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最後までプレイした?『じんるいのみなさまへ』の評価がガラッと変わる話

最後までプレイした?『じんるいのみなさまへ』の評価がガラッと変わる話

春夏冬ゆうさんのキャラクターデザインに惹かれて『じんるいのみなさまへ』をプレイすることに決めた。いつもゲームソフトを買う理由はシンプル。気になるところが少しでもあれば手に取ってみることにしている。
なんらかの理由で荒廃した秋葉原に取り残された女の子たちのゆるふわなサバイバル生活を描くというのが本作の主な展開となっており、ジャンルとしてはマップ探索型のアドベンチャーというのが適切だろうか。登場人物は女の子のみ、いわゆる“百合ゲー”と言われるタイプの女の子同士の友情や恋愛に焦点を当てた作品だが、ここに秋葉原が荒廃した理由を探るちょっとした謎解き要素とサバイバルというふたつの要素が絡み合うことで、なんともいえない不思議なプレイフィールを生んでいる。本作の記事を書くことにした一番の理由は、世間での本作の評価がさまざまに揺れているからだ。正直な話、意見がさまざまに分かれる作品というのは、実に面白い題材なのだ。本稿では、揺れている評価に一石を投じてみる。

文 / 浅葉たいが


最高に可愛いヒロインたちのゆるふわ生活

キャラクターデザインに惹かれて本作を買ったと最初に書いたが、この判断は大正解だった。春夏冬ゆうさんのイラストの特徴である、繊細な線と塗りはゲーム中でも活きており、それがちょっと珍しい百合ゲーというフィールドで見られるというのは幸せなものだ。コロコロと変化する女の子たちの表情を見ていると飽きない。
見た目はもちろん、内面もとても魅力的だ。主人公の京椛(きょうか)は、ちょっと抜けているところもあるけれど、ときには光るリーダーシップやしっかりしたところを見せてくれる。やさしいお姉さん枠の勇魚(いさな)は、おしとやかで料理上手。憧れられる存在のはずなのに自分自身に全然自信がない。勝気な和海(かずみ)は、サバイバル生活において頼もしい逞しさを有していて、溌剌とした魅力を持っている。幽々子(ゆゆこ)は、ぼーっとしているように見えて実に聡明な物知り女子。ときどき思いがけない知識を披露してくれる。永里那(えりな)は、飄々としたムードメーカーで、ときには仲間をいじったり茶化したりするが、そのちっちゃな棘には絶妙な寸止めが施されている。プレイヤーも登場人物も不快にならないところでしっかり留まっている。パーソナリティの多くを明かされない、性格も年齢も特技も異なる5人が力を合わせるサバイバル生活はゆるすぎて全く緊張感がないが、とにかく可愛らしい女の子たちのやりとりが見たいという方は本作を無視できないはずだ。

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▲イベントCGも複数枚用意されている。女の子同士の恋愛に踏み込んだ描写もある

プレイして驚いたのは主人公がパートナーを選ベるタイプの百合ゲーではないということだ。あくまでも本作は一本のストーリーを軸にゲームが進行し、探索などでサブイベントが発生するものの、カップリングはゲーム側で決められている。主人公と誰かを狙ってくっつけるという恋愛アドベンチャーゲームのような作りにはなっていない。自由度がないと感じる方がいるかもしれないが、女の子たちの仲睦まじいシーンを見ることで楽しむという百合ゲーの特色を活かした大胆な構成と言うこともできる。そして、少しだけネタバレに踏み込ませてもらうと、本作には百合以外にも大きなテーマがある。

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▲メインビジュアルとしても採用されているこのCGに、カップリングのヒントが隠されている

変わり果てた秋葉原の謎を追いかける

百合と同じくらい大きなテーマとして描かれているのが、世界設定の謎を解き明かすこと。ゲームの冒頭で、仲良し5人組の彼女たちはホテルで目を覚ますことになる。“旅先を楽しむ”程度の感覚で外へと出ると、そこは荒廃し緑に覆われた秋葉原だった。秋葉原には自分たち以外に人の気配はない。想像していた秋葉原はもっと賑やかな街だったはずなのだが、彼女たちはその唐突な変化を受け入れ、生き延びるためのサバイバル生活を開始する。なぜ秋葉原が荒廃してしまったのかという謎が明かされていくのは物語の後半で、推理や予測に長けたプレイヤーでもなるほどと思われる要素がしっかり用意されている。ゆるふわ百合ゲーと思っていただけにちょっと意外で、思いがけない秘密も用意されている。心を揺さぶる内容に満ちた後半シナリオには胸が熱くなった。

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▲主人公たちの拠点となるホテル。ここで目を覚ました主人公たちは、外に出て秋葉原の変化に驚くことになる

本作のサバイバルを表現した探索パートは非常にゆるい。主人公を操作し秋葉原の街を探索していくのだが、マップはすぐに覚えられるほどの広さで、何をしてもゲームオーバーになるような失敗はない。エンディングを目指すだけなら、ミッションとして登場する進行条件を満たしていくだけでいいので、非常に簡単なゲームと言えるだろう。探索を行うと、ゲーム内の時間が経過するがタイムリミットが設定されているわけではないのでタイムアタックやアイテムコンプリートといった要素を詰めない場合は、効率化を考える必要もない。キャラクターの探索の効率に関わる“空腹度”やキャラクター別の探索の得意不得意も、ふつうにプレイする場合には意識する必要がないパラメーターとなっている(食事を食べずにいると空腹度が上がっていき、探索コマンドで消費する時間が増えるが、本作には明確な制限時間がないため特に気にする必要はない)。
また、ゲーム序盤でチュートリアル的に覚える釣り、狩猟、工作、畑での栽培なども、同様の理由でストーリー進行に関わるミッションのノルマ以外では、まったくといっていいほど触れる必要がない。これらの要素をプレイしなくとも、ストーリーはエンディングまでたどり着く。また、釣りや狩猟といってもコマンドを決定して結果を待つだけなので、サバイバルというキャッチフレーズに釣られてそこに“ゲームとしての手ごたえ”を期待していた人は肩透かしをくらうだろう。ただ、こうしたストーリー進行に関係ないこれらの要素にもキャラクターの性格や世界設定とリンクしているものがあり、料理や工作には作成するとちょっとした会話が始まるものもある。達成していない料理や工作のレシピを埋めていくのは作業的になってしまうのでやや退屈だが、ご褒美も少なからずある。女の子たちの仲のいい姿をとことん見たいという方は、焦らず丁寧にプレイするのもいいだろう。

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▲クリアだけを目標にするのなら、ミッションを追いかけていけばいい

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▲秋葉原で集めた食材や部品を元に料理や道具作成も行える。クリアするだけならチュートリアル的な部分をこなせば事足りるが、こういう要素があればコンプリートしたくなるという人はいろいろな組み合わせを試してみよう

探索パートを語るうえで外せないのが、秋葉原の街の再現度である。本作に登場する秋葉原の街は、荒廃しているとはいえ実際の秋葉原をモチーフにして描かれているため、訪れたことのある人であればピンとくるスポットも多い。本作は、秋葉原を舞台にしたRPGとして知られている『AKIBA’S TRIP』を制作したアクワイアが手がけているため、ところどころにリアリティを感じる作りとなっているのだ。筆者は秋葉原という街がが大好きなので、プレイしてしばらくの間はゲーム内をウロウロしているだけで楽しかった。家電量販店、同人ショップ、ゲームセンターなど、実際の秋葉原で訪れた場所の近くを通るとついついいろいろな方向から見てしまう。見慣れたショップのロゴなどもゲーム内ではパロディやアレンジを加えて実装されているので、じっくり画面を見てみよう。筆者はこのゲームを遊んで久々に“舞台探訪”を行ってみた。カメラ片手に秋葉原の街を散策したのだ。秋葉原を舞台にした『シュタインズ・ゲート』などでも舞台探訪を行ったが、3Dマップを元にした散策は初めてのことだったので新鮮だった。
秋葉原の土地勘がない人が本作を遊ぶと、序盤はやや戸惑うだろう。メニュー画面のマップを開いても自分のいる場所が表示されないという仕様のため、迷うことすらあるかもしれない。秋葉原を知っているかどうかで、本作の受け止めかたは大きく変わるのは間違いないが、筆者の友人はネット上のマップサービスを活用して地形を把握し、プレイを進めていた。万人ウケするゲームではないが、ゲームにプレイヤーが合わせていくというスタイルも本作を楽しむひとつのコツのように感じる。今後のアップデートで、マップに現在位置が表示されるようになるようなので楽しみだ。

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▲荒廃しているとはいえ、秋葉原に土地勘がある人であればピンとくるスポットや風景も多いはず

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▲建物や施設を探索すると、イベントが発生したり探索結果が表示される

本作を遊ぶならダウンロードコンテンツはマスト

本作の物語を最大限に楽しむにはダウンロードコンテンツ(DLC)キャラクターである“朱香 CyxaЯ(しゅか すはーや)”の購入がマストだ。本作のDLCは、2周目のプレイでのみ適用可能な仕組みになっており、適用することで物語のさらなる謎に踏み込める仕組みとなっている。ペアの要素がじつは重要なのだ。先にパートナーを選べるタイプの百合ゲーではないと書いたが、本作では2組のペアができる。しかし、主人公グループが5人なので、ペアが2組できたとするとひとりは余ってしまう。DLCキャラクターを適用することで初めて3組のペアが生まれるのだ。つまり、謎を解き明かすためにも全員がハッピーな関係になるためにも、DLCがなければ本作の一番美味しい部分を味わえない仕様となっている。筆者個人の感想だが、このDLCの形式はコンシューマーゲームのスタイルとしてあまり好ましいものではないと感じている。これならば、定価にDLCの価格を加算したものを販売しても良かったのではないだろうか。DLCの価格は500円。これが惜しいと言っているのではなく、作りとしてどうなのかと感じている。

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▲明るく表示されているのが、DLCキャラクターの朱香 CyxaЯ。彼女がいる状態で2周目をプレイすることで、本作の本当の姿が見えてくる

ちなみにDLCを適用した状態で本作をクリアーすると、いろいろと”すっきり“する。気になる謎もほぼ明かされ、女の子同士のペアの問題も多くの人が満足するであろう着地を見せてくれる。また、本編を補強する物語に触れられるロッカーという要素が用意されており、ロッカーはゲーム後半でゲーム内通貨を使用することでアンロックできる。2周目に加えてロッカーもコンプリートすれば、『じんるいのみなさまへ』が何を描きたかったのかがはっきりと見えてくるのだが、ここにもDLCが絡んでくる。1周目でたどりついたひとつの答え。DLCを適用した2周目でもうひとつ深いところまで掘り下げていけるのだ。この構造は素晴らしいのだが、ここでの驚きを体験できるのがDLCを買った人だけというのは残念だ。本作はDLCを含めた物語を見ているか見ていないかで、評価が大きく変わるゲームだと思っている。実際に筆者の友人にもすべて遊んだことで、「ストーリーが良かった」というプレイヤーが数人いる。

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▲こちらが物語を補強するロッカー。ゲーム後半でアンロックを進めることが可能。なかには、2周目の物語に関連する重要なストーリーなどが語られるものもある。ボイスを聴きつつ1周目をプレイし、2周目を既読スキップしつつプレイ+ロッカーコンプリートまで達成すると、プレイ時間は20時間前後になるはず

DLCの仕様は発売後に話題となり、本作の評価に影を落としている。発売まえのメディアのレビューなどでは、このDLC仕様に触れたものがほとんど見られなかったため、この仕組みが意外に感じた人も多いだろう。ふつうに本作をプレイしていたならば、1周目をプレイし終えた状態でDLCがマストであることに気づくはず。それが書かれていないということは、途中でプレイを止めたのではないかと疑ってしまう。こうしたストーリー主体のアドベンチャーゲームで、最後までプレイせずに書かれたレビューは危険だ。8割ほどいいシナリオで進んだとしても、最後にミサイルが降ってきて地球が崩壊したり、ありきたりな夢オチで済ませるゲームだったらどうするというのだろう。アドベンチャーゲームはストーリーが命なのだから、最後まで見ないとわからない。映画や小説のレビューを書く際に、最後まで鑑賞しないということはまずないだろう。

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▲朱香 CyxaЯ加入後は、物語が一気に加速する。既存の共通パートも多い2周目だが、朱香 CyxaЯがいることで一部のイベント展開が変化する。『じんるいのみなさまへ』の真の姿とも言えるシナリオが描かれるので、本作を購入した人はぜひとも遊んでほしい

『じんるいのみなさまへ』をプレイしてよかった

本作を百合ゲー好きの方がプレイすると、光る部分をたくさん見つけられるはずだ。筆者はとにかく、その嫌味のない物語と世界設定に心を打たれてしまった。ひと言に百合ゲーといってもその内容はさまざまで、女性同士の交流で描かれるチクりと痛いものや、激しい感情の応酬が見られるものもサスペンス的な楽しみかたができていいのだが、本作のように徹底的に女の子たちを仲良く描く作品は珍しい。サバイバルといういかにもギスギスしそうな状況にもかかわらず、彼女たちは逞しい。そしてスパイスとして謎解き要素を振りかけることで退屈さを生まない作りになっているのだから脱帽だ。タイトルの『じんるいのみなさまへ』は、物語後半の重要なキーワードとなっている。そのことがわかるシーンを超えて、DLCを適用してロッカーを全て開けるまで遊べば、誰かと感想を語り合いたくなるという人もいるのではないだろうか。
正直、探索パートやサバイバル要素はおまけ程度だ。本作に愛着があるので心を鬼にして言えばスカスカといっても過言ではないので、ここをどう見るかで本作の序盤評価は大きく変わるだろう。ゆるく楽しむアドベンチャーゲームだからとここをふわりと受け止めて、女の子たちと本作の描きたかった物語と世界設定に目を向ければ、侮れない作品なのは間違いない。人を選ぶ作品ではあるが、筆者は本作に触れることができてよかったと心から思っている。すっかり気に入ってしまって、ノベル版の『じんるいのみなさまへ』も購入したのだが、こちらはゲーム版の1周目と2周目のいいとこどりをしつつ、ノベル版ならではの要素も混ぜて書かれたものとなっている。本作とどこかしら波長が合ったという方は、こちらも読んでみてほしい。読めば読むほど、ゲームはテキストアドベンチャーでも良かったのではと思ったりもするのだが……。

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▲本作で描かれる秋葉原は基本的に実際の秋葉原に忠実だが、ところどころに“違和感”も。この違和感もストーリーを楽しむためのスパイスとなるのだから驚かされる

ノベル版『じんるいのみなさまへ』

▲ノベル版『じんるいのみなさまへ』(筆者私物)。ゲームプレイ後に読めば、さらに世界が広がる

余談になるが、本作の発売元の日本一ソフトウェアという会社は新規IPを積極的にリリースしており、筆者はそれをずっと追いかけてきている。なかにはチャレンジスピリットだけが暴走して、着地点を見つけられなかった作品や、フルプライスにしてはボリュームが物足りない作品もあったが、毎年複数本の新規IPを送り出してくるというのはなかなかできたことではない。そして、そのチャレンジには、『真 流行り神2』や『殺人探偵ジャック・ザ・リッパー』など筆者にとって大当たりの作品も数多くあった。
『じんるいのみなさまへ』もこうしたチャレンジスピリットの下に作られた作品で、万人向けのレビューで高評価を得られるタイプの作品ではないが、強みだけはしっかりと発揮しているように感じる。筆者のように、一部の要素が強烈に刺さるプレイヤーもいるだろう。テキストアドベンチャーではなく、マップ探索型のアドベンチャーゲームとしてリリースしてきたところはちょっと強気すぎたかもしれないが、多少振り切れているほうが面白い。続編はもちろん、今後の新規IPにも大いに注目している。

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【募集終了】抽選で1名様に『じんるいのみなさまへ』PlayStation®4版パッケージソフトウェアをプレゼント!

応募期間

※募集期間は終了致しました。

7月16日(火)~7月23日(火)消印有効

・応募は日本国内にお住まいの方に限らせていただきます。
・当選の発表は賞品の発送をもってかえさせていただきます。落選者へのご連絡はございませんのでご了承ください。
・ご住所や転居先が不明などの理由で賞品のお届けが出来ない場合は、ご当選を無効とさせていただく場合がございますので、予めご了承ください。
・賞品および当選の権利は当選者本人のものとし、第三者へ譲渡・転売することは一切禁止させていただきます。譲渡・転売が発覚した場合、当選を取り消し賞品をお返しいただく場合があります。

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■タイトル:じんるいのみなさまへ
■メーカー:日本一ソフトウェア
■対応ハード:PlayStation®4、Nintendo Switch™
■ジャンル:ガールズアドベンチャー
■対象年齢:12歳以上
■発売日:発売中(2019年6月27日)
■価格:パッケージ版、ダウンロード版 各6,980円+税

『じんるいのみなさまへ』PlayStation®4版

『じんるいのみなさまへ』オフィシャルサイト

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