Interview

LAID BACK OCEAN ミニアルバム『DEFY』に詰め込んだ“反抗”の証とバンドの新たな可能性

LAID BACK OCEAN ミニアルバム『DEFY』に詰め込んだ“反抗”の証とバンドの新たな可能性

まずは驚嘆、その先に共鳴。7月10日リリースとなったLAID BACK OCEANの4thミニアルバム『DEFY』は間違いなく彼らが開いた新しい扉だ。前作の1stフルアルバム『NEW MOON』から1年、作品性もアプローチもまるで対極と呼んでいいくらい振り切れたアティテュード。ロックのネクストレベルへと緻密に進化を遂げたサウンドにただただ陶然と惹き込まれ、さらに鋭利に、かつ深度を増したYAFUMI(Vo.)の詞世界に圧倒される心地好さといったらない。この1年の間にメンバーの脱退、そして新ベーシスト・SHOUYAの加入というエポックを経て、いっそう強靭な魂と音楽への情熱を手に入れた彼ら。ピアノロックという概念を大きく更新しつつ、バンドの新たな可能性を見事に具現し、提示してみせた今作についてYAFUMIとSYUTO(Pf.)にとことん語ってもらった。

取材・文 / 本間夕子


結果、その話し合いの内容とまっっったく違うアルバムになりました(YAFUMI)

LAID BACK OCEAN YAFUMI

聴いてもう、びっくりしました。ちょうど去年の昨日、1stアルバム『NEW MOON』のインタビューをYAFUMIさんにさせていただいたんですよ。

YAFUMI おお、あれから1年か。

だから「1年でこんなに!?」ってぐらいの振り切れ方に驚いてしまって。

YAFUMI 自分たちで「振り切ろう」と意識してたわけでは全然ないんですよ。「中間に落とすことはしたくないな」とはいつも言ってますけど。今回は……なんでこうなったんだろう?(笑)

今作に臨むにあたって何かきっかけになった出来事とか、そういったものは?

YAFUMI 今年に入ってすぐの頃かな、チームで話し合いをしたんですよ。ある程度、結果を出さないとLAID BACK OCEANはヤバいぞっていう空気が漂ってた時期で。メンバーとマネージャーとで、人の気持ちに届くもの、人の気持ちに訴えかけるものは何か、だとしたらどういう楽曲が必要なのか、そういうことをかなり話し合ったんですよね。結果、その話し合いの内容とまっっったく違うアルバムになりました(一同爆笑)。

そういうことですよね(笑)。

YAFUMI あの話し合いはなんだったんだ?ってくらい、たぶんマネージャーがいちばんビックリしてた(笑)。俺、謝りましたもん。でも違うと言っても、目指した場所が違うんじゃなくて、そこへのアプローチの角度が違うっていう意味ですけどね。「人の心に訴えたい」「世の中にインパクトを与えたい」って考えたときの方法論として、こちらを選ぶバンドなんだなあって。

我ながらそう思われましたか(笑)。ホント一筋縄ではいかないバンドですからね、LAID BACK OCEANは。

YAFUMI 一筋縄でいけないんです(笑)。

“いかない”じゃなくて“いけない”。

YAFUMI そう。でも俺は「こいつら、好きだな」って思いましたけどね。みんながみんな、話し合ったことと全然違う曲を作って持ってきましたから(笑)。

いいバンドじゃないですか。

YAFUMI 俺、今回メンバーに言われたんですよ。「YAFUMIの作ってくる曲は発明品としては面白いけど、何に使えばいいのか分からないものばかりだ」って。ショックでもあり、ある意味、うれしかったんですけど。だから今回はもうちょっと用途が明確なものを作ろうって個人的なコンセプトにしてたんです。なのにメンバーの作ってきたものがまず全然ワケの分からない発明品ばっかり(笑)。「オマエらも好きなんじゃん!」っていう。

SYUTO 最初は話し合ったテーマで作ってたんですよ、僕も。でも作ってるうちに「これ、俺じゃなくても作れるよな」って思い始めると……発明したくなっちゃって(笑)。そっちに行ってしまうんです。

YAFUMI 分かるよ。要は天の邪鬼なヤツがそろったバンドだったってことなんですよね。俺だけじゃなかった(笑)。KAZUKIだって、ああ見えて結構そうだし。

SYUTO 手堅そうに見えて実は全然違いますよね(笑)。

YAFUMI そう、基本は保守的なんだけど、例えば今回のリードトラックの「DEFY」もよく分からない曲でしょう?

この展開といい、サウンドの積み方といい、変態的と言ってもいいですよね。3分強しかないのに、いろんな要素が詰め込まれていて。

YAFUMI なのに日本人が好むようなコード進行とか、泣きのメロディとか、そういうものはまるでない(笑)。でも、とてもアリなんですよ、俺の中では。“DEFY”って“反抗する”って意味なんですけど、その“反抗”も、ただただ暴れて人を殴るようなものではなく、日常の中のちょっとした変化で訴えかけられるものなんじゃないかって常に思っていて。そういう心情を非常に乗せやすい曲だし、こういう曲をやれるのがLAID BACK OCEANだと思ってるんですけど。

SYUTO 「DEFY」は特に新しい扉が開いた感覚がありましたね。曲が完成する前の段階からリード曲になるなって思ってましたし。

そういう意味では“変わった”っていうよりも“出てきた”感じですよね(SYUTO)

LAID BACK OCEAN SYUTO

ちなみに今回収録された6曲は前作以降に作られた楽曲なんでしょうか。

SYUTO 僕が作った曲で言えば今年の3月とか、それくらい。

YAFUMI 「NO NO BOY」だけは10年前ぐらいからずっと持っていたメロディで、このアルバムを6曲入りにしようとしたときに、最後に加えた曲なんですよ。これまでも毎回作品を作るたびに一応、入れてはみるんだけど「ああ、やっぱり違うな」って思ってて。でもきっといつか、これぐらいのテンポ感ばかりのアルバムを作るときが来るだろうから、そのときに入れようって。

こんなにディスコティックな曲、ちょっとLAID BACK OCEANのイメージにはなかったです。

YAFUMI 初めはもうちょっとバラードっぽい曲になりそうだったんですけど、そっちじゃないな、と。アルバムの2曲目にこういう曲を入れられる人たちがやってる音楽っていう、それがすごく大事なんですよね、俺の中で。例えば「DEFY」はルーツが何であれ、作れる曲なんですけど、「NO NO BOY」の場合はある程度の期間、こういったサウンドを浴びてこないと作れないので。だから今回、いきなり振り切れたわけではなく、実はこういうモードもずっとあったっていうのが肝なんです。

だからこそ説得力があるんでしょうね。思いつきや、奇を衒っただけでは作れない、一朝一夕じゃない厚みを音から感じるので。

SYUTO そういう意味では“変わった”っていうよりも“出てきた”感じですよね。もともとあったものがここにきてグッと出てきたっていう印象。

YAFUMI ただ、これが出せるようになったという意味でのモードの変遷はこの1年であったんだろうと思います。「SATAN DREAMS」は去年の9月頃にスイッチが入って作った曲たちの中の1曲だし。

SYUTO 僕としては4曲目の「7Up」がこのアルバムに入るって決まったときに方向性が見えた気がしましたね。本当に俺らがやりたいものをやっていいんだなっていう感覚があったというか。

「7Up」もまた既存の枠にハマらない1曲で。

YAFUMI これ、前半は俺が作ったんですけど、サビをどうしたらいいのか分からなくてKAZUKIに振ったんですよ。「サビを付けてくれ」って言ったら、この曲の“7Up One dozen 7Up”のところを作ってきたんですよ。歌詞はまだ付いてなかったから俺のシャウトを勝手に編集して(笑)。

サビと呼ぶにはあまりに思い切ってませんか。

SYUTO そこですよ、さっき言ってたKAZUKIさんの保守的じゃない部分って。

YAFUMI そうそう、「サビを付けろって言ったのに、これを持ってくるんだ?」っていうね。サビじゃないじゃん、叫びじゃんって(笑)。しかも、みんなでカッコいいって言ってるんだから、こいつら絶対アタマおかしいですよね(笑)。

でも文句なしにカッコいい曲です。

YAFUMI そうなんですよ、カッコいいんですよ。充分、人の心に響くし。だからこそ、これをどういう佇まいでやっていくかが大事なところだなって。

つかぬことをお伺いしますが「7Up」って炭酸飲料の“セブンアップ”のことですよね。世にたくさんの炭酸飲料がある中で、なぜセブンアップだったのでしょう?

YAFUMI たまたま1ダース入りのセブンアップが置いてあるところにいたんですよ。今回、この曲の歌詞をいちばん最後に書いたんですけど、どういう歌詞を書いたらいいのかホント分からなくて。なので、セブンアップの缶を見て、俺がただただ感じたことを歌詞にしてみよう、と(笑)。

めちゃくちゃ不穏な空気の漂う、しかも文学性さえ感じさせる歌詞ですけども。

YAFUMI でも缶を見てるだけ(笑)。セブンアップの缶が俺にはそう見えてるよっていうだけなんです。

レコーディング中とかも“チルい”って表現をよく使ってたんですよ。プリプロの段階から「なんかそれ、チルいなあ」みたいな、メンバーの共通語として(SYUTO)

LAID BACK OCEAN

今作はコーラスも印象的でした。「SATAN DREAMS」の“One time password”のところとか。

SYUTO 今回は基本的に僕がコーラスアレンジをやっていて、フレーズとかも僕が決めたんですよ。「NO NO BOY」ではいろんな種類のコーラスを入れてみたりとか。

YAFUMI 「SATAN DREAMS」はみんなで吼えたなあ(笑)。曲が出来上がったときにちょっと綺麗になり過ぎちゃったんで、バランスを上手く取りたいなと思って、そういうコーラスにしたんですよ。どこかポストロックな気持ちというか、やっぱりパンクの出なので、パンクを分かったうえでこういう綺麗な音楽をやってるんだよっていう……例えばJAMからのスタイル・カウンシル、セックス・ピストルズからのパブリック・イメージ・ リミテッドなんだ、みたいなところをちゃんと言っておきたい気持ちがあるんです。だから、あえてハモらずに吼えるっていう(笑)。ちゃんとルーツを通ってきたうえで、じゃあ自分たちは何をやれるのか?っていう、そこは常に意識しているので。

歌詞にもそうした部分を匂わせる箇所がいくつも仕掛けられてませんか。「Will Gravity Win Tonight?」の“too fast to live”“too young to die”は映画『シド&ナンシー』の台詞だったり。

YAFUMI そういったものは自分の中に自然に流れてるものだったりもするので。

あと「DEFY」で“「J.D.Salinger」”をカギカッコ付きにしてるのも意味深というか、定型的な反抗の象徴に対するアンチテーゼなのかなと思わされたり。

YAFUMI 定型というカタチに対するアンチテーゼというのはありますね。今回、“めくれる”っていう言葉を使ってるんですけど……。

まさにラスト曲の「めくれる」ですね。「7Up」の歌詞にも出てきます。

YAFUMI その“めくれる”っていう言葉が裏のテーマとして僕の中のどこかにあって。今回、アルバムタイトルに“DEFY”、“反抗する”っていう言葉を使ったんですけど、反抗ってあくまでリアクションじゃないですか。どんな反抗であっても、何かがまずあって、それに対しての行動になるわけで。だから「リアクションなんて、もうどうでもいいんじゃない?」って思う自分もいるんですよね。でも、そう思いながらも、あえてここで反抗って言っておくことがすごく大事で。で、何かが動くときの最小の単位ってなんだろうなって考えたときに“めくれる”って言葉がすごくそれを表わしている気がしたんです。

ああ、なるほど。

YAFUMI ページもめくれるし、嘘もめくれるし、かさぶたもめくれる。停滞していたものがちょっとだけ変わる、それぐらいのものなんです、今回の“反抗”も。でも確実に何かは変わるし、例えちょっとだとしても確実に動く。その機微を音楽にしようとしている団体なんですよ、俺たちは、っていう。

「めくれる」はSYUTOさんが作曲されてますね。

SYUTO この曲は遅いテンポのグルーヴを一度、バンドで追求したいなって思って作ったんですよ。俺らは今までわりと速い曲が多かったけど、SHOUYAが新ベーシストとして加入したことで、これはいい機会なんじゃないかなって。遅い曲でしっかりグルーヴを追求できたら速い曲でもいい効果があるんじゃないかなとも思ったし、その曲をライヴでやったときに観てる人も同じ揺らぎの中にいる感覚になってもらいたいなという気持ちもあって。

タテノリとはまた別の、横に揺れる心地好さを味わってほしい。

SYUTO “チルアウト”って言葉があるじゃないですか。そういう感じ。レコーディング中とかも“チルい”って表現をよく使ってたんですよ。プリプロの段階から「なんかそれ、チルいなあ」みたいな、メンバーの共通語として。

YAFUMI 俺は一回も言ったことないね。

SYUTO いやいやいや、言ってましたよ! YAFUMIさんがむしろ率先して言ってたじゃないですか(一同爆笑)。

僕が今回、あえて“反抗”と言ってみたのは「視点としての反抗は必要だ」って思ったから(YAFUMI)

LAID BACK OCEAN

LAID BACK OCEANといえばやはりピアノロック、サウンドにおいてピアノが非常に大きな役割を担っていますが、今回はそのアプローチもこれまでとは違っていませんか。

SYUTO はい。6曲全部そうなんですけど、おいしいところだけにピアノを使ってるんです。今まではピアノ1台で最初から最後まで弾いてたんですけど、今回はオルガンの音や、シンセも使ったりしながら、その曲の中でいちばんおいしいところをピアノにしよう、みたいな。「DEFY」のサビもそうですし、「Will Gravity Win Tonight?」なんかも鍵盤だけで4種類の音色を入れてるんですけど、イントロのどアタマはやっぱりピアノでなくちゃ、とか。

結果、これまで以上にピアノが映えているような。

YAFUMI 効果的に聴かせられるようにはなってきたなと思いますね。ピアノに関してはもう僕ら、研究し倒してますから。そこは負けねぇぞって言っておきたい。

しかし、どこまで新陳代謝し続けるんでしょうか、このバンドは。

YAFUMI もう行くとこまで行きますよ(笑)。でも、やっぱり誰かの心に何かを圧倒的に残したいっていう気持ちはあるので、絶対に。本質的に新しいことをやるときって、なかなか人に共感されづらいとは思うんですけど、それを恐れず、でもしっかりと聴いた人の胸の奥に突き刺すっていうことをやっていきたいなって。

具体的に何を突き刺したいです?

YAFUMI やっぱり“視点”じゃないですかね。こういう考え方もありなんだ、っていうことじゃないかな。狭いところで生きているとどうしても「こうあらねばならない」「こういう生き方しかないんじゃないか」って、狭い範囲内での自分の立ち位置だけで人生を決めてしまいがちだけど、でも一歩、外に出てみると「こんな考え方もあるのか!」っていう発見がいっぱいあるわけですよ。その人の中のそういう部分、できるだけ他の誰かがまだ触っていないところに触りたい。そこに“視点”を刺したい。その視点があれば日々が豊かになるし、心が楽になると思うんですよね。反抗もそう。僕が今回、あえて“反抗”と言ってみたのは「視点としての反抗は必要だ」って思ったからなので。

ここで声を大にして言っておきたいのは“反抗”を掲げているからといって、けっして排他的な音楽ではないということなんですよ。むしろいい意味でキャッチーだしポピュラリティもある。LAID BACK OCEANの作品の中で、最も聴きやすいアルバムじゃないでしょうか。

YAFUMI これを聴きやすいって言ってもらえるのはありがたいです。ポピュラリティはちゃんと残しておくべきだとも思ってましたし、それを拒否しているバンドでは絶対にないので。ただ、死に場所として、もうちょっと綺麗なお花が咲いていたりするような、いい感じの墓を探してたんだけど、俺らが行きたい場所はそこじゃなかったっていうだけ(笑)。荒野の朽ち果てた、「こんなところ、なかなかお参りに来てもらえないよ」っていうような……だったらそこを有名な場所にするしかないだろう?って。

その覚悟があるからこそ、こんなにも驚きに満ちた音楽を作れるのかも。

YAFUMI びっくりさせるだけなんてものは別に望んでないですけど、そういうのが好きなんでしょうね。びっくりしたうえで刺さってくれるのがいちばんいい。(いきなりパン!と手を叩いて)この大きさだけを追求してもしょうがないので。驚いたその先に何かしらがあるはずだし、“その先の何か”をまた丁寧に紡いでいく。そうやって自分たちだけの表現を見つけられたらいいなと思ってます。

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ライブ情報

2019年7月15日(月・祝) 東京・下北沢GARDEN

LAID BACK OCEAN(レイドバックオーシャン)

YAFUMI(Vo.)、KAZUKI(Gt.)、SEIJI(Dr.)、SYUTO(Pf)、SHOUYA(Bs)からなる5人組ピアノ・ロックバンド。2010年12月活動をスタート。PIANOの音色とPUNK ROCKの融合を模索しながら、ロックバンドのフォーマットからクラブミュージックのアプローチまで自在にこなす創造性が魅力。独特の輝きを放つ衝動的で内省的なYAFUMIの歌詞の世界感、アレンジからMIXまでBAND内で完結させる構成力、またRE:SOUZOU PROJECTとして氷に入ったCDのパッケージや、音楽のなくなった後の世界を表現したパッケージなど、既存のフォーマットには収まらない様々な表現方法を次々に提案する。時代の風潮に明らかに独自の目線で抗い自由を獲得しにいくスピリットを持ったバンド。

オフィシャルサイト
https://laidbackocean.com