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近藤頌利&竹中凌平らが博多で裏稼業に!? 舞台『博多豚骨ラーメンズ』上演中!

近藤頌利&竹中凌平らが博多で裏稼業に!? 舞台『博多豚骨ラーメンズ』上演中!

人気作家の木崎ちあきの小説を原作にした舞台『博多豚骨ラーメンズ』が7月13日(土)からシアターサンモールにて上演中だ。
人口の3パーセントが殺し屋という福岡の博多を舞台に、私立探偵、拷問師、情報屋といった裏稼業の男女が暴れまわる、サスペンス、笑い、涙ありのストーリー。
舞台版は、劇団ホチキス主宰の米山和仁が脚本・演出を手がけ、劇団Patchの近藤頌利が主演を務める。ほかにも、竹中凌平、安達勇人、戸田 翔、鵜飼主水、星守紗凪、佐藤弘樹、新井 將、窪田 翔、永瀬千裕、松田将希と注目の若手俳優や女優が出演。舞台化発表時から、演劇ファン、原作ファンの期待を集めていた。そんな舞台の公開ゲネプロが初日前に行われた。

取材・文・撮影 / 竹下力


忘れがたい演劇体験を約束してくれる作品

今作を観た人は終演後の帰り道で声高に叫びたい気持ちに駆られるだろう。そう、ひたすらかっこいい! アウトローたちによる、胸をすくようなハードボイルド・サスペンスと表現すればいいだろうか。私立探偵、殺し屋、情報屋、復讐屋、拷問師など、アウトサイダーたちの魂の叫び声がポリフォニーになって耳をつんざき、どのシーンも記憶にこびりつく。忘れがたい演劇体験を約束してくれる作品に仕上がっていた。

舞台『博多豚骨ラーメンズ』

開演前から、煙たいブレイクビーツにのせたファンキーな音楽が鳴っている。回転舞台の上にはギザギザの穴の空いた白壁に2つのドアがあるだけのシンプルな舞台装置がある。Lack Of Afro「Rusty」のヴィンテージ感抜群のジャジーな音楽から暗転して、ジャズアレンジの「Name of the Game」が高らかに鳴り響き、舞台が始まった。

舞台『博多豚骨ラーメンズ』

女装姿の殺し屋・林 憲明(竹中凌平)がスポットライトの光を浴びて登場するや、「人を殺すことに後ろめたさは感じない……なぜなら」と渋いひとり語りを始める。この冒頭シーン数十秒ですぐにピカレスク風の作品だとわかる。序盤からしびれる展開だ。そして、林はクラブの金を持ち逃げした男女をあっという間に殺害。「華九会」というマフィアに雇われているということが明らかになる。冒頭から物語は伏線に次ぐ伏線を散りばめながらすさまじいスピードで展開されていく。

林は、男女を殺したあと、華九会の幹部から、今度は刑事のタケダという男を殺せと依頼される。タケダは福岡市長選に立候補している原田正太郎の悪事を追及しており、原田とつながっている華九会が裏で動いたのだ。このあたりの社会・政治風刺的な要素もピカレスクの様式特有のものだろう。しかし、林が殺そうとする前に、何者かによってタケダは殺されてしまう──。

舞台『博多豚骨ラーメンズ』

時を同じくして、刑事の重松(佐藤弘樹)が私立探偵の馬場善治(近藤頌利)に、タケダの死因について相談を持ちかけていた。タケダは自殺ということになってはいるが、彼の身辺を調べるにつけ怪しいと睨んでいたからだ。馬場が調査を開始すると、タケダのことを嗅ぎ回っているという理由で、林から命を狙われることになる。ふたりは運命に導かれ、出会うことになるのだが──。

舞台『博多豚骨ラーメンズ』

とにかくアクの強いキャラクターが勢ぞろいしている。殺し屋の集まる会社「マーダー・インク」の出来の悪い新人社員の斉藤(安達勇人)、博多を拠点にハッキングに手を染める情報屋の榎田(戸田 翔)、依頼があればどんな奴にも復讐をする「復讐屋」を営むオネエでバー「Babylon」を経営しているジロー(鵜飼主水)、ジローの助手だという小学生のミサキ(星守紗凪)、そして、こちらも依頼があればどんな拷問もするスキンヘッドで屈強な「拷問師」のホセ・マルティネス(新井 將)、ホストなのに本業はスリ師の大和(窪田 翔)、原田正太郎のSPとして身辺警護に当たっているが、実は殺し屋の宗方(佐藤弘樹)、元マーダー・インクの社員だった宗方の部下で殺し屋の麗子(永瀬千裕)、原田正太郎の息子で異常性癖の持ち主の原田ユウスケ(松田将希)と、悪徳の道に染まった人たちばかり。

破滅的で破壊的な登場人物たちも快楽原則だけで行動しているのかと思いきや、物語が進んでいけば、涙あり、笑いあり、なぜ『博多豚骨ラーメンズ』と、物語のトーンとギャップのあるファニーなタイトルが付けられているのかもよくわかる仕掛けになっている。

舞台『博多豚骨ラーメンズ』

また物語は、馬場と林のバディものとして展開したり、ピカレスクものとしてだけではなく、サスペンス、ハードボイルド、ヒーローものなど、重層的に話が描かれていて面白い。原作の木崎ちあきのストーリーテラーとしての才能を見せつけられた想いがする。様々な要素に満ちたストーリーなのに、伏線の回収の仕方が見事で、観ていてもわかりやすく、テンポ感もあって飽きない。

それはつまり、脚本が原作のエッセンスを丁寧に掬い上げている証拠。演出においても、米山和仁は伏線だらけの世界を目まぐるしくスピーディーに一本の美しいお話にまとめあげていた。まさに豪腕だ。舞台上で現在や過去の異なるシーンを、回転舞台を上手に使いながら同時展開させることで、原作に流れる、社会に対する想い、人間の優しさ、生きることの意味を、1時間40分という比較的短い上演時間にすべて詰め込むことに成功していた。裏稼業にやつした男女のダークな話でもあるのに、終演後に胸に爽快感が残るのは、原作の良さを余すことなく表現し、さらに演劇ならではの面白さも感じさせてくれたからだと思う。

舞台『博多豚骨ラーメンズ』

馬場善治を演じた近藤頌利は博多弁を駆使しながら、豚骨ラーメンと明太子が好物な根っからの九州男児で、野球を愛してやまないという馬場の性格を忠実に再現していた。馬場は、どこかあっけらかんとした私立探偵でありながら、実は裏の顔を持ち合わせている二面性があるのだけれど、それを巧みに使い分けてキャラクターを際立たせ、底抜けに熱いのにクールな芝居が似合っていた。なにより細身で長身というスタイルと抜群の運動能力を活かし、殺陣も見得切りも見栄えがし、この役は、彼でなければできないという説得力があった。

舞台『博多豚骨ラーメンズ』

林 憲明 役の竹中凌平は、人間的な感情を爆発させるし、縦横無尽に舞台で躍動していた。母親や妹のために殺し屋になったという悲運を感じさせる悲しい芝居も、人情噺のストーリー展開の心あたたまる芝居も丁寧にこなし、懐の広い芝居を見せていた。

ほかにも個性の強いキャラクターをそれぞれの役者が演じきっていて感動したし、ダンスパートを含め、カンパニーの結束力の高さを感じさせてくれた。特に重松と宗方の二役を演じた佐藤弘樹の早替えは見事だったし、刑事から殺し屋への変貌ぶりが目に留まる。さらに、ミサキ 役の星守紗凪は台詞が控えめなキャラクターなのに、とにかく印象に残る芝居と佇まいで、今後、楽しみな女優のひとりだと思った。

どんな人間だろうと、どんな状況になろうと、生き抜くこと。それがなによりも大切。そんなメッセージを受け取った。それを象徴するものが、馬場を中心にアウトサイダーたちで結成された草野球チーム「博多豚骨ラーメンズ」だ。野球というフィルターを通して、あらゆる人間は平等になるべきだと教えてくれる。人間の生きる意味は、我々の住む世界(社会)から、権利、チャンス、希望、それらが等しく与えられることで決まる。それが人間の尊厳なのだと我々に訴えかけてくるようだった。

舞台『博多豚骨ラーメンズ』

公演は7月21日(日)までシアターサンモールにて上演される。

舞台『博多豚骨ラーメンズ』

2019年7月13日(土)~7月21日(日)シアターサンモール

原作:木崎ちあき(メディアワークス文庫 / KADOKAWA)
イラスト:一色 箱
脚本・演出:米山和仁

出演:
馬場善治 役:近藤頌利
林 憲明 役:竹中凌平
斉藤 役:安達勇人
榎田 役:戸田 翔
ジロー 役:鵜飼主水
ミサキ 役:星守紗凪
重松/宗方 役:佐藤弘樹
ホセ・マルティネス 役:新井 將
大和 役:窪田 翔
麗子 役:永瀬千裕
原田ユウスケ 役:松田将希

池田光毅、山口日明、佐々木 柔、松本龍之介、瀬戸ひなの

オフィシャルサイト
オフィシャルTwutter(@tonkotsu_stage)

©Chiaki Kisaki 2019 ©2019 舞台「博多豚骨ラーメンズ」製作委員会

原作小説『博多豚骨ラーメンズ』