Interview

乃木坂46・堀未央奈、自身の殻を破って挑んだ初主演映画『ホットギミック ガールミーツボーイ』。「“あの頃”の自分の気持ちをバネに頑張れた」

乃木坂46・堀未央奈、自身の殻を破って挑んだ初主演映画『ホットギミック ガールミーツボーイ』。「“あの頃”の自分の気持ちをバネに頑張れた」

若き女性映画監督たちの進境著しい昨今、そのムーブメントの旗手たる存在として多方面から耳目を集めている山戸結希監督。その待望の新作長編映画が、ついに公開された。相原実貴原作のコミック『ホットギミック』を、独自の色彩感覚と映像美によって新時代・令和にふさわしい「青春群像」に昇華。集合住宅という閉鎖的な空間を共有して育ってきた幼なじみや家族たちとの日々から、思春期を経て変化していく刹那な一季を過ごす、男女たちの心模様をビビッドに描いていく。

その主人公・17歳の成田 初(なりたはつみ)役には、乃木坂46の2期生にして中心メンバーとして活躍中の堀 未央奈が抜擢された。堀は生来の負けず嫌いを発揮し、演技経験がさほどない逆境を跳ね返し、見事に大役を務め上げた。またとない貴重な経験となった撮影での日々を、愛おしそうに振り返る彼女の言葉を、ここに刻む。

取材・文 / 平田真人 撮影 / 斎藤大嗣


作品の真ん中に立つというのはプレッシャーでしたけど、その重圧には絶対に負けたくないって思いました。

映画『ホットギミック ガールミーツボーイ』堀 未央奈 エンタメステーションインタビュー

初めて出演する映画で主役を演じると聞いた時、どんな思いを抱きましたか?

「えっ、本当に私なのかな?」って、最初は全然実感がなかったんです。「どっきりじゃないのかな」って、フワフワしていたと言いますか…(笑)。でも、その後に山戸結希監督とお会いして、2人でお話する機会をいただいた時に、夢じゃないんだなって感じることができました。ただ、撮影に入るまではずっと緊張感があって。演技はドラマの『ザンビ』くらいしか経験がなかったので、本格的にお芝居をなさっている役者のみなさんの中で、「山戸監督の演出に応えることができるのかな」、「主役として現場に立ち続けることができるのかな」って。でも、実際に撮影に入ると、そんなことを気にしていても仕方がなくて、とにかくぶつかるしかない、やるしかない、その一生懸命さというか、もがいている感じが初(はつみ)ちゃんに投影されればいいなと思って、ただただ…がむしゃらに演じていました。

映画の前半に出てくる、ゆりかもめ内で清水尋也さんとやりとりをするシーンは、聞くところによるとワンカット長回しの一発撮りだったそうですね。

テイクは数回やらせていただいたんですけど、15〜20分くらい、実際に長回しでした。撮影は結構序盤の方だったと思います。私自身もお芝居がまだ硬かった時に、いろいろなパターンを撮って、初の自信のなさだったり、地に足がついていない感じがちょうどリンクして出ていたのは、山戸監督の演出によるものだと感じていて。そうやって日が経つにつれて、キャストのみなさんとの信頼関係というか、仲間の絆みたいなものも深まっていったので、そこも映画に反映されているような気がしています。

映画『ホットギミック ガールミーツボーイ』堀 未央奈 エンタメステーションインタビュー

清水さんは意識的に堀さんに話しかけていたそうですが…。

人見知りなので、自分から話しかけることが得意じゃないんですけど、話しかけてもらえると壁を取り払えるんですよ。今回は初めてご一緒する方々だったので、一歩を踏み出すのに緊張していたんですけど、清水さんには助けてもらいました(笑)。でも、私も今後はいろいろとお芝居をさせていただきたいなと考えているので、そういう時に誰とでも分け隔てなくお話ができるように、コミュ力をもっともっと付けようと思い直しました。

ふだんは乃木坂46で女の子に囲まれていますが、今回は男性陣といる時間の方が長かったと思います。そこについてはいかがでしょう?

同年代の男の子と話す機会が握手会くらいですし、高校の時もほとんど女子と一緒にいたので、現場ではある意味お芝居よりもそっちに緊張していた部分もあって(笑)。でも、撮影が始まったら共演者の1人として、みなさん仲良くしてくださったので、助かりました。清水さんが先日20歳になったばかり、板垣(瑞生)さんはまだ10代で…間宮(祥太朗)さんはちょっと年上になるんですけど、お三方とも仲が良くて、私もすごく心地よく過ごさせていただきました。清水さんと板垣さんは映画(『ソロモンの偽証』)で共演されていたこともあって元々仲良しで、いつも面白いことを言っていて。間宮さんも基本は落ち着いていらっしゃるんですけど、時々笑わせてくださったり…いつも家族と一緒にいる感じで、ほっこりしていました。

映画『ホットギミック ガールミーツボーイ』

なるほど。では、初という女の子を、堀さん自身はどう消化していったのでしょうか?

ちょっと自分に自信がなくて……どういうふうに振る舞っていいのかわからないという17歳の女の子って、けっして特別な存在じゃないと思っているんです。私自身も乃木坂に入る前は初ちゃんのように自信がなくて、人ともあまり話せなかったりしたので、自分自身の中にもあった部分でした。乃木坂の活動やいろいろなお仕事をさせていただく中で、ようやく自分の思いをはっきり伝えられるようになれたので、「初ちゃんの感情、理解できないな」というものではありませんでした。もちろん、初ちゃんのすべてが自分自身と重なるわけではありませんでしたが、共感できるところはたくさんありましたし、演じている中での発見もあったので、深く考えすぎず、シンプルに自分の感情に身を任せて演じていました。

発見と共感について、もう少し具体的に聞かせていただけますか?

いろいろな男子に囲まれた時、同じ1日の中でも会った人によって顔も感情もまったく変わるんだなって。そんなにも心の揺れ幅が広い10代の恋ってあるんだなって。私は10代で乃木坂に入ったので、そうやって心を揺らす経験はなかったんですけど、初ちゃんを通して体感したことで、「あ、こういう気持ちなのかな」っていう発見が多々ありました。共感は…初ちゃんの「何をやっても、うまくいきっこない…」っていうネガティブな言葉が、私自身の過去──学生時代や乃木坂で活動してきて挫折しそうなになった時の感情にリンクしていて。でも、そうやって自分自身を認められなかった弱い時期があったからこそ、今は前よりもポジティブになれていますし、ネガティブな時期も必要だったんだなって、演じながら自分自身のことを振り返って、そんなふうに思いました。
私は私であって、私だけのものでしかないのだから、もっと自分に対してどん欲であっていいんだって。時には甘やかしてもいいし、そのぶん厳しさも持っていればいいんだって…そんなふうに自分自身と真っ向から向き合うことって、本当に大切だと思うんです。そういうことを10代の時に恋だったり学校生活だったり、家族を通じてだったり、いろいろなところで実感できることって、大事なんだなって。ただただ苦しかった過去の思い出というわけではなくて、それは絶対に自分自身の今後につながるし、周りにも何かしらの刺激を与えているものだと思うので、そういうことを初ちゃんなりに伝えられたらいいな、と思いました。

刺激的という意味では、劇中そういったシーンもあったかと思いますが、その辺りについてはいかがでしょう?

初めての映画出演ということもあり、自分自身のお芝居の経験のなさもあって、やはり不安と緊張はありました。でも、お芝居をする前に山戸監督とお話をした時に、1人の人間として、役者として、アイドルをやっている身として、全力で初を演じることで、映画を見てくださった人に何かを届けたいね、この映画に懸けたいねって熱く語り合えて、覚悟が決まったんです。

映画『ホットギミック ガールミーツボーイ』堀 未央奈 エンタメステーションインタビュー

主演というのは、グループでいうとセンターになぞらえられるポジションだと思います。堀さんは7thシングル「バレッタ」でのセンター経験がありますが、どことなく重なる感覚ってあったりするんでしょうか?

私がセンターを務めたのは17歳になったばかりの時で、ちょうど初と同じような年ごろだったんです。先ほども少しお話しましたが、そのころの私はまったく自信がなかったですし、いろいろな人の影響も受けやすかったですし…地に足がついていなかったフワフワとした時期でした。だけど、心の中では「こうなりたい!」「本当は私ってこうなのに、わかってもらいたいのに!」って熱く願っている部分が、実はあって。それが今回、映画で主役を演じさせていただいて、初ちゃん自身にもそういう思いがあるというか、心の奥底の叫びみたいなものがあるんだっていうのが、原作と台本を読んで実際に演じていく中で、ひしひしと伝わってきたんです。そういう10代の女の子の葛藤が映像作品として残るわけですから、私も全力で表現したい、表現しなければならないっていう思いが強まりました。もちろん、作品の真ん中に立つというのはプレッシャーでしたけど、その重圧には絶対に負けたくないって思いましたし、17歳だった時の自分の気持ちをバネに今回はがんばれたなっていう実感があります。

堀さんは乃木坂46の中心メンバー…すなわちアイドルですが、『ホットギミック』のファーストカットの顔のアップは、ほぼほぼノーメイクなんですよね。でも、女優さんからすれば、それって当たり前のことだったりする。そういう覚悟の表れだったのかな、と思ったりもしました。

今回の映画は髪の毛もストレート、ほとんどすっぴんに近い自然な状態でお芝居させていただきました。アイドルとして活動している時は「いつ、誰に見られても大丈夫なように」と、コンディションやビジュアル、言動に気をつけつつ、自分らしさにこだわっているんですけど、同じカメラの前に立つにしてもライブやMVの撮影と映画の撮影とでは、まったく違うんですよね。なので、ムービーカメラと向き合った時、「私、ここで殻を破らないとつまらない女になっちゃうな」と思ったんです。どこから撮られていたとしても、「いま自分はこんな顔をしているんだろうな…」と思ったとしても、とにかく気にしないぞ、と。
それを気にした瞬間、山戸監督には透視されているかのように見透かされてしまうんです。すごく愛をもってキャストのことを見てくださっているからなので、私も演じるというよりも…ありのままでぶつかって、挑戦していかないといけないんだなって、一つの使命みたいに感じていました。変な話、「どうにかして自分の殻を破らなくっちゃ、気合いを入れなきゃ」って撮影に入る前にバンジージャンプかスカイダイビングに行こうかなって、考えたんです。でも、いろいろと影響があってはいけないので、おとなしくクランクインを迎えましたけど(笑)、山戸監督との現場を経験したことは、本当に私にとって大きなものとなりました。

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