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TVアニメに「ビヨンセ級の歌唱力のディーヴァを…」探し求めたその結果とは!? 『キャロル&チューズデイ』濃密すぎる音楽制作の舞台裏

TVアニメに「ビヨンセ級の歌唱力のディーヴァを…」探し求めたその結果とは!? 『キャロル&チューズデイ』濃密すぎる音楽制作の舞台裏

TVアニメ『キャロル&チューズデイ』西辺 誠プロデューサーインタビュー/後編>

『カウボーイビバップ』や『サムライチャンプルー』を筆頭に音楽にも強いこだわりを持った作品を世に送り出してきた渡辺信一郎監督の最新作であり、偶然出会った2人の少女=キャロルとチューズデイが、AIによる音楽制作が普及した近未来の火星を舞台に、ミュージシャンとして後に語り継がれる「奇跡の7分間」に辿り着くまでを描くTVアニメ『キャロル&チューズデイ』。

世界各地から音楽シーンのトップクリエイターが集結し、細部までこだわり抜いた良質な音楽アニメ作品として話題を呼ぶ本作。プロジェクトの立ち上げの経緯から、主人公・キャロル&チューズデイが奏でる楽曲の制作過程までを聞いた前編に続いて、今回は作中に登場する彼女たち以外の様々なキャラクターの楽曲についてのインタビューを敢行。

様々な音楽性のミュージシャンを登場させることでシーンの豊かさが表現されている『キャロル&チューズデイ』の魅力について、引き続きフライングドッグのプロデューサー/音楽ディレクターの西辺 誠氏に聞いた。

取材・文 / 杉山仁 構成 / 柳 雄大

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作曲の過程までアニメ化、「尋常ではない手間がかかっている」─『キャロル&チューズデイ』プロデューサーが語る、全世界配信に向ける覚悟

作曲の過程までアニメ化、「尋常ではない手間がかかっている」─『キャロル&チューズデイ』プロデューサーが語る、全世界配信に向ける覚悟

2019.07.01


キャロルとチューズデイが憧れるような存在として、歌唱力も非常に高い方を探す必要があった

TVアニメ『キャロル&チューズデイ』

『キャロル&チューズデイ』では、実際に世界各国の第一線で活躍する様々なミュージシャン/シンガーが音楽制作や歌唱面をサポートしています。日本国内だけにとどまらない顔ぶれをキャスティングするのは、大変な作業だったのではないでしょうか。

実はこういった世界へ向けた作品が初めてだったので、渡辺監督がやりたいことを可能な限り実現するために、「とりあえず連絡を取ってみよう」「とにかく動いてみよう」という気持ちで固定観念を持たずに作品に向かえたことが、逆に良い効果を生んでくれている気がします。その結果、「そういう作品だったらぜひ参加したい」と言ってくださる方や、「日本のアニメーションが好きです」「渡辺信一郎のオファーは是非受けたい」など、様々なアーティストに出会い、参加していただいています。

アンジェラを筆頭にした他のキャラクターたちの楽曲にも、キャロル&チューズデイの楽曲と対になるような方向性で様々な工夫がなされているように感じました。

アンジェラ(CV:上坂すみれ)は小さい頃からモデルとして芸能の世界で生きてきた人物で、タオというAIを駆使する卓越したプロデューサーと出会ってデビューを果たす、いわゆるビジネスとして計算された音楽を担当してくれるキャラクターです。ですので、アンジェラの楽曲は、キャロル&チューズデイの2人の楽曲とは対照的に、デジタルな要素を加えた楽曲にしていく必要がありました。そこで、ノルウェーのリドのようなプロデューサーに楽曲をお願いしています。

TVアニメ『キャロル&チューズデイ』

実際、アンジェラの楽曲「Move Mountains」は、デジタル・ビートが強調されたモダンな雰囲気のR&Bになっていますね。

はい。アンジェラ、そしてタオも物語が進むにつれて様々な変化が起こってきます。その部分も含め、楽しんでいただけるのではないかと思います。

キャロル&チューズデイやアンジェラの一方で、キャリアのある、いわゆるスターとして作中に登場するキャラクターたち=クリスタル(CV:坂本真綾)やスキップ(CV:安元洋貴)の楽曲については、キャロルとチューズデイが憧れるような存在である必要がありますから、とりわけ歌唱力が高い方にお願いする必要がありました。『キャロル&チューズデイ』の楽曲は英語詞ですから、英語で歌うことができて、歌唱力も非常に高い方を探す必要があったんです。

そこで海外のコンポーザーに、いいシンガーを知らないかと聞いてみることにしました。「キャロル&チューズデイという2人組がいて、彼女たちが憧れる人物の曲を作らなければいけないんだけど、いい人を知らない?」と。

TVアニメ『キャロル&チューズデイ』

なるほど、英語のスキルと歌唱力をあわせ持ったシンガーを探すには、現地のクリエイターに聞いてみるのが手っ取り早いのではないか、と。

そうです。ただ、クリスタルの歌唱担当に関しては、最初にビヨンセやホイットニー・ヒューストンのような歌唱力のディーヴァを教えてほしいと伝えたところ、「逆に僕が教えてほしいよ(笑)」という返信が返ってきて、そのときは、監督も含めてみんなで笑ってしまいました。そりゃあそうですよね(笑)。

結果的に、紹介していただいた方の中から、歌唱力が非常に高いローレン・ダイソン(イギリス出身。ソロ・アーティストとして活動する他、BTS(防弾少年団)や少女時代への楽曲提供でも知られるシンガー)にお願いすることになりました。素敵なヴォーカリストです。

TVアニメ『キャロル&チューズデイ』

一方で、熟練のソウル・シンガーとして登場するキャラクター=スキップの楽曲を制作したフライング・ロータス(LAのビート・ミュージック・シーンを代表するプロデューサー)や、ボーカルを担当したサンダーキャット(ベーシスト/シンガーとしてマルチに活動するフライング・ロータスの朋友)は、以前『ブレードランナー ブラックアウト2022』でフライング・ロータスと渡辺監督が仕事を共にするなど、監督と距離感の近い人たちですね。

そうですね。渡辺監督自ら、プライベートでも親交のあるフライング・ロータスにオファーして実現しました。しかも、スキップのボーカルにはサンダーキャットが参加するとは、スタッフ一同驚きを隠せませんでした。さすが「世界の渡辺信一郎」だなと。

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