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絶叫&ギャン泣き必至!『Home Sweet Home』話題のタイ発ホラーが超怖い理由

絶叫&ギャン泣き必至!『Home Sweet Home』話題のタイ発ホラーが超怖い理由

『Home Sweet Home(ホーム・スィート・ホーム)』はタイのYGGDRAZIL GROUPが贈る一人称視点のステルスホラーアドベンチャー。プレイヤーは主人公の男性・ティムとなり、異質な世界で失踪した妻を捜すことになる。不可思議な仕掛けを解きながら妻の足跡を辿るほどに、浮かび上がる恐ろしい事件と呪い。そして、執拗に襲い来るカッター少女……。ジャパニーズホラーとも近い、じわじわと迫る恐怖演出がプレイヤーを恐怖のどん底に突き落とす。このたび、発売されたPlayStation®4版では、日本語ボイスやPlayStation®VRに対応。そんな本作でさらなる深淵を覗いた模様をお届けしよう。

文 / 小泉お梅


「もうやめてよお……」 心えぐる恐怖演出と巧みな音使い

「タイ発のホラーゲーム? どんなもんでしょ?」と興味を持ってしまったのがいけなかった。プレイすること数分で「タイは微笑みの国じゃなかったの!?」と、軽くパニックに……。
事の始まりは、唐突に主人公ティムが見知らぬ学生寮の一室で目覚めるところから。不思議なことに、辺りに人影はありません。ティムは家に帰ろうと出口を探すわけですが、チラリと視界をよぎった女の子に話を聞けたらと、あとを追います。
土気色した彼女の後姿は、「あ、こりゃもう人間じゃないな」とわかるものでした。これまでいろいろなホラーゲームをプレイしてきた経験則から「これは振り返ったら、来るぞ」と身がまえていたので、ギギギギッと首が180度回って、追いかけてくるまでは平気だったんです。

Home Sweet Home エンタメステーションゲームレビュー

▲振り向きは定番だよね、なんて余裕をかましていました。このときまでは……

ひとまず逃げようと、先ほど通ってきたドアを急いで開ける。ドアは、開いたんです。けれど、その先は壁で塞がっていたんです、レンガの壁がみっちりと。「えっ? えっ? さっきここから来て、なんで壁?」と混乱しつつも、別の出口を探そうと振り返る。そこには彼女の顔がありました。サクッとカッターが突き立てられる音とともに、視界が暗くなっていき……。

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▲壁だったときの絶望。そして、彼女の得物がよくある事務用カッターってところも妙に現実味があって怖かった……

ティムは凶刃に倒れ、あっけなくゲームオーバー。まんまと制作チームの罠にハマった気がしました。ホラーゲームファンなら予想しうる展開を用意し、油断させておいてから逃げ場がないという想定外の状況に追い込む。いえ、本当はちゃんと逃げ道があるのですが、冷静さを欠いた状態ではすぐには気づけず一方的に襲われるがまま。悔しいけれど、怖かった。タイホラー、なかなかに曲者ですね。ちなみに探索を進めていくと、この女の子はココの学生で、ベルという愛称で呼ばれていたとわかります。
リトライは、ベルちゃんが振り返る直前から。本作はこまめにオートセーブが入るので、やり直しも苦になりません。ただ、「また、あんなおっかない思いをするのか」という弱気に克つ勇気が毎回必要になるのですが……。
ティムは何か武道の心得があるわけでもないふつうの成人男性。武器もないし、持っている懐中電灯も反撃の手段にはなりません。彼はバリバリ働くエンジニアで、おしゃれな家を持てるエリートでも、バケモノ相手では無力に等しいわけです。それでも何度目かの挑戦で、なんとかベルちゃんから逃れ、ロッカーに隠れてやり過ごすことができました。しかし、扉越しと言えど彼女の生々しい息遣いや、カッターをしきりにカチカチと鳴らす音が耳にまとわりつくんです。それ以降、ベルちゃんは頻繁に目の前に現れるのですが、遠くからカッターの音がするたびに心がザワッとするようになってしまいました。カチカチ音には、大きさや聴こえる方向でベルちゃんのおおよその位置がわかるという、ゲーム攻略面での恩恵はあるのですが、私としてはトラウマというか、心削られたダメージのほうが大きいかな……。今後、手慰みにカッターをカチカチする人がいたら、卒倒する自信はあります。

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▲ベルちゃんは、ロッカーの通気口から覗き込んでくることもあります。見つかると即襲われますが、のちに拾うお守りのおかげで耐えられる場合も。画面に出てくるゲージがMAXになるより早く、ボタンを一定回数連打できればベルちゃんを押しのけられます

本作の音の演出は、随所でイイ仕事をしていました。探索中、風もないのにバタンと閉まるドアの音や、何か物が倒れる音が不意に鳴るものだから、毎回「ヒッ」と声が出そうになります。なぜ音がしたのか深く考えないように、「気のせい気のせい」と思わないとやってられません。しかし、「何かいそう」という思考にさせ、恐怖を倍増させるのはアジアンホラーの真骨頂ですね。そういった演出の積み重ねが息苦しい閉塞感だったり、体にのしかかってくるような重圧感を与えているのかなと思います。この重圧感はプレイにも影響を及ぼしていたと思います。例えば、ベルちゃんがウロウロしているエリアを通り抜けなければならない場面で、なかなか1歩が踏み出せないんですよ。初っ端にベルちゃんの恐ろしさを植え付けられていますからね……。

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▲ベルちゃんの背後を取ればいいわけですが、調子に乗って近づきすぎると察知されます

そんなふうに体が恐怖に浸かりきっていると、ゲーム中のありふれたものの音にすらビクッとしてしまいます。電話の音、エレベーターが到着したポーンという音、ラジオの音声。しかも、難所を切り抜けてホッとしたころで鳴るのです。音の配置は相当練られていると感じました。おかげで、本作は“ずーっと怖い”という印象でした。ちょっとは心臓を休ませてほしい……。

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▲ラジオからはお経が聴こえてくることもありました。こちらはタイ語だと思われますが、瞬時にお経だと気づけたのは同じ仏教圏に住んでいるからでしょうか。日本の怪談でもお経はよく出てきますが、タイでもお経はときに不気味に聴こえるものなのかな?

心臓といえば、ティム自身の鼓動音や「ヒュッ」と息を飲む音なども聴こえるのですが、これが自分とリンクしているかのような錯覚を起こし、余計にドキドキ。こういった言葉にならない息遣いは、日本語ボイス化による芸達者な声優さんの演技の恩恵ですね。

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▲いちばん怖い音は、ベルちゃんに見つかったときのストリングス系のサウンド。いわゆるシステム音で見つかったことをプレイヤーに知らせるものですが、何度聴いてもチビるレベルです……

優れているのは音の演出だけじゃありません。ワッと脅かすようなところもありますが、ふとした違和感を覚えさせる、ゾゾーッとする怖さも盛り込まれています。例えば、ティムが命からがら学生寮を抜け出し、自宅に帰った場面。なぜか学生寮の地下とティム宅の物置がつながっていたようなのですが……。それはさておき、リビングにあった写真立てが倒れているので立て直すと、ティムとその妻・ジェーンが写っています。仲のよい夫婦といった感じで、写真にもとくに変なところはありません。探索を再開し、家のあちこちを見て、またリビングに戻ってくると……。写真立てが伏せられています。確かに、立てておいたのに。家にはティム以外、誰もいないのに。

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▲写真立てを立てる・伏せるの攻防戦は何度か訪れます。プレイの際は忘れずにチェック!

ティムの家を調べていくと、どうやら妻・ジェーンは以前から失踪中らしいことがわかってきます。机上のジェーンの知人の連絡先リストからは、ティムが片っ端から電話をかけていたことが伺えますし、留守電に入れられていたティムの親友からのメッセージは、落ち込む彼を気遣うものでした。さらに調べを進めると、先ほどの物置の奥からジェーンらしき悲鳴が聴こえます。彼は妻を救うため、ぽっかりと空いた物置の先へと進むわけですが……。
最初の学生寮とティムの家がつながっていた辺りから薄々感じていましたが、ティムのいる場所は空間がねじ曲がっているというか、異次元なのだろうと思います。そのせいか、建物の間取りが変わるなどの不思議な現象がたびたび起こるのです。「さっきまでは壁だったよね? なんで部屋が広がってるの……」とか、「ベランダが地下になってる!?」とか。迷うほどの変化ではないのですが、困惑することしきり。それでも割り切って、「異次元なんだもの、これくらいあるある」と自分を納得させていないと、怖くて先に進めません。

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▲なんてことはない、廊下の壁。行き止まりですね。すぐ横にある部屋に入って、再び廊下に出てみると……?

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▲吹き抜けのホールが現れました。壁に掛かったご先祖の遺影(?)は同じなので、違う場所ではありません

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