横川良明の演劇コラム「本日は休演日」  vol. 17

Column

35歳のおっさん、うっかり真澄に落ちる。

35歳のおっさん、うっかり真澄に落ちる。
今月の1本:MANKAI STAGE『A3!』~SPRING 2019~

ライター・横川良明がふれた作品の中から、心に残った1本をチョイス。独断と偏見に基づき、作品の魅力を解説するこのコーナー。今月はMANKAI STAGE『A3!』~SPRING 2019~をピックアップ。うっかり落ちてしまったあのキャラクターへの愛を、人の迷惑も顧みず語り尽くします。

文 / 横川良明


うちの真澄がかわいすぎてどうしていいかわからない

春組単独公演、お疲れ様でした。

初の単独公演、どんなものか見られるかワクワクでいっぱいでしたが、期待以上でした。前回の~SPRING & SUMMER 2018~に比べ、春組だけにスポットライトが集中した分、劇団員一人ひとりのキャラクターがより深く掘り下げられ、それぞれの関係性もより立体的に……と、かしこまった文章をなんとか書きたかったのですが、溢れ出るパッションがもはやこらえきれません。

言っていいですか? もう言っちゃっていいですか??

うちの真澄くん(牧島 輝)、かわいすぎませんか???

普段はクールで他人に無関心なのに、監督の前では一途な愛犬。そのギャップにかねてよりこいつはヤバい案件だと心のJアラートは鳴りっぱなしでしたが、もう今回は迎撃態勢に入る前からテポドンが本土に着弾してた。

監督に振り向いてほしい一心で、大人の五箇条をメモって、こっそり自己採点しているところとか、愛らしすぎて日本列島がもんどり打つ勢い(しかも採点甘いな)。クラスメイトの女子たちにいくらアピールされても歯牙にもかけないあたり、塩対応の上を行く青酸カリ対応。でもそんなそっけなさも監督一筋だからこそと思うと、私の中の森山未來が世界の中心で愛をさけんでいる(しかも制服可愛いな)。大人になりたくて無理している姿がいじらしくて、今すぐ髪をわしゃわしゃ撫でまわしたくなりました。

そして極めつけが劇中劇のシーン。思えば、稽古に手を抜くことはなかった真澄ですが、それもすべて監督への愛ゆえ。決して演劇が好きだから、ではないのです。そんな真澄がついに芝居の楽しさに目覚めるのが、今回のハイライト。役を通じて、弱い自分を認め、誰かと関わることの大切さを知る真澄に、僕の心は歓喜の歌。これがLINE LIVEならキャンディあげたい。

演じる牧島 輝がまた良いのです。ミュージカル『テニスの王子様』、『DIVE!!』The STAGE!!、そしてミュージカル『刀剣乱舞』~三百年の子守唄~と拝見してきましたが、口が悪くてぶっきらぼうなキャラが牧島輝は抜群によく似合う。茅ヶ崎 至 役の立石俊樹とともに歌声は伸びやかで、ふたりが歌いながら戦う格ゲーシーンは絵的な新鮮さと面白さも相まって、ワクワクしながら楽しませていただきました。

器用な綴がぶつかった壁に、全観客が応援団状態

真澄について語るだけで紙幅を使い切ってしまいそうになりますが、忘れてはいけないのが、今回のもう一人の主人公・皆木 綴(前川優希)。これまで『エーステ』では役者たちの葛藤を描写してきましたが、今回は座付き作家である綴を通じて、劇作家の苦悩を浮き彫りにします。

立場の異なるふたりのキャラクターの友情を描こうとするも、納得のいく結末が思いつかず、スランプ状態に陥る綴。本当に描きたいものは何なのか。自分自身の内面と向き合うことを強いられます。

綴は、個性派揃いのMANKAIカンパニーの中でも数少ない常識人タイプ。こういう真面目で善良な男の子が壁にぶち当たる展開に激しく揺さぶられてしまうのは私だけではないはず。

そもそも、さらっとやっているから誰も何も思っていませんでしたが、綴はMANKAIカンパニー復活からすべての公演に新作を書き下ろしているわけで、これって冷静に考えてものすごい超人ワザ。その心身の消耗具合を考えれば、これが太宰治なら早々と玉川上水に身投げしてるし、冨樫義博ならとっとと休載しています。それを毎回ちゃんと締め切りまでに間に合わせ、しかも劇団員ごとの性格に合ったキャラクターをきちんと書き分ける力もあるんですから、綴、商業作家として優秀すぎる説。

そんな、ある意味で器用貧乏すぎるほどに器用な綴が、過去の傷を乗り越えて、「描きたくても描けなかった」領域にまで世界を広げていくのが、今回の春組単独公演。個人的にはシトロン(古谷大和)の「過去のことを引きずるのは良くないよ」「気がついたね」の台詞にグッと来ました。日本語がまだまだ不自由なシトロンだからこそ、綴の書いた台詞を草木のようにピュアに吸収していたんですよね。シトロン、いいやつ……!

綴と水野 茅(笹森裕貴)によるたんぽぽの歌唱シーンはピュアで幻想的な雰囲気。その中でクシャクシャに顔を歪めながら泣き笑う綴の表情が忘れられません。

もちろん真澄や綴、シトロンだけでなく、態度は上からだけど、真澄とうまくコミュニケーションをとろうとする至も、一生懸命春組をまとめようと奔走する咲也(横田龍儀)も、そっと見守る他の組の仲間たちもみんなが愛すべきキャラクター。今回もMANKAIカンパニーが届けてくれる温かさに心がハッピーになりました。

今後も夏組、秋組、冬組と単独公演が続きます。また、MANKAIカンパニーのみんなに会える日を楽しみに、今日も僕たちは僕たちの毎日を生きるのです。

MANKAI STAGE『A3!』 〜SPRING 2019〜

東京公演:2019年4月25日(木)〜5月6日(月・休)天王洲 銀河劇場
大阪公演:2019年5月10日(金)〜5月14日(火)大阪メルパルクホール
新潟公演:2019年5月18日(土)〜5月19日(日)長岡市立劇場 大ホール
東京凱旋公演:2019年5月23日(木)〜6月2日(日)天王洲 銀河劇場

原作:イケメン役者育成ゲーム『A3!(エースリー)』
演出:松崎史也
脚本:亀田真二郎(東京パチプロデュース)
音楽:Yu(vague)
振付:梅棒

出演:
〈春組〉
佐久間咲也 役:横田龍儀
碓氷真澄 役:牧島 輝
皆木 綴 役:前川優希
茅ヶ崎 至 役:立石俊樹
シトロン 役:古谷大和

〈夏組〉
瑠璃川 幸 役:宮崎 湧

〈秋組〉
摂津万里 役:水江建太
古市左京 役:藤田 玲

〈冬組〉
月岡 紬 役:荒牧慶彦
雪白 東 役:上田堪大

水野 茅 役:笹森裕貴
迫田ケン 役:田内季宇
松川伊助 役:田口 涼

主催:MANKAI STAGE『A3!』製作委員会(ネルケプランニング、ポニーキャニオン、リベル・エンタテインメント)

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@mankai_stage)

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