モリコメンド 一本釣り  vol. 125

Column

FERN PLANET “自分たちの音楽を生み出したい”という思いを貫く2人からのエッジーな新作とは?

FERN PLANET “自分たちの音楽を生み出したい”という思いを貫く2人からのエッジーな新作とは?

魅力的なバンドは、人を惹きつける“物語”を持っている。メンバーがどのように出会い、どんな志を持ってバンドを結成し、どんなふうに試行錯誤を繰り返しながら活動を続けているのか——そのなかで様々なエピソードが生まれ、バンド固有のストーリーにつながる。オーディエンスはその物語を共有することで、バンドが作り出す楽曲に深くのめり込み、共感を覚えるのだ。昨年のELLEGARDENの活動再開、そして、今年のNUMBER GIRLの再結成がこれほどまでに強烈なリアクションを引き起こしているのは、それぞれのバンドの物語がリスナーの間で共有され、生き続けていたからに他ならない。(少し話が逸れるが、映画「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒットを記録したのも、クイーンというバンドの物語が多くの人の心に響いたからだ)

SERINA(Vo & Gt)と山口メイ子(Ba)によるFERN PLANETもまた、多くのオーディエンスに訴えかけるストーリーを持ったバンドだ。前身バンドのRick Rackで活動をスタートさせたのが2013年。翌年には若手バンドを対象としたコンテスト『十代白書』で準グランプリを獲得し、10代限定のオーディション『閃光ライオット』ではファイナルに進出するなど、瞬く間に大きな注目を集める。その後も順調な活動を続けていたが、バンドは2017年1月に解散。その直後に新バンドELFiN PLANETを結成し、3ピースバンドとしてリスタート。さらにバンド名を現在のFERN PLANETに改め、1stミニアルバム『stardustbox』をリリース。日々の葛藤と悩み、何度も壁にぶち当たりながら、それでも夢に向かって突き進みたいという強い思いをエッジーかつポップなサウンドで表現した本作は、このバンドの魅力を幅広い層のリスナーに伝えることになった。

ミニアルバム『stardustbox』を携えた全国ツアーの直後にドラマーのミズグチハルキが脱退。SERINA、山口メイ子の2人体制で活動を継続をしているFERN PLANET。その最初のアクションは、今年3月に発表された枚数限定シングル「ソルジャーガールズ」だった。じつはこの曲は、Rick Rack時代の人気曲。シャープに空間を切り裂くギターリフ、バウンシーに飛び跳ねながら爆発的な高揚感を生み出すバンドサウンド、そして、“日々は戦争 集うは戦場 恋せよ乙女達”という歌詞がぶつかり合う「ソルジャーガールズ」は、SERINA、山口にとっての原点であり、彼女たちの根本的なスタイルに直結している。この曲を改めてシングルとしてリリースすることは、“これまでのキャリアをすべて受け入れ、前に進み続ける”という意思表示に他ならない、と思う。モノクロの映像で演奏シーンをシンプルに映したMVもきわめて魅力的だ。

7月17日には新作ミニアルバム『僕らのトロイメライ』をリリース。“トロイメライ”とはドイツ語で“夢、夢想”を意味する言葉。このロマンティックなワードをタイトルに冠した本作は、FERN PLANETの未来のビジョンを描き出した作品に仕上がっている。それを象徴したいるのが、1曲目の「イルシオン」。“はっとして 振り返るんだいつも あなたの声が聞こえた気がして”というフレーズではじまるこの曲は、圧倒的な推進力をたたえたサウンドとともに、切なさや後悔を抱えながら、“それでも僕らは生きてかなきゃ”という意思を描き出したアッパーチューン。この曲にあるのはおそらく、彼女たち自身のこれまでの軌跡だろう。何度も別れを経験しながらも、バンドでの活動を決して諦めることなく、どこかにあるはずの光を求め続ける——そう、「イルシオン」が与えてくれる感動は、2人が辿ってきた物語に裏打ちされているのだ。

『僕らのトロイメライ』は、FERN PLANETの音楽性を大きく広げた作品でもある。ファンクミュージックのテイストを含んだベースを軸にしたダンサブルなナンバー「摩天楼」、オートチューンを使ったボーカルで“ロボット感”を演出した「ともだちロボット報告書」、ディレイを効かせたギターフレーズ、スクエアな16ビート、重厚なグルーヴがひとつになった「絶対相対」。“愛していたい 僕のことを”という切実な思いをポップに描き出した「自己愛ism-ジコアイズム-」、君の横顔を見ながら、ゆっくりと歩んでいきたいという願いをアコースティックな音像とともに映し出す「横顔」。歌詞のテーマや雰囲気に合わせ、色彩豊かなフレーズやアレンジを施すことで、彼女たちの音楽世界はさらに奥行きを増しているのだ。

様々な出来事を経験し、ときに停滞を余儀なくされながらも、“自分たちの音楽を生み出したい”という純粋なモチベーションを貫き、独創的な楽曲へと結びつけるFERN PLANET。『僕らのトロイメライ』から再び始まる彼女たちの物語を多くの音楽ファンとともに共有したいと思う。

文 / 森朋之

オフィシャルサイト
https://www.fernpla.net

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