Interview

EASTOKLAB 彼らは自分たちの今の個性をどう捉え、それをどんなふうに音楽化すればいいと考えたのか?

EASTOKLAB 彼らは自分たちの今の個性をどう捉え、それをどんなふうに音楽化すればいいと考えたのか?

名古屋を拠点に活動を展開している4人組だ。昨年11月に前任ギタリストに代わって、西尾大祐が加入。新体制で作り上げた6曲入りミニアルバム『EASTOKLAB』は、抑制された音使いで空間的な広がりを感じさせるサウンドとミニマルな歌詞による独特の世界を展開して、聴く者の意識を遠くに運んでいく。
ここでは、その独自な音楽がどんなふうに生み出されていくのか、新作の制作を振り返ってもらいながらメンバー4人に語ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 西槇太一


僕らの意識として、一番前にあるものはあくまで歌ということがまずあります。

まずはバンドの成り立ちからお聞きしたいんですが、日置さんが始めたバンドという理解でいいですか。

日置逸人(Vo,Syn,Gt) そうですね。僕が中心になって始めたバンドで、一度改名はあったんですけど、ドラムの田保くんとはずっと一緒にやってます。

改名や人の入れ替わりを経て、音楽の内容については最初に始めた時のイメージから何か変化はありますか。

日置 ちょっとずつ変化はしてると思うんですけど、根底にあるものは一切変わっていないと思います。

その「根底にあるもの」は言葉にするとどんなイメージですか。

日置 最初は漠然とですけど、美しいものを作りたいというイメージがあって、ただ音楽的には海外の音楽も好きなので、UK/USのバンドの音にフォーカスした音楽をやりたいなということは田保くんとも一致した気持ちだったかなと思います。

日置逸人(Vo,Syn,Gt)

今は話したくれたようなことを、田保さんとの間で実際に言葉にしてやり取りするような場面はあったんですか。

田保友規(Dr) とりあえず好きなバンドが一致することは多かったので、一緒にやっていく上でそういう好きなバンドの音楽を参考にしてやっていくということは最初の頃から話していたと思います。

岡さんが加入する時点では、どういう音楽をやっている印象だったですか。

岡大樹(Ba,Syn) 当時は、今の感じよりももう少しわかりやすいものだった印象はあります。今がわかりにくいということではないんですけど、今と比べるとずいぶんシンプルでわかりやすい感じだったなあとは思います。ただ、さっき言ってたみたいに根底にあるものは変わってないというのは今やっててすごく感じます。無駄な音は入れないという感覚は、入る前に聴いていた音楽から今に至るまでずっと繋がってるように思います。

以前はもう少しわかりやすい感じだったというお話ですが、その「わかりやすい感じ」というのは、今ほど抽象度が高くなかったということでしょうか。

日置 確かに、以前よりも抽象度は増したと思います。以前はもっとシンプルに、例えば具体的な景色が見えるものをやれるといいなという感覚でやってたんですけど、今はもう少し内面的な部分にフォーカスして作っているので、その結果として抽象的というか、人によって受け取る幅が広がったかなという気がしています。

以前よりも内面的な部分によりフォーカスして音楽を作るようになってきたのは、日置さんの興味がそちらに向いてきたということですか。

日置 自分の興味というよりは物事の捉え方が変わってきて、一つ一つについて考える時間が増えたりすることによって、自分が作る音楽でもそういう部分が占める割合が自然と増えてきたのかなと思います。

楽曲の抽象度ということで言えば、歌詞の扱いも関係してくると思いますが、そもそも自分たちの音楽に歌詞を乗せることの不自由や面倒を感じることはないですか。

日置 僕らの意識として、一番前にあるものはあくまで歌ということがまずあります。歌も楽器であるとは思っているんですが、それでも聴いている人の心をグッと掴むような表現ができるのはやはり言葉であり歌であることが多いと思うので。ただ、それもそこにこだわっているわけではなくて、歌が必要ないと思ったらそういう曲を作るかもしれません。とりあえず現段階では、言葉があって歌があって、それで曲が成り立っていると思っています。

音を減らすということにこだわりを持っているわけではないんです。絶対に必要な音だけがあるという音楽が美しいと思っているということですね。

西尾さんが入る時点で、このバンドが鳴らしていた音楽の印象はどういう感じだったですか。

西尾大祐(Gt) 生の楽器を、生じゃないようなニュアンスで鳴らしている感じがしてて、しかも普通のロック・バンドよりももっと空間的な広がりがある音楽だし、整理されたきれいな音楽だなと思っていました。

西尾大祐(Gt)

加入する際には、どういうふうに誘われたんですか。

西尾 僕がちょうど大学を卒業する年で、就活もいろいろやってたんですけど、でも僕自身が何をやりたいのかわからなくて…。当時は別のバンドをやってて、彼(日置)にレコーディングをやってもらってる時に「自分たちのバンドのギターが抜けるから一緒にやらない?」って声をかけてもらって、これはやるしかないと思って。

「何をやりたいのかわからない」と感じていた気持ちが、声をかけられたことでしっかり音楽に焦点を定められたということでしょうか。

西尾 普通に就職して、働いて、死ぬという人生は嫌だなと思っていたので、1回しかない人生だし何か人とは違うことをしたいというか、普通が嫌だったんですよね。

逆に、日置さんが西尾さんに声をかけたのはどうしてですか。

日置 僕は元々は面識があるというくらいの知り合いで、でも岡くんと西尾くんは大学の同じサークルでやってたりして普通に仲が良かったんです。それで、彼も言ったように、彼のバンドのレコーディングを僕がエンジニアとしてやってて、それがちょうどギターが抜ける時期で、残りの3人で曲を作ったりしてた時期だったんですけど、単純に彼がギターを弾いてる姿を見てかっこいいなと思ったし…。何よりも、彼と「これからどうするの?」みたいなことを話してたら、何も決まってなくて燻ってる感じだったんです。そういう燻ってる人間を僕は魅力的に感じたりするので、それで「とりあえず1回、スタジオ入ってみようか」と声をかけたら、本人はすぐに「やりたい」と言ってきたので、タイミング的にもすごく運命的だった感じはします。

西尾さんは「普通のロック・バンドよりも空間的な広がりがある」と言われましたが、ギターに注目すると「普通のロック・バンド」よりも控えめな位置にある曲が多いように感じます。このバンドでのギターの役割について何か意識していることはありますか。

日置 曲全体の色を塗る感じですかね。ベースとドラムが背景としてあって、そこにギターとシンセで色をつけて、歌はそういう場にいる人を表してるっていう。ニュアンスとしてはそういう感じですね。

ギターとシンセが曲の色を決定する役割だとして、そこでさっき岡さんが言った「無駄な音は入れないという感覚は変わってない」という話と合わせてEASTOKLABの楽曲を1枚の絵と考えた時に、全面に色を塗り込まないというのが一つ個性になっているように感じます。その「無駄な音を入れないという感覚」はどういう気持ちから出てきているんですか。

日置 それは無駄な音を使わないというふうにも言えますが、逆に言えば今入っている音で足りていて、これ以上は必要ないという判断なんですよね。もし足りていないと思えばもっと音を足していくでしょうし、音を減らすということにこだわりを持っているわけではないんです。そこにあって然るべき音しか入れなくていいというか、絶対に必要な音だけがあるという音楽が美しいと思っているということですね。

ちなみに、EASTOKLABというバンド名はどういう気持ちでつけた名前ですか。

日置 まず“LAB”という単語を最後に入れたいと思ったんです。で、“OK”という単語も入れたい、と。でも“OKLAB”だと何かちょっと足りない。それでいっぱい単語を書き出して、そのなかから“EASTOKLAB”が良くない?って感じで、あまり意味はないです。

 最初に、バンド名にも抽象的な感じは持たせたいなという話はあったんです。

日置 何かの固有名詞を使ったりして、バンド名に意味を持たせたくないという気持ちはありましたね。

音数の抑制的な感じが東洋的な感覚に通じているところがあるのかなと想像したりもしていたんですが、とりあえず“EAST”に意味はないんですね(笑)。

日置 (笑)、そうですね。むしろ、当時はバンド名に意味を持たせないことが僕らにとっての意味だったのかもしれないですが。

(新作は)今の自分たちのなかに完成しているイメージを早く出したいと思ったんです。

新しいバンド名のもとで新しい音楽づくりが始まっていったんだと思いますが、今回の作品の制作の始まりということでいうと、いつ頃どんなふうに始まったんですか。

日置 去年の4月に自分たちで作ったCDを出したんです。そこから今回のミニアルバムにも2曲再収録されているんですが、そのCDを出した後に今回のミニアルバムの話が決まりました。ここでは、自分たちの強みというか、自分たちが思う、自分たちのカッコいい部分を6曲くらいのサイズに全部収めたいなと思って、そのことを中心に考えながら内容を練っていった感じです。

「6曲くらいのサイズに収めたい」と言われましたが、結果的には6曲入りのミニアルバムという形になりました。このサイズ感や形は当初から考えていたことですか。

日置 そうですね。それくらいが今の自分たちのカッコいい部分を収めるには必要十分なサイズだと思ったし、それに今自分たちがやっていることを時間をかけて煮詰めるようなやり方ではなく、勢いまで含め、さっと作ってしまいたいという気持ちはあったと思います。

「さっと作ってしまいたい」という気持ちだったのはどうしてでしょう。

日置 とにかくいろんな人に今の自分たちを早く知ってほしいと思ったし、今の自分たちが仕上がっている感覚もあったので、この今の自分たちを見せたいということですね。作るたびに、僕らの気持ちや作るものは変わっていくので、今の自分たちのなかに完成しているイメージを早く出したいと思ったんです。

岡大樹(Ba,Syn)

岡さんは今回の制作を振り返って、印象に残っている場面や曲を一つあげてみてください。

 4曲目の「Always」という曲は特に気に入ってて、この曲は音の出るところと引くところの差が聴きどころであって、僕自身もカッコいいなあと思うところで、特にAメロはいい意味での余白が目立つ曲だと思うんです。それがカッコよくて、余白をうまく使えたなと思うし、だからサビはガンと音が出て、そこでレンジの広さや立体感をうまく表現できた曲だと思います。

西尾さんが今回の制作を振り返って印象に残っているのは?

西尾 2曲目の「In Boredom」という曲は前のEPにも入っていた曲で、“この曲、すごくカッコいいな”と思って聴いてたんです。“それを自分が演奏することになるとは!?”っていうことなんですけど、この曲はすごく洗練されてて、始まり方もすごくアンセム感というか、前に進んでいくという感じが強くあって好きなんですよね。

「In Boredom」が一番わかりやすいですが、音数と同様、言葉の量もEASTOKLABの音楽は少ないですよね。それは何か意識していることがあるんでしょうか。

日置 それも意図的に少なくしようという気持ちがあるわけではなくて、だから今後は1番も2番も3番も全部歌詞が違う曲を作るようになっていくかもしれないし、それはわからないですが、今回の作品についてはさっきの音数の話と同じようにそこにあることが必然的だと思える言葉だけで成立させるということは意識していたように思います。それから、出来上がった曲に対して何日も歌詞を考えて“いい言葉が浮かばないなあ”みたいな作り方じゃなくて、短い時間でスパッと書き上げたものを大事にしたいという気持ちもあったと思います。

例えば♪身体はもうStop♪というフレーズが何度か繰り返されますが、聴く側は同じ歌詞でも一度目と二度目では違う印象を持つわけで、そういう効果も意識しているのかなと思います。ただ、だからこそその違う印象を違う言葉で言い表したくなったりはしなかったですか。

日置 この曲については「In Boredom」というタイトルでも表しているように、いい意味での退屈さというか、退屈さを美しく表現したいなという気持ちもあって、だから音も基本的にループなんですが、歌詞も同じように何度もループさせるという狙いで作りました。

音を高く広く飛ばすという感覚はこの作品を作っている時からずっと大切にしていて、ライブでもはっきり意識していると思います。

田保さんが今回の制作を振り返って印象に残っているのは?

田保 この曲が特に印象に残っているということはないんですけど、曲を作るときにリズムについてはいつも曲ごとにそれぞれ違うフレーズでやりたいという気持ちが自分のなかにはあって、それが今回の6曲については全部いい感じでできたなというのがまずあります。

ドラムの構成は曲作りのどの段階で考えるんですか

田保 曲はみんなで音を合わせながら作っていくんです。その時には、歌もテキトーな感じで乗ってるんですが、歌があるところにドラムは被せられないから、それは避けたり、音数が少ないという話がありましたけど、今回だったら特徴的な音のパッドを使ったりして、少ない音数でも成り立つような形でうまくやれたなと思っています。

田保友規(Dr)

日置さんはどうですか。

日置 制作の段階では、西尾くんが新しく入ったことで僕ら3人にもいい影響がいっぱいあって、それありきでこの作品ができたのかなという感じがすごくあります。4分の1が代わるというのはすごく大きいことだし、新しいギタリストが入ってギターの表現の仕方が今までとは変わっていくなかで、その変化をすごくいいなと思う場面がたくさんあって、それを生かしたいと思う場面もたくさんあったので、それによって自分たちの新しい可能性が見えたかなと思っています。

その“西尾効果”がよく表れているのは、例えばどの曲ですか。

日置 5曲目の「New Sunrise」という曲は去年のEPからの再録なんですが、西尾くんが弾くギターはすごく人間的というか、音にちゃんと意思があるんですよね。弾いてるフレーズやアレンジについては前と全く変わっていないんですが、全然聞こえ方が違うんですよね。演奏する人間が代わると、こんなに曲の表情や色が変わるんだなということを僕らも再認識した曲ですね。

出来上がったミニアルバムを誰かに渡す時に、ひと言言い添えるとしたら、どんなことを言いますか。

田保 聴いたことないような音楽だと思うけど、とは言うかもしれないですね。

 面白いと思うよ、と言うんじゃないでしょうか。面白いことをやっていると自分では思っているので。

西尾 今、聴いといたほうがいいと思うよ、ってことですかね(笑)。

(笑)、確かに、来年にはもう手の届かない感じのビッグネームになっているかもしれないですからね。ちなみに、来年の今頃にはどうなっていたいですか。

日置 この作品は今の自分たちにとって最高のものが作れたと思っているんですね。ただ、それをこれからも突き詰めていくというのではなくて、このバンドの良さを損なわないまま自然に変わっていきたいなと思いますね。

最後に、EASTOKLABが今ライブに臨む際に意識していることは何かありますか。

日置 音を前に飛ばすということはすごく意識しているかなと思います。スピーカーから音を出すと言うより、遠くまで飛ばすっていう。そういう感覚は、この作品を作っている時からずっと大切にしていて、音を高く広く飛ばすということはライブでもはっきり意識していると思います。

ライブも楽しみです。ありがとうございました。

ライブ情報

“EASTOKLAB Release Tour 2019”

8月2日(金) 愛知・名古屋HUCKFINN    w/polly,my young animal
8月3日(土) 京都・京都GROWLY   w/ROTH BART BARON,SIRMO STAD
8月6日(木) 東京・下北沢Club Que   w/polly,STEPHENSMITH

EASTOKLAB

日置逸人(Vo/Syn/Gt)、西尾大祐(Gt)、岡大樹(Ba/Syn)、田保友規(Dr)。
名古屋を拠点に活動。エレクトロ、シューゲイズ、ドリームポップ、ミニマルミュージック、ベースミュージック、オルタネイティブ、ロックなど、さまざまなアレンジの手法を持ちジャンルを飛び越えたサウンドを鳴らす期待のニューカマー。メロディに寄り添う流麗なボーカルとファルセットの美しさで独時の世界観を提示。軽やかなリズム、浮遊感溢れるギターとシンセサイザーは壮大なサウンドスケープを描く。ライブでは多数の機材をコントロールしながらも、同期系機材やループシステムを一切排除した人力ならではアプローチを追求している。
結成当初にリリースした会場限定カセットテープは完売。現在まで2枚の自主制作盤をリリース。ライブ会場の他、「FLAKE RECORDS」「FILE-UNDER」「HOLIDAY! RECORDS」「diskunion」「タワーレコード名古屋パルコ店(タワクルで展開)」「HMV record shop 新宿ALTA」「アンダースコアレコーズ」「indiesmusic」「The Domestic」「LIKE A FOOL RECORDS」など、多数の店舗で取り扱いされ、話題を呼んでいる。2019年6月5日、DAIZAWA RECORDS / UK.PROJECTよりミニアルバム『EASTOKLAB』をリリースする。

オフィシャルサイト
https://eastoklab.tumblr.com

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