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太田基裕が原作では語られていないハルトの物語を体現する。舞台『囚われのパルマ -失われた記憶-』開幕

太田基裕が原作では語られていないハルトの物語を体現する。舞台『囚われのパルマ -失われた記憶-』開幕

舞台『囚われのパルマ -失われた記憶-』が6月22日(土)〜6月23日(日)に大阪公演より開幕し、6月27日(木)より東京公演が上演される。
原作は、2016年8月よりカプコン(CAPCOM)から配信されているスマートフォン用体感恋愛アドベンチャーゲーム。孤島の収容施設を舞台に、主人公である“あなた”が相談員となって、記憶喪失となった青年・ハルトの心を紐解くストーリーと、「面会」「メッセージ」「差し入れ」といった独創的なゲーム性が、女性を中心に支持を得ている。
しかし、今回、舞台化されるのはゲーム本編ではなく、“あなた”と出会うまでのビハインドストーリー。記憶を失う以前のハルトはどんなふうに過ごしていたのか──。多くのプレイヤーが想像を膨らませた空白部分に果敢に切り込む。
いわゆる“2.5次元舞台”とはまたひと味違う領域へと挑んだ本作。期待高まるその内容の一部をレポートする。

*このレポートは大阪公演初日前日の6月21日(金)にサンケイホールブリーゼで行われた公開ゲネプロ&囲み取材の模様。

取材・文・撮影 / 横川良明


ガラス越しに心を通わせたハルトと、劇場で再会する

面会室に入ると、いつもガラス越しに物憂げな青い瞳を向けていたハルト。ミステリアスな眼差し。閉ざされた心。繊細で、脆くて、でもその中にさり気ない優しさがあって。たくさんのプレイヤーが愛したハルトはどんな青年だったのか。そのひとつの答えを、太田基裕が全身で体現してくれた。

舞台『囚われのパルマ ―失われた記憶―』 エンタメステーション

舞台は、ハルト(太田基裕)が勤める製薬会社・シーハイブ製薬。人里離れた開発研究所で、所長の政木(石橋徹郎)のもと、ハルトは研究員として働いていた。研究所内には、理性的で思慮に富んだ先輩・久保田 佑(村上幸平)や、ハルトに対して対抗意識をむき出しにする同期の山辺 航(清水一希)などの同僚がいるものの、ハルトは深く関わろうとはせず、ランチもいつもひとり。交わす言葉も最低限にとどめ、短い返答をぼそぼそと返すだけ。その目はいつも下を向いている。

舞台『囚われのパルマ ―失われた記憶―』 エンタメステーション

そんな何気ない目線や立ち居振る舞いに、ガラス越しに触れ合ったハルトの面影が見え隠れして、きっとゲームをプレイした方なら、太田演じるハルトが舞台上に現れた瞬間、「ハルトと再会できた」という感慨に浸れるはず。

舞台『囚われのパルマ ―失われた記憶―』 エンタメステーション

人と距離をとることで平穏を保っていたハルトの毎日は、あるふたつの出来事から少しずつ変わり始める。ひとつめは、ドイツの製薬会社から派遣されてきた研究員・篠木文乃(前島亜美)の闖入。明るく人当たりのいい篠木に、男ばかりの殺風景だった研究所の雰囲気は一気に華やぐ。しかし、いかにも女性に対して免疫のない山辺を誘惑して研究所の情報を探ろうとしたり、うだつの上がらないお荷物研究員・郷田修一(山岸拓生)にだけは冷淡な態度をとったり。その言動には何やら思惑があることがうかがえる。

舞台『囚われのパルマ ―失われた記憶―』 エンタメステーション

そしてもうひとつの大きな出来事が、鳴り物入りでスタートした新薬開発プロジェクト。アルツハイマー病に代表される神経変性疾患のための治療薬をつくると情熱を燃やす政木は、そのプロジェクトリーダーにハルトを指名する。新薬の名は、“ベアトリーチェ”。

ゲームの中で語られた“ベアトリーチェ”という名前が登場したことにより、いよいよ物語はハルトの記憶が失われた決定的事件へと舵が切られていく。

舞台『囚われのパルマ ―失われた記憶―』 エンタメステーション

そこにハルトの周りに出没する正体不明の人物・狩谷(悠未ひろ)、事故により急逝したハルトの両親・義人(青地 洋)と涼子(愛純もえり)、自らの野望のため現内閣を打ち倒すチャンスを狙う政治家の八木沼剛志(間 慎太郎)ら、いくつもの謎が絡み合い、物語はますますサスペンスフルに。

舞台『囚われのパルマ ―失われた記憶―』 エンタメステーション

張り詰めた空気のなか繰り広げられる緊迫のサスペンス

ゲームの舞台化と聞くと、血湧き肉躍るアクションや、ド派手な照明、映像などを用いた特殊効果が頭に浮かぶが、本作はそれらとは一線を画す緊迫の心理ドラマ。一部の場面を除けば、ほとんど劇伴もなく、役者の息遣いや靴音、タイピングの音が舞台を彩る通奏低音。それでいて中だるみを感じさせないのは、太田はもちろん、文学座の石橋、元宝塚宙組の悠未など、実力派の俳優陣が醸し出すオーラと的確な掛け合いが、舞台に張り詰めた空気をつくっているから。

舞台『囚われのパルマ ―失われた記憶―』 エンタメステーション

美術は、研究所と周辺のカフェを忠実に再現した具象舞台だが、その中に六角形を接合したような不思議なオブジェが置かれている。それは、分子構造式のようでもあり、蜂の巣のようにも見え、ゲームを知る者をつい唸らせる仕掛けとなっている。また、重要なキーアイテムである紫のアネモネも登場し、この先にゲームで見たあの世界があるのだという地続き感を演出している。

また、ゲーム未プレイであっても、独立したストーリーとしてきちんと成立しているので、心配する必要はない。むしろ近づく不穏な足音に心をざわめかせながら楽しむことができるはずだ。

舞台『囚われのパルマ ―失われた記憶―』 エンタメステーション

太田基裕の白衣姿は身長178cmでスマートな彼らしくエレガント。序盤のハルトは、淡泊で感情表現も平坦。それが、真相が明らかになるにつれ、研究者としての正義に燃え、政木との衝突も辞さない。決してハルトはクールで他人に無関心なのではなく、その胸の内には人に対する優しさと、両親と同じ研究者の道を選んだ彼らしい使命感があるのだということが見て取れる。

そんな太田の前に、圧倒的な存在感で立ちはだかるのが政木 役の石橋徹郎だ。場を引き締める威厳たっぷりの重厚感は影の主役と呼んでも過言ではないほど。政木の持つ男の嫉妬心と未練をドラマチックに表現し、なぜそれほどまでにハルトとベアトリーチェにこだわるのか、政木の言動に説得力を膨らませた。

舞台『囚われのパルマ ―失われた記憶―』 エンタメステーション

ラストシーンはゲームをプレイしたことがある観客にとっては思わず胸が震える、これ以上ない締め括り。そして、ゲームをプレイしたことがない観客にとっては、終演後、今すぐダウンロードしたくなるものとなっている。

ガラス越しではないハルトに出会えるのは、面会室ではなく、劇場だけ。太田の築き上げた人間・ハルトにぜひ会いに来て欲しい。

太田が実演! 元宝塚・悠未ひろ流カッコいい携帯の出し方とは?

ゲネプロ前の囲み会見には、ハルト 役の太田基裕、篠木文乃 役の前島亜美、狩谷 役の悠未ひろ、久保田 佑 役の村上幸平、八木沼剛志 役の間 慎太郎、そして政木 役の石橋徹郎が登壇。

舞台『囚われのパルマ ―失われた記憶―』 エンタメステーション

太田はいよいよ迎える大阪初日について「みんなで疑問に思ったことをセッションしながら今日までやってきました。そういう意味では非常に濃い稽古でもあったなと思います」と手応えを見せつつも、「どのようにお客さんのもとへ届くか、感じていただけるか、期待半分、まだ初日が開いていないので、不安半分なんですけど」と正直に心境を吐露。

そのうえで、「舞台はお客さんが来て成立するものだと本当に思っていまして。毎公演毎公演来てくださるお客様に感謝しながら板の上で一生懸命誠意を持って頑張っていきたい」と誠実な太田らしく気合いを入れた。

そんな太田だが、自身のブログで「悠未さんのポケットからの携帯の出し方がカッコよすぎて、溜め息が出ました」と綴っており、そこを記者から突っ込まれると、思わず悠未が「そんなこと書いたの?」と太田をチラ見。
慌てて太田は「申し訳ございません」と恐縮するも、石橋が「カッコいいんですよ。携帯の出し方もカッコいいし、しまっている感じもカッコいい」と太鼓判を押し、その流れで太田が悠未の携帯電話の出し方を再現することに。

「僕がやるんですか?」と動揺しながらも観念した太田。白衣をバサッと払って、ポケットから一直線にスマホを取り出すマイムを披露。しかし、恥ずかしさのあまり「載せないでください」とカメラに向かってお願いポーズ。「ちょっと誇張されています」と指摘する悠未に「そういうイメージです。風を感じました」と太田が伝えると、石橋も「もちろん感じました」と同意。シリアスな本編とは一転、太田のチャーミングな魅力と座組みの温かさが感じられる一コマだった。

大阪公演が終了した舞台『囚われのパルマ -失われた記憶-』は、6月27日(木)よりシアター1010にて東京公演が開幕。6月30日(日)に千秋楽を迎える。

ハルト役・太田基裕さんのインタビューはこちら
太田基裕の“記憶”にまつわるエピソード。舞台『囚われのパルマ -失われた記憶-』に向けて

太田基裕の“記憶”にまつわるエピソード。舞台『囚われのパルマ -失われた記憶-』に向けて

2019.04.05

舞台『囚われのパルマ ―失われた記憶―』

舞台『囚われのパルマ ―失われた記憶―』

大阪公演:2019年6月22日(土)~6月23日(日)サンケイホールブリーゼ
東京公演:2019年6月27日(木)~6月30日(日)シアター1010

STORY
閑静な場所にある大手製薬メーカー「シーハイブ製薬」の開発研究所。
そこで日々研究に勤しむ研究員、ハルト。研究所には先輩の久保田や郷田、同僚の山辺、後輩の島本など数名の研究員が働いているが、ある日海外の製薬会社から女性研究員、篠木が派遣されてくる。
新たなメンバーが加わった数日後、研究所所長である政木から新薬プロジェクトを立ち上げることが発表されたが……。
ハルトの周辺に突然現れる謎の男をはじめ、新薬プロジェクトをきっかけに、ハルトを待ち受ける運命の歯車が、少しずつ動き始める……。
ハルトが「あなた」に出会うまでを描いたビハインドストーリー。

原作・監修:カプコン
脚色・演出:カニリカ

出演:
ハルト 役:太田基裕

篠木文乃 役:前島亜美

狩谷 役:悠未ひろ
久保田 佑 役:村上幸平
小林祥子 役:頼経明子(文学座)
山辺 航 役:清水一希
島本拓海 役:瑛(あきら)
義人 役:青地 洋
涼子 役:愛純もえり

八木沼剛志 役:間 慎太郎
郷田修一 役:山岸拓生

政木 役:石橋徹郎(文学座)

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