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崎山つばさが名役者であることを証明してみせた──舞台『LOOSER~失い続けてしまうアルバム~』上演中!

崎山つばさが名役者であることを証明してみせた──舞台『LOOSER~失い続けてしまうアルバム~』上演中!

舞台『LOOSER~失い続けてしまうアルバム~』(以下『LOOSER』)が、6月6日(木)より品川プリンスホテル ステラボールにて上演中だ。
『LOOSER』は、2004年に“TEAM NACS”が上演した舞台で、幕末の新撰組と長州藩の確執をもとに、日本を変えようと奔走する男たちを描いた、笑いあり、涙ありのストーリー。
今作では、TEAM NACS SOLO PROJECTでも馴染みの深い福島三郎が演出を手がけ、ミュージカル『刀剣乱舞』をはじめ、様々な映画やドラマで活躍する崎山つばさが主演、かつて戸次重幸が演じた幕末にタイムスリップしてしまう30歳の男「シゲ」を演じる。また、大泉 洋が演じた「土方歳三」を演じるのは鈴木裕樹、森崎博之が演じた「近藤 勇」は磯貝龍乎、音尾琢真が演じた「沖田総司」には木ノ本嶺浩、安田 顕が演じた「芹沢 鴨」を劇団プレステージのメンバー株元英彰が務める。
5人だけで繰り広げるお芝居。そんな舞台のゲネプロと囲み取材の模様をレポートする。

取材・文・撮影 / 竹下力


平凡な人生の何が悪い!

令和になろうがなるまいが、いつも時代は変ろうとウズウズしている。政治、経済、社会、いろんな事件がひとつの時代に起きすぎてオーバーヒートしている。だから、時代はうねる、躍動する、熱を帯びる。そんな時代が積み重なりいつしか歴史になっていく。そういう感動的な瞬間はいくらでも目の前に転がっているのに、どこかあぐらをかいてナアナアとやり過ごしている僕たちに“喝”を入れ、横っ面を張り倒す。そんな爽快な舞台だった。

それを体現するのは、たった5人の役者。鈴木裕樹、磯貝龍乎、木ノ本嶺浩、株元英彰(劇団プレステージ)、そして、座長の崎山つばさ。

時代は現代、シゲこと佐藤重文(崎山つばさ)は、新撰組をテーマにした映画かドラマの撮影現場でスタンドイン(俳優の代理)のアルバイトをしていた。そんなありふれた日常のなかで、ある日、怪しげな男からタイムトリップができるという薬を手に入れる。「白き薬は10のときを遡り、黒き薬は10のときを超える……」との言葉とともに。
そして、17砲の白き薬をほおばった彼が辿り着いたのは、170年前の動乱の幕末、「新撰組」の時代だった。果たしてこれは夢か? それとも現実か?
シゲの目の前には、新選組の筆頭局長である芹沢 鴨(株元英彰)をはじめ、近藤 勇(磯貝龍乎)、土方歳三(鈴木裕樹)、沖田総司(木ノ本嶺浩)といった歴史上の人物が生きていた。しかも自身も「山南敬介」と呼ばれ、なぜか新撰組の一員になっている。
時代の大きな渦が近づいてくるなか、長州藩とのいざこざが勃発。そこでシゲはある行動を起こす……。

この舞台は役者5人だけによる、ある種の劇中劇と言っていいだろう。出だしの現代で新撰組を描き、シゲがタイムトリップしたのも幕末の新撰組。現代と過去をテンポよく入れ替えながら、本当と嘘がないまぜになっているような演劇という名の迷宮にトリップさせる感覚は、メタ演劇の快楽そのものだ。さらに、彼らは現代から過去の人物にも早変わりをし、舞台上でひとりの役割を生きているわけではないことからも、ある種の“ハチャメチャさ”が今作の特徴であるとも言えるだろう。「そんなこと起きるわけがない」と思うことを目の前で起こす、演劇本来の魅力が詰まっている。

そのありえない世界に観客を引き込んでいく一端を担うのが、崎山が主にこなす、実際の史実に基づくナレーション。そこにフィクションが織り交ぜられることで史実と物語のハレーションが生まれ、我々の持っている歴史への共通認識を揺るがせ、物語を重層的にしていく。本作は言わば、新撰組の正史だけが垣間見えるわけではなく、裏「新撰組の歴史」に立ち会っている新鮮な感覚に陥らせる。また、基本的にはシリアスなテーマを扱っているけれど、そこにユーモア(早替えならではの笑いや、幕末だからこそ使える時代のギャグ、時事ネタまでもをぶちこんでくる)を含み、シリアスとユーモアの落差が舞台上で起こっていることから観客の目をより離せなくしている。

そんな本作を大きく担っているのが、役者陣の獅子奮迅の活躍。幕末の時代を破天荒に生きた芹沢 鴨を演じた株元英彰、大きい体躯を使ったギャグが冴えわたり、どこかあっけらかんとした性格の近藤 勇に仕立てた磯貝龍乎、新撰組のしきたりを何よりも重んじ、一癖も二癖もある土方歳三を演じた鈴木裕樹、蒼白の顔の実直な若き天才剣士の沖田総司を務めた木ノ本嶺浩の四者四様の筆舌にしがたい演技。さらに彼らは5役も6役をこなすわけだから、相当な“気合い”と“根性”が必要なはずだ。“熱血”という言葉は今の時代、恥ずかしくてあまり口に出せないが、僕らの目には見えない、舞台の5人だけに宿る“熱い魂”のようなものがカンパニーの支柱にあったのではないか。

そして何より主演の崎山つばさである。前作舞台「幕末太陽傳 外伝」(19)では、佐平次という品川遊郭に居座る男の衒いのない性格をユーモアたっぷりに演じて、これが初コメディなのかという驚きをもって観客に迎えられていたけれど、ここでも彼のコメディの演技は眩い閃きを見せていた。崎山はシリアスとユーモアの演じ分けも抜群だが、ユーモアもただ笑わせればいいというわけではないから、そこには観客を飽きさせないという演出・脚色の福島三郎の執念をもかいま見えた。

ずっと追い続けてきたからこそわかる。崎山つばさは天性の“役者”だ。当然、計算していることもあるはずなのに、それさえ感じさせない、揺るぎのない、言葉にできない何か……“役そのもの”をいとも簡単に自らの内に取り込むことができるのだと思う。シゲはおバカなことをしているかと思えば、自身も時代に翻弄されながら、そのなかで誰も傷つけたくないという優しい想いを持っている。それらが普遍性を帯びて、崎山つばさという人間に重なり、彼の表情、仕草がシゲそのものになっていく。シゲという存在が崎山つばさに生き始める。

大げさではなく、崎山つばさという俳優は、シリアスからユーモアまで難なくこなせる“天才”だと証明している舞台でもある。インタビューで彼は幾度かの困難と葛藤を経て、それらを糧に今があると語っていたけれど、ひとりの名役者が令和時代に高く羽ばたこうとする、そんな瞬間に立ち会えたのかもしれないと思った。

生きることはつらいことかもしれない、つまらないことだらけかもしれない、生きている実感なんて得られないかもしれない。なぜなら、僕たちには明日の未来がわからないからだ。だからこそ今を全力で生きて、不確かな何かを明日へと積み重ねていく。小さな指先で不器用に未来を紡いでいく。舞台上のこの5人がいれば怖くない。彼らが僕らのそんな指先を支えてくれる。明日を夢見ることを恐れる心配は何もないのだと教えてくれる。

15年の時を経ても、現代で上演することに意味がある作品

ゲネプロの前に行われた囲み取材には、崎山つばさ、鈴木裕樹、磯貝龍乎、木ノ本嶺浩、株元英彰が登壇した。

まず、見どころを尋ねられ崎山つばさは「“TEAM NACS”の作品ということで、“TEAM NACS”を尊敬しつつ、僕らだからできる『LOOSER』を稽古をして突き詰めてきました。5人がいろいろな役になって葛藤をするシーンを観てください」と語った。

それを受けて鈴木裕樹は「男性5人しか出ないお芝居で、ひとり何役も演じるのが見どころだと思います」と続け、磯貝龍乎は「役が変わるところや早替えは、普段生活していれば考えられないことなので楽しいですし、たとえミスをしてもみんなでカバーをしてくれる座組みで心強いです」と語った。

一方、木ノ本嶺浩は「“TEAM NACS”のバージョンと同じく熱量が高く、しかも5人だけでつくり上げる濃厚なドラマになっているので楽しみにしてください」と述べ、株元英彰は「“TEAM NACS”のチームワークや本作の衝撃を覚えていらっしゃる方もいると思うので、その方たちの期待を裏切らないように良いところを踏襲して、僕たちだけの『LOOSER』をお見せしたいです」と意気込んだ。

最後に崎山が「2004年に“TEAM NACS”が上演して、15年の時を経ても、現代で上演することに意味がある作品だと思います。“TEAM NACS”のバージョンをご覧になられた方、本作に初めて触れる方も混在するなかで、同じひとつの作品を観て同じ時間に感動してくださるような舞台にしたいと思っています。気負わずに腹を抱えて笑うところは笑って、泣けるシーンでは泣いていただければ嬉しいです」と観客へメッセージを残し、囲み取材は終了した。

東京公演は6月9日(日)まで品川プリンスホテル ステラボールにて上演。大阪公演が6月15日(土)から6月16日(日)まで森ノ宮ピロティホールにて上演される。なお、11月1日(金)には本作のBlu-ray&DVDの発売も決定。貴重な映像特典も収録されているそう。詳しくは公式ホームページをチェックしよう。

舞台『LOOSER~失い続けてしまうアルバム~』

東京公演:2019年6月6日(木)~6月9日(日) 品川プリンスホテル ステラボール
大阪公演:6月15日(土)〜6月16日(日) 森ノ宮ピロティホール

STORY
平凡な日々を憂いながら毎日を送るごく普通の30男、シゲ(崎山つばさ)。
彼はある日怪しげな男から、タイムトリップできるという薬を手に入れる。
「白き薬は10のときを遡り、黒き薬は10のときを超える……」
15砲の白き薬をほおばった彼がたどり着いたのは、動乱の幕末「新撰組」の時代だった……。
彼の目の前には、新選組の筆頭局長である芹沢 鴨(株元英彰)をはじめ、近藤勇(磯貝龍乎)、土方歳三(鈴木裕樹)、沖田総司(木ノ本嶺浩)といった歴史上の英雄たちが、士道不覚悟という言葉の下で、常に己の誠を磨いていた。
そして彼は、いつの間にか長州藩との争いに、その身を翻弄される事に……。
あの時代、一体何が正義で何が悪だったのか?
そして、真の英雄とは一体何だったのか?
これは、誰もが知る歴史の一片であり、誰もが知ることのない、己の誠の物語……。

原作・脚本:森崎博之(TEAM NACS)
演出・脚色:福島三郎

出演:
佐藤重文/山南敬介/吉田稔麿/他:崎山つばさ
土方歳三/坂本龍馬/他:鈴木裕樹
近藤 勇/宮部鼎蔵/他:磯貝龍乎
沖田総司/桂小五郎/他:木ノ本嶺浩
芹沢 鴨/古高俊太郎/他:株元英彰(劇団プレステージ)

©「LOOSER〜失い続けてしまうアルバム〜」製作委員会

制作:ポリゴンマジック株式会社
主催:ポリゴンマジック株式会社、サンライズプロモーション大阪

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@StageLooser)