Interview

岡田将生が舞台『ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~』で見せる芝居の新境地。これからもこよなく舞台を愛し続ける彼の“役者道”とは

岡田将生が舞台『ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~』で見せる芝居の新境地。これからもこよなく舞台を愛し続ける彼の“役者道”とは

ローレンス・オリヴィエ賞を受賞したイギリスの劇作家アレクシ・ケイ・キャンベルが贈るサスペンスドラマの日本初演版、舞台『ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~』(以下、『ブラッケン・ムーア』)が、8月14日(水)よりシアタークリエにて上演される(8月2日(金)~4日(日)はプレビュー公演)。
今回、日本版の演出を手がけるのは、文学座出身の上村聡史。第22回読売演劇大賞最優秀演出家賞や第69回文化庁芸術祭賞大賞などを受賞し注目を集めている演出家だ。10年前に事故で死んだ少年の亡霊がある青年にとり憑き、何かを必死に伝えようとする。そして事故の真相が明らかになっていくという物語において、キャスト陣も豪華実力派が揃う。亡くなった子供の父母を木村多江と益岡 徹、さらに峯村リエ、相島一之、立川三貴、前田亜季と、舞台に限らずテレビ・映画などで活躍する役者たちが出演。
そして、少年の亡霊にとり憑かれる青年・テレンスを岡田将生が演じる。舞台が好きと公言する彼が新たに歩む“役者道”が垣間見えるインタビュー。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 冨田望


お客様に僕たちの伝えたい気持ちがストレートに届く作品

今年に入って、『ハムレット』、『ブラッケン・ムーア』と立て続けに舞台に出演されます。『ハムレット』のインタビューのときに「舞台が好きだ」とおっしゃっていたのが脳裏に甦ってとても嬉しいです。今作に出演する気持ちはいかがですか。

初舞台の『皆既食~Total Eclipse~』(14)のときから、舞台のライブ感やお客様と共にしている時間に感動するだけではなくて、僕のお芝居でお客様に気持ちを伝えられたことへの喜び、あるいは伝えられずに悔しかった経験を含め、舞台を踏むたびに役者として多くのことを勉強させてもらっています。舞台の面白さには底がないから、舞台を続けたい気持ちがどんどん強くなってきて、これまで一年に一本のペースで出演してきました。それでも僕の中で100点のお芝居ができたことは一度もなくて、千穐楽を迎えたときにいつもどこか後悔している自分がいて(苦笑)。もちろん、充実感はありますが、演出家が求めていることやキャストみんなでつくり上げたものを正確にお客様に伝えるのは難しいことだとどの舞台でも感じています。だからこそ、そのたびに、また板の上に立ちたくなるんでしょうね。今回、間髪入れずに新しい舞台に挑むのは初めての経験で、まだ『ハムレット』のときの感覚や気持ちを覚えているので、それを忘れないうちに『ブラッケン・ムーア』に活かすことができるので嬉しいです。

岡田将生 エンタメステーションインタビュー

すでに脚本を読まれたそうですね。

とにかく脚本が面白くて。最初はホラーかなと思うんですが、読み進めていくうちにまったく違う展開をみせていく。今作は会話劇だと思っているので、予想もしないスリリングな会話を楽しんでいただく作品になると思います。劇場のシアタークリエは初めてですが、お客様に会話の妙を伝えやすい距離感の劇場だと感じていましたし、『ブラッケン・ムーア』の世界観にどっぷり浸ってもらえると思います。お客様に僕たちの伝えたい気持ちがストレートに届く作品だと思っています。

脚本を読まれて今作のテーマはどのようなものだと感じましたか。

人間の生き方そのものを描いている作品です。たとえば、テレンスの父親であるジェフリー・エイブリー(相島一之)の台詞でとても好きな台詞があって。“人間には多くの可能性があって、勇気を持って一歩を踏み出せば、新しい人生に出会える”と言っているんです。僕が演じるテレンス・エイブリーは22歳で、僕の実年齢のときと同じように、いろいろなことに迷って戸惑っている。僕はそこから勇気を振り絞って歩んできたおかげで、30歳に近づくにつれて、やっと少しずつ僕自身にしかない何かを掴めそうな気がしています。人間は可能性の塊だから成長できるし、物事の捉え方には様々あって、ひとりとして同じ人はいないという人間の多様性を、僕らが受け入れられるかどうか問いかけている作品だと思います。

岡田将生 エンタメステーションインタビュー

岡田さんは10年前に事故死したエドガー・プリチャードの親友であるテレンスを演じますが、どのように演じていきますか。

亡くなったエドガーの幽霊がテレンスに憑依するというストーリーなので、ある意味、二役だと思っていて。役を演じ分けるときに、頭の切り替えをしたらいいのかどうか、演出の上村聡史さんとディスカッションをして決めていきたいですし、稽古や本番が始まれば僕のお芝居を共演者の方々が受け止めてくださると思うので、胸を借りるつもりでテレンスに挑戦しようと思っています。テレンスは若い学生で、若さゆえに饒舌になってしまう傾向がありますが、シンプルに思っている気持ちを伝えたいからで、頭が良くて、探究心がある人物です。益岡 徹さんが演じるハロルド・プリチャードとはどちらかというと正反対の性格ですね。今作はそういった人物同士の対立関係も見どころだと思います。

僕の役者人生にとってやりがいがある役

エドガーの幽霊に取り憑かれるお芝居もなかなか難しそうですね。

僕がどうやって12歳の子供を憑依させていくのかはポイントだと思います。幽霊にとり憑かれて狂ったお芝居をすればいいのか、言葉だけ操られているように見せるのか、これからの稽古で見つけていきたいと思います。

何かに憑依されてお芝居が変わるという点では、『ハムレット』にも通じるところがありますし、『ウーマン・イン・ブラック〈黒い服の女〉』(15)も、演じながら役の性格を変えていらっしゃったので、そういった憑依型のタイプの役は岡田さんにとって演じやすいのでしょうか。

おっしゃっていただいて初めて気づいたのですが、僕はそういう役が好きなんだと思います(笑)。人間は多面性があると思っているので、複雑な感情を抱くお芝居をしたい気持ちが強いのかも。演じ方には、多くの方法があって、ひとつに縛られない役づくりがとても面白いと思っています。なにより、僕はカーテンコールになっても素に戻りたくないと思うほど、お芝居をしている時間が好きで(笑)。実際は演じていないですが、普段から演じている自分がいると思ってしまうくらい。今回の役も僕にとって大切な役になると思います。これまでの舞台の経験は絶対に無駄ではなくて、役者として物事の視界も広がっているし、考え方も深くなりました。だからこそ今、心置きなくテレンスを演じることができると思います。

共演者の方々への印象はいかがですか。

まず、みなさん舞台慣れされているので心強いです。尊敬する先輩方ばかりなので、いろいろなお芝居の技術を盗めるところは盗みつつ、わからないことがあれば教えていただきたいです。僕が座長ではあるのですが、みなさんに甘えるぐらいの気持ちで稽古場に入ろうかなと(笑)。僕が幽霊に取り憑かれたお芝居にどういう反応をされて、どんなお芝居で返していただけるか楽しみですし、みなさんと話し合って、アイデアを出し合いながらお客様に満足していただける作品につくり上げていきたいです。

岡田将生 エンタメステーションインタビュー

本作に出演するきっかけとして、演出の上村聡史さんの存在が大きいそうですね。

そうですね。上村さんの手がけた『炎 アンサンディ』(14、17)の緻密な演出に大きなショックを受けて。すでに何度かお会いしているのですが、笑顔が素敵な方という印象があります。基本的に僕は演出家の求めていることに対してきっちり取り組みたいほうなので、上村さんに言われることやキャストの言葉をきちんと受け止めようと思います。『ハムレット』の演出はイギリスのサイモン・ゴドウィンさんで、リスペクトしていた演出家とご一緒できたことは貴重な経験になりましたが、やはり言葉の壁があって。今作には言語の壁はないので、僕の意見をしっかりと伝えたいと思っています。それ以上に、今作はサスペンスものではありますが、決して怖い話ではなく、気持ちが温かくなるストーリーだと思っているので、座長として座組みを温かくしたいですし、お客様にもそんな気持ちになって劇場を後にしてもらいたいので、人間が持つ根源的な温かさを上村さんたちと届けたいです。

座長のお話も出ましたが、どのような“岡田座長感”を出したいですか。

“岡田座長感”って(笑)。とにかく座組みの調和が取れるように。どうしても本番になるとテンションも変わるし、会話が少なくなる瞬間があるので、たわいもないお話をしながらみなさんの体調も探りつつ、「今日もよろしくお願いします」と気軽に言い合えるカンパニーにしたいです。もちろんお芝居で引っ張っていくのは『ハムレット』とも他の作品とも共通していることなので、これまで経験させていただいたことを今作にすべて注ぎ込むつもりです。

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