Interview

アルコサイト 強い絆を感じるメンバーが揃った時、そこで彼らは音楽で何を表現したのか?

アルコサイト 強い絆を感じるメンバーが揃った時、そこで彼らは音楽で何を表現したのか?

大阪から登場した4人組だ。一昨年、2枚のミニアルバムを立て続けにリリースして注目を集めたが、そこでドラムが脱退。あらためて体制を整え、昨年夏に現体制になったところから活動を加速させていき、今回は文字通り満を持してのリリースと言っていいだろう。『逆風に帆をあげろ』と題された新作は、持ち前のアグレッシブなエネルギーを押し出しながらも、ロマンチックな包容力を感じさせる仕上がりだ。
ここでは、現メンバーが揃う経緯を辿るところから始めて、今回の新作で表現されたバンドの現在地を4人にじっくりと語ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 高木博史


ここにいる3人とは、サポートしてもらってる時から、心と心でしっかり会話できてるなという手応えがあったので。

北林さんがこのバンドを始める時の最初のモチベーションはどんなことだったんですか。

北林英雄(Vo,Gt) 僕には姉がいるんですけど、姉の高校の文化祭に行って軽音部のライブを見た時に、バンドってかっこいいなあと思ったんです。元々、姉は音楽が好きで僕が小さい頃からヒップホップを聴いていたので、その影響で僕も音楽はずっと好きだったんですけど、姉の文化祭で見てから“バンドっていいなあ”と。その時は中学生だったんですけど、高校に入ったら軽音部に入ろうって。すごく目立ちたがり屋だってこともあるんですけど。

とすると、バンドという形で目立ってやろうというのが、最初のモチベーションということになりますか。

北林 そうですね。

でも、ヒップホップをずっと聴いていたということなので、ラップのチームで目立ってやろうとは思わなかったですか。

北林 それはよく言われるんですけど、でも僕のなかでは、その文化祭で見たバンドの衝撃がずっと忘れられなくて…。ドラム叩いたり、ギターやベースを弾いたり、大声で歌ったりというのが気持ち良さそうやなあっていう。その衝撃がずっとありますねえ。それで、軽音部に入って初めてライブしたのが高校1年生の夏なんですけど、本当に気持ち良かったんです。その興奮がずっと冷めないまま続いている感じがあります。

アルコサイト 北林英雄 エンタメステーションインタビュー

北林英雄(Vo,Gt)

そこからメンバーの入れ替わりが何度かあって今に至っているということですが、順番に加入の経緯を聞かせてください。

浜口亮(Ba) 前のベースが抜けることになった時に英雄が、僕も知ってる先輩に相談したみたいで、その先輩から「アルコサイトというバンドのベースが抜けるらしいんやけど、すごい合うと思うから、1回サポートやってみいひん?」と言われまして、僕は自分がやってたバンドがちょうど解散したタイミングでもあったんで、ライブをちゃんと見たらかっこよかったんですよ。それで、とりあえずサポートから始めたんです。

その当時のアルコサイトがやっていた音楽は、今回の作品で聴ける音楽とどれくらい重なっていますか。

浜口 全く変わってないわけじゃないですが、同じレールの上は走ってると思いますね。当時、僕が見たライブでやってた曲を、アレンジし直して今もやってたりしますから、同じ方向は向いていると思います。

その次に加入したのは小西さんですね。

小西隆明(Gt) そうです。お互いによく通ってるライブハウスで知り合って、「ギターが抜けるんで、サポートでもいいから、弾いてくれへんか?」と誘ってくれたんです。そこから1年ちょっとくらい、自分のバンドをやりながらサポートしてたんですけど、自分のバンドが解散してしまうことになって、そのタイミングで正式に加入させてもらいました。

1年余り、自分のバンドと並行してサポートを続けていたということは、アルコサイトでギターを弾くことにも魅力を感じていたんだと思いますが、それはどういうところだったんですか。

小西 僕がやってたバンドでは自分で歌ってたわけではないんですが、全部僕が作った曲をやってたんです。だから、自分以外の人間が書いた曲をやること自体が新鮮やったというのもあるんですが、英雄が書いてくる曲が僕の中ですごく響いたんですよね。だから、やっぱり英雄の人間性が大きいと思います。

森田さんが正式加入したのが1年前ですよね。

森田一秀(Dr) 最初は、いろんなバンドのサポートをやってる時期に、ライブハウスの後輩だった隆明から「ドラムが抜けるんで、助けてもらえませんか」という話があって、それでサポートで叩くことになったんですけど、その直後に全国ツアーが始まって、だからその数ヶ月は一緒にいる時間もかなり多かったんです。それで正式メンバーになってほしいという話をもらった時に思ったのは、“このバンドなら、僕自身も成長できるな”ということだったんですよ。

どうして、そういうふうに思ったんでしょうか。

森田 他のバンドだと、重宝してもらってる分、なかなか本当のことを言ってもらえないというか、“やってもらってるから”という気持ちがあるからでしょうけど、“こうしてほしい”と思ってても言わないことがけっこうあったんです。でも、英雄はそういうことがないんですよね。「ここは、こうしてほしい」とか「ここは、こうだと思うよ」ということを、年齢とかサポートであることとは関係なく言ってくれて、それを僕がちゃんと飲み込めたんです。だから、このバンドがいいなと思ったんですよね。

アルコサイト 森田一秀 エンタメステーションインタビュー

森田一秀(Dr)

逆に、北林さんが新しいメンバーを誘う時には、どういうことをポイントにして選ぶんですか。

北林 僕自身が、聴いてくれている人の心に訴えかけるような歌を武器にしてバンドをやっているので、その歌や活動を通して僕の人間性を感じてくれてて、その上で相手の人間性というか人間力を見てたところはあったかもしれないですね。

そこで言う「人間性」とか「人間力」と言うのは、例えばどんなことでしょうか。

北林 当たり前かもしれないですけど、僕自身が一番大事にしているのは「ありがとうございます」と「ごめんなさい」をちゃんと言えるということで、それは大人になればなるほど意地があったり知識も増えていくからどんどん言いづらくなることでもあると思うんです。それでも、それを言うべき時にちゃんと言える人とは心と心でしっかり会話できるように思うんですよね。ここにいる3人とは、サポートしてもらってる時から、心と心でしっかり会話できてるなという手応えがあったので、「メンバーになってほしい」と申し込みました。

“今の自分たちを表してるのはこれだな”という7曲にまとめました。

さて、今回のリリースの話です。これまでのペースからすると、今回は1年半ぶりということで、少しインターバルが長くなりましたが、それは結果的にそうなってしまったという感じですか。それとも、皆さんの中でバンドとしての状態が整うことを待っていたんでしょうか。

北林 これまでに何度かメンバー・チェンジを経験してきましたが、メンバーが変わるというのはバンド自体が変わることやと僕は思ってるんです。4人のうち1人変わるだけでも、いままでできてたことができなくなったり、これまでは表現できてたことがうまく伝わらなくなってしまうことがあるような気がするんですよ。だから、この1年ほどの間は“この4人でできることって何やろ?”というのをすごく探してて、それが見えてくるのを待ってたところはあるかもしれないですね。

具体的には、制作はどんなふうに始まったんですか。

浜口 スタッフも含めた僕らのチームの中で「そろそろリリースしたいね」という話が去年の11月か12月に出てきて、曲作りは常にやってるんで、そこから曲を選んでブラッシュアップして、というふうに作業を進めて最速のタイミングがこの7月やったんです。

北林 今回のアルバムにも入っている「終わらない」という曲が去年の8月くらいにできたんですけど、その曲はメンバーが変わったりしてうまくいかへんかったけど、それでも終わらないで前に進んでいくという歌で、自分たちの中でも“これやな”と思えたんですよね。とりあえずライブ会場限定でシングルとして出したらすぐに売り切れて、それも自分たちとしては手応えを感じたし。そのあたりから、1コーラスだけの曲とか貯めてた曲が40曲くらいあったなかで何度もスタジオに入ってアレンジし直したりして、“今の自分たちを表してるのはこれだな”という7曲にまとめました。

小西さんが今回の制作を振り返って、印象に残っている楽曲や場面は一つあげてもらえますか。

小西 今回の作品でギタリストとしてしっかりチャレンジを押し出せたのは「生きたがり」という曲で、いままで自分が弾かなかったようなフレーズを入れたいなと思ってやった曲なんです。元々、デモ段階の時には「この曲はもう形になってるから、これ以上足さなくてもいいよな」と僕は言ってたんですけど、でもさらに進めていくうちにギタリストしてこの曲をもう一つ上に持っていけるなと思って、あのリフを入れました。

アルコサイト 小西隆明 エンタメステーションインタビュー

小西隆明(Gt)

北林 僕は彼の狂った感じがすごく好きで、ライブでもすごく動くんですけど、そういう部分がギタリストしても彼の魅力やと思うんです。で、「生きたがり」は、自分でもわかってるけど解決できないモヤモヤした矛盾みたいなものを表現している曲なので、「そういう感じをギターで入れてもいいんやないかな」という提案はしました。

森田さんは今回の制作を振り返って、印象に残っているのは?

森田 4曲目の「愛してあげるよ」にはドラム・ソロみたいなパートがあるんですけど、ドラム・ソロを入れる曲なんて僕はほとんど経験がなかったし、しかもそれをレコーディングすることになって、やっぱり今回の7曲のどのフレーズよりも考えましたから、「愛してあげるよ」は特別に思い入れのある曲になりましたね。

そもそもドラム・ソロを入れるアイデアはどうして出てきたんですか。

森田 あの曲はとりあえず出来た感じにいったんはなったんですけど、でもみんななんとなく物足りない感じがしてて、「短いかな?」とか言ってたんです。そしたらある時に浜口が「これ、ドラム・ソロ入れたらいいんちゃう?」と言いて出して…。

浜口 アレンジを考えてる時って、ライブで演奏してどういう景色が広がるかということをまず念頭に置いてやってて、その時もドラム・ソロを入れたらどんな感じになるか見てみたいと思ったんです。で、実際にやってみたら“これ、ライブでやったら絶対面白い”と思ったんですけど、それでも「レコーディングでも入れるか?」という話はあったんです。そこは「攻めよう」という話で。それにあの曲にはけっこうガヤが入ってるんで、ドラム・ソロも合わせ、ライブ感を封じ込めれたんやないかなと思います。

アルコサイト 浜口亮 エンタメステーションインタビュー

浜口亮(Ba)

「ライブで演奏してどういう景色が広がるかということをまず念頭に置いてやってる」と言われましたが、ということはライブの現場にそのまま持っていけるようなアレンジでレコーディングするというのが前提になっているということですか。

浜口 ライブをそのまま音源に持って行く、みたいな感じですね。どちらかと言うと。あくまでもライブ・バンドなんで。ヘッドホン・ミュージックとして聴いてもらって、それでかっこいいなと思ってもらえたら、それも嬉しいんですけど、やっぱり僕らのライブに足を運んでほしいという気持ちがすごく強いので、音源でもそういう部分を表現できたらいいなということはいつも思ってます。

その浜口さんは、今回の制作を振り返って印象に残っているのは?

浜口 今も話したようにどの曲もライブ前提で作ってるんですけど、6曲目の「陽だまり」という曲を最初はいわゆるバラードというか、スローテンポの曲としてやってたんです。そこに、プロデューサーから「途中でテンポを上げてみようか」という提案があって、やってみたらただのバラードでなくなったというか。あの曲がそうなることで、作品全体にもライブ感が出た気がしていて、僕のなかではあの曲はこの作品のキーになっているように思います。

逆風というか逆境というか、そういうなかでも愛に気づくことによって今はすごく楽しめてる感じがあるんです。

北林さんは今回の制作を振り返っていかがですか。

北林 1曲目の「鳴り響け」という曲は主人公が女の人なんですけど、女の人が主人公の曲というのはこれまで書いてこなかったので、ちょっと違うアプローチの攻め方というか…。前は真っ直ぐに書くことしかやってこなかったんですけど、自分のなかでは新しい境地という感じの曲かなと思っています。

女性が主人公、つまり自分じゃない存在を主人公にするというのが、ソングライティング上のトライだったわけですか。

北林 さっき話が出た「生きたがり」も主人公は“少年”という言い方になってたりして、そういうチャレンジをいろいろやったアルバムではありますね。

逆に言えば、これまでは自分のことを書いてきたということですか。

北林 そうですね。そういう曲が多かったと思います。

そこから、自分以外の主人公で書いてみようという方向に向いたのは、どういう気持ちの流れだったんでしょうか。

北林 2枚アルバムを出して、自分としては自身がみなぎるというか、“俺ら、カッコいいっしょ!”みたいな感じで、いろんな人に中指を立てて、自分の嫌いなものは認めないっていう、今思えば平和じゃない感じの(笑)、音楽をやってたなと思うんです。でも、2枚目のアルバムのリリース直前にドラムが脱退して、我に返ったというか…。落ち着いて周りを見てみたら、本当はみんなと一緒にいたかったのに、みんなを寄せ付けないようなバンドになってしまっていたような気がして、僕はすごく寂しかったんです。そこで、メンバーをはじめバンド仲間だったり家族だったり、助けてくれた人がいっぱいいて、僕はすごい愛をもらったというか…。

曲作りに向かう気持ち以前に、周りの人と向き合う気持ちに変化があったんですね。

北林 それが今回のアルバムのテーマの一つでもあって、「陽だまり」という曲も、愛に生かされて、愛を知ってっていう、愛をテーマにしてますけど、僕はこれまであまりそういう歌は書いてこなかったんですよね。今までは人を威嚇する強さみたいなものしかなかったのが、人の痛みを知ったことによって自分よりも弱い人を助けられる強さというか、そういう優しい強さを、バンドを通して持つことができたかなって。そういうふうに成長できたと思ってるんで。そういう僕たちが今鳴らせる音を形にした曲たちであるので、そういう意味でも自分のことを歌うというよりも、いろんな人の歌を作ろうということは今回意識していたと思います。

アルコサイト エンタメステーションインタビュー

そういうアルバムのタイトルを『逆風に帆をあげろ』にしたわけですが、このバンドには逆風が吹いているんですか。

北林 そうですね。その状況を楽しんでる感じもありますけど。

それは、どういう逆風ですか。

北林 今の僕らは音楽だけでは食べていけないからバイトしてたりするし、そういう状況に対する自分の中の焦りとか不安もあります。バンドとしても、メンバー・チェンジがあったりして気持ちが落ち着かない時期もあったんですけど、そういう逆風というか逆境というか、そういうなかでも愛に気づくことによって今はすごく楽しめてる感じがあるんです。だから、逆風だけじゃないというか、そういう中に帆をあげて、その逆風を力に変えて進む強さを今のアルコサイトは持っていると思うので、そういう希望につながるような歌が揃ってるなと思ったんです。今回のアルバムは。

最後に、1年後にはどうなっていたいですか。

北林 バイトをやらなくていいようになりたいとか、クルマじゃなくて新幹線移動になるといいなとか、そういうことも思いますけど、でもそういうことよりも、来年の夏だとこのメンバーになって2年ということになりますが、このメンバーでそれを迎えられたら僕は何よりも幸せだと思います。何よりもこのメンバーで迎える未来にワクワクしてます。

まずは、リリース後のツアーを楽しみにしています。ありがとうございました。

その他のアルコサイトの作品はこちらへ。

ライブ情報

“逆風を力に変えろツアー”

7月27日(土)大阪・豊中LIP 2nd
8月2日(金)東京・渋谷CLUB CRAWL
8月21日(水)京都・京都GROWLY
8月23日(金)福岡・久留米ウエポン
9月6日(金)福岡・天神Queblick
9月7日(土)大分・大分clubSPOT
9月8日(日)鹿児島・鹿児島SRホール
9月12日(木)岡山・岡山CRAZYMAMA 2 ndRoom
9月13日(金)兵庫・神戸太陽と虎
9月20日(金)石川・金沢vanvan V4
9月21日(土)富山・富山SoulPower
9月22日(日)愛知・名古屋APOLLOBASE
9月26日(木)高知・高知ri:ver
9月27日(金)香川・高松DIME
10月1日(火)東京・府中Flight
10月3日(木)茨城・水戸ライトハウス
10月4日(金)宮城・仙台enn 3 rd
10月6日(日)福島・郡山PEAK ACTION
10月7日(月)栃木・宇都宮HEAVEN’S ROCK Utsunomiya 2/3
10月22日(火)大阪・大阪LIVESQUARE 2 ndLINE

アルコサイト

北林英雄(Vo,Gt)、小西隆明(Gt)、浜口亮(Ba)、森田一秀(Dr)。
2013年、当時高校2年生だった北林を中心に結成。2016年、1 st デモEP「それでも、生きていたいと願う」をライブ会場、タワーレコード大阪NU茶屋町店にてリリース。約50本に及ぶ全国ツアーも敢行した。2017年3月、1 st ミニアルバム『CROW』リリース。同年12月、2 ndミニアルバム『WOLF』リリース。2018年、森田一秀(Dr)が加入。2019年7月、3 rdミニアルバム『逆風に帆をあげろ』をリリース。

オフィシャルサイト
http://alcosite.com

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