Interview

Superfly “新しいSuperfly”を強く印象付ける新作。その制作について訊く。

Superfly “新しいSuperfly”を強く印象付ける新作。その制作について訊く。

Superflyが6月12日に25thシングル「Ambitious」をリリースする。このシングルには色合いの全く異なる3曲を収録。展開のダイナミックさに昂揚感が伴うメロディと美しいストリングスが感情の動きを鮮やかに印象付けているポップソング「Ambitious」、ハードで荒々しいロックサウンドが鳴り響くなかで呪文のような言葉が繰り返される「覚醒」、物語の先に希望が見えてくるロッカ・バラッド「氷に閉じこめて」。どれも志帆が作詞作曲を手掛けてサウンド面にも自身のアイデアを反映させた曲であり、“新しいSuperfly”を強く印象付けるものだ。志帆に話を聞いた。

取材・文 / 内本順一


私であることがどの曲にも色濃く出ている気がします

今年に入ってからは制作が続いている感じですか?

そうですね。よく作ってます。もう今年になって何曲作っただろう……。私にしたら超ハイペース。

制作は楽しめてます?

楽しいですよ。生みの苦しみもあるけど、けっこう昔と作り方が変わったので。自分の頭のなかに鳴っている音を、いざ形にするときにどういうふうにすればいいのかってところが大変ですね。アイデアはどんどん出てくるんですよ。面白いほど出てくる。ただ、それを形にするためにプロデューサーの人にどう伝えればいいのかっていうのが、私の経験の浅さゆえ、なかなか難しくて。1曲1曲、(プロデューサーとの)キャッチボールを前より長く重ねながら作ってます。で、そうやって作って、頭のなかで鳴ってたものがちゃんと形になると、「よし、これでよかったんだ!」って納得できる。答え合わせをしてるようなところがあって、それが面白いですね。

ニューシングルの3曲もそんなふうに作った。

はい。だから、私であることがどの曲にも色濃く出ている気がします。ほかの誰かが見た景色を描いていても、それは結果的に私の心のなかだったり。誰かに憑依しながら歌詞を書いているみたいなのが、最近は多い。憑依して書くことを楽しんでます。

なるほど。

それとあと、アレンジも作曲なんだなっていうことを最近はすごく思っていて。最近は作曲しながら同時に頭のなかで音が鳴っていて、デモの段階でそのイメージを投影させている。アレンジを考えながら作るようになったんです。例えばドラムの音ひとつにしても、ここでフィルインするのが当たり前だからそうするとか、そういう常識みたいなことに捉われないようにして、なんでここにこういうドラムの音が必要なのかをもう一度考えてみる。その音が存在する意味をひとつひとつ考えて作るやり方をしてますね。だからそういう意味で前より時間はかかるんですけど。

アレンジ含めての完成形のイメージが頭にあって、試行錯誤しながらそこに寄せていく作り方をするようになった。

そう。経験の浅さゆえになかなか難しいけど、そこらへんが面白くなってきたという今日この頃なんです。今は制作がとても楽しい。完全にそういうモードですね。

最近は誰かを優しく応援するような曲を求められることが多くなりましたね

ではそんなモードで作ったニューシングル「Ambitious」の話を。まず表題曲の「Ambitious」。TVドラマ『わたし、定時で帰ります。』の主題歌ですが、ドラマのプロデューサー側から要望があって曲を書いたんですか?

はい。疾走感というか、昂揚感のあるものを、ということで。あと、一生懸命生きる人たちが前向きな気持ちになれる応援歌を作ってほしいというオファーをいただきまして。以前のSuperflyはパワフルな曲を求められることが多かったけど、最近は誰かを優しく応援するような曲を求められることが多くなりましたね。「Gifts」もそうでしたけど、パワフルさよりも包容力みたいなものを求められるようになったのかな。前はなかったことなので、引いて見ると、そういう変化は面白い。ありきたりな応援歌ではなく、自分らしさをそこでいかに出すかを考えながら作りました。それって難しいんですけどね。

ですよね。だって応援歌ほど一歩間違えたら嘘っぽくなるものはないですからね。リアリティのない応援歌ほどダサイものはないわけで。

そうなんですよ。ある意味、一番危険というか。少しでも嘘があったら絶対に成立しないですからね。それに一緒に怒ってあげるのも応援だし、優しい言葉をかけるのも応援だし、応援にもいろいろある。ストレートに言うのがいいのか、遠回しに言うのがいいのか、とか。初めはそのへんを考えすぎちゃって、ちょっと大変でしたけど。

ドラマの脚本をじっくり読んで、その落としどころを考えた。

脚本と、あと原作の小説も読んで。でも、そこにも結論はないわけですよ。いろんな考えの多様性を問うみたいな小説なので。定時に帰ることをモットーにして働いている主人公が上司や同僚たちの間で奮闘するさまを描いたお話なんですけど、働き方についてはやっぱりいろんな人の見方や考え方があるわけで、何が正しいと一概には言えないんですよね。単純に“一生懸命働くのは最高!”とは言い辛いし、かといって“ラクに生きればいいんじゃない?”とも言い辛い。世代によっても考え方は違うでしょうし。

そうですね。

それに私自身が会社勤めをしてきた人間ではないので、無責任なことを言いたくないというのもあって。初めはどこにフォーカスして歌詞を書くべきか悩みましたね。勝手に想像して書くのはよくないし、それはドラマにとってもよくない。なので、ちゃんと自分のリアルを入れて書かなきゃと。で、私なりに“働くということ”について改めて考えたり、スタッフと話したりするなかで、ふと“夢”や“憧れ”について考えてみたんですね。今は夢や憧れを持てないでいる若い人が多くなったと聞きます。若い人たちが、こういう仕事に就きたいという目標を持ち辛くなっている。それは社会全体のムードがそうさせているところも大きいと思うんですけど。

確かに。

でも、本来、夢とか目標って、「持て!」って言われて持つものではないじゃないですか。「あなたの夢は何?」「目標は何?」って迫られると、それがハッキリしてない人はかえってプレッシャーに押しつぶされてしまう。あと、夢は仕事と結びついてなきゃいけないの?っていうのもあって。なんか小学校の先生とかって、よく「あなたは将来、何になりたいですか?」って訊くじゃないですか。

たとえ今、自分に自信が持てなくても、夢や憧れを持つことができなくても、長い人生のなかでいつでもそれを見つけられるチャンスはあるんじゃないかって

ああ、僕も最近そのことに疑問を呈している本を読んだんですよ。子供に対して「将来、何になりたいか」を訊いて答えさせるのは、むしろ夢や職業の選択肢を狭めることになると。成長していろいろ経験するなかで考えていけばいいものを、そうやって子供の頃に答えさせるのは可能性を摘み取ることにもなりかねない、それは間違った教育なんじゃないかと。

そうそう、本当にそう思います。だって子供の頃なんて、どんな職業があるかだってわからないじゃないですか。自分には何ができて、何に向いているのかなんて、子供じゃなくたってそう簡単にはわからないんだし。で、私はこう思うんですよ。たとえ今、自分に自信が持てなくても、夢や憧れを持つことができなくても、長い人生のなかでいつでもそれを見つけられるチャンスはあるんじゃないかって。私自身にしたって、もともとは“歌が好き”っていう気持ちで始めただけだったけど、今では曲も歌詞も自分で書くようになって、アレンジも考えながら作るようになっている。それをしたくて歌い始めたわけではなかったけど、やってきたことのなかで自然と世界が広がって、そのひとつひとつが次に繋がっていったという感覚を今は持てているんです。だから一歩踏み出すことを怖がらなくてもいいし、夢は歳をとってから見たっていいんだし、何かに憧れたり夢を見ることを諦めたりしなくていいんじゃない?って。大人だってまだまだ夢を見続けてね!って。そうだ、そこの部分をポジティブに捉えて肯定する歌、応援する歌を書こうって、そう思ったんです。

これは100数曲あるSuperflyの楽曲のなかで、唯一の自分への応援歌

この歌の最後は「格好いい私になれ」というところに着地していて、つまり自分自身を鼓舞する歌にもなっています。

歌入れの前の日にこの言葉が自分のなかでストンと落ちて、そうしたら歌うのが楽しくてしょうがなくなっちゃって。誰かを応援する歌を書こうと思って作りながら、結局私自身の応援歌にもなりましたね。自分への応援歌って普通、自分じゃ書かないけど、これは100数曲あるSuperflyの楽曲のなかで、唯一の自分への応援歌。サビの部分なんかは、実際に歌ってみると、思っていた以上に魂が震える感覚がありました。

「生み出したい oh yeah この小さな体から」というフレーズが終わりのほうに出てきますが、ここはまさしく志帆さん自身に重なって、グッときましたよ。

ああ、そこ。うん、そうですね(笑)。

この曲は島田昌典さんがアレンジを手掛けています。島田さんとのお仕事は初めてですよね?

はい。すごく根気強くやってくれる方で、ここはこうしたいという私のお願いを聞いてくれて何度も修正してくださって。すごく優しい方なんですよ。それに島田さんのサウンドは上質。J-ポップ的な質感のなかに、ちょっとトリッキーな音を隠し味として控えめに入れてくるんです。例えばシンセの後ろでツタツタツタツタって裏のリズムのループがずっと入っているんですけど、そこが私はすごく好きで。「隠し味として入れておいた」って言ってましたけど、そこ、ガン!ってあげておきました。

ガン!ってあげたら隠し味にならないじゃないですか(笑)。

あはははは。まあ、そうなんですけどね。あと、ストリングスにしてもバーン!って鳴り響くというよりは、柔らかく広がっていくイメージで、奥行きがある。控えめなアプローチで美しい世界観を作るのが素晴らしいなと思いましたね。

テーマは瞑想。意味のない言葉を呪文のように繰り返すことで、自分の潜在的な意識のなかに入って本当の自分を見出せる、そういう曲にしたかったんです

では、続いて2曲目の「覚醒」。アニメーション映画『プロメア』の主題歌ですね。

映画の戦闘シーンでかかると聞いていたので、そのシーンを盛り上げられる曲にしようと思って作りました。でも、ただ単に戦いを煽る曲にはしたくなくて。人を攻撃して傷つけるための戦いではなく、あくまでも自分の正義に基づいた戦い、誰かを守るような戦いをイメージしています。戦いの前夜に身を清めて、そのことを確かめる儀式のような時間を表現できればと。テーマは瞑想。意味のない言葉を呪文のように繰り返すことで、自分の潜在的な意識のなかに入って本当の自分を見出せる、そういう曲にしたかったんです。

それで、呪文のような言葉が繰り返されるわけですね。

そう。意味のない言葉を言うのがいいかなと思って、音の響きだけで言葉を選びました。

ピアノバラードっぽく落ち着いたトーンで始まったかと思いきや、突然場面が変わるように戦闘的なドラムと激しいギター、ぶっといベースが代わるがわる入ってきて、一気にハードなロックモードへ。いくつものメロディが折り重なって予測不可能に展開していくあたり、かなり斬新な曲ですよね。

メロディのコラージュみたいな感じで曲を構成したかったんです。たとえ同じメロディであっても演奏が変わるごとに聴こえ方がどんどん変わっていく。背景が変わるごとに形を変えていく曲にできたら面白いだろうなと。音はハードロック的だけど、構成はプログレみたいな(笑)。

音では煽るけど、そのなかで私は冷静に歌うということをやりたくて

アレンジとプロデュースは蔦谷好位置さんが担当されてますが、ベーシック・アレンジメントとして志帆さんの名前もクレジットされています。つまり志帆さんが作ったデモの段階で既に、“ここにはこういう音を入れる”というアイデアを反映させていたわけですね。

はい。例えばドラムはキックで聴かせるアプローチにしたくて、そことか、かなり蔦谷さんに言いました。今までのSuperflyにはないくらい、ドラムの玉田豊夢さんにキックを踏んでもらった。で、そうやって音では煽るけど、そのなかで私は冷静に歌うということをやりたくて。あと、途中で入るギターもあとから追加して弾いてもらったんですけど、そこは人の群れからはみ出して自由気ままに行く人をイメージして弾いてもらった。そのギターが暴れ馬のように激しくなろうとも、私の歌はやっぱり一貫して冷静。そういうところも含めて、今までのSuperflyになかったタイプの曲ですね。

音はハードで、歌はクール。しかも変拍子が使われていたりも。そういう意味で、志帆さんの作家性の新たな扉が開かれた曲と言えるかもしれない。

ライブで歌うのが怖いですけどね(笑)。変拍子とか罠がいっぱいあるので。

単純に言って、こういうロックな曲を録音すること自体、かなり久しぶりじゃないですか。どうでした?

やっぱり嫌いじゃないんだなと思いましたね。

恋人同士でも家族でも、人と人の距離感ってなかなか難しいところがある

そして3曲目「氷に閉じこめて」。こちらは映画『プロメア』のエンディング主題歌ということで。エンディングだけに希望が見えてくる曲ですね。この歌詞はどうやって生まれたんですか?

大雪が降ったあとですごく冷えてた日があって、玄関に出てみたら氷柱が折れて落ちていたんです。なんだかそれが可愛そうに見えて、拾って手のひらに乗せたんですよ。そうしたら、当たり前なんですけど私の体温で見る見る溶けていって。優しさのつもりで手のひらに乗せたのに、溶けて形がなくなってしまった。それがすごく寂しかったんですけど、そのときに、こういうことって人間関係でもあるなって思って。よかれと思ってやったことがその人にとっては迷惑だったり、愛情がその人の心を傷つけてしまったり……。恋人同士でも家族でも、人と人の距離感ってなかなか難しいところがあるじゃないですか。

ありますね。でも、「氷柱が可愛そう」というのは志帆さんならではの感性だなぁと思うけど(笑)。

あはは。すごくキレイだったんですよ。で、それはそれとして、主題歌のお話をいただいた映画『プロメア』は炎と氷を象徴したキャラクターが登場する物語なんですね。炎と氷だから触れ合えない。そのストーリーに今お話ししたことが重なって、同時に景色が浮かんできて、頭のなかに音が鳴りだしたんです。

どんな景色が広がっていったんですか?

まず雪山が見えたんです。それとあと、ボロボロの遊園地が見えた。そしたらメリーゴーランドが回っているときに流れる音が頭のなかに鳴り出した。それを中田裕二さんと松岡モトキさんに伝えたら、おふたりが根気強くそのイメージを音にしてくださって。

途中、ピアノがラグタイムっぽい感じで入るのも、いいですね。

あそこはセロニアス・モンクっぽいイメージ。リズムのはっきりした曲ですけど、それと対照的なルーズな部分が入ってくると面白く聴こえるかなって。

こういうロッカ・バラッド的な曲は、過去にも「プリマドンナ」「Only You」などいくつかありましたけど、志帆さんにすごく合っている。歌っていて、気持ちよさそうなんですよ。

ロッカ・バラッドにするとメロディが出てきやすいのかもしれないですね。この曲も自分のなかで映像が見えていた分、歌にも気持ちを込めやすかった。切ない心情がハッキリとあったから、それを思い切って歌で表現できたと思います。

今回は自分でも冒険したなって実感がありますね

というわけで、3曲3様。いろんな部分に新しいSuperflyが感じられるシングルです。

今回は自分でも冒険したなって実感がありますね。聴く人の耳にさーっと流れていくものじゃなくて、少なくとも一回はハッとなるものにすることができたというか。歌もべたーっと歌うんじゃなくて緩急をつけたいし、音も「なにこのヘンな音」って思うようなものをあえて入れたい。それができたかなと。

そうですね。今のSuperflyは、ロックだとかロックじゃないとか、そういう範疇をとっくに超えたところで実に豊かな表現をしているなぁとつくづく思います。

ありがとうございます。でも面白いもので、最近はまたロックな曲じゃなくても、歌っていて最後にピョコンって自分のなかのロック魂みたいなものが顔を出すんですよ。「Ambitious」にしても歌っていて魂が震える感覚があって、それはロックを歌っているときと同じ感覚のものだった。だから、よかったなぁって。今もそういうのが自分のどっかにあるんだなぁって思いましたね。

その他のSuperflyの作品はこちらへ。

ライブ情報

​Superfly Arena Tour 2019
9月21日(土) 神戸ワールド記念ホールよりスタート

*詳細はオフィシャルサイトで

Superfly

2007 年にシングル「ハロー・ハロー」でデビュー。
2008 年には1st アルバム『Superfly』をリリースし、オリコンアルバムランキング1 位を記録。以降、2nd アルバム『Box Emotions』(2009 年)、3rd アルバム『Mind Travel』(2011 年)、4th アルバム『Force』(2012 年)、さらにシングルと洋楽カバー集の企画アルバム『Wildflower & Cover Songs:Complete Best ʻTRACK3ʼ』(2010 年)、初のベストアルバム『Superfly BEST』(2013 年)でオリコンアルバムランキング1 位を獲得。
デビュー当初からライブパフォーマンスへの評価も高く、2009 年にはニューヨーク郊外で行われたウッドストック40 周年ライブに日本人として唯一出演し、ジャニス・ジョップリンがかつて在籍したBig Brother & The Holding Company と共演。同年12 月には日本武道館公演、2010 年にはFUJI ROCK FESTIVAL でメインのGREEN STAGE に出演。2011 年には初のアリーナツアー、2012 年には全国35 公演のホールツアーと2013 年3月~4月には全国9 公演に及ぶデビュー5 周年記念のアリーナツアーを開催し成功を収めた。2015 年5月、約3年ぶりとなるオリジナル5th アルバム『WHITE』をリリースし、同年7月から過去最大規模となる33都市39公演のホールツアーを開催。2016 年1 月からは同じく過去最大規模となる7 都市全11 公演のアリーナツアー『Superfly Arena Tour 2016 “Into The Circle !”』を開催し、約10万人を動員。デビュー10周年を迎えた2017 年4月4日、ファン投票によるベストアルバム『Superfly 10th Anniversary Greatest Hits“LOVE, PEACE & FIRE”』をリリース。オリコン1位を獲得。11月15日には東京オペラシティ コンサートホール・タケミツ メモリアルにて「Superfly 10th Anniversary Premium LIVE “Bloom”」を開催。
2018 年には「Bloom」 、そしてNHK 全国学校音楽コンクール課題曲となり年末の紅白歌合戦でも歌唱した「Gifts」の2作のシングルをリリース。J-POP シーンに独自のバンドサウンドで挑戦し続けるSuperfly。志帆の圧倒的なボーカル、ライブパフォーマンス、そしてオリジナリティ溢れる音楽性が大きな注目を集めているアーティストである。

オフィシャルサイト
https://www.superfly-web.com