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佐奈宏紀、坂元健児らが “犬(おとこ)”として生きる。彼らの生き様が熱く胸を打つ、舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~開幕

佐奈宏紀、坂元健児らが “犬(おとこ)”として生きる。彼らの生き様が熱く胸を打つ、舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~開幕

熱い“犬(おとこ)”たちのストレートな信念が胸を打つ。
舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~が、7月6日(土)天王洲 銀河劇場にて開幕した。
原作は80年代に『週刊少年ジャンプ』(集英社)に連載された、高橋よしひろによる人気漫画。「赤カブト」と呼ばれる凶暴な殺人熊と戦う犬たちの愛、勇気、友情、正義、諦めない心を描いた物語の初舞台化作品である。「劇団鹿殺し」の丸尾丸一郎が脚本・演出を担当、米津玄師「LOSER」のMVや数々のCMで話題の辻本知彦が振付を手がけている。
そして、佐奈宏紀が主人公「銀」を演じるほか、郷本直也、安里勇哉、荒木宏文ら安定感のある俳優陣と、ミュージカル『ライオンキング』で初代シンバ 役を務め、数々のミュージカルで活躍中の坂元健児が出演。骨太の力強い作品に仕上がった。
初日直前に行われたゲネプロと囲み取材の模様を届ける。

取材・文・撮影 / 片桐ユウ


野性味と正義感に溢れる彼らの生き様が見どころ

本作に登場するのは、村田銃を構えた猟師と、人ですら敵わない獰猛な大熊と、使命に燃える犬たち。
もふもふの“ケモミミ(獣の耳)”が愛らしいファンタジーではなく、野性味と正義感に溢れる彼らの生き様が見どころだ。

舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~ エンタメステーションレポート

熊を狩る猟犬=熊犬に最もふさわしいとされる「虎毛(銀色の毛並み)」を持って生まれてきた銀(佐奈宏紀)。銀は未だ幼いながら、凶暴な大熊「赤カブト」に殺された父親・リキ(坂元健児)の仇を討つために、猟師・竹田五兵衛(平川和宏)のもとで過酷な訓練に励む。

舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~ エンタメステーションレポート 舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~ エンタメステーションレポート

狩りの最中、銀は猛獣狩りを信条とするジャーマンシェパードのジョン(安里勇哉)と出会い、続けて野犬の群れを統率するベン(郷本直也)たちと遭遇する。
目的は皆同じく、打倒・赤カブト。紆余曲折を経て能力の高さを認められた銀は、ベンたちと行動を共にして、仲間を集めるべく日本各地へ“真の男”たる“強い犬”を探す旅に出るのだった。

舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~ エンタメステーションレポート

五兵衛による静かな語りと、バランス良く入れ込まれる歌唱とダンスによって、物語は滞りなく、しかし心地良い緩急を持って進んでいく。

舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~ エンタメステーションレポート

楽曲は“男”たちで歌うにふさわしく力強さに溢れるものから、アップテンポでスタイリッシュなものであったりと、バラエティに富んでいて飽きさせない。
その楽曲に乗せた辻本知彦の振付も素晴らしく、本作に濃い味付けを残す。統率の取れたベンたちのダンスはキビキビと、銀の動きは仔犬の柔らかさを感じさせるようなしなやかさを持って……と、曲と共に彼らの個性を際立たせていた。

また照明や音の入り方にも野性味を感じさせるような躍動感が漲っており、“戦いのドラマ”というシンプルな世界観を盛り上げている。

舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~ エンタメステーションレポート 舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~ エンタメステーションレポート

このたしかな骨組みの上に立つ役者たちが、真摯に“犬”という生き物へ取り組んだことも、本作をしっかりと歯応えのある作品にした理由だろう。
いわゆる“擬人化”とは、人ではない何かを人として表現することを指すが、本作は“犬”が“人の姿”になるわけではなく、“人”である役者が“犬”をどう表現して演じるか、ということを突き詰めている。

舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~ エンタメステーションレポート 舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~ エンタメステーションレポート

その大前提の成果は随所で見受けられる。犬たちは尾を立てて唸り、舌を出して走り、信頼した相手には腹を出す。彼らが険しい山道に見立てたセットを軽々と飛び越え、時に四つん這いで慎重に進む姿には、野生動物を目にするときと同じ爽快感と気迫があった。

舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~ エンタメステーションレポート

特に銀を演じる佐奈宏紀の動く量は、圧倒的なボリューム。つねに“犬”、それもカリスマ性を秘めた“虎毛の仔犬”として生きており、あどけなさを残しながらも揺るぎない正義感をうかがわせる。身を屈めて耳を澄ませる仕草から水中を泳ぐ様まで、繊細な動きで「銀」を演じ上げていた。

舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~ エンタメステーションレポート

そんな彼らが、人間に勝るとも劣らない、いや、おそらく人間同士では成り立たないほどのピュアな信念を持って、“友情・努力・勝利”の原則を見せてくれるところも、本作品の魅力だ。

舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~ エンタメステーションレポート

郷本の演じるベンと、赤虎(赤澤遼太郎)、中虎(岩城直弥)、黒虎(松井遥己)の信頼関係や、仲間のスミス(塩田康平)たちを裏切るハイエナ(尾関 陸)の複雑な心情、ジョン(安里勇哉)のプライドなど、それぞれにも物語があり、奥行きを感じさせる。
ユーモラスで憎めないマスチフのモス(千代田信一)、伊賀忍犬の総帥・赤目(荒木宏文)と対峙し、忍び一族の悲願を愚直なまでに守り通そうとする黒邪鬼(北代高士)など、最後まで目の離せない展開が続く。
さらに、リキを演じる坂元健児が、その包容力と歌唱力でもって場を重厚感のあるものに仕上げていた。

舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~ エンタメステーションレポート

「赤カブト」との決戦はこの先の展開となるが、本作の中でも起承転結はキッチリ成されている。ぜひとも“犬”たちの雄姿、始まりのドラマを追いかけて欲しい。

稽古でこんなに疲労したのは初めて。圧倒的なものをご用意した自信があります!

この後は、初日会見の模様をレポートする。

初日会見には、脚本・演出の丸尾丸一郎、銀 役・佐奈宏紀、ベン 役・郷本直也、ジョン役・安里勇哉、赤目 役・荒木宏文、そしてリキ 役・坂元健児が登壇した。

舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~ エンタメステーションレポート

最初に自己紹介を求められた佐奈宏紀が「ワン、ワワワウ、ワン!」と、犬語(!?)で話し始め、隣りにいた郷本直也が「銀 役の佐奈宏紀です。今日は短い時間ですがよろしくお願いします」と通訳をする事態が発生。
そのやりとり後、普通に佐奈が「と、いうわけですが~」と話し出し、周囲のキャストたちから「なんだったんだ!」とツッコまれて、笑いを起こすところから初日会見が始まった。

佐奈は「事前稽古もして、イチから犬の動きや歌、基礎を固めて、入念で緻密で濃密な稽古をしてきました! 稽古でこんなに疲労したのは初めてというくらい疲労したのですが、こうして初日を迎えて、ようやくお客様にお見せできるというのがとても嬉しいです。一公演一公演大切に、ケガなく千秋楽を迎えられることを願っています」と意気込み。

郷本は「早くお客様にお見せしたい気持ちと早く舞台に立ちたい気持ちでいっぱいです。最後まで怪我のないようにみんなで熱い犬(おとこ)の物語を見せたいと思いますので、皆さん、お楽しみください」と呼びかけた。

安里勇哉は「初めて“犬”を演じるということで、今回はそこを特に意識して稽古をしてきました。丸尾さんもおっしゃっていましたが、犬になることを楽しみながら最後まで演じたいなと思っております」と挨拶。

荒木宏文は「原作を忠実に再現するというより、舞台化として人間がどう犬を演じるのかというアプローチを初めて体験しました。原作が好きな方、物語が好きな方にも楽しんでいただけると思いますし、舞台というエンターテインメントの形として新しい作品を提示できると思っています」と自信を覗かせる。

坂元健児は「お隣りの大井町では『劇団四季』が猫の物語とライオンの物語をやっております。この天王洲アイルでは、『劇団鹿殺し』の丸尾さんが熊に立ち向かう犬の物語を披露させていただきます。“打倒・大井町!”“打倒・劇団四季!”で頑張りたいと思います」と宣言。

ミュージカル『ライオンキング』のシンバ 役を日本初演で務めた坂元ならでは(?)のコメントに、佐奈が「初代……!?」と慌てたり、丸尾が若手俳優陣に「このサービス精神、見習って!」と煽り、他キャストたちが「言えないですよ!」と返すなど、カンパニーの和気藹々とした雰囲気が伝わるやりとりも見られた。

脚本・演出を務めた丸尾丸一郎は「犬たちの物語を舞台化するということで、キャストたちと一緒に4本脚で歩いてみるところから始め、犬で喧嘩をするエチュードをやってみたりと、本当に手探りで、何が答えかわからないなか、キャストたちと一緒になって答えを探してきました。その稽古期間のなかで、僕たちなりの答えが出せたのではないかと今は自信を持っております。歌も入るので、犬たちとの旅をしていく物語をぜひ楽しんでいただきたいと思います」と見どころを語った。

辻本知彦の振付に対しての質問が飛ぶと、佐奈は「辻本さんは超・クリエイティバー。固定概念がなくて、どんどん自分の中から生み出していく方なので、受け取る側は自分なりに飲み込むのが重要でした。動きの演出というか、センスを共有してもらっている感じがあって、今までの自分になかったものをいただいた気がします」と、独特のアプローチを浴びたことを告白。
また坂元郷本も「やっていて楽しかったし、お客様がどう受け取るのか楽しみ」と期待を語っていた。

衣裳に関しては安里が「それぞれの犬種の特徴を表してもらっている」とアピール、荒木も「僕らが犬として登場することに違和感がなく見てもらえるのは衣裳さんやヘアメイクさんのサポートのおかげ」と感謝を述べ、見どころの多さを匂わせた。

最後に佐奈が「たくさん稽古をしてきて、圧倒的なものをご用意した自信がありますので、ぜひ楽しみにしていてください。熱い舞台ですが、劇場はしっかり空調が効いていますので(笑)、羽織るものをご用意くださいね」と観客を気遣うメッセージを送り、初日会見は終了となった。

東京公演は7月15日(月・祝)まで天王洲 銀河劇場にて上演。神戸公演が7月20日(土)~21 日(日)AiiA 2.5 Theater Kobeにて上演される。

舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~

舞台『銀牙 -流れ星 銀-』~絆編~

東京公演:2019年7月6日(土)~7月15日(月・祝)天王洲 銀河劇場
神戸公演:2019年7月20日(土)~7月21日(日)AiiA 2.5 Theater Kobe

STORY
最強の熊犬リキの息子として生まれた秋田犬の銀。
人間ですら歯が立たない凶暴な殺人熊・赤カブトに敗れた祖父シロと父・リキの仇を討つため、銀は同じく赤カブト打倒を目指す奥羽軍の一員となり、仲間たちと共に真の“男”を求め、日本全土を駆ける。

原作:高橋よしひろ「銀牙 -流れ星 銀-」(集英社文庫コミック版)
脚本・演出:丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)
振付:辻本知彦 ※辻本知彦の「辻」の字は1点しんにょうが正式表記。

出演:
銀:佐奈宏紀/

ベン:郷本直也
ジョン:安里勇哉
スミス:塩田康平
ハイエナ:尾関 陸
赤虎:赤澤遼太郎
中虎:岩城直弥
黒虎:松井遥己
モス:千代田信一
黒邪鬼:北代高士/

竹田五兵衛/語り:平川和宏/

赤目:荒木宏文/

いっとん(KoRocK)
永井直也
佐久本歩夢
岡田治己
前山義貴
矢野秀実

リキ:坂元健児

主催:ネルケプランニング

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@stage_ginga)

©高橋よしひろ/集英社・舞台「銀牙 -流れ星 銀-」

DVD発売決定

発売日:2020年1月予定