Interview

シドのベーシスト・明希がソロプロジェクト“AKi”として2年8ヵ月ぶりにシングルリリース。「ベーシストが作る曲」へのこだわりとは?

シドのベーシスト・明希がソロプロジェクト“AKi”として2年8ヵ月ぶりにシングルリリース。「ベーシストが作る曲」へのこだわりとは?

人気ロックバンド・シドのベーシストであり、バンドの数多くのヒット曲を手掛ける明希が、ソロプロジェクト“AKi”として7月2日にニューシングル「Monolith」をリリース。同日から始まる全国ツアー“AKi TOUR 2019「Monolith」”での会場限定仕様の発売に加え、各ダウンロード&サブスクリプションでの配信も決定した。ソロではベース&作曲はもちろん、ヴォーカル、作詞までを自らこなし、歌うベーシストとしてフロントマンに転じる彼は、なぜソロ活動にも注力するのだろうか。その疑問を投げかけると共に、新曲の制作エピソード、さらにはAKiの考える音楽論を聞いた。

取材・文 / 東條祥恵


自分のコアにあるものを表現したい、それを直接的にやれる場所が欲しい、という想いが出てきて

まず基本的なことなんですけど、AKiさんがソロをやる意義を教えてもらえますか?

意義ですか? シンプルにいうと、やりたいからやってるって言葉に尽きるんですけど。バンドで音楽を作っていると、もっともっと自分のコアにあるものを表現したい、それを直接的にやれる場所が欲しい、という想いが出てきて。そういうところで、ソロというフィールドは自分にはとても合っているのかなというところでやってますね。

ソロプロジェクトを始めようとしたとき、誰かヴォーカリストをたててという構想もあったんですか?

いや。考えてなかったですね。

やるなら自分がフロントに立って歌おう、と。

そうですね。

バンドのベーシストで、歌えるミュージシャンはいても、AKiさんのようにソロでベース弾きながらフロントマンとして歌って、ツアーまでやれる人ってなかなかいないので、すごいと思うんですよ。

そうなのかな? すごいことだとも思ってないんだよね(笑)。全部の楽器をやろうとまでは思ってなかったけど、ライブとして成立するならベース弾きながら歌うのはできないことじゃないし。もちろん練習はしましたけど。だから、ヴォーカリストなんだけど、ヴォーカリストというよりもベーシストというのが俺のなかの大半を占めているんで“ベーシストとしての歌”というのが一番自分にはしっくりくるんですよ。たまに年末のイベントのセッションとかで「マイクだけ持って出て」って言われたりするんですけど。あれ、本当は嫌なんです(笑)。あんまりしっくりこない。

なるほど。ではコンポーザーとしてはシドとソロ、AKiさんのなかで差別化はしてるんですか?

最初にソロを始めたときは「これはAKi」「これはシド」って二重人格じゃないけど分けて作っていて、違うものというスタンスでやってたんです。でも、活動を続けてきて、いまはそれがどこかで一つになって、分けて考えなくなりましたね。

そうなった理由は何だと思いますか?

どっちも自分だから意識して分ける必要はないなと思ったんです。今回の作品(「Monolith」)を作るときは特に思いました。シドの場合は15年やってきたなかで、例えばマオ君のいい歌いまわしとか、自分の好きな声の感じとかが蓄積されてるし、Shinjiが弾くギターのフレーズのカッコいいところとかShinjiらしさも分かってるから、みんなのいいところが出る楽曲に自然となっていくんですよ。でも、ソロの場合はまだそこが真っ白で。自分が曲を作る根本には“自分の好きなもの”“聴いててカッコいいと思うもの”というのがあるんだけど。まだ真っ白だからこそ、誰のことも考えずに、自然と制限なくそれが出ちゃうのがソロですね。

ハードロックを含め“ロック”というものにずっと憧れてるというのもありますね

つまり、自分のコアにあるものをよりダイレクトに制限なく表現できるのがソロということ。

そうです。自分のなかで生涯変わらないであろうコンセプトとして“ハードロックが好き”というのがあって。それに対してメロディが乗っかってくる楽曲が好きなんですよ。そういうものがカッコいいと思って音楽をやってるんです。シドはそれだけじゃなく、もっともっといろんなものを求められるし、いろんなものをやりたがるバンドなんですね(笑)。俺を含め。だから、そこに根本を置きながらもものすごいポップスを作ってみたり、ものすごいバラードを作ってみたり。自分のハードロック感を様々なジャンルの音楽に昇華させていくのが自分のなかのシドなんですね。

だから、シドだと作る曲のバリエーションが広がっていくわけですね。

うん。それが楽しさであり、やりがいであり。それをやることに対して自分は全く無理してないんです。だから、根本は変わらないと言ったんだけど。

その根本にあるハードロック感をそのまま楽曲に昇華させていくのがソロ?

そうですね。ソロはバンドの編成がそもそもシドとは違いますからね。ギターが2人いるんで、ソロは。自分のなかでツインギターというのはマストだったんですよ。

なんでですか?

ツインギターのほうがハードロックっぽくないですか?(笑) 両方(のスピーカー)からパーンと聴こえてくるのが好きなんです。

AKiさんがいうハードロック感とは?

革ジャン、筋肉、ソバージュじゃないですか。ハーレーとか(笑)。

ぶはははっ。

まあ、それは冗談だけど。ハードロックの良さって、常にシンプルで余計なものがないところで。ライブを観てても突き刺さるんですよね。自分のことを後押ししてくれるようなパッションがある。あと、俺はハードロックを含め“ロック”というものにずっと憧れてるというのもありますね。そこに触れるとすごく気持ちよくて、いろんなことを後押しして自分を勇気付けてくれる。ロックはいまでも自分にとってそういう存在ですからね。

音源出すだけならソロはやらないと思います

シドで活動を始めた初期の頃にAKiさんにインタビューしたときも「ロックに触れることで憧れの自分に近づける」というようなことをおっしゃってたんですけど。そこは、いまも?

変わらないですね。

シドではあんなに大きなステージに立って、みんなの憧れの存在になったいまでも、こうしてロックに憧れを抱けているところがAKiさんを突き動かす原動力であり、カッコいいなと思うところです。

うれしいです。変えがたいものなんですよね。ロックへの憧れは。ベースでもドラムでもギターでも、演ってる人の心意気が見えるんですよ。ライブでは特に。同じ楽器を演奏しても同じ音は出ないじゃないですか? 人によっても会場によっても違う。そういうところに打たれるんですよ、俺は。環境としてやりづらかったとしても、絶対そういう素ぶりは見せないから、ステージで戦ってるなっていう感じがするんですよね。そういうところがいいですよね。ロックのライブは。

ということは、AKiさんのソロもライブありきという考え方ですか?

もちろん(キッパリ)。音源出すだけならソロはやらないと思います。

音源とその後のツアー込み込みでのソロ活動である、と。

ええ。今回のシングルはツアー開幕と同時のリリースになっちゃいましたけど。前々回のツアーだと音源作ったあともライブ会場で披露する新曲を用意したりしてましたからね。

今作の「Monolith」収録曲もライブでやることを前提に作った曲ですか?

そうです。自分のライブのセットリストを考えたときに、前回のライブでもっとこういう曲があったらいいなというのを作った感じ。

俺、イントロって最初に聴ける“サビ”だと思ってるんですよ

タイトル曲である「Monolith」は“イメージを超えて今”という歌詞の通り、これまでのライブをネクストステージへとさらに連れていってくれそうなアッパーチューンでした。

まさにそうですね。

イントロのギターリフがまた、キャッチーでいいんですよ。

ああ。そこはこだわりましたね。俺、イントロって最初に聴ける“サビ”だと思ってるんですよ。イントロのリフって、メロディのサビと同じぐらい曲のなかに何度も出てくるでしょ? だから、サビメロよりも別のインパクトを持ってないといけないのかなっていつも思うから、イントロは自分のなかでは大事にしてるんですよ。

へー。だからこんなに耳に残るんですね。

自分が思う“名リフ”は必ず口ずさめるんです。ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」もそうじゃないですか? 頭に思い浮かぶリフって、歌えるんですよ。

ハードロック、ロックでありながらも歌えるキャッチーなリフを含め、AKiさんが作る楽曲はどこかにキャッチーな部分が必ずある。そのポップセンスはどこからきてるんだとご自身では思ってますか?

ああー。歌謡曲が好きだったから? あとは音楽が好きだった親の影響じゃないかな。音楽に溢れてる家だったんですよ。親父がクラシックを好きで、家ではずっと流れてたし。あとは、幼少期にやってたピアノもデカいかもしれないですね。

なるほど。では曲の話に戻って。「Monolith」はMVも印象的で。今作の映像は、AKiさん一人で出演しているんですよね。

単純にやってなかったなと思って。一人のMVってヴォーカリストがやるものだと思ってたの。でも、スタッフのアイデアもあったからせっかくだしチャレンジしてみようかと思ってやりました。大丈夫でしたか? 俺一人で。

もちろん! AKiさんのカッコよさがいろんな角度から堪能できましたよ。

ホントですか? ならよかった(笑)。照れくさかったけどやってよかったです。

ライブに来るお客さんたちとはしっかりとした絆、関係性があるから、そういう人たちの前ではもっと素直になっていいのかな

2曲目の「LIVE TO DARE」は色気もあって、サウンドはかなりグルーヴィーな仕上がりになっていますね。

歌詞は挑発するような言葉を考えて書いていきました。サウンドはすっごい古臭いベースとドラムしかないセクションがありながら、そこからギターソロに展開するのではなくて、あえてシンプルにベースとリズムで押し切って、その上にギターが乗っかっていくだけという「ベーシストが作りました」っていう感じの曲にしました。

これまでベースをアピールするようなセクションを組み込んだ曲はやってなかったから、あそこは新鮮でした。

そうなんですよ。

3曲目の「All Through The Night」は“君の前くらいは 素敵な歌を聴かせたいよ”“カッコつけないで さらけ出すよ もっともっと”というところが突き刺さってきたんですが。ここの“素敵な歌を聴かせたいよ”というところにはAKiさんのどんな気持ちが込められているんでしょうか?

ライブに来るお客さんたちとはしっかりとした絆、関係性があるから、そういう人たちの前ではもっと素直になっていいのかなという思いですね。俺のソロのステージって着飾ったことはやってないんですよ。メイクもしないでステージやったりするぐらい。そろそろ自分というものをそのまんまやる、そういうことをやってもいいのかなという自分自身の気持ちもありますね。俺はのど自慢みたいに「とにかく歌がうまいんだぜ」という感じでやるわけじゃないから。着飾ってないけど、自分の気持ちを一生懸命伝える。そうやってまっすぐ表現するものが一番人には刺さるのかなと思うので、そういう歌を歌えたらいいなという気持ちですね。

自分はギターもベースもドラムも、みんなが楽しめて、みんなが歌えるものがいい

さっきも言いましたけど、有名バンドでベースを弾きながら、ソロでも作品を出してツアーまでやれちゃう“歌えるベーシスト”って、日本だとLUNA SEAのJさん、海外だとポール・マッカートニーとかいますけど、いまはソロしかやってないですし。それぐらいAKiさんがやっているソロのスタイルって、誰もができることではない気がするんですよ。

俺、そもそもポール・マッカートニーは観たことないんですよ。ビートルズを通ってないし。恵比寿横丁にくる仲の良い流しのおじさんがいるんですけど。俺のなかのビートルズは、そのおじさんが歌ってるビートルズなんです。その人のビートルズはめっちゃ聴いてる(笑)。よく俺のピックをあげるんですけどね。「これが一番弾きやすい」っていうから。

ぶははは(笑)。

ビートルズもそうだけど、俺ね、ロックやるならこれを聴いてなきゃっていう王道をあんまり通ってないんですよね、実は。例えばメタルでいうメガデス、メタリカは全然知らないんですよ。最近はまたクイーンとか流行ってますけど、あれも知らないです。だから、なにで俺はできてるのかなって考えても分かんないんですよ。ロックとかメタルとかジャンルで聴くような入り方をしてなかったから、それが良かったのか、全部を“音楽”としてとらえてたんで、どんなジャンルでも好きなものが好きなんですよ。

あと、そこにはAKiさんはピアノをやってたから、音楽の入口が“メロディ”だったというのも大きく影響してると思います。

ああー。それは間違いない。

だから、曲を作るときもメロディがすごく重要なんだと思うんですよね。

これは持論なんですけど、バンドって最終的には“歌”なんです。それはヴォーカリストが上手いとかじゃなくて、ギター弾いてる人もベース弾いてる人もドラムやってる人も歌えたほうがいいんですよ。ギター1本あれば、みんなで歌える、ベース1本あればみんなで音楽を楽しめる。そういう風な曲を作りたいなと思うし、そうあるべきなのかなって俺は最近は思うんですよね。テクニックをアピールするのがメインの音楽もあって、難しくて弾けないって曲もいいけど、俺はそこにあんまり魅力は感じなくて。自分はギターもベースもドラムも、みんなが楽しめて、みんなが歌えるものがいい。某先輩がおっしゃっていてとても共感したのがライブ中に「君、こっちおいでよ」ってオーディエンスにベースを渡しても弾けるぐらい分かりやすくて楽しめる。そういうことができる曲が一番いい音楽なのかなって思います。今回の新曲3曲がすっごくシンプルなのはそういうことなんです。

ライブ用のアレンジも考えてるから、初日から作品とは違うアレンジになってるはず

そのなかでも「All Through The Night」は一番シンプル。

誰でもできることしかやってないからね。サビも短くて。

間奏にはベースソロもあって。それさえもシンプル!

メロディでもない、リフでもない、とにかくジャンジャカ弾いてる昔のパンクバンドみたいな感じでね。ベースのカッコよさってこういうところじゃないかなと思うんですよ。俺、昔、日本のメロコアが好きな時期があったんですよ。

ハイスタ(Hi-STANDARD)世代ですか?

そう。ハイスタとかTHUMB(サム)とかSHORT CIRCUIT、CAPTAIN HEDGE HOGとか。メロコアって、シンプルなんだけどメロディがすごくせつなくて泣かせにきてるものが多くて。それに対してああいうパンキッシュなツカツカツカーっていうオケがある。その影響が3曲目は出てると思います。

曲がコンパクトなのはそのせいなんですね。

ええ。今回のツアーはこの曲で締めようかなと思ってます。ライブ用のアレンジも考えてるから、初日から作品とは違うアレンジになってるはず。そういう「おぉー!」っていう驚きがないと、ライブは楽しくないから。

驚きという意味では4曲目の「FREAK SHOW“2019 Retake”」も驚かされましたよ。やっぱり歌はかなり違いますよね。

そうですね。この曲は自分のソロデビュー曲で、初めてヴォーカルをとった曲がこれだからね。たまに聴き直すとトラックも歌も若いんですよ。それをちょっと録り直したらどうなるかなと思って入れてみました。

現状打破からまだ見ぬ世界へと向かう。AKiさんの歌詞に脈々と流れているのはそういうロックスピリッツだと思うんですが。

いいこと言ってくれますね。

厚木がいいですね(笑)。いくつになっても、ずっと変わらない自分の“聖地”なんですよ

そうして、ライブでもまだ見ぬ世界を目指して7月2日からは全国ツアー“AKi TOUR 2019「Monolith」”が始まります。こちらはどんなツアーになるんですか?

いままでの感じよりも、激しく熱くなりそうな気がします。だから今回のシングルにバラードを入れなかったんです。いままでライブでラストスパートをかけてた曲たちを全部前半にもっていこうと思ってるんで、印象はかなり変わるんじゃないかな。

ということは、今作に収録された新曲3曲を盛り上げパートにもっていこうとしてますか?

そうです。だから、ライブの肝になる場所に新曲がくるところが、いままで来てたお客さんは楽しめる部分かなと思います。

ツアーの始まりは、やはり地元の厚木がいいんですか?

厚木がいいですね(笑)。いくつになっても、日本武道館やっても横浜アリーナやってもずっと変わらない自分の“聖地”なんですよ。ライブハウスのスタッフは、自分を10代の頃から知ってるんで、父親みたいなんです。マスターとか。初日、あそこでいいライブができたら、たぶんどこでもできるなっていうのが自分のなかにあるんです。

それでは最後に、読者に向けて本ツアーの意気込みをお願いします。

バンドって、目に付くのはヴォーカルだからヴォーカルやそのバンドの代表曲と言われるところから音楽に入ってくれる人が多いと思うんです。実はバンドは蓋を開けてみるとすごく深くて、ヴォーカル以外の一人ひとりにも人間ドラマが必ずあるんです。メンバーみんな独自の世界観があるからこそ、それが混ざり合っていいバンドになるという持論が俺にはあって。そのなかで、自分はシドの1/4の世界ですけど、俺が表現するライブロックというものをぜひ体感して欲しいなと思います。それを通して“バンドって立体的なんだな”というのが伝わってくれたらいいな。

その他のAKiの作品はこちらへ。

ライブ情報

AKi TOUR 2019「Monolith」

7月 2日(火) Thunder Snake ATSUGI
7月 3日(水) Thunder Snake ATSUGI
7月 6日(土) CLUB JUNK BOX SENDAI
7月 7日(日) HEAVEN’S ROCK宇都宮VJ-2
7月 9日(火) HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3
7月12日(金) 金沢vanvan V4
7月13日(土) 長野LIVE HOUSE J
7月15日(月・祝) 名古屋ElectricLadyLand
7月18日(木) umeda TRAD
7月20日(土) 京都MUSE
7月21日(日) 神戸VARIT.
7月24日(水) Shinjuku BLAZE

AKi TOUR 2019 「Monolith」ティザー映像

AKi(アキ)

4人組ロックバンド・シドのベーシスト。シドの数多くのヒットチューンを作曲し、メロディアスなものからROCKなものまで幅広い楽曲を手掛ける。LIVEでは重厚かつROCKな演奏はもとより、華のあるパフォーマンスでもバンドの要的な存在として活躍。
2015年1月、1stフルアルバム『ARISE』を発売し、ソロアーティスト「AKi」としての活動を開始。以降、ソロツアーも開催し、同年12月にはミニアルバム『EPHEMERAL』をリリース。2016年7月には台湾の大型野外フェスに出演するなど、日本国内外問わず、精力的に活動中。今作「Monolith」を引っ提げ、7月2日のThunder Snake ATSUGIを皮切りに全国12公演のツアーもスタートする。

オフィシャルサイト
http://www.dangercrue.com/AKi/