Interview

Easycome 大阪発4人組は、それぞれの内面の変化をどんなふうに昇華し、初めてのフルアルバムに結実させたのか?

Easycome 大阪発4人組は、それぞれの内面の変化をどんなふうに昇華し、初めてのフルアルバムに結実させたのか?

大阪を拠点に活動している4人組だ。J-POPという言葉が使われる以前の、日本語のロック/ポップスの遺伝子を受け継いでいることを感じさせるアンサンブルとメロディー、そしてちーかまの情感豊かな歌声は、ノスタルジックな温もりと都会的な洗練の両方を感じさせる。ドラマー交代を経て、前作から約2年ぶりに届けられた、彼らにとって初めてのフルアルバム『Easycome』はそうした彼らの個性と魅力を十二分に味わえる。
ここでは、バンド結成の経緯から始めて、そうしたバンドの音楽的な個性がこの2年の間にどんなふうに深められ、今回の新作に結実したのかをメンバー4人に語ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢


「音楽で食っていこうぜ」みたいな強い志じゃなく、「うれしいし楽しいからやってみるか」くらいの感覚で始めてしまいました。

バンド結成の経緯から聞かせてください。

ちーかま(Vo,Gt) 私とコダマさんと落合が大学のサークルの先輩/後輩で、私は人から「これ、歌ってよ」と言われてやったバンドはあったんですけど、自分がやりたいなと思った曲ができるバンドは初めてだったので、趣味が合いそうな人や一緒にやってみたい人を私が誘って集まったと思います。で、最初はコピバンから始まって、それから「オリジナルをやってみようか」ということになっていきました。

Easycome ちーかま エンタメステーションインタビュー

ちーかま(Vo,Gt)

コピーはどんな音楽をやってたんですか。

落合(Gt) シュガーベイブ、くるり…..

ちーかま SINGER SONGER、カーディガンズ、それからChara。

落合 ビートルズ。

それは、メンバーの音楽的な共通項みたいな選曲ですか。

コダマ(Ba) そうですね。誰かが「これ、やろ」って言ったら、やる、みたいな。

コピー・バンドからオリジナルをやるバンドにはすぐに移行していったんですか。

ちーかま コピバンではライブを2回くらいしてないんですけど、その間もこの3人は仲良くて、“コーヒー会”っていう、私の家で音楽の話をする会をよく開いてたんです。そのなかで、ある日コダマさんが「crispy crispy」という、今もYouTubeに上がってる曲を、アカペラで歌詞付きで入れてきたのを聴かせてくれて、それがたまたま落合が考えてたギター・リフにハマりそうだったから、「ちょっと作ってみようか」という話になってコード付けたりして1日で作ったんです。それを、ライブでやったら、友達が「コピーよりいいね」と言ってくれて、それで…。

コダマ いい気になって(笑)。

ちーかま そうそう(笑)。それで、「音楽で食っていこうぜ」みたいな強い志じゃなく、「うれしいし楽しいからやってみるか」くらいの感覚で始めてしまいました。

Easycome コダマ エンタメステーションインタビュー

コダマ(Ba)

その当時に作っていた音楽と、今回のアルバムで聴ける音楽とは、どれくらい重なっていて、どれくらい違っているんですか。

落合 う〜ん…、聴いてる音楽はもう違ってるんですけど、そんなに変わってない気がしますけど…。

ちーかま 曲の作り方は基本的に落合が弾き語りで持ってきた曲に各々が自分のパートを付けていくというスタイルで、そこは変わらないんですけど、「こういう構成にしたいな」とか「こういうアレンジの曲にしよう」という方向性が最初はみんなバラバラというか。結局は落合が言ってることにみんな合わせようとはしてるんですけど、その疎通がうまくいかないことも多かったんです。でも今回は、聴いてる音楽もすごく重なってたりして、いちいち詳しく話し合いをしなくても自然とああいう感じになりました。

コダマさんが持ってきた曲からオリジナル作りが始まったということだし、ちーかまさんも曲を作るようですが、今回のアルバムの曲は全て落合さんの作詞/作曲です。それは、結果的にそうなったということでしょうか。あるいは、意図的にそうしたんですか。

コダマ 僕が最初だったのはたまたまで、僕は元々そんな曲が作れる人間ではないんです。ギターもほとんど弾けないし。落合にしたら「ちーかまも曲作れば? コダマも作れば?」と思ってると思うんですけど、単純に落合が一番よく曲を作ってくるということで、それで自然と「落合が作って、ちーかまが歌う」というのが基本ということになっていきましたね。

ちーかま 私はたまに弾き語りで作ったりするし、自分の曲も嫌いじゃないんですけど、一人で弾き語りのライブをやって自分の曲も落合の曲も歌うと、「やっぱりちーかまちゃんの声には落合の曲が合ってるね」とよく言われるから、落合が作ってくる曲が私の歌の良さを引き出してくれる部分は大きいかなと思っています。

このバンドをやってて、“やっぱり音楽はやるもんやなあ”というふうにすごく思うようになりました。

johnnyさんが、約2年前にサポートで関わるようになる時点でのEasycomeの音楽について、johnnyさんはどういう印象を持っていましたか。

johnny(Dr) やっぱり昔の日本の、それこそシュガーベイブとか、それからユーミンとか、そういう音楽が好きなんだろうなと思ってました。元々は、僕が別のバンドをやってる時に3、4回イベントで一緒になることがあって、それでも直接メンバーと話すことはほとんどなかったんですけど、大阪でそういう音楽をやってるバンドはあまりいないから、僕としても珍しく合いそうな感じだなと思ってました。

Easycome エンタメステーションインタビュー

直接話したことがなかったのに、どうしてjohnnyさんに声をかけたんですか。

ちーかま 前のドラムが抜けることになった時に、私と落合がすぐにjohnnyさんの名前を出したんですけど、私はドラムを詳しくないから「この人のドラムはすごい!」みたいなことはわからないんです。ただ、単純に人として私たち3人と合いそうだなと思ったし、一緒にやってて楽しそうだなと思ったんです。

落合 それにjohnnyさんがやってたバンドも音楽性が通じる部分があったので、多分僕らの音楽を好きなってくれるだろうと思って。

ちーかま それで、twitterのDMで誘いました(笑)。

ミニアルバムを2年連続で出した後、今回のアルバムまで2年のインターバルがあったわけですが、それはドラムが交代して新体制が固まるのに時間を要したということでしょうか。

コダマ そうだと思います。僕ら残った3人も、2枚目を出した後に「次はいつ、どういうものを出そう」ということを話していたわけではなく、新曲もそこから1年弱くらいは「旅気候」と「想い出にさよなら」の2曲だけで、johnnyさんに手伝ってもらいながら決まってたライブをやっていくなかでいろんなところにどんどん呼んでもらえるようになってきて、「そろそろどうしようか?」という話を具体的にしたのは多分、去年の春くらいやったと思います。

ちなみに、オリジナル・メンバーのドラムが脱退したところで、解散危機みたいなことはなかったですか。

コダマ なかったと思いますけど…、わからないです。この二人がそういう話をしてたかもしれないですけど(笑)。

ちーかま 当時はむしろ2枚目のミニアルバムのリリース前だったし、明るい未来しか見えてなかったです(笑)。「これを出したら、私らの名前がバーンと広がるな」って希望に満ち溢れた時期だったんで、止まる気なんてさらさらなくて、なんとか早くドラムの人を見つけてバンドで活動したい、という気持ちでした。

結成の時点では「音楽で食っていこうぜ」みたいな強い志じゃなかったという話がありましたが、その気持ちはどこかの時点で“ずっと音楽をやっていくぞ!”というふうになっていったということですよね? それはどういうタイミングだったんですか。

コダマ それは、それぞれだと思うんですけど…。

落合 僕は最初から“音楽で食えたら、いいな”という感じでしたよ。音楽を作りたいなあということはずっと思ってたし、そしたら仲間も見つかったから、それで今も作ってるっていう。そういう感じですね。

Easycome 落合 エンタメステーションインタビュー

落合(Gt)

コダマ 僕は抜けたドラムと同い年で、このバンドが活動し始める時に彼は大学院に行って、僕は就職したんです。で、大学院は2年だったから、それくらいの時間は働きながらやれるだろう、みたいな感じやったんですけど、2年経ったらドラムは約束通りというか、院を出てバンドをやめて就職したんです。それまでは、僕も「一緒にやめるかなあ」とか言ってたんですけど、いざその時期になったらもうそういう気持ちが無かったという感じですね。

ちーかま 私がこのバンドを始めたのは大学の4回生で、ちょうど「今後どうするか?」という時だったんです。それまでは“いい子”して生きてきたんで…。高校もいい学校に行こうと頑張ったし、大学も自分なりに頑張って進学して、だから就職しないという道が自分の中にあるとは信じられなかったんですけど、でも全然就職する気になれなくて。自分の歌に自信があったし、その時はまだ誰にも知られてないけど、きっと大きくなれるという気が勝手に自分の中にはあったから…。今思えばどこからそんな自信が出てきたんだろうと思うし、その当時恥ずかしくて口に出しては言わなかったですけど、でも心の中では“音楽でやっていきたい”と思っていたんだと思います。

今の3人の話からすると、johnnyさんが入る時にはもう、このバンドは完全にプロ志向だったということになりますが、その空気に戸惑うことはなかったですか。

johnny 確かに、2枚目のミニアルバムが出来たところだったので、みんなの気持ちがすごく高まっている感じはありました。その気持ちを冷まさないようにというか、むしろ僕がもっと温められるように頑張らなあかんなということは思ってました。

Easycome johnny エンタメステーションインタビュー

johnny(Dr)

巻き込まれてしまったなあ、という感じですか(笑)。

Johnny どうなんでしょう(笑)。僕は音楽を聴くのがすごく好きなんですけど、でもこのバンドをやってて、“やっぱり音楽はやるもんやなあ”というふうにすごく思うようになりました。

最初からフルアルバムと思って作りました。それは、“自分たちのアルバム”っていいなあ、という憧れですね。

今回のリリースは初めてのフルアルバムですが、作品のサイズについては最初からフルアルバムで考えていたんですか。それとも、結果的にそうなったという感じでしょうか。

落合 最初からフルアルバムと思ってました。

初めてそういうサイズの作品を作るにあたって、あらかじめ何か考えたり相談したことはありましたか。

落合 そういうのはなくて、ただアルバム!と思ってました(笑)。

コダマ 周りの人からは「シングルは?」とか「5曲、5曲にしたら?」とかいっぱい言われたし、僕らに明確なビジョンがあったからでもないんですけど、単純に“自分たちのアルバム”っていいなあ、という憧れですね。

コダマさんは、今回の制作を振り返って、印象に残っている楽曲や場面は何かありますか。

コダマ johnnyさんがまだサポートの頃やったと思うんですけど、「旅気候」の原型みたいなものがあったから、「そろそろ新曲もやっていきたいんで、一緒に考えてもらってもいいですか」みたいな話から始まって、二人でスタジオに入ったりもしたし、とにかく「旅気候」1曲のアレンジに果てしなく時間をかけたんです。これまではそこまでしなかったので、“あらためて楽しいな”という感じがしましたね。その後に「想い出にさよなら」が出来て、しばらくはその2曲だけの時間は続いたんですけど、春頃に急に落合がどんどん曲を書いてきて、オリジナル曲が増えていった時期も面白かったです。ワクワクしました。

Easycome エンタメステーションインタビュー

johnnyさんは、今回の制作を振り返っていかがですか。

johnny 僕が入って初めてアルバムですから、今までのEasycomeのイメージを大事にしたいと思ってたので、そのためにはどういうドラムを叩けばいいか?ということはずっと考えてました。アルバムだから曲によってメリハリをつけないといけないかなということも思ったんですが、みんなで一緒にスタジオでやってると「ここは激し過ぎる」とか「もうちょっと抑えてほしい」と言われることもあって、そのあたりの加減は後半になってくるとだいぶわかってきたんですけど…。特に「想い出にさよなら」はみんなの声をすごく反映させた印象があって、サビに行くまでのパターンとかいくつも考えて、でも最終的にはちーかまが言ってくれたアイデアがすごくハマった気がしたんです。そういうふうに、メンバーの声一つで“あっ!”と気づいて、一気に道が開けたりすることも多かったですね。

ちーかまさんは今回の制作を振り返って、どんなことが印象に残っていますか。

ちーかま 今思うと最初の頃はかなりしんどくて、というのが落合はまず曲を作ってくるし、ドラムとベースは自分のパートの演奏を自分で付けたりするけど、私は落合が付けたコードを弾いて、落合が考えてきたメロディーと歌詞を歌うだけで、与えられたものをやってるだけだなと思ってた時期がけっこうあったんです。だから、今回のレコーディングではコーラス・ワークをめちゃくちゃ凝って入れて、その部分ではみんなが楽器を付けるのと同じ立ち位置に立てたと思うし、歌についても落合が作ってきたものだけど私が表現して私の解釈を聴いてる人に伝えられるというのは面白いことだなと思えるようになったのが大きくて、最初の時期に悩んだことが歌う人としての今の自分のスタイルに繋がったなと感じています。

人が作った曲でも自分の解釈を自分の歌で伝えられるのが面白いことだと思えるようになったのは、何かきっかけがあったんですか。

ちーかま この2年の間に、個人的に、一人の人間としてすごくしんどい時期があって、でもその時期にもライブはあって、その時の歌が数ヶ月前と比べると明らかに良くなったことが自分でもわかったんです。メロディーや歌詞に乗せて自分の感情を伝えられてるなあという感覚が明確にあったんですよ。それは、たまたまそうなったというだけだったんですが、それでも気持ちの具合でそんなに歌が変わるんだということに気づいて、そういうことを意図的にできるようになればいいんじゃないと思ったのがきっかけですね。

Easycome エンタメステーションインタビュー

落合さんは、今回の制作を振り返って印象に残っているのは?

落合 「旅気候」ができて「想い出にさよなら」ができた後も何曲か持って行ったんですけどボツになって、その時期はちょっと落ち込むというか、“みんな、いいって言ってくれないし…”みたいな感じでしたけど、急にできるようになったんですよね。あれは、何なんでしょうね。

Easycomeの曲を作る際に何か気をつけていること、意識することはありますか。

落合 基本は、僕がその時々でやりたいことをやるし、歌詞もその時の自分の気持ちを書く、という感じです。

ただ歌詞に関しては、ちーかまさんが歌うものだから、そのことを意識して表現の仕方や言葉を考えるということはないですか。

落合 最初の頃は、そういうことを考えてやってみたり、物語を考えるようなノリで書いてみたりしたこともあったんですけど、今回は敢えて何も考えずに、“僕が歌詞を考えたら、これしか出てこない!”という感じで書きました。僕は人と喋るのがあまり上手くないし、普段は言えないようなことも歌詞には書けるんで、そういうところで自分が救われたいと思って書いたものが多いです。今回は、自分のために作ってたところが大きいかもしれないですね。

Easycome エンタメステーションインタビュー

「春になったら」という曲に♪些細な事が堪えるこの寒さも/春になったら♪という歌詞がありますが、現在のEasycomeは堪える寒さを感じることはありますか。あるいは、2枚目のミニアルバムが出来た当時のように、明るい未来しか見えない感じですか。

落合 どうでしょう?

コダマ 寒くはないですね(笑)。

1年後、来年の夏にはどうなっていると思いますか。あるいは、どうなっていたいですか。

落合 この感じは変わってないと思いますけど(笑)。

ちーかま この2年間、自分たちはあっという間だったんですけど、ファンの人からは「めっちゃ、待ったよ」と言われるんです。そのたびに“これからは計画的にやっていこう”と思うんですけど、でもやっぱりこのバンドの悪い癖でその日暮らしというか(笑)。ただ、曲を作るのはみんな好きだから、次はもっと早く出したいし、今回出せなかった色を入れた作品にしたいなと思っています。

期待しています。ありがとうございました。

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Easycome

ちーかま(Vo、Gt)、落合(Gt)、コダマ(Ba)、johnny(Dr)。
2015年結成、夏ごろからライブに出始める。12月、初音源「夢中にならないで/crispy cryspy」をYouTube、soundcloudで公開。ライブ会場でも無料音源として配布。2016年、コンピレーションアルバム『裏堀江系Vol.01』に参加。1st mini album『風の便りを教えて』発売し、1000枚完売。りんご音楽祭2016、FM802 MINAMI WHEEL 2016出演。2017年、2nd mini album『お天気でした』発売。FM802 MINAMI WHEEL 2017出演。大阪を中心に活動中。

オフィシャルサイト
https://easycome-band.jimdo.com

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