Interview

西川可奈子、映画『アンダー・ユア・ベッド』の過激な暴力や性描写を体当たりで演じ、描いた究極の愛のカタチ

西川可奈子、映画『アンダー・ユア・ベッド』の過激な暴力や性描写を体当たりで演じ、描いた究極の愛のカタチ

誰からも必要とされず存在を忘れ去られた男・三井が、学生時代に初めて名前を呼んでくれた女性と11年ぶりに再会。彼女への執着から、近所に住んで監視するようになり、やがて自宅に侵入してベッドの下で真上の彼女を思いながら過ごすようになるーー。
そんなショッキングな内容で公開前から話題を集めている映画『アンダー・ユア・ベッド』で、ヒロインの千尋を演じているのが西川可奈子。高良健吾演じる三井が歪んだ愛を捧げるミューズであり、夫から激しいドメスティック・ヴァイオレンスを受けている専業主婦という難役を迫真の演技でリアルに体現した彼女が、今回の撮影を通して得たもの、作品に込めた個人的な思いとは……?

アンダー・ユア・ベッド

©2019映画「アンダー・ユア・ベッド」製作委員会

取材・文 / 井口啓子 撮影 / 荻原大志


どうしてもやりたいと思った千尋。「本当にヒリヒリした緊張感が漂った現場でした」

西川さんは女性同士の禁断の愛を描いたロマンポルノ『ホワイトリリー』や、集団レイプされた女性の復讐劇『私は絶対許さない』など、過激な作品に積極的にチャレンジされてきた印象がありますが、今回の『アンダー・ユア・ベッド』はその極みともいうべきショッキングな作品ですね。

そういう作品がたまたま続いたのもありますが、今回は台本を読んで、どうしても千尋をやりたいと思ったんです。DVは社会的にも大きな問題になっていますが、これまで私自身は夫婦の問題なんだし、どちらか一方だけが悪いとは言えないんじゃないかな…と考えているところがあったんです。でも今回、千尋の立場で台本を読んで考えると、やっぱり彼女は逃げることも考えられないぐらい精神的に追い込まれていたんだなってわかったし、現に今も千尋のように恐怖と闘っている人がたくさんいるんだと思うと、自分も作品を通してなにか伝えたいと思ったし、あとはやっぱり、ここまで尖った作品って最近はあまりないので、役者としてはチャンスがあればやりたいという気持ちもありました。

西川可奈子 エンタメステーションインタビュー

確かに、こういった過激な暴力や性描写を含む作品は、コンプライアンスの面でも興行的な面でも実現が難しくなっているだけに、役者さんとしては貴重な作品でもありますよね。

そうなんです。難しい役だなとは思ったけれど、この役を他の誰かが演じるなんて考えたくなかったし、とにかくぶち当たろうと。今回はオーディションだったんですが、実際に私の演技や私自身を見て、いろんな方の中から千尋に選んでいただけたのは本当に嬉しかったです。

千尋という役はどのように作られて行きましたか? 

この作品は原作があるんですが、脚本は監督の安里麻里さんが描かれていて、また原作とは違った世界観のものになっているので、あえて原作は読まず、この脚本の中だけで生きようと思って。まず、安里監督と夫の健太郎役の安部賢一さんと三人で撮影に入る前にディスカッションをしました。千尋と健太郎の関係って、普通だったら何でこんな酷い状況で一緒にいるの?と疑問に思うんだけど、千尋は閉鎖された世界で夫を怒らせないように張り詰めたギリギリの状態で生活している。それが見ている人にもリアルに伝わるように、千尋と健太郎はどういう家庭で育って、どういう過程で結婚してここに至ったのか?という、映画の中では描かれていない部分も含めて話し合いながら役づくりをしていきました。大学生の千尋と11年後の千尋を演じるに当って、年齢的な見た目の変化やDVを受けて精神的に追いつめられているような変化は意識しましたが、人間って根底はそんなに変わらないと思うので、千尋がもともと持っている優しくてピュアな部分は一貫して出したいなと心掛けました。

西川可奈子 エンタメステーションインタビュー

二人のDVシーンに関しては想像以上にリアルでハードで、大学時代のキラキラした千尋も見ているだけに息苦しくなるほどでした…。

DVシーンは監督も大事なシーンだからと力が入ってたんですが、本当にヒリヒリした緊張感が漂った現場でしたね。ただ暴力を描きたいだけの映画では当然ないんですが、やっぱりそこを中途半端に手加減しちゃうと、本当に描きたい部分まで中途半端になってしまう恐れがあるので、そこはリアルにやらなきゃという覚悟は私もありましたし、安部さんも中途半端にする方が失礼だから全力でやるよって言ってくださって、壮絶なシーンになりましたね。

日ごとに自然のアザがどんどんできていく過酷な撮影

フィクションといえども精神的なダメージはありませんでしたか?

こういう重たい作品は良くも悪くも引きずってしまう部分があるんですが、今回は皆さんすごく私のメンタルを気遣ってくださって。安部さんもカットがかかるたびに「大丈夫?」って駆け寄ってくださいましたし、高良さんも「大丈夫?」と本当に眉間にシワを寄せて聞いてくださって。撮影は福島ロケで二週間ぐらいの間にギュッと集中して撮ったんですが、それも後から聞くと監督やプロデューサーさんがこんな撮影の後に私をひとりで自宅に戻すわけにはいかない!と配慮して下さったみたいで。千尋の家や熱帯魚屋のある町並みもセットでいちから作り上げて下さって、おかげで精神的に落ちることもなく集中して撮影ができました。リアリティという意味で今回はアザ以外はノーメイクだったんですが、ありがたいことに撮影が順撮りだったので、自然のアザがどんどんできていって(笑)。それも結晶だと思えるぐらい役者として幸せな時間を過ごせましたね。

アンダー・ユア・ベッド

©2019映画「アンダー・ユア・ベッド」製作委員会

まさに役者冥利に尽きる、ポテンシャルの高い現場だったんですね。

今回『ハイテンション・ムービー・プロジェクト』の第二弾ということもあって、キャストもスタッフもみんな勝負してる感があった気がします。現場には常になにか言葉で説明できない熱量が漲ってて、撮影が終わった後もそれが止まらなくて、ひとりでも多くの人にこの作品を届けるんだって気持ちで私も試写の後に毎回勝手に挨拶をさせてもらってるぐらい(笑)、熱い現場でした。
(西川は、関係者向け試写会の終演後毎回挨拶していた)

西川可奈子 エンタメステーションインタビュー

高良さん演じる三井が千尋に抱く、変質的な思いもガツンと来るものがありました。特にベッドの下から千尋を感じて恍惚とする姿は、クローネンバーグや江戸川乱歩の「異形の愛」にも通じるものがあり、不気味でありながらもコミカルでキュンと切なくなるような純粋さも感じさせます。

三井は気持ち悪いと感じる人もいるかもしれない役ですが、高良さんが演じることによってピュアに見えるというか、心から三井くんがんばれ!と応援したくなるようなお芝居をされる。それは高良さん自身がもともと持ってらっしゃる人間性によるものでもあって、とにかく繊細な方で、細かい目の動きとか、出来上がった作品を見て、こんな表情をしてくれてたんだ!と感謝がこみ上げるぐらい、本当に素晴らしい役者さんだなと改めて思いました。

アンダー・ユア・ベッド

©2019映画「アンダー・ユア・ベッド」製作委員会

西川さん自身は本作で描かれているような「愛」について、どう思われますか?

人って紙一重だと思うんですよ。確かにベッドの下にまでっていうのは特殊かもしれないけど、いろんな愛の形があって、ただ千尋に名前を呼ばれることが三井くんにとっては生きていく唯一の希望になっていて、千尋にとっても閉鎖された孤独な世界で誰かはわからないけど自分を視てくれている誰かの存在が唯一の心の支えになっていた。そういう意味では、たんに恋人同士になるとかセックスするとかも超えた、すごく純粋なもので結ばれた関係だなと思うし、千尋の夫の健太郎にしても、DVは絶対に許せないことなんだけど、健太郎にとっては千尋しかいなくて束縛や依存も彼なりの愛だったのかもしれない…と思うと、なんともいえない気持ちになりますよね。そういう感情って人を愛したことがある人なら多かれ少なかれ抱いたことはあると思うので、誰もが他人事じゃないし、だからこそヒリヒリした感情を掻き立てられる作品になっていると思います。

西川可奈子 エンタメステーションインタビュー

確かに、好き嫌いは問わず、何らかの感情を掻き立てられる作品になっていると思います!

本当に暴力だけでなく、人間の弱い部分や醜い部分、異常ではあるけれどピュアな部分を、ここまで逃げずに表現した映画って私の中ではあまりないと思うし、これはテレビでは絶対できない、映画でしかできない表現に挑んだ作品だと思うので、ぜひ劇場で見て、なにか自分なりの思いを感じていただければ嬉しいですね。

西川可奈子

大阪府出身。
2007年初舞台以後、小劇場を中心に25作品の主にヒロインとして活躍後、2015年よりテレビ、映画など映像作品を中心に活躍。
主な出演作にTBS『ホテルコンシェルジェ』(15)、CX『セシルのもくろみ』(17)、『ホワイトリリー』中田秀夫監督(17)、NHK『西郷どん』(18)、『Single mom優しい家族』松本克己監督(18)など。『私は絶対許さない』和田秀樹監督(18)ではマドリード国際映画祭主演女優賞ノミネートされ、今後の活躍に期待が高まる注目女優。

フォトギャラリー

映画『アンダー・ユア・ベッド』

7月19日(金)テアトル新宿ほか全国順次ロードショー

アンダー・ユア・ベッド

出演:高良健吾 西川可奈子 安部賢一 三河悠冴 三宅亮輔
原作:大石 圭「アンダー・ユア・ベッド」(角川ホラー文庫刊)
監督・脚本/安里麻里
製作:ハピネット KADOKAWA
制作プロダクション:ザフール
配給:KADOKAWA
©2019 映画「アンダー・ユア・ベッド」製作委員会
R18+

オフィシャルサイト
http://underyourbed.jp

『アンダー・ユア・ベッド』原作