Interview

『ザ・ファブル』で福士蒼汰があらためて舌を巻いた、 岡田准一が緻密に練り上げたアクションの深みとは?

『ザ・ファブル』で福士蒼汰があらためて舌を巻いた、 岡田准一が緻密に練り上げたアクションの深みとは?

どんな相手も6秒以内に殺す、という伝説から、“寓話=ファブル”の異名をとる凄腕の殺し屋がいた。そんな殺しのプロに新たに課せられたミッションは、「1年間誰も殺さずに一般社会に溶け込んで生活すること」。ある意味もっとも難しい指令に、苦闘する主人公──という、規格外の設定とストーリーで「2017年度講談社漫画賞(一般部門)」に輝いた人気コミック『ザ・ファブル』が、待望の映画化! 主人公・ファブル=佐藤アキラを演じる岡田准一の超人的なアクションとトボけたキャラクターが話題だが、クレイジーな敵役に配された福士蒼汰の怪演も見どころの一つ。その役どころの掘り下げ方や現場でのエピソードなど、幅広い話を福士に語ってもらった。

取材・文 / 平田真人 撮影 / 増永彩子


映画のテーマとして…調和できた人とできなかった人の話でもあるのかな、と思ったりもしました。

福士蒼汰 エンタメステーションインタビュー

原作および脚本を読まれて、『ザ・ファブル』という作品に対してどんな印象を抱いたのでしょうか?

出演が決まってから原作を読みましたが、視点がとても面白いなと思いました。プロの殺し屋が単にミッションをこなしていくだけじゃなくて、日常に入り込んで一般的な生活をしようとするとどうなるのか、というのが新しいなと。自分の役が“フード”というキャラクターであることも聞いていたので、どんな人物なのかなと興味を抱きながら原作を読み進めていき、その後で脚本を読んだ時、フードをどうやって立体化していったらいいのかなと考えていきました。岡田准一さんの演じられる主人公のファブル=佐藤アキラとは敵対する役なので、フードは対照的なキャラクターになればいいのかな、といったような──。

原作よりも映画の方がフードというキャラクターのふくらみ方が大きくなっていますが、そこはどう読み解きましたか?

原作では、わりとあっけなく退場しちゃうキャラクターなんですが、(笑)、映画の中ではところどころでフォーカスが当たっていたのが嬉しかったです。ただ、難しかったのは原作から読みとれる要素が少ないので、自分でつくりあげていく部分と作品全体を見た上でのフードの役割を考えて芝居しないといけないことでした。それが今回の課題であり、注意しながら演じようと心がけていました。

福士蒼汰 エンタメステーションインタビュー

フードとバディを組むコード役の木村 了さんとの関係性は、どんな感じだったのでしょう?

了くんとは舞台の稽古で一度だけご一緒したことがあるんですけど、今回はバディとしてガッツリ絡むことができて、「やったぁ!」と思いました。話し合いながら芝居を組み立てていけたらいいなと考えていたんですが、了くんもすごく話し合いを大切にしてくれたんです。「こういう関係性にしようよ」と連絡を取り合いながら構築していったことで、ファブルとはまた違う意味での対照的なキャラクターになったというか。フードは一直線にファブルを見ている人間ですが、了くん演じるコードはもっと好奇心旺盛で、気になることは全部やりたくなっちゃうようなところがあって。了くん曰く、フードとコードは“渋谷系殺し屋”だそうです。江口カン監督もおっしゃっていたんですけど、基本的に2人は大学生のノリでいい、と。彼らにとっては殺しもゲーム感覚なんですよね。なので、殺しのプロフェッショナルであるアキラ=ファブルに対して、フードとコードは遊び、大学生のノリで殺しをやっているということを常に意識していましたし、監督からも毎回、プロっぽくならないようにというディレクションをしていただきました。“ケータイをいじるように”銃を扱って人を殺めていくところに、監督のイメージが集約されていたんじゃないかなと思います。

『ザ・ファブル』福士蒼汰

序盤から、フードの無邪気な狂気に怖さを感じました。福士さんご自身のイメージとは異なる役だったのかな、と思います。

自分がどのように見られているのかはわからないですが、今お話したように、基本的に大学のサークルみたいなノリで殺し屋をしている、という意識でフードを演じていたので、撮影期間中は酷い人間を演じているという感覚ではなかったです。…冷静に現実世界に置き換えて考えてみると、そういった感覚が麻痺していたことが一番酷かったのかもしれませんが、演じている側としては意外と大学生の役と変わらないところがありました。

そんなフードと福士さんの間に、どこかつながる糸のようなものはあるのでしょうか?

何事も意外と軽いノリでできるところは、ちょっと通じているかもしれません。あまり煮詰めてやるということがないんです、自分自身も。どちらかというと、ずっと弱火で煮詰まらないようにしながら試してみるというか…最初は弱火で軽めに加熱して、「これはいけるな」と思ったら強火にして本気を出す、という感じで火加減を調節するスタンスだったりもするので、そういう意味では似ているのかもしれません。

なるほど。ただ、フードもコードも…ファブルもですけど、人を殺めることに対する罪悪感が欠落しているところがあって、そこもまた怖いなと感じました。

目的を達成するためには手段を選ばないような人だなと、自分も感じました。だから、ファブルを見つけるためだったら平気で人を裏切るし、殺めるし、何でもしてしまうんじゃないのかな、と。

福士蒼汰 エンタメステーションインタビュー

そういった役を演じられてみて、お芝居の部分で演じ甲斐を見いだすといったことは…?

そうですね…誤解を恐れずに言うと、楽しかったです。ファブルを追いかけていく中で、ゾクゾクしたりガッカリしたりと、常に心が動いているキャラクターでしたから。でも、難しいのはそれを表に出さないキャラクターだったところです。コードは感情を表に出す一方、フードはめったに出さないというお互いの色を了くんと話して定めたので、そうした中で感情の変化をつけていくのには神経を使いました。

そうやって抑えていた感情が、クライマックスでのファブル=アキラとの立ち回りで爆発しますね。福士さんの中でも解き放つような感覚があったのでしょうか?

ありました。監督からも「そこまでフードはずっと我慢していたんだよ」と言われましたから(笑)。なので、「やっと会えたねぇ」とアキラに言ってから戦うまで、ずっと奇声と笑いをあげ続けているんです。ただ、セリフに関しては、言うか言わないかもふくめて撮影の前日に決まったという感じでした。アキラを追いつめようとする意味合いでもセリフを言おう、ということになったので、「こういうセリフ、どうですか?」と監督に提案させていただきましたが、「あぁ、いいかもしれない」って、受け入れてくださって。それで、劇中でのセリフになったんですが、実際に現場で言ってみたら、監督が「もっと荒々しくいこう!」と、おっしゃるんです。でも、それは監督にはその時点で“画”が見えていたんだと思うんです。完成した映画を見て「なるほど」と思いましたから。セリフや奇声に加えて、効果音や音楽も足されていて、アキラを追いつめていく様がスリリングに描かれていて、思わずうなりました。

福士蒼汰 エンタメステーションインタビュー

ある種、瞬発力を求められることも多かったということでしょうか?

当日になって「このシーンはこうしてみようか」というパターンも多かったですが、慣れてはいるんです。ドラマの現場ではわりと当たり前のことだったりもしますし…そもそも、役者を始めてからすぐに主演させていただいた『仮面ライダーフォーゼ』でも、相当に瞬発力を鍛えられたので(笑)。でも、『ザ・ファブル』の現場で、監督と自分たちとで芝居のイメージを擦り合わせていくプロセスは結構時間を掛けていました。「こうしてみたら、お互いのイメージに近づくかもしれないね」といった感じでディスカッションをしながら、じっくりと擦り合わせていく感じだったんです。

江口カン監督はCM界でも異彩を放っているクリエイターですけど、映画における演出で、“らしさ”だなと思ったのはどういったところですか?

ビジュアライズがはっきりしているというところです。「こう見せたいんだ」という“画”が監督の中で決まっていて、自分たちもそこに目線を合わせていくという作業が、すごく楽しかったんです。完成した映画も映像的に洗練されている印象がありますし、CGの使い方のアイデアが面白いなと思う部分がたくさんあって、そういうところに江口監督らしさを感じました。

アクションだけでも見応えがありますけど、ちょっとシニカルな人間関係の描き方から、クエンティン・タランティーノとかロバート・ロドリゲスを好きな人も楽しめる要素があるようにも思いました。

いろいろなジャンルが混ざっているんだな、と感じました。コメディーもありつつ、派手な殺しのシーンもあれば、人間味を感じさせるシーンもあって。観る方によってピックアップするポイントが違ってくるのも、特徴だと言える気がします。自分としては、ファブルとボス(佐藤浩市)、また小島(柳楽優弥)と海老原(安田 顕)の関係性に透けて見える親子的なつながりが気になりました。でも、観る人によっては激しいアクションシーンが面白いと感じたりもするでしょうし、コメディーの要素で笑う方もいるでしょうし…それぞれ見終えた後に感想を言い合って、「ここが面白かった」「そこがよかった」みたいに盛り上がってもらえたらうれしいです。

『ザ・ファブル』福士蒼汰

確かに、ファブルとボス、小島と海老原の“疑似父子”の関係から描かれる人情も味わい深いですよね。

自分は、ボスと少年時代のアキラのシーンがすごく好きなんです。ボスの「俺の命令なく死ぬな」っていうひと言に、親のようなぬくもりがあって。アキラもそれを踏まえて、ボスの言うことを聞いて、誰も殺さずに何とかしようとするわけじゃないですか。教えをちゃんと守っているのがいいなと思いました。自分の役柄や関わり方もあって、わりと今回は作品そのものを客観的に見ることができたんですが、小島と海老原、アキラとボスの関係性がすごく自分の中では染みましたし、映画のテーマとして…調和できた人とできなかった人の話でもあるのかな、と思ったりもしたんです。フードで言うと、裏の社会に調和しちゃっていて、人を殺めることに何のためらいもなく生きている。一方で、アキラは表の社会に調和しようとしている人で、小島は反対に調和できなかった人みたいなところがあるじゃないですか。そんなふうに、いろいろと考えさせられる映画でもあると思うので、そういう部分も感じとっていただけたらいいなと思っています。

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