LIVE SHUTTLE  vol. 351

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時代をつなぐ架け橋となる新しい音が誕生。 access恒例の春ツアー、東京公演をレポート!

時代をつなぐ架け橋となる新しい音が誕生。 access恒例の春ツアー、東京公演をレポート!

access ELECTRIC NIGHT 2019
2019年5月18日 新木場STUDIO COAST

即興性が強いELECTRIC NIGHTは、この日この瞬間だけの音。再現は不可能。

そして、令和の幕は上がった。

この<そして>、つまり接続詞がなければ、文章と文章がつながらないから、古今東西すべての小説は成り立たない。例えば神経と神経をつなぐシナプスがなければ、情熱も興奮も伝わらないから、辞書から<創作>の二文字が消えてしまう。いわゆるパソコンのアイコンがなければ、プログラムとライトユーザーがつながらないから、いまだにコンピューターは専門家だけの特権だっただろう。ことほどさように、芸術や科学、経済や政治など、どの分野でもつながりこそが活力源だ。つながりは架け橋。ゆえに、森羅万象は架け橋でできている。

平成に始まり、令和で終わる〈access ELECTRIC NIGHT 2019〉。平成から令和への架け橋となるツアー。オープニングは「Only the love survive」。冒頭からツアーのテーマを高らかに掲げた。いうまでもなく「Only~」は、accessが約7年の眠りから目覚めた2002年、リブート第一弾シングルとなった曲だ。これを含むアルバムは、活動休止前と活動再開後をつなぐ架け橋である、との思いから『CROSSBRIDGE』と名づけられたことを思い出す。

次曲は「24sync」。前曲のロンドンフレーバーから、大西洋を渡る橋を駆け抜け、マイアミへやってきた。アゲアゲ気分。浅倉大介のリアルタイム・リミックスが炸裂。即興性が強いELECTRIC NIGHTは、この日この瞬間だけの音。再現は不可能。一期一会。だから、楽しさも緊張感も規格外。貴水博之はというと……。これがまったく動じない。めくるめくリアルタイム・リミックスを目の当たりにしても、揺るぎないボーカルを聴かせる。普段は、ベテランだの、貫禄だの、大御所的な言葉とは縁遠い、親しみやすいキャラクターの貴水なのに、ボーカルとパフォーマンスは別。30年に手が届くキャリアの成せる業。

続く「EDGE」は、大胆にリアレンジされ、もはや別曲、もはや新曲。accessとMETAVERSE(浅倉ソロ)のコラボ曲の様相を呈していた。ただし、浅倉の奔放な発想が形になるのも、貴水の対応力と柔軟性があればこそ。ひとつのスタイルでしか歌えない、ある意味、頑固なボーカリストだったら、リアルタイム・リミックスや「EDGE」に代表されるラジカルなリアレンジは、企画倒れになってしまう。

「EDGE」から「S」への流れも秀逸だった。マニアックからポップへ、あるいはクレイジーVSセンチメンタルというべきか。J-POPという枠の中に入れると、尖りまくっている「S」なのに、リニューアルされた「EDGE」からの流れにより、ポップさやセンチメンタリズムがより際立った。また、二人で扇子を持ち、音だけではなく、視覚でも和の要素を強調。

音が途切れることなく「ELECTLIC☆NIGHT」へ。激しくうねる重低音。筋力増強剤を大量に注入したリミックス。いわばマッスル・バージョン。

怒涛の「ELECTLIC☆NIGHT」から「Especially Kiss」へのつなぎは、まさに<一転>という言葉が似合う落差。前曲との対比で、「Especially Kiss」のさわやかさやすがすがしさがより際立つ。クラブDJがEDMや2ステップ中心のマニアックなプレイリストに、いきなりバブルガム・ポップをぶち込んできたようなつながりだ。この驚きの架け橋により、ステージとフロアがグッと近づいた。浅倉は、ショルダーキーボードを抱え、アクティヴに動き回る。健康志向のおかげなのか、軽快なフットワークだ。本人曰く、関節の可動域が随分と広がった、らしい。貴水は、キラキラした笑顔で歌う。

「なぜ、来ない!」。本編唯一のMCでの貴水の第一声。生中継しているニコ生のカメラに向かって、お約束の一言。フロアがどっと沸く。

「令和初の東京、というか、千葉ですけど……」。浅倉のMCでは、フロアがザワつく(笑)。すかさず貴水がフォロー。「大ちゃん、東京だよ」。どんな脚本家も書けない、意表を突いた浅倉の天然発言。どんな名優も演じられない、貴水の絶妙の間。事実は小説より面白い。

こんなMCのおかしさも、その日その場にいなければ、なかなか伝わらないかもしれない。リアルタイム・リミックスの緊張と、accessらしいユルユルのMCの落差は、生中継でも伝わりにくい空気だ。

「Bet」。先の「EDGE」同様、もはや別曲、もはや新曲の域。原形は、サビでの爆発力が肝。一方、ELECTRIC NIGHTバージョンは、ひとつのグルーヴで押し通す。サビを増幅することで、爆発力を増すリミックスとは反対の方向性だ。ダークサイド・ミックスというべきか、アーバン・ミックスだろうか。トランキライザー・ミックスもよさそうだ。

静かなイントロがフロアの空気を清める。「Knock beautiful smile」。浅倉の指先から放たれるピアノの音色がキラキラ光りながら、オーディエンスの頭上で舞う。テクノの聖地であるイビザ島への架け橋に思えた。心のスクリーンにその島の夜明けが映し出された。そのまま、浅倉のソロコーナー(DJ mix)へ。だが、ソロだけ別世界という印象ではない。「Knock~」から次へつなぐ、超ロング・クロスフェードの役割を担っていた。

ステージに貴水が戻ると「COSMIC RUNAWAY」。ご存知のとおり、浅倉ソロのレコーディングに貴水がゲスト・ボーカルとして参加し、この曲を歌ったのがaccess結成のきっかけ。だから、「COSMIC~」は、ソロからユニットへの架け橋、結成時と現在をつなぐ橋、平成から令和への橋梁……。一段高いお立ち台からオーディエンスと視線を合わせる浅倉と貴水。そう、視線も架け橋だ。ライブならではの架け橋だ。浅倉と貴水とオーディエンスをつなぐ、音にも負けない濃厚なコミュニケーション。

貴水が再び扇子を手にした「Crack Boy」。そのまま「Let me go」へつなぐ。「PINK JUNKTION」では、ピンクの照明でステージもフロアも染まった。この3連発にもELECTRIC NIGHTらしさが詰まっていた。ネオ80’sとでもいうべき「Crack Boy」も、チャラ男キャラ満開の「Let me go」も、発表当時(94年当時)はかわいらしくもあった「PINK JUNKTION」にしても、それぞれ原形にはない要素を注入されビルド・アップ。こうした浅倉のリアルタイム・リミックスを、最上級の敬意を込め、<乱暴>と言いたい。これくらいなら許される、そんな許容範囲や安全地帯を軽々と越えてくるからだ。硬くいえば、予定調和との格闘がELECTRIC NIGHTらしさ、ではないだろうか。

予定調和とは、スタートからゴールまできっちりと橋を架けること。したがって、いかに架け橋を崩すかがELECTRIC NIGHTの醍醐味ともいえそうだ。架け橋をテーマにしながらも、架け橋を崩すELECTRIC NIGHT 2019とは……。なにやら大きな矛盾を抱えていると思うかもしれない。が、accessはメビウスの輪だ。あのねじれた輪に、表と裏がないのと同じ、accessは新しさと懐かしさ、マニアックとポップが混然一体となっている。だから、架けるも壊すもひとつ。矛盾はない。架けて壊すと、壊して架けるが表裏一体を成すのが創作だと、ELECTRIC NIGHTが改めて示してくれていた。

ちなみにたとえ曲の原形を知らなくても、浅倉のViolent creationはわかる。今どき、メンバーにDJがいるバンドやグループは珍しくないが、それのどのDJよりも攻撃的かつ過激なライブサウンドを放つのが、ELECTRIC NIGHTでの浅倉。その意味では、世界広しといえども、浅倉ほどリミックスをライブエンターテインメントにしているクリエイターはいないだろう。つまり、最先端の音楽スタイルが、もしくは音楽の未来像がここにあった。

貴水がスタンドマイクで歌ったのが「Dream Runner」。本編18曲中、もっともロック・フレーバーな印象でスタート。ところが、曲が進むに連れ、リアルタイム・リミックスが本領を発揮。徐々に音像が変わる。中盤からは、ロック・フレーバーはどこへやら。完全なテクノ。しかも、次曲の「FIND NEW WAY」へのつなぎが圧巻。「Dream~」のアウトロでメタリックな高音を強調。オーディエンスの耳の中に、鼓膜がチリチリする高音を残しておいての「FIND~」だ。高音が充満する外耳道に、「FIND~」のイントロでさらに高音を流し込む。テンポやキー重視のつなぎとは異質なそれが強力に新鮮だった。

そんな新しさと、あの頃を思い出す懐かしさが注ぎ込まれた「FIND~」。ヒート・アップ必至のナンバー。♪光を、♪夢見る……。曲中、オーディエンスのレスポンス(声)をしっかり際立たせるため、貴水がフロアをあおり、浅倉がすべての音をミュートするなど、accessとオーディエンスのあいだに橋が架かる。続く「JOY TRAIN」は、アムステルダムあたりのクラブを思わせるリミックス。

accessとオーディエンスを、あるいはステージとフロアを結ぶ橋を<渡っておいでよ>というように、観客にボーカルを任せたのが「MOONSHINE DANCE」。ここまで観客の歌をフィーチャーしたのは、もしかしたらaccess史上初かもしれない。その点では、これもまた、ELECTRIC NIGHTならではの新しい形だろうか。締めは、3月から配信がスタートしたばかりの「Grateful Circle」。昨年のHeart Miningツアーでお披露目された新曲だから、2018と2019をつなぐ架け橋ということになる。そう、ELECTRIC NIGHT 2019は、架け橋で始まり、架け橋で締めるセットリストだった。

しかし、架け橋は、まだ終わらない。先へと伸びる。未来を目指す。アンコール1曲目がそれだ。まだ曲名も歌詞もない新曲。貴水は、日本でも英語でもラララでもない、貴水語で歌った。もちろんアレンジも固まっていない。プロトタイプやβ版、いや、α版よりも前の新曲。これをステージに乗せるのがaccessだし、ELECTRIC NIGHTだ。MCでも浅倉は「いつか形にする」とも、「今年中に配信する」とも、断言しなかった。これがいい。約束のない未来。予定調和ではない期待。予定調和という橋を壊してきた浅倉が架けた橋。先述の<架けて壊すと、壊して架けるが表裏一体>がここにも凝縮されていた。

accessの二人の出会いのきっかけにもなった「1000年の誓い」は、浅倉のキーボードと貴水のボーカルとオーディエンスのシング・アウトだけ。accessaccessであるための三大要素だけ。accessトライアングルの3つの点をつなぐ架け橋が共鳴していた。ここでいつもの締め曲「LOOK-A-HEAD」へつないでも十分だったが、accessはそういう安全な石橋は渡らない。浅倉が「踊れるものなら踊ってみろってくらい強気でリミックスします!」と言い放ち、もはや別曲、もはや新曲の域にある「JULIET」。ひたすら先が読めない、1秒先に何が起こるか予測不能なELECTRIC NIGHT。締めはいつもの「LOOK~」。ディープな「JULIET」からの流れで、いつも以上の解放感と達成感。幸せホルモンが噴出しているオーディエンスの顔が、このステージの成功を物語っていた。

こうしてaccessの平成が幕を閉じ……。そして、令和の幕は上がった。

取材・文 / 藤井徹貫 撮影 / 田中和子(CAPS)

access ELECTRIC NIGHT 2019
2019年5月18日 新木場STUDIO COAST

SET LIST
01.Only the love survive
02.24sync
03.EDGE
04.Tragedy
05.S
06.ELECTLIC☆NIGHT
07.Especially Kiss
08.Bet
09.Knock beautiful smile
  ~DJ mix~
10.COSMIC RUNAWAY
11.Crack Boy
12.Let me go
13.PINK JUNKTION
14.Dream Runner
15.FIND NEW WAY
16.JOY TRAIN
17.MOONSHINE DANCE
18.Grateful Circle
EN1. 新曲
EN2. 1000年の誓い
EN3. JULIET
EN4. LOOK-A-HEAD

ライブ情報

access TOUR 2019 AUTUMN

10月13日(日)厚木市文化会館
10月27日(日)中野サンプラザ
11月23日(土・祝)舞浜アンフィシアター
12月1日(日)一宮市民会館
12月14日(土)大阪コスモスシアター

ニューシングル「Grateful Circle」配信中!

配信サイト(PC用)
https://linkco.re/u1U5n38s
配信サイト(スマホ用)
https://linkco.re/u1U5n38s

access

浅倉大介(プロデューサー)/貴水博之(ボーカル)からなるユニット。1992年11月26日、「VIRGIN EMOTION」でデビュー以来、「MOONSHINE DANCE」「夢を見たいから」などヒット曲を連発。1994年には、3rdアルバム『DELICATE PLANET』でオリコン初登場1位を獲得し、その年の『NHK 紅白歌合戦』にも出場する。1995年、一旦活動休止をするが、2002年、access再始動。以来、毎年全国ツアーを始め、シングルやアルバムもコンスタントにリリースし、精力的に活動している。ニューシングル「Grateful Circle」が好評配信中。

オフィシャルサイト
http://www.access-web.jp

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