Interview

aiko 初のシングルコレクションをリリース。彼女の最新のインタビューから伝わってくる、ファンへの真摯な思い。

aiko 初のシングルコレクションをリリース。彼女の最新のインタビューから伝わってくる、ファンへの真摯な思い。

『aikoの詩。』――aiko初のシングルコレクションである。2011年2月に発表した『まとめⅠ』『まとめⅡ』は初のベスト盤で、シングルコレクションではない。しかしシングルコレクションといっても、シングルを発売日順に並べただけの作品ではない。aikoのこだわりが炸裂している。ファンに喜んでほしいという思いが、おもい切り込められているこの作品も、発売しようという決意に至るまでは、葛藤があったという。インタビューはその部分から始まった。

取材・文 / 田中久勝


シングルだけで、ライブのセットリストを作ってみようという発想になりました

aiko 『まとめⅠ』『まとめⅡ』の時も、ベスト盤を出すことに抵抗がありました。それはデビューから10年ちょっとで、自分自身まだまだだなと思っていたので、べスト盤なんて出していいのか、おこがましいのでは、という気持ちが強かったからです。でも自分の名刺的な作品を作ろうってなったのでアルバムの曲、カップリング、シングル曲をまとめたけど、今回はシングルをまとめると言われて、「どうしよう」って思って怖くなっちゃって。だから見て見ないふりをしてたんですよね。私がシングルコレクションを出してもいいんだろうかとも思ったし、悩みました。悩んで悩んで、スタッフの助言もあり、でも出す!って決めてからは、どうやったらファンのみなさんに喜んでもらえるものができるかを、ずっと考えて、結局めっちゃテンションが上がりました(笑)。

だから普通にシングルを時系列で並べるのではなく、Disc1~3まで、聴いた人が色々なストーリーを想像してしまう曲順になっているんですね。

aiko シングルを時系列で並べて、自分の人生の流れを、もう一度自分でまじまじと見つめ、向き合うなんて、逆に怖くてできませんでした。だったらシングルだけで、ライブのセットリストを作ってみようという発想になりました。今まで続けてきたライブのスタイル、「Love Like Pop」だったらこうかなとか、「~Rock」はこうだな、「~Aloha」はこうがいいなって、という感じでまとめてみようと思いました。最初はテーマを設けずに3枚のCDに、シングルを全部入れようって漠然と曲順を考えても、全然決まらなくて(笑)。どのDiscがどのライブという訳ではなく、ひとつ決まると、答え合わせしていく感じでサクサク決まりました。一枚一枚どれを聴いても楽しめるアルバムにしたかったから、歌詞の流れとかはそんなに考えていなかったです。1曲のアウトロが聴こえてきて、「次何かな」って頭の中で想像すると、不思議と次の曲のイントロが自然と頭の中で鳴り始めるんですよ。気をつけたことはひとつだけで、リリース日が近くないものを組み合わせようということだけでした。

曲を作るときも「ライブで歌うならこういう曲かな」って考えるようになって、それが結果的によかったと思います

20年間、ライブに軸足を置いた活動を続けてきているから、曲順=セットリストと考えるのも、自然なのかもしれませんね。

aiko いつの間にかライブが活動の軸になって、曲を作るときも「ライブで歌うならこういう曲かな」って考えるようになって、それが結果的によかったと思います。初回限定仕様盤には「aiko はじめてのスタジオライブ」というDVDが付いていて、「ドライヤー」「冷凍便」「雨は止む」「大切な人」という、大切な4曲を歌っているので是非観て、聴いて欲しいです。

選曲にあたっては、プロデューサー、スタッフとの意見の相違はありましたか?

aiko それが、みんなが考える曲順と私が考えるものとが、ほぼ同じで。全員がそれぞれ違う環境で生活をしているのに、向いている方向が同じだったんだって、改めて実感できて、本当に嬉しかったです。そうなれたことで、これから先も頑張ろうって思いました。

ひとつのものを一致団結してやってきたことが、その瞬間に出て、チームとして色々なことを再確認できた時間だったし、その結晶がこの作品ということですよね。

aiko 本当は曲の一覧表を見た時、「自分の21年間の人生が、一枚(ひとつ)に収まってしまうのかなぁ」って思って、なんか寂しいというか、「これを出したら、もう区切らないといけないのかな?私もう辞めるんですかね?」って思ってしまう瞬間があって、何ともいえない気持ちになりました。でも曲順を決めて、それが形になっていくときに「まだまだやってないこともあるし、もっと頑張らないと」って改めて思えて、同じものをまたチームみんなで目指していきたいと思いました。

ジャケットの私の子供時代の写真も、取っておいたくれたのも初めて知りました

全シングル、カップリング曲と向き合うことで、改めて20年という時間を振り返る機会になったのではないでしょうか。

aiko 昔から、過去のことを懐かしんだりするのが苦手で、例えば昔の写真を見たり、スマホのメールとかフォルダも遡ったりするのも苦手なんですよ。だから曲に関しても、今までは一曲一曲もう一度噛みしめてみる、みたいなことをしてこなかったんですけど、今回は振り返らざるを得なかったというか(笑)。今回のアルバムのジャケットの私の子供時代の写真も、取っておいてくれたのも初めて知りました。おじいちゃんが撮ってくれて、それを親が大切持ってくれていたみたいで、私は親が持っている写真を、今まで見せてとか言ったことがないんですよ。

改めてシングルを全部聴くと、もちろん声の変化もあるし、アレンジも進化しているし、そんな中で、歌詞がすごく変わったなって感じました。視線、視点は変わらないけど、物語の深さ、温度感は変化し、“深化”していると思いました。

aiko それは自分でも思いました。恋愛の歌を歌っていることは変わりませんが、詞は変わりましたよね。多分今は自分をカブトムシに例えて曲を書くことはないと思います。あの時は恋愛している自分、女子をカブトムシに例えたし、でも今は今の例え方がきっとあって、だから昔の自分にも感謝してるし、「これからもっと頑張るからね。」って言えるし、頑張れます。その時の自分に「ありがとう」と言いたいですね(笑)。あの時はもう「なんでカブトムシやねん」って言われたけど、テレビで昆虫採集しているシーンの中で流れたりすると「すごいな」って 思います(笑)。すごいパワーワードだったんだなって。

ライブでも、音源とは違う、今のaikoさんが歌う今の「カブトムシ」という楽しみ方ができます。

aiko 違いますよね。自分ではそんなつもりがなくても、客観的に観たら違うし、同じ人間が歌っているとはいえ、20年弱月日が経っているので声も変わってくるし、まだそれを楽しめてるからよかったなって思いますね。

「ストロー」が好きって言ってくれる人が多くて、本当に救われた

今「カブトムシ」が出てきましたが、自分の中で「ポイント」になったと思えるシングルを教えて下さい。

aiko 「ストロー」です。この曲は、アルバム(『湿った夏の始まり』)のレコーディングをしてる時にプロデューサーに聴かせたら、突然「この曲、シングルにしよう」って言ってくれて。私はすごく嬉しかったんですけど、アルバムがまだ完成していない上に、シングルにするということは、カップリング曲もレコーディングしないといけないので、時間的に大丈夫かなと思ったんですけど、「いい曲だからシングルにしよう!」って言ってくれたことが、すごく嬉しかったんです。<君にいいことがあるように>と、前向きな歌詞を書けたことも自分でよかったなって思えるし、このフレーズをリフレインしてることで、覚えやすいこともあって、子供達が歌ってくれたり、パオパオチャンネルというYouTuberの小豆ちゃんが「踊ってみた」を、この曲でやってくれたり、今までaikoの曲を聴いたことなかった人に届いているのも嬉しくて。この前、テレビ番組に出演した時に、「渋谷で聞いたaikoの好きな曲ランキング」というアンケートをやってくださって、1位が「カブトムシ」、2位が「花火」で、3位が「ストロー」だったんです。てっきり「ボーイフレンド」とか「キラキラ」が入ってくるのかなってと思っていたら、4位も「milk」でした。昔の曲を好きでいてくれるのは嬉しいんですけど、新しい曲も聴いて欲しくて、その部分に敏感になって、固執しすぎていたんだなってその時感じました。なので「ストロー」が好きって言ってくれる人が多くて、本当に救われたので、一番新しい曲がターニングポイントになったというか、気持ちが前を向くきっかけをくれました。

『aikoの詩。』を聴いていると、「今まで」よりも「これから」のaikoさんがさらに楽しみになってくるし、新曲が聴きたくなります。

aiko これからも頑張って曲をどんどん書いていきます。この前、FM802開局30周年の『FM802 ×TSUTAYA ACCESS!』キャンペーンソングの「メロンソーダ」という曲を作れたことで、曲が広がっていく感覚を、体でちゃんと感じたんですよね。「こんなにTwitterで皆がつぶやいてくれてる」とか、すごく嬉しかったです。期間限定ユニット・Radio Darlingsとして色々な方(上白石萌歌、谷口鮪(KANA-BOON)、橋本絵莉子(チャットモンチー済)、はっとり(マカロニえんぴつ)、藤原聡(Official髭男dism)が参加。KAN、秦基博もコーラスとして参加)と、一緒に歌ったり、トオミヨウさんがアレンジを手がけて下さったり、ミュージシャンの方もほぼ初めての方だったので、すごく新鮮でした。あと、自分以外の人の声で歌ってくれることで、こんなに曲って聴こえ方が違うんだなって、自分も客観的に聴けたりする瞬間があったり、本当に刺激になりました。だからこのタイミングで、色々なことをする機会に恵まれたので、これからもやるしかないです。頑張るしかない、私にはそれしか残っていないんです。

やっぱりカップリングって、自分の一番自由な場所だったので、全部の曲に思い入れがあります

常に新しい作品、最新の自分自身の思いを聴いて欲しいという気持ちから、これまでカップリング曲が、その後アルバムに入ることはほとんどありませんでしたが、今回はDisc4がカップリングベストです。この選曲はDisc1-3のようにスムーズにいきましたか?

aiko 生まれて初めて“淘汰”という言葉を使ったくらい、こんなに苦しくて、心を切り刻まれている時間は今までなかったです(笑)。やっぱりカップリングって、自分の一番自由な場所だったので、全部の曲に思い入れがあります。だからプロデューサー、スタッフともなかなか落としどころが見つからなくて、不穏な空気が流れました(笑)。14曲に絞るのが本当に難しかったです。

そんな生みの苦しみというか、初めての“淘汰”に悲しんだだけに、逆に絶対みなさんに聴いて欲しいですよね。aikoさんとしては絶対に譲れない曲はどの曲だったのでしょうか?

aiko 何曲かあって、絶対入れたかったのは「こんぺいとう」と「ココア」です。「こんぺいとう」は、私は昔からつらいことがあると、自分の腕や指をかむ癖があって、最近は噛むというより、爪でグッと押してしまう、治らない癖があって、その痕を見る度に、「金平糖ができたな」って思います。「ココア」は、リリースして少し経ってから、「不倫の曲だ」「aikoは不倫の経験あるの?」という声が、ファンのみなさんから届いて、もちろんそんな経験ないし、でも「そういう捉え方もあるんだな」 と改めて音楽って面白いって思いました。そういう意味で、聴いてくれた人が頭の中で、色々なことが広がった曲、みんなが色々な解釈で聴いてくれるんだなということが、すごく実感できた曲なんです。

20年やっていても、自分としては全然実感がないんです。果たしてきちんとやれているかどうかもわからないし、不安の方が大きいんですけど、「これだけやってきたんやからしっかりしろ」って、自分には言いきかせています

aikoさんは自分の曲をいつまでも自分の子供のような感覚なのか、それとも自分の手を離れて、聴き手の元に届いたらみんなのもの、という感覚なのでしょうか。

aiko 時と場合によります。自分の子だと思う時もあれば、不良になって手に負えなくなってしまったって思う子もいるし(笑)。でも作っても作ってもまた作りたいって思うので、子供といえば子供なんですけど、時間が経てば経つほど実感が湧いてくるというか、作った瞬間はそんなに実感がないというか、みんなが聴いてくれて感想をくれたり、ライブで歌った時のお客さんの表情を見ることで、「自分の子供(曲)やったんや」って感じることができます。私の音楽を手に取ってくれた人がいたから、それをすごく感じることができるというか、だから20周年も、『aikoの詩。』を出すことも、周りの人が教えてくれるというか。「これまでこれだけやれたんだな」とか。20年やっていても、自分としては全然実感がないんです。果たしてきちんとやれているかどうかもわからないし、不安の方が大きいんですけど、「これだけやってきたんやからしっかりしろ」って、自分には言いきかせています。みんなが声を届けてくれることで、「aikoが作った曲なんやで!」って教えてくれて、救われています。

aiko

1975年11月22日生まれ。大阪府出身。シンガーソングライター。1998年7月に、シングル「あした」でメジャーデビュー。メロディはもちろん、彼女の恋愛観で綴られる歌詞に、そしてライブでの熱いパフォーマンスに、幅広い年齢のファンが支持している。

オフィシャルサイト
https://aiko.com