モリコメンド 一本釣り  vol. 122

Column

DATS UKシーンとリンクするダンサブルなロックサウンドを生み出す必然

DATS UKシーンとリンクするダンサブルなロックサウンドを生み出す必然

2018年6月にリリースされたDATSのメジャーデビューアルバム『Digital Analog Translation System』は、様々な意味においてハイブリッド(異質なものが組み合わさった複合型)な作品だった。まずは(アルバムのタイトル通り)デジタルとアナログの融合。ロックミュージックの生々しいグルーヴと緻密に構築されたデジタルサウンドがひとつになったプロダクションは、そのままDATSのコンセプトにつながっていたと言っていいだろう。さらに音楽ジャンルにおいても本作は、クラブカルチャーとライブハウス、洋楽と邦楽という垣根を超えている。それは単なる折衷ではなく、ロック、ダンスミュージックを自由に行き来し、洋楽と邦楽を分け隔てなく聴いてきた世代のアーティストによる、きわめて当たり前の着地点だったのだと思う。トレンドを適度につまむような小賢しさはまったくなく、好きなもの、気持ちのいいものを本能的に吸収し、独創的な楽曲につなげていることも、『Digital Analog Translation System』のポイントだった。

アルバムリリースからの1年間、DATSは大きな変化の時期を過ごした。まずはサポートメンバーとしてバンドを支えてきた吉田巧(Gt.)が正式加入。フロントマンのMONJOE(Vo / Syn)を筆頭に、早川知輝(ba.)、大井一彌(Dr.)を含む4人編成になり、その当然の結果として、バンドのアンサンブルとグルーヴは大きく進化した。

もともとDATSはトラックメイクを手掛けるMONJOE(Vo / Syn)を中心に結成されたロックバンド(活動スタートは2013年)。つまり結成当初からロックとトラックミュージックが完全に共存していたのだ。その後、オルタナR&Bや最新のヒップホップ、さらに(ロバート・グラスパー以降の)現在進行形のジャズなどのエッセンスを加えながら独自のサウンド・スケープを生み出してきたわけだが、吉田の加入により、新たな化学反応が生じたというわけだ。ひとりのメンバーが完全にコントロールするのではなく、4人のメンバーのプレイヤビリティ、きわめて幅広い音楽要素を取り込みながら予想不能の変化を遂げることも、このバンドの魅力だろう。そして、新たな局面を迎えた“新生DATS”の最初の成果とも言えるのが、前作からちょうど1年のタイミングでリリースされる「オドラサレテル」EPだ。

本作の中心はタイトルトラックの「オドラサレテル」。既にライブで披露され、ファンから音源化を熱望されているというこの曲は16ビートを基調したダンサブルなロックサウンド、気だるさと快楽が交互に訪れるメロディライン、どこか挑発的で雰囲気を持ったボーカルが溶け合うミディアムチューン。このサウンドメイクのルーツはおそらく、マンチェスター・ムーブメントだろう。80年代後半から90年代にかけて、アシッドジャズ、テクノなどのダンサブルなビート、ドラックカルチャーを背景にしたサイケデリックな音像を持ったバンドが次々と登場。代表的なバンド(アーティスト)はハッピー・マンデーズ、ザ・ストーン・ローゼズ、インスパイラル・カーペッツ、ザ・シャーラタンズ、808ステイトなどだが、その多くがマンチェスター出身だったため、彼らが生み出したムーブメントは“マッドチェスター”と呼ばれるようになった。(もっと詳しく知りたい方は、マッドチェスターの軌跡を描いた映画『24アワー・パーティ・ピープル』をご覧ください)

マッドチェスターの背景には、“不況が続き、鬱屈とした現実を踊り狂って忘れたい”というオーディエンスの願望、“ダンスミュージックとロックを融合させ、新しいUKロックの潮流を作りたい”というアーティスト側の欲望があった。この構図は、現在の日本にもほぼそのまま当てはまると言っていいだろう。「未来のことはわからない=“いま”をとにかく楽しみたい」という刹那的な思いを抱えたオーディエンスはまちがいなく存在しているし、さまざまな音楽をハイブリッドさせ、斬新なサウンドを目指すアーティストも多い。そう、DATSの2019年の新作がマッドチェスターとリンクしているのは、きわめて強い必然に裏打ちされているのだ。当時の音像をトレースするのではなく、現代のインディーロック、テクノ、エレクトロの手触りを取り入れることで、最新のポップミュージックを体現していることも「オドラサレテル」の魅力。オートマティックな人生を進まざるを得ない現代人の在り方を照らし出している(ように筆者には感じられる)リリックにもぜひ注目してほしい。

文 / 森朋之

その他のDATSの作品はこちらへ。

オフィシャルサイト
https://www.datstheband.com

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