Interview

猪塚健太がA New Musical『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』で貫く“演劇愛”。ウーマンパワーが溢れる舞台で女性が惚れる男を演じる

猪塚健太がA New Musical『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』で貫く“演劇愛”。ウーマンパワーが溢れる舞台で女性が惚れる男を演じる

TBS赤坂ACTシアターにて9月25日(水)より上演される、A New Musical『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』。
ブロードウェイ注目のソングライティング・コンビと日本のクリエイティブチームが、新作ロックミュージカルを共同製作し、世界に先駆け日本で初演するという、新しい試みで生まれる作品だ。
アメリカから新進気鋭のソングライティング・コンビ、クレイトン・アイロンズ&ショーン・マホニーを招聘。日本からは、日本版脚本・演出の板垣恭一をはじめとする豪華スタッフが集結。“今を生きるあなた”に伝えたい、自由を求め闘った女性たちの物語を届ける。
出演は、芸歴20周年の柚希礼音を主演に迎え、さらに「読売演劇大賞」優秀女優賞を受賞し注目を集めるソニンなど個性豊かな女優たち。もちろん、男性陣も見逃してはならない。多くのミュージカルに出演する戸井勝海やストレートプレイからミュージカルまでこなす実力派の原田優一が脇を固め、多くの2.5次元舞台で主演を務める平野 良、舞台やTVドラマ等で幅広い役を演じる猪塚健太が出演する。
そこでファクトリーガールズの寄稿集『ローウェル・オファリング』の編集者であるハリエット・ファーリー(ソニン)に恋をする、政治家志望の青年のベンジャミン・カーチスを演じる猪塚健太にインタビュー。今作への意気込み、さらには自身が所属していた劇団プレステージへの熱い想いまで、演劇好きを公言している彼の“演劇愛”を感じて欲しい。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 冨田望


これほど大規模なミュージカルに出演するのはほぼ初めて

まず、日米の凄腕のクリエイターが集結した舞台A New Musical『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』に出演が決まったお気持ちから聞かせてください。

素晴らしいキャスト・スタッフの皆さんに恵まれ、なおかつこれほど大規模なミュージカルに出演するのはほぼ初めてなので、嬉しい気持ちと同時にプレッシャーを感じながら、みんなで面白い舞台にしようと思っています。

日米の合作として日本で初演される舞台で、すでに新しい試みとして話題になっていますね。

おっしゃるとおりなかなか前例がないことですし、しかも世界初演ということでチャレンジングな舞台だと思います。この舞台に出演した役者のお芝居がある種の正解、指針になるので、今から緊張していますね(笑)。僕が演じるベンジャミン・カーチスがこの舞台に欠かせない存在となって、いつまでもお客様の心に残ってもらえれば嬉しいです。

具体的に、ご自身の役はどんな人物だと思いますか。

アメリカの裕福な家庭で何不自由なく生活をしている青年ですが、彼には政治家になりたいという大きな夢があります。彼は自分の理想とするアメリカのために奔走しますが、同時にハリエット・ファーリーという女性に恋をしている。ハリエットのために何かしたい、ハリエットとともに明るいアメリカの未来をつくりたいと純粋な気持ちで行動をするのですが、どうしてもやることなすこと空回りしてしまう。お客様からしたら、「彼はいったい何をやっているんだ」と思われるかもしれないけど、ただアメリカの未来やハリエットのために生きている。憎めない人間だと思います。今作では真面目でピュアな青年を演じたいですね。

何をしたいのかという想いをどれだけ強く持てるか

そんな彼を演じるうえで気をつけたいことはありますか。

目の前で起こっている出来事に引っ張られるのではなく、僕がベンジャミンとして「何をしたいのか?」という想いをどれだけ強く持てるかだと思います。そうすれば、何をしようとしているのかがリアルに伝わると思いますし、自然と物語を進めていく人間にもなる。これからは舞台の設定である19世紀半ばの人間がどういう暮らしをして、普段どんなことを思っているのか勉強していこうと思います。

ハリエットとの関係性をどのように築いていきますか。

彼女のことを好きになっているわけですから、実際に演じるソニンさんを含めて、たくさんのことを知りたいと思います。その人をより深く知ることが、ベンジャミンの夢にとっても必要ですし、ソニンさんとしっかりコンタクトを取って良好な関係を築きたいですね。

猪塚さんは幅広い役を演じている印象がありますが、“恋する人”を演じるうえで気をつけたいことはありますか。

ハリエットを好きになればなるほど役が生きてくるので、お芝居に少しでも嘘があると演じにくい部分が出てしまう。だから、ハリエットのこともソニンさんのことも好きになる努力をしなければいけないですね。特にベンジャミンは、純粋に好きな想いを板の上で体現しないといけないので、舞台で真剣に恋をしたいと思います。

ご自身と似ている部分はありますか。

良かれと思ってしていることが裏目に出てしまうところは共通しているかもしれません。それから、ハリエットを好きな一方で、マーシャ(石田ニコル)という女性から恋をされる役でもあるので、僕自身のあずかり知らぬところで女性にモテてしまうところは共通しているかも(笑)。それは冗談ですが、ベンジャミンと似ているところはたくさんあります。

共演されるキャストの印象を聞かせてください。

主演のサラ・バグリー 役の柚希礼音さん、そしてソニンさんは、どちらもトップスターなので、この方たちとミュージカルに挑戦するのは楽しみです。ミュージカル界の先端を行く方たちが集まっているので、僕の役者人生にとって得るものはたくさんあると思います。稽古はまだ先ですが、稽古場でとにかく盗めることは盗んで、糧にしていこうと思います。

ミュージカルで意識されていることはありますか。

まずは、歌も含め技術的な部分を磨かなければいけないと思っています。そこから、物語を生きる人物としてどういうアプローチで、どういうお芝居をしたら、お客様にキャラクターのことが伝わるのか重点的に考えます。最終的には、時代背景や工場で働く女性たちの働き方などは、現在の世界ともリンクしている部分があると思うので、そんな物語を今の人たちがご覧になってどう感じてもらえるのかも考慮に入れながらお芝居をしたいです。これから脚本を読み解いて、魅力的なキャラクターをつくり上げたいと思います。

女性陣が多い稽古場で、どのように稽古に臨もうと思いますか。

僕には姉と妹がいて女性に囲まれて育ったので、それほど違和感はないですし、男性・女性に限らず個性が強い方が多いのでご一緒するのが楽しみです。稽古場の居方はどの現場でも変わらないんですよ。というのも、とにかく僕は稽古場が大好きで(笑)。なるべく早く稽古場に入って、遅く出たいという想いがあるし、実際にそうしていると、役者のいろいろな顔が見えて、「みんなこんなことをしているんだ」とわかってくる。そうすれば自然と共演者とも接しやすくなるし、お芝居の話もしやすくなります。自分が座長にしろ、大きなカンパニーにしろ、女性が多い座組みだとしても、そういった僕の姿勢は変わらないです。

演劇はひとりではできないことを痛感

私の勝手な意見ではあるのですが、猪塚さんにとって、劇団プレステージでお芝居をしていたことが役者として大きな意味を持っていると思います。

そのとおりですね。プレステージに入団して約10年、僕のお芝居の基盤になっています。プレステージにいると、演劇はひとりではできないことを痛感します。当然、“劇団”と名乗っているので、スタッフがこなす作業、つまり舞台装置を準備する“仕込み”も、装置を片付ける“バラシ”もします。音声さんや照明さんを手伝うこともある。ひとつの舞台をゼロからスタッフとつくり上げる大変さと楽しさを学びました。そのおかげで、プレステージ以外の舞台でもスタッフの動きがわかるし、そこで何をすればいいのかがわかる。スタッフと話していると「よく気づいて行動したね」とおっしゃってくれることもあるので、お芝居以外にも演劇をすることの喜びはたくさんあります。

お話を伺っていると、猪塚さんは演劇が好きだという印象を受けます。

好きですね(笑)。演劇は合宿みたいなもので、長ければ3ヵ月もスタッフやキャストの皆さんと一緒にいることがあれば、1ヵ月ぐらいで終わってしまうこともある。その瞬間にしか集まらない人たちだけでお芝居をつくることは、青春を謳歌しているような気持ちになります。どの現場も楽しい場所だと思っているので、少しでも長くいたいし、みんなと深く関わりたい。別の見方をすれば、演劇は儚く散ってしまう花のようなところもあって。だから毎公演、新しい花を咲かせるようにしたいですね。本番でも稽古場でも、同じことをしていても、その日によって役者のコンディションでお芝居が変わるのが醍醐味だし、そういったところが舞台の好きなところです。

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