

小原 そこについてはあまり気にしていないというか、わかってないところもあると思いますけど…。やっぱり、BTSから入ったという人も少なからずいるだろうし。でも、何れにしてもそんなに話題になるとは思っていなかったので、なんとなく騒がれている感じが伝わってくるのは不思議な感じもありますね。

藤本さんとAAAMYYYさんは、前作およびその後のツアーに対する反応に関して、何か印象に残っていることはありますか。

藤本夏樹(Ds) あまり憶えてないというか…、作品の解釈は人それぞれなので、僕としては「こういう反応だからこうしよう」みたいなことは全くないんです。ただ、単純に聴いてくれる人は増えているので、“こういうところが気に入るんだ”とか、いろんな発見はもちろんありますけどね。

AAAMYYY(Cho,Syn)

AAAMYYY(Cho,Syn) 私も同じですけど、確かに聴いてくれている人が増えている感じはありますね。

おどろおどろしいものの、おどろおどろしい美しさみたいなことを中心に考えて作っていきました。

今回の制作はどういうふうに始まったんですか。

小原 去年12月の初めにツアーが終わって、1月の終わりにレコーディングしましょうという話が出てきたんです。そこから実質1ヶ月くらいですけど、がんばって作りました。

そういう時間的な締め切りが決まっている状況で作品を作るということは以前にもありましたか。

小原 もちろん、いつも締め切りはあるんですけど、たくさん時間をもらっても結局ギリギリまで何もやらないので、今回も状況はいつもと同じでした(笑)。むしろ、今回くらい最初からタイトなほうが良かったかもしれないですね。

とすると、アルバムとしての構想みたいなことは考えずに制作に入っていったんですか。

小原 いや、構想はありましたよ。テーマとか作品のカラーみたいなことはある程度先に決めて作り始めました。

そういう作り方にしたのは、何か考えがあったんですか。

小原 フルアルバムは3枚目ということもあるし、しっかりした幹となるものがないと美しくならないなというか、雑多なものにしてはいけないという責任感みたいな感覚もあって。今の自分たちの状況はもうそういうふうになってきたかなと思って、ある程度、しっかりとした作品を作らないといけないなと思ったということですね。

「しっかりした幹となるもの」とは、どういうことを考えたんですか。

小原 テーマとは別にカラーみたいなことで言うと、気持ち悪いものとか違和感のあるもの、不快感のあるもの、一見そういうふうに見えるものの裏側の美しさというか、例えば「ルイス・フューレイの音と久石讓を足したら、こんなふうになります」みたいな形で、おどろおどろしいものの、おどろおどろしい美しさみたいなことを中心に考えて作っていきました。

藤本夏樹(Ds)

藤本さんとAAAMYYYにもそういう話はしましたか。

小原 それは、言ったと思うんですけど…。

藤本 どうだろ? でも合宿で、ルイス・フューレイとか聴いてたね。ただ、それは綾斗がずっと言ってることでもあるんですけどね。「おどろおどろしいものの美しさ」とか「冷たいけど温かいもの」とか、そういう逆説的な表現というのはTempalayのなかにはずっとある要素だから。

とすると、今回の曲として小原さんが出してくるものがそういう要素によりフォーカスした感じというのはありましたか。

藤本 どうだったかなあ…。逆に、曲としては、今回の曲がいつもと違うなあというようなことではなくて、いつもどれもが違う感じですからね。その時点ではまだ歌詞も乗ってないし…。

AAAMYYY 今回はデモの時点ですごく展開の多い曲がたくさんあったので、大変だなあとは思ってたんですけど(笑)。でも、「こういう感じがいいんだよね」ということで、先にプレイリストをもらっていて、その感じは意識したし、前作の時にいろんなインタビューで答えてるのを聞いてて、綾斗の感覚も夏樹の感覚もよりわかってきた感じがあったから、そういう意味でも今回は面白かったですけどね。

デモの段階で“展開が多いな”と感じたのは、どれですか。

AAAMYYY 「のめりこめ、震えろ。」「そなちね」「人造インゲン」ですね。「Queen」とか「美しい」は、みんなでセッションしていくなかで、どんどん展開が増えていったんですけど。

「のめりこめ、震えろ。」「そなちね」「人造インゲン」は展開が多いと感じたという感想が出ましたが、デモを作った本人は意識したことですか。

小原 減ったほうやと思うんですけどね(笑)。

藤本 展開が多いと言うより、展開による景色の変わり方が半端ないんですよね。

AAAMYYY そうそうそう! 違う曲みたいなんだよね(笑)。

藤本 しかも、“気持ち悪くしちゃえ”という気持ちが綾斗のなかにはあるし、ベースのケンシロウくんもけっこう気持ち悪いプレイができたりする人なので、どんどん気持ち悪いことをしていこうと思ってやっていって、すごいカオスになるっていう(笑)。みんなでセッションすることでより複雑化させちゃってるかも、というところはあると思います。

そうなった場合に、どういうふうに着地させるんですか。

藤本 それは、ちゃんと綾斗が大きな景色が見えてて、あまりにカオス過ぎたら「それは、ちょっと違う」って言いますから。だから僕らとしては、綾斗のイメージを超えるくらいの発想をとにかくどんどん出していく、ということになるんです。

小原 それはでも、お互いにそういうところがあって、俺はもっと行きたいんだけど、「それはやり過ぎじゃない?」というラインをそれぞれが持っていて、そのラインの引っ張り合いのなかで曲の中心を探していく、みたいなプロセスがよくありますね。

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