Interview

『東京喰種 トーキョーグール【S】』は社会を映す鏡か? 白石隼也が語る、喰種(グール)というマイノリティーの生き方

『東京喰種 トーキョーグール【S】』は社会を映す鏡か? 白石隼也が語る、喰種(グール)というマイノリティーの生き方

原作コミックスからアニメーション、そして実写化。着々と広がりを見せた『東京喰種 トーキョーグール』の世界の一つの到達点とも言えた映画第1作から2年、待望の続編『東京喰種 トーキョーグール【S】』が7月19日(金)、いよいよそのベールを脱ぐ。

監督にはともに30歳の新星・川崎拓也と平牧和彦を迎え、新たなキャストを迎えるなど、前作からさまざまなアップデートがなされる中、主人公・金木 研(カネキ・ケン)を演じる窪田正孝とともに続投しているのが、西尾 錦(ニシオ・ニシキ)役の白石隼也だ。人を喰べる喰種(グール)でありながら、人間の女性を愛してしまったという葛藤と、宿命を背負いながらも生きていこうとするキャラクターに身を投じる中で、何を感じたのか──? ある種のマイノリティー的な視点から、作品の魅力について語ってもらった。

取材・文 / 平田真人 撮影 / 増永彩子


生身の役者にしかできない表現というのは何だろう、ということを今作では意識しました。

前作に続いての出演になりますが、続編制作のお話を聞いてどう思われましたか?

映画化の最初の段階で、できれば長いシリーズとしてやっていきたいというお話を聞いていましたし、第1作は原作の3巻までのエピソードだったこと、僕が演じている西尾 錦(ニシキ)も今回のストーリーからどういうキャラクターかが描かれていくということも、非常に楽しみだなと思いました。とはいえ、前作と今作で何かを大きく変えたというわけでもなくて。第1作の撮影をしている時からストーリーが続いていくことを自分の中で想定しながら、役をつくっていた部分があったので、スムーズに入れたという実感があります。

では、その錦というキャラクターをどうとらえていらっしゃったのでしょうか?

人を喰べる喰種という存在そのものがファンタジーでもあるので、なかなか理解しづらかったのも確かです。ただ、誰しもが持っている孤独感であったり、人に見せられない秘密を抱えているといった普遍的な部分は僕自身にもあるところなので、「ニシキという役だから」ということで特別なことをしたというわけではなくて。戦闘能力的には強くないけれど、ある意味で誰よりも孤独と戦ってきたキャラクターでもあるので、強い魂を持っている男だということは、常に意識していました。

白石隼也 エンタメステーションインタビュー

確かに、今作では、やられっぷりがすごいですね。

僕がイメージしていたやられ具合よりも、監督のイメージではもっとダメージを食らっていて。結構長くに渡って虫の息のような状態で進んでいくのが、僕としては難しかったんですけど、そんな中でも嘘っぽく見えるのは避けたいなと思ったので、お芝居で想像力を試されているなと感じました。声を張るシーンもほとんどないですし、そもそも声が出せないくらいダメージを受けているので(笑)、撮影期間中は不安でもあったんですけど、そこは監督やキャストの方々を信じてやっていくことで、何とかカタチにできたんじゃないかなと。

ニシキの一面を白石さん自身も持っているとお話されていましたが、どういった部分にシンパシーを抱きましたか?

強がりなところはちょっと自分と似ているかもしれないですね。ニシキは格好をつけたがる男でもあるんですけど、僕もあんまり人に弱いところを見せたりすることができなかったりするので(笑)。ただ、彼ほど1人の人を深く強く愛した経験がまだないので、ニシキの方が“人”としては成熟しているのかな、と。ただ、恋人ではないにしても、家族や友人といった…自分の命に代えても守りたいと思える人たちは僕にもいるので、錦の思いはわかりましたし、共感したいなと思いながら演じていました。

白石隼也 エンタメステーションインタビュー

そのニシキが愛したのが、本来は喰べる対象である人間の女性・西野貴未(木竜麻生)というのが、ストーリーに奥行きを持たせているように感じました。

僕自身も貴未のように尽くしてくれる女性には惹かれますし、彼女の心の強さはとても魅力的だなと思いました。トーカ(山本舞香演じるヒロイン・霧島董香)ちゃんもいいんですけどね(笑)。ふだん生活していても、女性って強いなと感じる瞬間が多々あって、貴未もトーカも魅力的な強さを備えているんですけど、より人として成熟しているのは貴未なのかな、と。木竜さんもまだ若いんですけど、雰囲気が落ち着いていて年齢よりもずっと大人に感じられたので、すごく役に合っていた気がします。

東京喰種 トーキョーグール【S】

また、今作は監督が川崎拓也さんと平牧和彦さんの“二頭体制”でしたが、どういった役割分担がなされていたのでしょうか?

まず、第1作に関して言いますと、原作へのリスペクトをすごく大切につくった作品だと思うんですね。原作のファンの方々の期待に応えられる映画をつくろうという空気を、現場で共有していた感があって。そこからの次なるステップとも言える本作では、キャストに山本舞香さんや松田翔太さんが新たに加わったことも踏まえて、生身の役者にしかできない表現というのは何だろうということを意識していました。なので、窪田(正孝)さんや僕も第1作からの流れを引き継ぎつつ、喰種としての葛藤をより生々しく見せていくというテーマを念頭に置いていて。そういった中で、川崎監督が主に演出面を担当し、平牧監督が映像面を担うという棲み分けをされていたので、基本的にお芝居に関しては川崎さんとお話をさせてもらっていました。

ただ、撮影が進んでいくにつれ、そういった垣根もほとんどなくなっていって、川崎さんと平牧さんも密にコミュニケーションをとっていらっしゃったので、お二人のどちらにも相談できるようになったのは大きかったですね。お二人の年齢も僕より少し上で、現場の共演者の方々も世代的には近かったので、意見を言える空気感をみんなでつくっていけたという実感があります。

先ほども触れていらっしゃいましたが、窪田さんとは前作に続いての共演でしたが、久しぶりにカネキとして再会してみて、どのような印象を抱いたのでしょうか?

第1作から少し間が空きましたけど、窪田さんは現場で常にカネキとして立っていてくださったので、僕もスッと前作の撮影の雰囲気を克明に思い出すことができました。また、主演として現場を引っ張ってくださるし、アクションでも僕がやりやすいようにと気をつかってくださったので、信頼を寄せていましたし、いろいろな面で心を委ねていました。また、すごくストイックでいらっしゃるので、与えられた時間の中でもすさまじい爆発力を発揮されるんですね。そのエネルギッシュなところに、刺激を受けました。

東京喰種 トーキョーグール【S】

一方、劇薬的な刺激をもたらす存在でもあったかと思われる月山習役の松田翔太さんについては、いかがでしょう?

松田さんの持っていらっしゃる独特の感性が、月山というキャラクターとすごくマッチしているように感じました。しかも、原作の月山とはまた違うエッセンスが足されていて、そこが何とも魅力的で。そういう意味でも現場が新鮮に感じられましたし、お芝居に関しても周りのキャストのことまで目を配ってくださって、月山と錦が絡むシーンではいろいろなアイディアを出してくださったり、反対に僕のお話も聞いてくださったり、役者の先輩としても人としても、とても素敵な方でした。それでいて、いっさい妥協をしないところもかっこよくて。みんながちゃんと納得して理解し合えるまで突き詰めたいというスタンスから、僕も妥協せず信念を貫いていきたいなと思いました。山本舞香ちゃんも若いですけど、アクションがキレキレで、ほとんどスタントなしで演じていたのがすごかったです。練習の段階から彼女はめちゃくちゃ動けていたので、これは僕もがんばらないと──と、火を着けてもらったところがあります(笑)。

東京喰種 トーキョーグール【S】

ちょっと野暮な話かもしれませんが、キャストのみなさんで食事に行ったりもしたのでしょうか?

クライマックスのアクションは郊外のロケセットで撮っていたので、ずっと泊まりだったんですけど…よく考えてみたら行ってないですね(笑)。現場にいる時に一緒にケータリングを食べていたので、行ったつもりになっていました。ただ、それこそ「同じ釜の飯を食う」じゃないですけど、終盤の激しいアクションシーンの連続みたいな撮影になると、信頼関係や呼吸が合うかどうかが芝居にも影響してくるので、泊まりがけで合宿のように撮っていったことは、いいふうに作用したんじゃないかなと思います。喰種同士、強者と強者が戦うアクションなので、細かくカットを割りながらの撮影だったんですけど、1発殴られると遠くまで飛んでいくといった非現実的なリアクションも多くて。なので、みんなでいろいろとディスカッションをしながらカタチにしていけたという意味では、濃密な時間でした。

白石さんご自身は、長回しと細かくカットを割っていく芝居とでは、どちらが得手ですか?

個人的にはワンカットで一連の芝居を撮る方が好きですけど、「東京喰種」のような作品は、どうしてもカットを割る必要性があるので、特に抵抗感を覚えることもなく撮影に臨んでいました。

現実で起こっていることに置き換えられるから、「東京喰種」という作品は多くの人に刺さるんだと思う。

人のようであって人ではないという喰種を演じる上で、どんなところに留意したのでしょうか?

食べるものが違うだけで心の中は人間と一緒なので、たとえて言うなら「信仰や文化、国籍が異なる」ような存在だと思っていて。コミュニティーの異なる者同士が共存できるかどうか、というテーマで考えると、実は意外と身近な話でもあるんですよね。僕自身で言うと…「東京喰種」の現場と違う作品の現場とでは、段取りの進め方や撮り方が違ったりしますけど、その都度ちゃんと適応していけることを考えると…日常生活や社会との関わりの中にヒントがあるんじゃないかなと。

白石隼也 エンタメステーションインタビュー

そうやって考えてみると、習性的には“獲物”となるはずなのに、愛すべき相手となった貴未役の木竜さんとの呼吸が、非常に大事だったのかなと思います。

そうですね、彼女ともいろいろと話をしました。恋人同士の役ということで、ちょっとでもどちらかが遠慮しているところが出てしまうとリアリティに欠けてしまうので、そういう溝をなくすために、撮影中は普段から木竜さんとしゃべって、出来る限り距離を縮めようと意識していました。あと、ニシキは長い間、人を喰べていないという設定だったので、僕自身も空腹で本番に臨む、ということもやってみたりもして。ただ、あんまり意味がないというか…それが映像にどれだけ映っているかは、わからなかったりするんですよね。でも、ニシキとしては飢えているわけで、どこまで反映されるかはわからなかったですけど、1週間前くらいから食事の量を減らして体重を少し落として、現場に入りました。ただ、芝居は肉体労働でもあるので、コンディションを崩してしまっては元も子もないわけで…そこは気をつけつつ、自分なりに調整していって。サッカーの本田圭佑選手が「ハングリー精神はリアルに空腹な身体に宿る」と言っていたので、そこにちょっと触発されたところもあって、なるべく空腹でいるように心がけていました(笑)。

白石隼也 エンタメステーションインタビュー

そうだったんですね(笑)。しかしながら見方を変えると、「東京喰種」は空想の話ではありますけど、我々の生きている世界と地続きなんだなと思えてきますね。

「東京喰種」の人たちって、すごく狭い世界で生きているんですよね。原作では、架空の東京の一角の狭いコミュニティーで生活しているんですけど、その中での人間関係もまた興味深く描かれていて。喰種は物理的に強いか否かでヒエラルキーが決まっていくんですね。片や人間社会では、お金であったり役職であったり、しがらみが絡んできてヒエラルキーが形成されていきますけど、ファンタジーでありながら、そういった関係性のリアリティが細やかに描かれているから、若い人たちの心に刺さるんじゃないかなと思います。というのは、若い彼ら彼女らが通う学校の中で起きていることに置き換えられるからなんですね。しかも、ただ単に現実と重ね合わせているだけじゃなくて、僕の演じたニシキのように、物理的に強くないかわりにさまざまな努力をして周りに認められていくキャラクターもいて、自分の居場所を自らつくることができるんだよ、というメッセージもはらんでいるから、これだけ支持されているんだろうなと思います。

誰しも、多かれ少なかれ何かしらのコミュニティーと関わって生きているわけで、どこかしらとらわれている部分というのは否定できないと思うんです。そういう“どこか身に覚えがある”部分も、人々を惹きつけてやまないんでしょうね。

白石隼也 エンタメステーションインタビュー

また、最初に「長いシリーズとしてやっていきたい」とおっしゃっていましたが、今後の展望も気になるところです。

そうですね、次回作制作を実現させるためにも1人でもたくさんの方に見ていただいて、しかもいい反応がたくさん返ってこないことには話も進んでいかないと思うので、みなさん、劇場へ足を運んでください(笑)。

では、公開を待ち望んでいるファンのみなさんへひと言いただいて、締めくくろうと思います。

「東京喰種」はすごく人気のある作品で、原作もアニメ版もたくさんの方に愛されていて、舞台化もされていますけど、映画版の『東京喰種【S】』は原作の世界観を土台にしつつ、僕ら役者が「人と喰種がともに住む世界」に身を置いた時に何を感じるのか、どう行動するのか──を突き詰めながら撮ったという側面があります。原作ファンのみなさんには、ひと味違った見え方の「東京喰種」として映るのではないかと思いますし、この作品から初めて「東京喰種」に触れる方も…一応、シリーズの2作目ではありますけど、この作品から見ていただいたとしても楽しめるつくりになっていますので、構えることなく楽しんでいただけたらと思います。

金木 研(カネキ・ケン)役 窪田正孝さんのインタビューはこちら
『東京喰種 トーキョーグール【S】』は単なる続編にあらず! 主演の窪田正孝が明かす、シリーズへの深き思い

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2019.07.18


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白石隼也

1990年、神奈川県生まれ。2008年にスクリーンデビュー。主な出演作に、映画『大洗にも星はふるなり』(09)「GANTZ」シリーズ(11)テレビ『仮面ライダー ウィザード』(12)『ストレイヤーズ・クロニクル』(15)『東京喰種 トーキョーグール』(17)『ホペイロの憂鬱』(18)などがある。2019年は、『東京喰種 トーキョーグール【S】』に出演するほか、放送中のドラマ『アフロ田中』(WOWOW)『ランウェイ24』(ABCテレビ)に出演中。ドラマ『W県警の悲劇』(BSテレ東)第6話にゲスト出演する予定。

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@s_shiraishikun

オフィシャルInstagram
@s_shiraishikun

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映画『東京喰種 トーキョーグール【S】』

7月19日(金)全国ロードショー

東京喰種 トーキョーグール【S】

【STORY】
不慮の事故により、人を喰らわないと生きられない【喰種】と人間のハーフになってしまったカネキは、2つの世界の狭間で葛藤しながらも、いまは喰種たちの駆け込み寺でもある喫茶店「あんていく」に身を寄せており、トーカらとともに生活をしている。そんな最中、「美食家(グルメ)」と呼ばれる喰種・月山が「あんていく」を訪れる。月山を厄介者だと言い露骨に嫌な顔をするトーカは、カネキに「あいつとは関わらない方がいい」と釘を刺す。だが、月山は人間と喰種のハーフであるカネキの特殊な「におい」に目をつけ、カネキを「喰種レストラン」へ招き入れる。カネキVS月山…それぞれの【正義】がぶつかり合い、人間と喰種の共存を賭けた闘いがいま始まる―。

原作:石田スイ 「東京喰種 トーキョーグール」 集英社「ヤングジャンプコミックス」全14巻
監督:川崎拓也 平牧和彦
脚本:御笠ノ忠次
出演:窪田正孝 山本舞香 鈴木伸之 小笠原 海 白石隼也 木竜麻生 桜田ひより 村井國夫/知英 マギー 森 七菜 ダンカン 栁 俊太郎 坂東巳之助 松田翔太
配給:松竹

©石田スイ/集英社   ©2019「東京喰種【S】」製作委員会

オフィシャルサイト
http://tokyoghoul.jp/