Interview

横山だいすけ “だいすけお兄さん”から一歩踏み出した新作。歌に込めた思いとアーティストとしての理想像とは?

横山だいすけ “だいすけお兄さん”から一歩踏み出した新作。歌に込めた思いとアーティストとしての理想像とは?

NHK『おかあさんといっしょ』の11代目“歌のお兄さん”として知られる横山だいすけが、ニューシングル「ハレルヤルーヤ/愛したいひと」をリリースした。
歴代最長となる9年間に及び“歌のお兄さん”を務め、2017年4月に番組を卒業。同年8月には水野良樹(いきものがかり)が作詞作曲、プロデュースに蔦屋好位置を迎えた映画主題歌「さよならだよ、ミスター」を担当。’18年5月にはメジャー1stシングル「笑顔をあつめて」で本格的なソロデビューを果たし、2ndシングルに続き、7月24日(水)にはメジャー1stアルバムの発売を発表した“だいすけお兄さん”にソロのアーティストとして歩み始めた2年間を振り返ってもらった。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 荻原大志


小さいお子さんから、お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんまで楽しめるような音楽を届けられるアーティストになりたいなと思ったんです

この4月で卒業から丸2年が経ちました。アーティストとしてはどんな2年間でしたでしょうか。

最初の1年はすべてが新しいことの連続で、右に行けばいいのか左に行けばいいのかすらわからないような状態だったんですけど、去年は、もちろん新しいこともたくさんあったんですけど、自分が楽しいって思えるものや、もうちょっと深めてみたいなって思えるものを少しずつなんですけど深めることができた1年だったなって思いますね。
なので、アーティストとしてという意味で言うと、『おかあさんといっしょ』の歌のお兄さんの時は、「子どもたちにどういう歌を届けたいのか」っていうことを第一に考えていたんですね。それが卒業を経て、2年間歌っていく中で、子どもが音楽を聴く時には周りに大人がいて。家族や親戚、周りの大人の人たちが楽しめる、笑顔になるものって必ず子どもにも響くんですね。だから、外に出てからは、子どもが聴く時には必ず大人がいる。じゃあ、子どもだけじゃなく、広い世代の人たちに楽しんでもらえる歌、小さいお子さんから、お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんまで楽しめるような音楽を届けられるアーティストになりたいなと思ったんです。それがこの2年間で一番大きな変化かなと思います。

そう思うようになった具体的な出来事は何かありましたか?

例えば、ついさっきも、エンタメステーションの編集長さんに『子どもと一緒に見てました!』って言っていただいたじゃないですか。そうおっしゃってくださる方とお仕事をしたり、現場でいろんなお話を聞かせていただいたりする中で、やっぱり親御さんを含めて家族、皆さんが楽しんでくれているものって親子のコミュニケーションにつながったりもしますし、そういうものを音楽で届けられたらもっともっと楽しめるなって思ったんです。それはひとつ、大きなきっかけでしたね。『おかあさんといっしょ』の時は子どもたちと関わっている時間がダントツに多かったので、親御さんと話す機会ってほとんどなかったんですよね。「今、親になって壁にぶつかって」っていうお話はお手紙を通して知ることができましたけど、実際外に出てから、いろんなところで親御さんとお話させてもらう機会はすごく多くなったので、直接街中でお会いした人から「おじいちゃんおばあちゃんも孫と一緒に見てるんですよ」っていう話を聞いたりして。やっぱり自分は広い世代の人たちに楽しんでもらえるような音楽を届けていきたいなって思うようになりましたね。

今回はカッコいいっていうイメージが大きいなっていうのはありますね

横山だいすけ エンタメステーションインタビュー

シンガー/ヴォーカリストとしては歌い方を意識的に変えたりはされましたか?

大きく変えるということはそんなにしていないんですけど、たとえば「ハレルヤルーヤ」は今まで歌ってきていないようなカッコ良さがプラスされているというか、ラップもありますし。

最初に聴いた時にびっくりしました。だいすけお兄さんが「ラップしてる!」って。

あははははは。僕はどちらかというと、今まで避けて通ってきましたし、なるべくなら触れたくないくらいの勢いだったんですけど(笑)、今回、すごくカッコいい楽曲をいただいて、こういう曲も歌えるようになれば、きっとまた新たな横山だいすけ像が見えてくるんじゃないかなって思って。もう本当に手探りではあるんですけども、挑戦させてもらいましたね。本当にこれまでは、だいすけお兄さんといえば、温かさや優しさって言ってくださる方が多かったんですけど、今回はカッコいいっていうイメージが大きいなっていうのはありますね。

その歌の歌詞や情景が聴いている人にちゃんと届くような歌を歌いたいなと思っているんです

一方の「愛したいひと」のほうは、平歌の部分は「歌のお兄さん」の面影が見えますし、ミュージカル俳優としての歌唱法も入ってますよね。子供にわかりやすく伝える歌と、ソロアーティストしての自分の歌、ミュージカル俳優としてのうた、という区切りは何かご自身の中で明確に分けて考えてますか?

ひとつ大切にしたいなと思っていることがあって。これは、歌のお兄さんをやっている時からずっと思っていることなんですが、その歌の歌詞や情景が聴いている人にちゃんと届くような歌を歌いたいなと思っているんですね。だから、「愛したいひと」も、歌い方というよりも、夜空というキーワードがたくさん出てくるので、自分自身が満天の星の下で歌っているようなイメージをしながら、この曲を聴いていただいた時にその人も気がついたら星空の下で歌を聴いているような、そんなイメージをしながら歌った結果、こうなったっていう感じでしたね。

では、意図的に歌い方を変えているわけではないんですね。

そうですね。降ってくるような感じですね。こうやって歌おうというよりも、こんな感じかなって、自然とその歌になってくるというか……。あとは、それこそレコーディングの段階で、「今、自分はこう思ってるんですけど、どうでしょうか?」って制作陣と話し合いながら、新たな横山だいすけを作ってるという感じですね。アーティストとしてデビューした最初の時には、歌のお兄さんとしての歌い方というのは丸9年をとおして出来上がっていたものがあって。そこから新たに横山だいすけというアーティストとして売り出していくという時に、本当にみんなで手探りで、こうかなああかなっていうのをやってきて。またこの3年目に新たなジャンルに挑戦するっていうのは、やっぱり1年目の時とはちょっと違うというか。本当に卒業して1年目は、足して引いて足して引いての連続だったんですけど、今はどっちかというと乗っけていく作業ができているというのが大きな違いじゃないかなと思いますね。

9年間培ってきたものを引くのではなく、新たな要素を足してるってことですよね。

はい。今はどんどん積み重ねて、新たな色を作っている感じですね。

空が晴れるように気持ちも晴れやかになってもらえるような曲にしたいなと思って

少し話が戻りますが、ニューシングルの制作はどんなところからスタートしたんですか。

「ハレルヤルーヤ」は、ちょっと悩みがあったり不安な気持ちになった時に聴いてもらえたら、空が晴れるように気持ちも晴れやかになってもらえるような曲にしたいなと思っていて。カッコ良さもプラスされているので、この曲を聴くことでウキウキしてくるような曲になるといいなって思いましたね。これがまた『パズドラ』のオープニングテーマに選んでいただけたので、歌詞も『パズドラ』に合わせて作っていただいて。それはひとつ新たな楽しさっていうものを提供できたんじゃないかなと思います。またMVがまったく『パズドラ』のオープニングとは真逆の方向に行っているので、これはもう、横山だいすけを知らない人も楽しめるというか、どっちかというと知らない状態で見てもらいたいと思っていますね。だいすけお兄さんや横山だいすけを知っている人が見たら、たぶん目が3回くらいぽろっと落ちるくらい、びっくりする内容になってます。

あははははは。もう少し詳しく教えてください。前シングル「笑顔をあつめて」はだいすけお兄さんの代名詞である、変顔をテーマにしてました。

そうですね。やさしさや温かさというものをベースに作っていたんですけど、「ハレルヤルーヤ」のMVはストーリーがあって。雨が降っていて、子どもが晴れてほしいなという願いを込めててるてる坊主を作るんですけど、僕がそのてるてる坊主の化身というか、てるてる坊主刑事になって、仲間たちとともに雨雲製造工場に戦いを挑んで、晴れを勝ち取ってくるっていうもので。

爆発あり、銃撃戦あり、アクションあり、だいすけお兄さんからは想像できない世界観になってます

(笑)聞けば聞くほどわからなくなってきます。

これがですね、とんでもなく規模感が大きくなっていまして。まず爆発あり、銃撃戦あり、アクションあり、だいすけお兄さんからは想像できない世界観になってます。なので、だいすけお兄さんを知ってる人は、『なんだこれ! こんなMV新しい!』って感じてもらって、最後の最後に『だいすけお兄さんじゃん!』みたいなびっくりがあったら僕らの勝ちなんじゃないかなって思うんですよね。パッと見て、僕とはわからないようになってるんですよ、角刈りになってサングラスをしてるんで、はっきりとわからないんです、横山だいすけっていうことが。

本格的な刑事アクションドラマになってるんですね。何か撮影で印象に残ってることはありますか。

もうすべてが想像をはるかに超えていて。まず、朝4時に出発したんですけど、最初に撮ったのが後ろで爆発してるシーン。朝一から人生初の爆発を経験して、背中が一瞬で熱っ! っていう(笑)。一生経験しないんじゃないかなっていうくらい貴重な経験をしたり、僕が銃を持って発砲するなんていう、今までのだいすけお兄さんを知ってる人は想像できないんじゃないかなってこともしてます。だって、僕も想像できなかったですもんね(笑)。「どうやったらカッコ良く撃てるんですか?」って聞いちゃいましたし。
また、刑事として子どもの晴れてほしいっていう気持ちのために命を懸けて戦うっていうストーリーなんですけど、サビはまったく違う感じになってるんですよ。サビ、いきなり笑顔になったりしてるので(笑)。その落差はねぇ、ぜひ皆さんに感じてもらいたい。普通に見ててもズコッてなるような内容ですし、振りもキャッチーなものになっていて。歌も踊りも楽しむっていう二度オイシイ、だいすけお兄さんを知ってる人は「だいすけお兄さんじゃない! いや、だいすけお兄さんなのか?」っていう点で三度オイシイくらい、たぶん、5回くらい見て初めて全貌がわかってくるような映像になっているので、ぜひ見てもらいたいなと思います。

『おかあさんといっしょ』では愛という言葉はほとんど使わなかったんですね

横山だいすけ エンタメステーションインタビュー

完成を楽しみにしてます。レコーディングの方はいかがでしたか。

本当に挑戦でしたね。「ハレルヤルーヤ」はカッコ良さっていうものが光っている曲だと思いますし、なんども言ってるようにラップがあって。すごく難しくて、思い出すだけで僕もドキドキするんですけど(笑)、正直言って、新しい引き出しが出来たばかりなので、これからいろんな場所で歌いこんでいく中で、どんどん磨かれていくんじゃないかと思います。今の自分自身が持っている最大限の力を込めましたけど、まだまだどんどん成長していくんじゃないかっていう楽しみもありますね。
「愛したいひと」の方は、テイストとしては、だいすけお兄さんが歌っていた温かさっていうものがあるとは思うんですけど、愛っていうものをテーマに歌ったことがなかったんですよ。

しかも〈ままならない〉とも歌っていて。

そうなんですよ(笑)。『おかあさんといっしょ』では愛という言葉はほとんど使わなかったんですね。友情みたいなものはあっても。でもこれは、横山だいすけが36年間生きてきて触れてきた愛の形——恋愛であったり、友情であったり、僕が感じてきたものをこの歌に乗っけているっていう感じですね。聴き手の人には、皆さんが今、感じている身近な愛を思い浮かべながら、それぞれの楽しさでこの歌を感じてもらいたいなって思います。

水野良樹さんの提供曲ですが、最初にタイトルを聞いた時にどう感じましたか?

愛がテーマか!って思いました。「愛したいひと」かぁって。このタイミングで言っちゃいますか!って思いましたけど(笑)、きっと何か今まで歌ってないからこそ生まれてくるものがあるんじゃないかなって思ってワクワクしましたね。

「自分は持ってるけど自分じゃ気づけなかったもの」を、音楽を通して水野さんに引き出してもらったなって感じましたね

「愛してるひと」じゃなく、「愛したいひと」という言い方も独特ですよね。

僕も不思議だなって思いました。でも、水野さん、さすがですよね。その誰かっていうものが思い浮かびやすい歌詞になってるなって。それこそ今日、水野さんと会って話したんですけど、「自分の音楽は交通整理のような感じが特徴です」とおっしゃっていて。『水戸黄門』で毎回45分くらいに印籠が出てくるように、なんとなく見てる人も想像できる。わかりやすく言ったら、王道っていうのが自分の音楽なんだよって。それを聞いた時に、僕は今回、「自分は持ってるけど自分じゃ気づけなかったもの」を、音楽を通して水野さんに引き出してもらったなって感じましたね。水野さんは「交通整理」っておっしゃってましたけど、聴き手だけじゃなくて、歌い手の心をも引き出して、整理してくれる水野さんの音楽で、またこうやってタッグを組めたっていうのはすごく嬉しいですね。

水野さんとは2度目のタッグになりますね。

そうですね。「さよならだよ、ミスター」の時は、水野さんご自身がお子さんが生まれたばかりで、父親になった気持ちみたいなものを綴ってくださって。その時も、水野さんからお話を聞きながら、「自分もこういう家庭を持ってみたいな」とか、「自分に子どもができたらこんな感じなのかな」っていうイメージをしながら歌ったんですけど、今回は、卒業して丸2年経った時に、水野さんも今までとは違うテーマをすごく考えてくださって。

だから、これまで歌ってきてない“愛”がテーマになってるんですね。

そうだと思います。水野さんには「受け取る人には、さまざまな愛の形っていうのを自由に感じてもらいたいし、届けるほうも自身のいろんな愛の形を出してほしいな」っていうことを言っていただきましたね。〈きみはいつか真剣に怒ったね あなたを大事にしなきゃ〉ってありますけど、これは僕、昔同じようなことを言われたことがありまして。べつにそんな話を水野さんにしたわけではないんですけど、この詞を読んだ時に、僕にとっては、歌のお兄さんになること、夢を持って夢を叶えて、夢に向かって走ってる時間が何よりも幸せだったんですね。でも、そうやって目標に向かって頑張ってると頑張りすぎちゃう時があったりして。そんな時に、当時の大切な人に『もっと自分を大事にしなきゃダメだよ』って言われたことがあったんです。だから、この歌詞をいただいて、実際にレコーディングで歌う時に、自然と頭の中にその時の景色が思い浮かんだりして。
だから、こうやって歌おうっていうのではなくて、そう思った時に出てくる気持ちがこの音色に乗ると、聴いてる人にも似たような情景があった時に響くんじゃないのかなって。そういうのが歌詞のいろんな場所にちりばめられているので、これはもしかしたら、子どもよりも大人——長く生きた分、たくさんの愛に触れてきた大人の人に響くんじゃないのかなって思います。

新たな横山だいすけに触れていただきたいなって思います

シングルとしてはどんな一枚になりましたでしょうか。

まったくタイプの違う曲が両A面シングルとして出せたというのは、僕にとってすごく嬉しいですね。もう1曲、「Special days」という曲も入っていて。それはキラキラとしたPOPなサウンドで、笑顔と勇気が自然とあふれてくるような応援ソングになっています。その3曲の違いを皆さんにぜひ聴いてもらって、新たな横山だいすけに触れていただきたいなって思いますし、横山だいすけ流のエンタテインメントを詰め込んだアルバムも楽しみに待っていてほしいなって思いますね。


1stアルバム『歌袋』のインタビューは、7月24日(水)掲載予定です。

その他の横山だいすけの作品はこちらへ。

ライブ情報

「Family Live 2019@舞浜アンフィシアター横山だいすけ×小林よしひさ」
横山だいすけ×小林よしひさ~歴代最長コンビ 夢のタッグ!!~

<公演概要>
日程
8月24日(土)①10:30~②13:45~③17:00~
8月25日(日)①10:30~②13:45~③17:00~
8月26日(月)①10:30~②13:45~ 全8回

会場
舞浜アンフィシアター

オフィシャルサイト
www.daisuke-live.com/

横山だいすけ

千葉県出身。2006年に国立音楽大学音楽学部声楽学科を卒業。 幼い頃から歌が大好きで、小学校3年生から大学卒業まで合唱を続ける。 劇団四季時代は「ライオンキング」等の舞台に出演。NHK Eテレの幼児番組『おかあさんといっしょ』では、番組史上歴代最長となる9年間“歌のお兄さん”を務める。2017年4月に卒業後、ドラマ、バラエティ、CM出演、舞台、声優、CDソロデビューと活躍の場を広げている。

オフィシャルサイト
https://yokoyamadaisuke.com