Column

さまざまな“進行形”に彩られたサザンオールスターズの40周年ツアー。〈“キミは見てくれが悪いんだから、アホ丸出しでマイクを握ってろ!!”だと!? ふざけるな!!〉

さまざまな“進行形”に彩られたサザンオールスターズの40周年ツアー。〈“キミは見てくれが悪いんだから、アホ丸出しでマイクを握ってろ!!”だと!? ふざけるな!!〉

サザンオールスターズが打ち立てた普遍性は、デニムの生地のように頑丈だ

少し前のことだが、僕はリットー・ミュージックから出たサザンオールスターズの公式データ・ブック『サザンオールスターズ公式データブック 1978-2019』のバンド・ヒストリーを執筆するため、彼らの歴史を振り返っていた。データを羅列するだけならAIにだってできそうだから、ひたすらデビュー作からの音源を聴き、あのときやこのときが、どう系譜的に繋がってきたのかを考えた。

すると、ある事実が浮かび上がった。サザンオールスターズが打ち立てた普遍性は、デニムの生地のように頑丈だということだ。縦の糸と横の糸、などというと、中島みゆきさんの歌のようだけど、彼らのそれは、ポップやロックの縦の時間に普遍を探し、さらには同時代という横軸においても共振を目指し、この40年間、歩んできたのだ。

なかなかできることではない。縦を意識し過ぎると“お里”が知れてしまうし、横は横で、“一過性”に終わりかねないからだ。

6月16日、ツアーの千秋楽。東京ドームにいた。ハッキリ言って、サザンオールスターズは攻めていた。彼らはさらに“生地”を織り、広げようともしていた。つい引きずったのは、去年の夏のフェス〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019〉だ。これまでの大衆性を牽引してきた作品を羅列した、豪華なセットリストが頭に浮かんでいた。それもあったから、攻めの姿勢がより眩しく届いたのかもしれない。

個人的な反応として、それを具体的に書くならば、「CRY 哀 CRY」から「HAIR」のあたりだ。ここは正直、脳内がトリップを果たした。前者は古語の係り助詞の“やも”などを駆使し、『万葉集』から抜け出したような独特の世界観であり、後者に至っては、一気に知覚が解き放たれ、サイケデリックな地平が展開していくような作風である。付加的な演出は配し、この2曲を繋げて、バンドは黙々と演奏したのだ。

特に「HAIR」が素晴らしかった。畳みかけるように歌う桑田佳祐に、アドレナリンが満ちてく様がリアルに伝わってきた。アッパーな曲のそれは、即座に発散するのだが、このように静かな曲の場合、アドレナリンが満ちて満ちて、やがて決壊するのを静かに待つ、みたいな風情にもなる。一見、イメージの洪水の如き言葉が現実とニアミスを果たし、重大な意味を孕んでいく様もスリリングな、そんな数分間が永遠に思えた。

これらの作品は、いかにも我々が好みそうな情緒をまとい、歓迎すべき結末へ着地するタイプではなく、イントロからアウトロまで、何かを“投げかけ”続けるところに意味があるのだ。しかしサザンオールスターズは、40周年だからこそ、あえてコンサートの時間帯の中に、こうしたコーナーを設けたかったのではなかろうか。サザンがサザンである、ひとつの証のためにも……。

というのも、こんな理由からだ。かつて芸術を、“純粋芸術”“大衆芸術”“限界芸術”と、これらに分ける考え方があった。周知なのは、サザンオールスターズが“大衆芸術”において、大きな成功を収めた事実だ。さらにキャリアを積み重ねた場合、一般的に行動しがちなのが、“純粋芸術”に食指を伸ばすことだ。そうやって、偉ぶってみせるのだ。でも彼らは、そんなことはしない(オペラ組曲「茅ヶ崎」で、芸術祭参加、なんてことはしない)。

むしろ好むのは、“限界芸術”への接近だろう。40年も続いてきた理由は、ここにあるのかもしれない。“大衆芸術”と“限界芸術”の両極で、ダイナミックなバランスを保つことを好むバンドであり、それが可能な、日本でただひとつのバンドがサザンオールスターズかもしれない。

さて……。“限界芸術”なんて言葉を出すと、あの曲のことを語らずにはいられない。「マンピーのG★SPOT」だ。今回の桑田の“被りモノ”は、これまでで一番、彼の頭皮をたしかに包み込みフィット感バツグンのものだった。でも今回は、この歌で大団円と思いきや、続きがあった。

終わった直後、やりたい放題を即座に反省するかのようなオリジナルのわらべ歌(?)が流れたのだ。お子さんたちは真似しちゃダメだよ、みたいな内容だった。これがなんとも不思議な後味となり新種の感動を生む。まさか“マンピー”のパフォーマンスのその先に、新たな趣向が用意されていたとは誰も思わなかったハズで、この日、会場に詰めかけた5万人は、まんまとヤラれたのである。

このように、すでにお馴染みの場面にも、2019年ならではの“進行形”を宿していたのが今回のツアーだったが、文字どおり、まさに“進行形”だったのが(ライヴをやりながら完成を目指した)「愛はスローにちょっとずつ(仮)」である。最後にこの曲のことを書く。なお、未だタイトルは仮であり、こうして千秋楽を迎えても、完成をみたわけではない。

ツアー序盤の仙台で聴いたときと千秋楽とでは、やはり桑田の歌の様子が違っていた。歌詞のひとつひとつの座りも良くなった印象である。ソングライターとしてより、シンガーとしての確信が、日を追うごとに増したのだろう。近い将来、私たちはこの歌を、“愛スロ”などと略称で呼び、親しんでいるのかもしれない(この仮タイトルが、そのまま採用された場合の話だが……)。

とかく回想に埋め尽くされがちな40周年を、新曲の、しかも制作途中の曲のことで終えられるというのは嬉しいかぎりだ。ぽやぼやしていると45周年。この原稿の賞味期限は、きっと短いものだろう。

取材・文 / 小貫信昭

41回目のデビュー記念日を迎えたメンバーからの感謝コメント
「サザンオールスターズ 41周年を迎えました!」

コメントはこちら

サザンオールスターズ 「40」-SPECIAL MOVIE-

この1年に行われたライヴの中から、選りすぐりの映像の特別公開がスタート。 〈ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018〉で披露した「希望の轍」を第1弾公開中。

詳細はこちら

サザンオールスターズ

桑田佳祐(vocal, guitars)、関口和之(bass, Vocal)、松田 弘(drums, vocal)、原 由子(keyboards, vocal)、野沢秀行(percussion)。
1978年6月25日にシングル「勝手にシンドバッド」でデビュー。1979年発表のシングル「いとしのエリー」大ヒット以降、国民的ロックバンドに。2008年8月に史上初の日産スタジアム4DAYSライブを成し遂げ、無期限活動休止期間に入り、2013年に復活。2015年3月には約10年ぶりのアルバム『葡萄』を発表し、5大ドームや22年ぶりの日本武道館での追加公演を含む全国ツアーを開催、約50万人を動員する。2018年6月25日にデビュー40周年を迎え、8月1日にプレミアムアルバム『海のOh, Yeah!!』をリリース。年末には平成最後の『NHK紅白歌合戦』にも出演。2019年春に全国ドーム・アリーナツアーを開催。

オフィシャルサイト
オフィシャルYouTubeチャンネル