LIVE SHUTTLE  vol. 356

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ゆず 日本音楽史上初の快挙。“弾き語り”によるドーム・ツアーから溢れる2人の美学

ゆず 日本音楽史上初の快挙。“弾き語り”によるドーム・ツアーから溢れる2人の美学

日本音楽史上初”弾き語り”ドームツアー
「ゆず 弾き語りドームツアー2019 ゆずのみ〜拍手喝祭〜」
2019年5月29日 東京ドーム

彼らだからこその「抑揚」と「間合い」。ゆずは二人だけでもリッパな“バンド”である。

『ゆず 弾き語りドームツアー2019 ゆずのみ〜拍手喝祭〜』が終了した。“弾き語り”によるドーム・ツアーは日本音楽史上初の快挙だという。それを満員御礼のうちに成功させたことに、まさに“拍手喝采”を送りたい。彼らの「歌」、彼らの「エンターテインメント」、常に新しいものを追い求める、彼らの「姿勢」が本物であることが、各会場、数万人の観衆の前で証明されたのだ。

ゆず エンタメステーションライブレポート ゆず エンタメステーションライブレポート

セットリスト的には、過去・現在・未来を、バランスよく含んだものであり、あっと驚く仕掛けもあった。じーんとしたし、笑いもした。僕が観たのは5月29日の東京ドーム。以下、ポイントと思われる点について書かせて頂く。

会場に入ってまず目にしたのは、彫刻家・名和晃平による巨大オブジェ「YUZZDRASIL(ユズドラシル)」である。これは「命」の象徴であり、土に根を張る自然界の樹木とは逆さまの構図になっているのは、大空と大地を繋ぐ意味があるという。いずれにしても特徴的なのは、単なる舞台美術というより、れっきとしたアート作品として、このコンサートに“共演”していることだろう。

実は今から3年前。同じ東京ドームで20周年突入記念の「ゆずのみ」を観たのだが、僕が行った日のラストは、確か「青」だった。この日は曲が始まる前に、今回のドーム・ツアーのテーマ的存在である新曲「SEIMEI」のオーヴァチュア的部分はあったものの、今回のオープニングもその曲だった。なんだかあの時と時間が繋がった。

ただ、曲というのはライブのエンディングに聴くのとオープニングに聴くのとでは印象がガラリと違う。伝わるメッセージも違う。オープニングだと、歌詞全体を、より軽やかに響かせるようだ。

ところでゆずは、広いドームをどのように“弾き語り”で乗り切ったのだろうか。しかし彼らの場合、そうは言っても、アマチュアの頃から創意工夫を怠らずに培ってきた、独特のスタイルなのである。

ゆず エンタメステーションライブレポート

バンド演奏を基準にするなら、引き算したのが“弾き語り”だが、この単純な数式は当てはまらない。二人だからこその表現力が、むしろ際立つ点がある。「抑揚」と「間合い」だ。これこそが、ゆずの美学と言える。

逆説的に言えば、それはそれで“バンドのサウンド”にも準えられる。岩沢のギターがコードを奏でメロディを浮き立たせ、北川のタンバリンがリズム・セクションとなり推進力を生んでいく「贈る詩」など、まさにそうだろう。客席を「ゆ」チームと「ず」チームに分けて、交互に歌ってもらう趣向も、自由に「間合い」が計れるからこそ、広いドームに一体化を生み出すのだ。そんな盛り上がりから間髪いれず、岩沢が「飛べない鳥」を歌い始める転換の鮮やかさも、ライブ序盤、心に残るシーンだった。

日替わり曲のコーナーでは、「わりと近年の曲…」と紹介しつつ、まずは「イコール」が選ばれた。近年の曲ということは、初期の作品と違い、発想した時点で“弾き語り”ではなかっただろう。しかもこれはGReeeeNとの共作。両者のデモ・テープのやりとりもあったと想像できる。それを初めて、このドーム・ツアーでは“弾き語り”で披露したのだ。

オリジナルは打ち込みっぽいリズム・トラックにストリングスも加わるアレンジだったので、リズムへの解釈が肝心だろうと想像したが、説得力のある、オリジナルとも“イコール”と思える出来映えだった。歌い終わり本人達も、「リハーサルより上手く出来た」と言ってたので、手応え充分だったのだろう。

さきほど「抑揚」と「間合い」ということを言ったが、まさにそれが発揮されたのが、「嗚呼、青春の日々」だ。感情移入の尺度によって、テンポをルバートさせたりシンコペーションの強弱を計ったりし易い曲なのも、この曲の利点である。そして“カモォ〜ン!”と、北川がお客さんを大合唱へ導くタイミングも絶妙。二人と自分が同じ時刻、同じ場所の空気を吸っていることの感慨が、強く強く沸き上がってきた。

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ひとつの独立したコーナーのようだったのが「マボロシ」だ。岩沢がギター、北川がピアノを担当したが、この曲では二人の生音のみならず、シークエンスも加わった音像が、PAを通して届けられた。角度が計算されたレーザーが、単に客席とステージをつなげるだけじゃなく、光のあやとりのように効果的に光の造形、アートとして出現した。さらに歌詞の [鮮やかに今]という言葉にリンクして、照明がよりいっそう色彩の広がりをみせた。次の曲に移っても、瞼に残像を残した。

「高いところから失礼します」と、30メートルあるセットから届けた「うたエール」あたりから、コンサートはスペクタクルな展開になっていく。このあと下に降りた時も、ダメ押しで「高いところから失礼しました」と北川が言ってたが、つまりはこの“高いところから”という、よく壇上の人間が放つ常套句を、ホントにホントに見上げるくらい高いところから言ってみた、という、さり気ないエスプリでもあったわけだ。ゆずのユーモアセンスには、屈託なく大笑いできるものもあるし、こういう、鈍いけど深く届くというか、そんなユーモアセンスもあるわけなのだ。

ゆず エンタメステーションライブレポート
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スクリーンのなかの二人が“天使くん”と“悪魔くん”に扮して、タライが頭に落下したりハリセンが出てきたりという、昭和の古典ギャグなども踏まえた寸劇なども楽しく、そこに時間を操る不思議なスイッチなども絡み、ここからはメドレー仕立てで、賑やかに展開していく。

山車に乗った二人が、より客席の中心へと闊歩し始めて、このあたりの状況は、文字で説明するより当日のライブ写真をご確認頂く方か良さそうだ。ただひとつ書いておきたいのは、「シュビドゥバー」の時だったと思うが、山車がただ巡回するだけと思いきや、なんとその山車自体がぐぐっとせり上がり、高い位置から二人が歌ったことだった。この演出は想像してなかった。山車で近くまで来てくれることに満足してたら、さらなるエクストラがあった。こういう演出は初めて観た。

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メドレーの最後のほうに登場した「岡村ムラムラブギウギ」は、歌詞がドーム・ツアー用に新調されていて、これが何というか、オリジナルの歌詞の後日談だった。出身地ということで注目された岡村町の変化が、冷静に観察され、描写される。町で見掛ける若い女の子たちは住民ではなくみんな“ゆずっこ”だとか、このあたりは彼らの出身地にも、緩い過疎化が訪れているということなのだろうか…。

「夏疾風」も興味深かった。ご存知、嵐への提供曲である。それをゆずが歌うだけでワクワクしたが、オリジナルが歌の背景も含め、そこに主人公の想いが浮き立たせる感覚なのに較べ、より主人公にフォーカスしたようにも聞こえたのがゆずのバージョン。でもこのあたりは聴くヒトによって、印象は様々だろう。

ゆず エンタメステーションライブレポート
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本編のラストに歌われたのが「SEIMEI」だ。私達はライブのあいだ中、どこか意識の片隅でアート作品である「YUZZDRASIL(ユズドラシル)」に抱かれていたわけなのだが(なにしろ視界的にも目の前にあったので)、それが「SEIMEI」という歌のパフォーマンスにより、伏線のように効いていたことが解き明かされる。

太古の昔から困難を越え、明日を繋ぎ、ここまでやってきた僕らの祖先。そのことへの感謝の気持ちを忘れず、でもだからこそ、僕らも勇気をもって、[不可能の壁]を越えろとメッセージするのがこの曲だ。なんとも素晴らしい本編のエンディング…。文字通りの大団円を果たす。

そしてアンコール。最近のコンサートは腕にフリフラを装着してもらうことが普通になっているが、この日のゆずは、事前に観客に、携帯のライトに貼る2色のシールを配布していたようだ。一度、「Hey和」の時にそのタイミングがあったが、ここでは緑の光に会場が包まれた。でもなんか、フリフラをコンピューターで制御してアリーナやドームがマスゲームのようにするのもいいんだけど、ゆずのこの試みは、さらにあたたかい気持ちになれた。それはデジタルの音とレコードの音の違いみたいなものでもあり、あたたかさこそが二人に似合う。

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「栄光の架橋」を歌いきる二人…。二人でも、この大きな大きな歌を、過不足なくパフォーマンスする姿に、まさに“ゆずのみ”の真価を感じ取る。最後は「今の俺たちの気持ちをこの曲に込めて…」と、「終わりの歌」を。そういえば、コンサートの途中、スクリーンで路上時代の映像も流れたが、その時、“ゆずの二人は弾き語りを想い出にしなかった”という、そんなテロップが流れてた。そしてもちろん、これからも、彼らはそう思うのだろう(しかし観客というのはゼイタクなもので、この次はバンドのゆずを観たいなぁ……あ、言っちゃった!?)。

文 / 小貫信昭
撮影 / 太田好治、立脇卓、田中聖太郎、岩﨑真子

日本音楽史上初”弾き語り”ドームツアー
「ゆず 弾き語りドームツアー2019 ゆずのみ〜拍手喝祭〜」
2019年5月29日・(30日) 東京ドーム

01.青
02.DOME★BOMBAYE
03.贈る詩
04.飛べない鳥
05.日替り(イコール / スミレ)
06.日替り(3カウント / 桜木町)
07.陽はまた昇る
08.嗚呼、青春の日々
09.マボロシ
10.Hey和
11.うたエール
12.マスカット
13.シュビドゥバー
14.3番線
15.タッタ
16.岡村ムラムラブギウギ
17.夏疾風
18.サヨナラバス
19.夏色
20.SEIMEI(新曲)

– ENCORE –
EN01.栄光の架橋
EN02.少年
EN03.終わりの歌

*05 スミレ(日替り)
*06 桜木町(日替り)

ライブ情報

自身3度目の単独台湾公演<YUZU ASIA LIVE 2019 YUZUNOMI~拍手喝祭~>開催決定!

9月28日(土) 台湾・台北のLegacy MAX
9月29日(日) 台湾・台北のLegacy MAX
*詳細はオフィシャルサイトにて

ゆず

北川悠仁、岩沢厚治により1996年3月結成。
横浜・伊勢佐木町で路上ライブを行うようになる。
1997年10月、1st Mini Album『ゆずの素』をリリース。
万人を引きつけるキャッチーなメロディーと独特なハーモニー、飾らない共感性の高い歌詞が評判を呼び、翌98年6月にリリースした1st Single『夏色』で脚光を浴び、7月リリースの1st Album『ゆず一家』で一躍全国区となる。

8月30日に行われた路上ライブラストには7,000人を集め、路上ライブが社会現象となるきっかけとなった。
その後、ライブはホールクラスからアリーナクラスへとステージを上げ、2001年には初の東京ドーム公演を行う。
CD音源もコンスタントにリリースしながら、2005年7月23・24日には、ゆず史上過去最高のキャパとなる日産スタジアムで「YUZU STADIUM 2005 GO HOME」を行う。
2007年にはCDデビュー10周年を迎え、10月に記念アルバム『ゆずのね1997-2007』をリリース、10周年感謝祭ライブを行う(全9公演)。
その後も精力的に活動を続けながら、15周年の2012年には、アニバーサリーイヤーを象徴する「ゆず15周年感謝祭 ドーム公演 YUZU YOU」(5月26・27日 京セラドーム大阪/6月2・3日 東京ドーム)を大成功に収め、同年10月には地元・横浜にて初の展覧会「ゆず展~15th Anniversary Exhibition~」を開催し、およそ2万人を動員。
2013年に11枚目のオリジナルアルバム『LAND』を発売し、「第55回 輝く!日本レコード大賞」最優秀アルバム賞に選出。
その後もNHK連続テレビ小説「ごちそうさん」の主題歌『雨のち晴レルヤ』や映画「劇場版HUNTER×HUNTER The LAST MISSION」主題歌「表裏一体」といったヒット作を送り出し、翌2014年、12枚目のオリジナルアルバム『新世界』を発売。
2015年も「OLA!!/ポケット」(4/15発売)や「終わらない歌」(8/12発売)とコンスタントにシングルリリースを行い、8月15・16日には、単独有料ライブとしてはおよそ15年ぶりとなる横浜スタジアムでの弾き語りライブ<二人参客>を開催。2日間で約6万人を動員する。
9月9日には約14年ぶりとなるライブアルバム『二人参客 2015.8.15〜緑の日〜』『二人参客 2015.8.16〜黄色の日〜』を2枚同時リリースし、オリコン週間アルバムランキングで初登場1、2位独占の快挙を達成する。
10月20日からは全国アリーナツアー「LAWSON presents YUZU ARENA TOUR 2015-2016 TOWA -episode zero-」を敢行。
そして2016年1月には2年ぶりとなるニューアルバム『TOWA』が発売された。
同7月には、自身のキャリア初となるアジアツアー<YUZU ASIA TOUR 2016 Summer NATSUIRO>を開催。台湾、香港、シンガポールで単独公演を成功に収めた。
11月26・27日の2日間には、東京ドームにて<ゆず 20周年突入記念 弾き語りライブ「ゆずのみ」>を開催。2017年よりデビュー20周年イヤーに突入し、4月にオールタイムベストアルバム『ゆずイロハ1997-2017』を発売。40万枚超のロングヒットを記録する。
5・6月には自身初の全国ドームツアー「YUZU 20th Anniversary DOME TOUR 2017 ゆずイロハ」を敢行し、全国4会場6公演で約30万人を動員。
6月には初となるEP作品『「謳おう」EP』 /『「4LOVE」EP』を2週連続リリースし、夏には全国各地の夏フェスに多数出演し爪痕を残す。
今秋には約5年ぶりとなる全国ホールツアー「YUZU HALL TOUR 2017 謳おう」を開催。
12月には20周年を記念した2大ドームライブ「LIVE FILMS ゆずのみ」、「LIVE FILMS ゆずイロハ」を同時リリースし、オリコン週間総合ミュージック映像ランキングで1位&2位を獲得。
12月22日には、毎年恒例で開催していたフリーライブ「冬至の日ライブ」ファイナルをカトレヤプラザ伊勢佐木屋上にて開催。長い歴史に終止符を打つ。
12月31日放送の『第68回NHK紅白歌合戦』では、初の大トリとして「栄光の架橋」を歌唱。アニバーサリーイヤーを華々しく締めくくった。

デビュー21年目の2018年も足を止めず、配信シングル「うたエール」、そしてタイアップ楽曲を多数収録したNEW ALBUM『BIG YELL』をリリース。
そのアルバムを引っさげて、4月末より<YUZU ARENA TOUR 2018 BIG YELL>を開催。全国10カ所31公演で約33万人を動員した。
ツアー中、伊藤園「お〜いお茶」CMソング「公園通り」、テレビ朝日系アニメ「クレヨンしんちゃん」主題歌「マスカット」、西日本豪雨の影響を受けた西日本への支援楽曲「うたエール(弾き語りバージョン)」など、コンスタントに楽曲もリリース。
さらなる音楽の可能性を追求しながら、シーンの第一線で活動中!

オフィシャルサイト
http://yuzu-official.com

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