Interview

藤井フミヤ 3年ぶりとなるニューアルバム『フジイロック』。80年代から令和に至る時代観を見事に表現した1枚について訊く。 

藤井フミヤ 3年ぶりとなるニューアルバム『フジイロック』。80年代から令和に至る時代観を見事に表現した1枚について訊く。 

前作『大人ロック』で遊び心を爆発させた藤井フミヤの、3年ぶりとなる新作は『フジイロック』。フミヤの音楽を育んだ80年代のポップロックのエッセンスが、あちこちにちりばめられている。
作曲家は、有賀啓雄、松本圭司、増本直樹、そして大島賢治に加えて、KAN、土屋昌巳といった豪華な布陣。さまざまなスタイルを持つフミヤのボーカルに焦点を当てようという狙いだ。それに応えて、作詞家&ボーカリスト藤井が大活躍。80年代から令和に至る時代観を見事に12曲で表わしている。
さすがと思わせたり、思い切り遊んだりの音楽三昧なアルバムは、幅広い音楽ファンを喜ばせそうだ。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 石ヶ森三英


藤井フミヤのボーカルのありとあらゆるパターンを楽しめる感じのアルバムになりましたね

藤井フミヤ エンタメステーションインタビュー

アルバム『フジイロック』のスタートは?

最初は踊れるようなグルーヴがあって、明るいものを作ろうってことで、曲をいろいろ発注したんですよ。

いつごろですか? 

ちょうど1年前ぐらいですね。それで、その発注の仕方が「藤井フミヤ“ブルーノ・マーズ”化計画」っていう(笑)。

わかりやすい!(笑)。

それで発注したんだけど、なかなか曲が集まってこなくて。

テーマが難しかったのかな?

いや、みんな、忙しかったんじゃないかな(笑)。でも、その中で大島くんが、次から次にアイディアが湧くらしく、10何曲ぐらい書いてきた。それで大島くんを中心にアルバムを作ろうっていうことになっていったんです。

ただ大島さんが全曲をプロデュースしてはいない。

そうそう。曲によってサウンド・プロデューサーを変えたほうが、バランスを取りやすいので。それで、配信だけでCD化されてない曲も入れようってことになったら、全体的にダンサブルではなくなったけれど、藤井フミヤのボーカルのありとあらゆるパターンを楽しめる感じのアルバムになりましたね。

映画『アストロボーイ』で、この“ロック”ってキャラの声優を1回やらせてもらったことがあるんで

最初の計画とは違ってしまって、難産だったの?

全然難産じゃない。スルスル行った(笑)。最初はもう、藤井フミヤのアルバムって知らなければ、「これ、誰が歌ってるんだろう?」っていうぐらい若くしようかなって思ってて(笑)。それでジャケットには出ないって言ったんですよ。手塚治虫さんのアニメのキャラクター“ロック”を使った。映画『アストロボーイ』で、この“ロック”ってキャラの声優を1回やらせてもらったことがあるんで、「みんな、アニメ好きだし、アニメがいいんじゃないですか?」って(笑)。最終的に『アストロボーイ』のロックを使わせてもらいましたね。

アニメだけど、昭和な感じがする。

うん、昭和、昭和(笑)。それがいいんですよね。

ジャケットに使われている文字の組み方も、『少年マガジン』とか『少年サンデー』の感じ。

そう、漫画雑誌のイメージだね。

音楽的な内容が、最初と違っちゃったけど、ビジュアルはこのまま行こうか、みたいな(笑)。

うん。逆に「目立つんじゃない?」みたいな(笑)。

今は人に対してだけじゃなく、お菓子とか、ファッションとか、何でもミーハーっているでしょ

藤井フミヤ エンタメステーションインタビュー

曲を集めていく過程で、「あっ、これでアルバムを作れるな!」っていう手応えのあった楽曲は?

3曲目の「WE ARE ミーハー」かなあ。単純明快なロックンロール。大島くんの出したアイディアの中でも、これが目立ってた。最初は♪ミーハー♪のところを、♪ドリーマー♪って歌ってたんですよ。そしたら「夢を持って生きていこうぜ」みたいな、非常に前向きで正しいロックンロールになってたはずなのに、♪ミーハー♪ですからね。ちょっと外れちゃった(笑)。

ははは!

でも♪ミーハー♪っていうのがハマったときに、「あ、これ、いいな!」と思って。そこから詞を考えていったら、世の中、みんなミーハーだなあと思って。今は人に対してだけじゃなく、お菓子とか、ファッションとか、何でもミーハーっているでしょ。「これ買ってきちゃった!」「もう、ミーハーだね」みたいな。ポップコーンみたいなモノに対してもミーハーっていう言葉を使う。

確かに!

初めは♪WE ARE ミーハー♪とか歌っちゃって大丈夫かなあと思ったけど、歌ってみたら面白くって。令和じゃなくて、平成で作られたミーハーですよね。昭和のミーハーって言ったら、まだアイドルとかそういう、人に対するものだった。スターに対するミーハー。それが平成の時代に、完全に単語が独立しちゃった。「ミーハー」って日本語って思ってない可能性もあるもんね。

そうだね(笑)。 

この曲はあくまでライブのために作ったようなところがあって、観客が♪ミーハー!♪って歌う姿がメチャおもろいじゃんと思って。「私たちのために作られた曲!」みたいになっちゃうから。

80’s感がプンプンする感じ。それで「やろう!」ってことになった。20年以上前の曲が、今、蘇った

藤井フミヤ エンタメステーションインタビュー

ははは! 2曲目の土屋さん作曲の「PINK」のメロディが、凄く不思議で魅力的だった。

今どき、ああいうメロディは絶対ないよね。歌詞も超短くて。実は俺のセカンド・アルバム、90年代に出した『R&R』のときに、土屋さんに曲を発注して、2曲上がってきたんですよ。

えっ? もしかしたら、そのうちの1曲なの!?

そう。当時未採用の方(笑)。

あぁ、それでメロディに独特の匂いがするんだ。

そう、80年代の。

カルチャー・クラブがやってもおかしくない感じ。

そうそうそう(笑)。まさにそういうデモテープだったの。それを今回、スタッフに「やってみない?」って言われて、聴いてみたら「これ、今どき、絶対作れないよ」っていう。この80’s感がプンプンする感じ。それで「やろう!」ってことになった。20年以上前の曲が、今、蘇った。

歌詞がフミヤさんらしい。

うん。歌詞は“キャロル”ぐらい短い(笑)。ロックンロールだから、あんまり長ったらしい詞って好きじゃないんだよね。でも、歌うのは難しかったね。

完成した「PINK」を、土屋さんに聴いてもらったの?

もちろん聴かせましたよ。歌詞も含め、気に入ってくれました。

KANさん作曲の「そのドアはもう開かない」は? 

KANちゃんは、「これフミヤくんに合うんじゃないか」って3曲持ってきてくれた。ずいぶん前に「曲は出来たんだが歌詞が出来ない」っていうのを♪ラララ♪で歌ったデモをコンサート会場で売ってたんだって。そのCDに入ってた曲だった。それが気に入ったから、「じゃあ、俺、歌詞付けるよ」って言って書いたのが「そのドアはもう開かない」なんだよね。とことん救いようのない歌になっちゃったけど、そういう風にしか書けなかった。あの歌は、ものすごいラブラブな歌詞か、ホントに救いようのない歌詞か、どっちかしかないと思ったから(笑)。

でもそう思えるぐらい、インパクトのあるメロディだったんだ。

そうですね。

ひょっとしたら、江利チエミさんとかああいう年代の感じのジャズかもしれない

ボーカリスト・フミヤでいえば、バラードも魅力のひとつだけど?

何曲かバラードが入ってるんだけど、松本圭司くん作曲の「ラブレター」は、50年代から60年代の香りのするジャズ。ちょうどジュリー・ロンドン(注:女性ジャズボーカル)とかあの辺のジャズみたいな曲をやりたいなあと思ってたらこれが来たから、ドンピシャじゃんと思って。この曲は圭司くんにアレンジもしてもらったんだけど、圭司くんは最近、ジャズしかやってなくて。これを聴いて、なんか次のアルバムはちょっとジャズっぽくてもいいかなとかも思っちゃったの。日本語ジャズみたいなアルバムを次は作ってもいいかなあって。

そういう意味では、今後の大きなヒントになってる曲なんだね。

そうですね。まあ、2年後ぐらいの話ですけど、なんかそういうのも歌えるようになっといたほうがいいかなと(笑)。ひょっとしたら、江利チエミさんとかああいう年代の感じのジャズかもしれない。あくまで日本語でね。俺がやるなら、そうじゃないと意味がない。

「ラブレター」はアルバム制作の後半のほうに?

後半の方にポンと出てきた。これが入ることによって、全体的に幅広いボーカル・バランスが取れたと思う。

モロに80年代のディスコ風の「千夜一夜幻夜」も面白かった。♪マハラジャな夜♪って(笑)。

女の子が入ってるやつじゃない?

そうそう、女の子コーラスが入ってるやつ。

あれは作曲家の増本(直樹)くんが、90年代に女の子に提出した曲なんですよ。そのときには使われなかったんだけど、今回、聴かせてもらって、「これメッチャ面白いじゃん!」ってなって。シンセ・ドラムの“シモンズ”が、♪トコトントントン♪みたいに入ってて(笑)。だから「この空気感は壊さない感じでアレンジして」って大島くんに頼んだら、大島くんがアレンジで遊んじゃったんだよね。だから俺も歌詞で遊んじゃった。「デュエットっぽくしようよ」って言って、女の子のコーラスを入れたり。

「自分はポップスシンガーなんだな」って改めて思った

藤井フミヤ エンタメステーションインタビュー

逆に言うとよくまとまったね、このアルバム。

ははは! そうね。

でも、やりたいことをやってるから、エネルギーをすごく感じる。

うん。ホントに、「自分はポップスシンガーなんだな」って改めて思った。

本当にこのアルバムには“いろんなフミヤの歌”が入ってる。

最近、プロモーションで「このアルバムは2世代で聴けるので」ってよく言ってる。「親子でモールに行くときに車で聴いてみてよ」って。だって親子で音楽を聴くって、モールに行くときの自動車の中しかないでしょ(笑)。

そうだよなあ。一緒にテレビで音楽番組は観ないしねえ。

そうそう。

アルバムタイトルは?

ジャケットのキャラクターが“ロック”なのと、“フジロック”をちょっともじって。言葉としては「聞いたことあるぞ?!」みたいな雰囲気もあるし、前作が『大人ロック』だったんで、『フジイロック』って付けました。

そしてツアーは?

実はねえ、このアルバムのツアーは来年なんですよ。ホントは今年の後半、このアルバムのツアーをライブハウスでやろうとしてたんですけど、諸事情がありまして(苦笑)。どんなメンバーとやるのかを考えたら、結局、大島くんをメインにこのアルバムのツアーをやったほうがいいから、来年やろうっていうことになりました。

ちょっと先だけど、ツアーも楽しみにしてます。ありがとうございました。

その他の藤井フミヤの作品はこちらへ。

ライブ情報

10人の演奏家で奏でる華やかなサウンド“十音楽団”
藤井フミヤ史上初の試み「フミヤ劇場」上演中!!

*スケジュールはオフィシャルサイトで

藤井フミヤ初となるライブハウスツアー、7大都市にて開催決定!!

11月2日 (土) 宮城県 仙台PIT
11月4日 (月・祝) 大阪府 Zepp Osaka Bayside
11月9日 (土) 北海道 Zepp Sapporo
11月16日 (土) 広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
11月17日 (日) 福岡県 Zepp Fukuoka
11月23日 (土・祝) 大阪府 Zepp Namba (OSAKA)
11月24日 (日) 大阪府 Zepp Namba (OSAKA)
11月30日 (土) 東京都 豊洲PIT
12月1日 (日) 東京都 豊洲PIT
12月6日 (金) 愛知県 Zepp Nagoya
12月8日 (日) 大阪府 Zepp Osaka Bayside
12月20日 (金) 東京都 Zepp DiverCity (TOKYO)
12月21 日(土) 東京都 Zepp DiverCity (TOKYO)
12月27 日(金) 東京都 豊洲PIT
12月28日 (土) 東京都 豊洲PIT
12月30日 (月) 愛知県 Zepp Nagoya

*詳細はオフィシャルサイトで

藤井フミヤ

’83年 チェッカーズとしてデビュー。
’93年以降、ソロアーティストとして活動。ミリオンセラーとなった「TRUE LOVE」や「Another Orion」などは、幅広い世代から長く親しまれ続けている。
2013-2014年の2年間にわたり、『藤井フミヤ30TH ANNIVERSARY TOUR vol.1 青春』『藤井フミヤ30th Anniversary Tour vol.2 TRUE LOVE 』と題したデビュー30周年・ソロデビュー20周年記念の全国ツアーを展開。
また2013年の大晦日には日本武道館でのカウントダウンライブを5年振りに復活させた。
2015年、前年に好評を得たフルオーケストラとの『billboard classics FUMIYA FUJII PREMIUM SYMPHONIC CONCERT』のアンコール公演を開催。
2016年、4年振りのオリジナルアルバム『大人ロック』リリース、また2年振りの全国ツアー『Fumiya Fujii CONCERT TOUR 2016 大人ロック』、日本武道館でのカウントダウンライブを行う。
2017年、『billboard classics FUMIYA FUJII PREMIUM SYMPHONIC CONCERT』において、指揮者・西本智実氏とのコラボレーションが実現。西本氏とフミヤによる共作「あなたからの手紙」も演奏された。
そして、結成20周年を迎えたF-BLOODとして、6月にアルバム『POP ‘N’ ROLL』をリリース、9月からは『F-BLOOD 20th Anniversary POP ‘N’ ROLL TOUR 2017』と題した全国ライブハウスツアーを行った。
同年末にも日本武道館でのカウントダウンライブを開催している。
2018年、デビュー35周年イヤーに突入。ファン投票によるベストアルバム『FUMIYA FUJII ANNIVERSARY BEST “25/35” L盤&R盤』をリリースし、35周年前半の全国ツアーとして『ANNIVERSARY TOUR 2018 35 Years of Love』を開催。
大晦日には通算15回目となる『日本武道館LAST COUNTDOWN PARTY 2018-2019』を行い、この公演をもって日本武道館でのカウントダウン公演をラストとした。
2019年、35周年イヤーの後半を飾る全国ツアー『35th ANNIVERSARY CONCERT 2019 藤井フミヤ”十音楽団”』を7月より開催。また3年振りのオリジナルアルバム『フジイロック』の発売も決定している。

オフィシャルサイト
https://www.fumiyafujii.net

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