Interview

のん 元GO!GO!7188の2人が楽曲提供したミニアルバム『ベビーフェイス』で振り返る青春の記憶

のん 元GO!GO!7188の2人が楽曲提供したミニアルバム『ベビーフェイス』で振り返る青春の記憶

女優・創作アーティスト、のんがミニアルバム『ベビーフェイス』をリリースする。2017年にレーベル「KAIWA(RE)CORD」を興し、音楽活動をスタート。昨年はアルバム『スーパーヒーローズ』を発表し、自らのバンド=のんシガレッツを率いて積極的にライブ活動を展開。この春も「ARABAKI ROCK FEST」の加山雄三率いるTHE King ALL STARSのステージや、「忌野清志郎ロックン・ロール・ショー日比谷野外大音楽堂〜Love&Peace〜」へのゲスト出演で話題を呼んだ彼女。今回のミニアルバムではのん作詞作曲の3曲に加え、憧れの存在だった元GO!GO!7188の2人が楽曲提供。彼女自身、“スーパーヒーローズ 青春ヴァージョン”と語るように、バンドとギターに明け暮れていた中学時代を振り返り、今の自分を見つめ直すような内容になっている。中学のバンド時代の様々なエピソードを交えながら、のんの原点を探るインタビューをお届けしたい。

取材・文 / 佐野郷子


中学時代にコピーしたGO!GO!7188からはすごく影響を受けています。

今回のミニアルバムは、のんさんが憧れていたGO!GO!7188の元メンバーのお二人とタッグを組んだ曲が収録されましたね。

以前から一緒に出来たらいいなぁと夢見ていたんです。それでうちのスタッフがコンタクト取ってくれて、実現しました。ミニアルバムの1曲目「やまないガール」は、実はアルバム『スーパーヒーローズ』の時にすでに出来ていたんですが、GO!GO!は私の音楽のルーツでもあるので、絶対にイイ形でリリースしたくて、悩みに悩んでミニアルバムという形になりました。

のんさんが中学生のとき、地元のバンドで熱心にコピーしていたのがGO!GO!7188だったそうですね?

はい。バンドでGO!GO!のコピーを提案してくれたのは、バンドのベース/ヴォーカルのマホちゃんという女の子で、CDを聴いたら「めっちゃカッコイイ!」って夢中になって、一生懸命ギターをコピーしました。

子どもたちに楽器を教えていた役場のマサヤンの指導で、のんさんは小学6年生からギターを始めてバンド活動をしていたとか。

そうなんです。小学生のときはヴォーカル担当でしたが、ギターは弾いていて、学校が終わると家に帰って、すぐに練習場に行く毎日でした。GO!GO!に出会う前は、Whiteberryさんや、「学園天国」の小泉今日子さんのカヴァー・ヴァージョンや、映画『NANA』の主題歌で中島美嘉さんが歌っていた「GLAMOROUS SKY」とか色々やっていましたね。

「やまないガール」は、元GO!GO!7188ノマアキコさんさんが作詞、ユウさんが作曲。これはのんさんを想定してつくった曲ですよね?

メッチャ想定されていますよね? 歌詞はアッコ(ノマアキコ)さんが私のことをイメージしながら書いてくださったみたいなんです。

まるでのんさん自身が書いたようなタッチですね。

本当ですか! アッコさんも私の言葉のセンスに自分と似たものを感じると思ってくださったそうなんです。アッコさんの面白くて不思議な言葉の感覚が、かっこよくて大好きだったから、私はGO!GO!からすごく影響を受けているんだなとあらためて感じました。

ちょっと毒があって、反抗的で、不思議な言葉のセンスは確かに通じるものがありますね。

そうですね。アッコさんも私が付けたレーベル名「KAIWA(RE)CORD」から発想を膨らませて歌詞の中に〈会話で解決〉とか〈かいわれはっぱが3つに割れた〉とか入れてくれたんです。嬉しかった! 〈ホントのあたしを知らないくせに〉<寄ってたかってあたしのあれこれ決めつけないで>も、私がまさに思っていることだし、すべての女の子に通じる歌詞だなと思います。

「やまないガール」の「やまない」も気になる言葉ですね。

音楽が鳴り止まないの「やまない」、病む、病まないの「やまない」……色んな意味が含まれているパワフルなワードですよね。自分自身にもすごくフィットしました。

アッコさんとユウさんは、のんさんをどういう風に認識されていたのでしょうか?

以前、テレビのバレエティ番組でGO!GO!の「ジェットにんぢん」のリードギターを披露したことがあって、それをたまたま観てくれていたそうなんです。「とても嬉しかった」って言ってくれて感激しました。

2人はギターとベースでレコーディングにも参加されていますね。

あの時は、思いっきりファン目線になっちゃいました。「目の前に憧れていたGO!GO!7188の2人がいる!」って興奮して。だから、このミニアルバムの裏テーマは“スーパーヒーローズ 青春ヴァージョン”でもあるんです。

口に出したら角が立ってしまうようなことも、歌だとへっちゃらなんです(笑)。

のんさんが作詞作曲を手がけた新曲は3曲。「モヤモヤ」はメロディもアレンジも今までのパンキッシュなのんさんのオリジナルとは趣が異なりますね。

私も今までと雰囲気の違う曲に挑戦したかったんです。今回は、私が中学の頃から好きだったGO!GO!に曲を提供していただいたので、のんの「青春」を詰め込んだ内容にしたかったんです。青春にはやっぱり「モヤモヤ」がつきものですよね?

のんさん自身の「モヤモヤ」の原因は?

無数にありますが、一番は「へーんなのっ」という曲でも書いた“大人のルール”。モヤモヤ・ワードを考えているうちに、〈いつでも多数決〉とか〈本当のことは興味ない〉が浮かんで、こういうモヤモヤした感情は、私だけじゃなく同じように感じている人がたくさんいるんじゃないかなって思ったんです。感情に蓋をすると自分が鈍くなっていく感覚があって、蓋をすることによってなにかを失いたくないと思ってこの歌詞を書きました。

音楽は普段はなかなか言えないことを表現できる強みがありますね。

そうですね。普段は口に出したら角が立ってしまうようなことも、歌だとへっちゃら(笑)。それがすごく気持ちいいんです。アルバム・ジャケットの頭のスタッズも“ベビーフェイス”の怒りの部分が表現されているんです。

バンド時代は、自分大好き!変顔大好き!なイケイケ中学生でしたねー(笑)。

のんさん作詞の「憧れて」は、中学時代がそのまま描かれているような歌詞ですね。

まさに! GO!GO!さんに憧れて、ギターを弾いていた頃を思い出して書きました。友達とバンドを組んでいた頃は私の中で一番の青春だし、とても楽しかったんですが、思い出すと恥ずかしくなるような失敗もたくさんあって……。

歌詞に出てくる〈自分のお小遣いで買った 初めてのCD〉は何でしたか?

GO!GO!7188のアルバム『アンテナ』です。それまではマホちゃんにCDを貸してもらってCD-Rに焼いて、聴いていました。

バンドでは地元の夏祭りや地域のイベントのアマチュア・コンサートに出演していたんですよね。

はい。それがすごく楽しかったんです。今、思い返すと、自分大好き!変顔大好き!な田舎のイケイケ、オラオラ中学生でしたねー(笑)。地元の「青少年の主張 弁論大会」にも私たちはバンドで参加したんですけど、審査員はポカーンとしちゃって(笑)。確か『SR サイタマノラッパー』に似たようなシーンがあって、あの時の何とも言えない空気を思い出しました。

当時のライブ写真もたくさんありますね。

マサヤンが記録してくれていたんです。バンドの名前は、Z!PPER。マホちゃんが好きな雑誌のタイトルから、Iを!にして差別化をはかってみたんです(笑)。一緒にバンドのロゴを考えたり、シール作ったり、表情を見られたくないからという理由でサングラスをかけたりしたのもマホちゃんのアイデアだったし、思い出すと、私はマホちゃんに多大なる影響を受けていますね。すごく楽しかった。

その楽しさが歌詞にあるように〈このままが続くと思っていた〉?

私は中学を卒業して上京することにしたんですけど、バンドは続けたかったんです。東京に行っても、地元に帰って来た時に皆で集まればいいと思っていたんだけど、マホちゃんも高校受験があって、解散することに……。私の勝手な都合でバンドを続けることが出来なくなってしまったことが心残りで、忘れられないんですね。

〈ずっと大事にしたい特別がある〉は、その頃の思い出なんですね。

はい。その後、マホちゃんとは連絡が途絶えてしまったんですが、今はDJをしているみたいです。スゴいなー。同じく音楽の世界にいるんだなあと思ってなんだか嬉しくなります。今は、「GO!GO!と一緒にやったんだよ!」ってマホちゃんに伝えたいですね。

「涙の味、苦い味」の〈散々だった最高だったラストライブ〉は実話です!

「涙の味、苦い味」は、バンドの思い出と現在が繋がる曲になりましたね。

アッコさんから「歌詞のキーワードになるようなものがあるなら送ってほしい」と言われて、私が書いたメモのようなテキストを送ったんです。今の私と中学生の私の気持ちが交差するような青春っぽい感じになったら素敵だなぁと思って、その頃を思い出して言葉を並べました。

もしかして、〈散々だった最高だったラストライブ〉は実話ですか?

実話です! 中3の時、私たちのバンド=Z!PPERの最後のライブがあったんです。そのライブでまさかのアンコールが起きて、もう歌う曲がなくて困っていたら、観客の誰かがGO!GO!7188の「雨上がり アスファルト 新しい靴で」をリクエストしてくれたんです。Z!PPERはマホちゃんがメインヴォーカルだったんですけど、その曲は私がヴォーカルの曲で気合いれて歌いました。でも、アンコールに応えて演奏したら、すでに燃え尽きていて歌もギターもグダグダになっちゃって……

解散ライブが「涙の味、苦い味」になってしまった?

人生初めてのアンコールだったのに、ライブが終わった後はみんなドヨーンと落ち込んじゃって……今はその時の自分やメンバーに「大丈夫だよ」って言ってあげたい、そんな話をアッコさんに伝えたら、めちゃめちゃ素敵な歌詞にしていただいて、泣きました。

のんさんの中学時代の〈愛すべきキラキラ〉が甦るような曲になりましたね。

本当に。マサヤンが撮ってくれたバンドの写真を見ると、みんな可愛くて、一生懸命で、ちょっとダサくて(笑)、「あー、こんな時もあったんだなー」って。振り返ると、失敗や苦い記憶も含めて、大事な時期だったんだなと思います。この曲は、今、青春真っ只中の人にも、かつてそんな青春を過ごした人にもぜひ、聴いてもらいたいですね。

音楽は自分の思ったことを自由に表現できる特別な場所。

音楽活動をスタートして2年。今回のミニアルバムで、過去の自分を振り返る気持ちになれたのは?

GO!GO!のお二人に曲を提供していただいたことが、あの頃を思い出すきっかけですね。恥ずかしくて穴に入りたくなるような経験も含めて、すごく大事なかけがえのない時間だったんだなと思ったんです。この2年、音楽を通して素晴らしい先輩や大好きな方々と共演させていただいて、勇気をたくさんもらったことも大きいです。

音楽はのんさんにとって、自分らしくいられる場所なんですね。

そうですね。自分の思ったことを自由に表現できる特別な場所でもあります。曲作りはまさにそうだし、ライブで生のリアクションが返って来たり、皆さんと同じ時間を共有できるのも他のお仕事にはない喜びだし、気持ちをひとつにしてみんなで演奏する楽しさや清々しさは音楽でしか味わえない。そういえば、音楽では幸せな経験ばかりしていますね。難しいな~と思うことはたくさんあるけど、これからもずっと続けていきたいと思っています。

『ベビーフェイス』の逆襲は続くんですね?

はい!(笑)。ライブも頑張ります!

その他ののんの作品はこちらへ。

ライブ情報

のん”ベビーフェイス”ライブ!

6月16日(日)東京・WWWX

YATSUI FESTIVAL! 2019

6月15日(土)TSUTAYA O-EAST

のん

女優/創作あーちすと。1993年7月13日、兵庫県生まれ。2016年に長編アニメーション映画『この世界の片隅に』で主役すずの声を担当し、第90回キネマ旬報ベスト・テンの日本映画ベスト・テン1位、第71回毎日映画コンクール日本映画優秀賞、第40回日本アカデミー賞の最優秀アニメーション作品賞など多数の賞を受賞。以降、様々なCM、広告に起用される。2017年8月には自ら代表を務める音楽レーベル「KAIWA(RE)CORD」(カイワ・レコード)を発足。ライブイベント『WORLD HAPPINESS 2017』のスペシャルゲストの出演を皮切りに音楽活動を開始し、同年ファースト・シングル『スーパーヒーローになりたい』を発表。2018年には矢野顕子、高橋幸宏、大友良英、真島昌利など豪華制作陣を迎えたアルバムCD『スーパーヒーローズ』をリリースし、全国4ヶ所を回る『SUPER HEROES TOUR』を開催。今秋はオフィス3○○の新作舞台「私の恋人」への出演、2020年公開予定の映画「星屑の町」のヒロイン役が決定している。

オフィシャルサイト
https://nondesu.jp/