Interview

Nazの圧倒的な歌声が、耳を、心をノックアウトする。1st EP「JUQCY」に至る彼女のルーツ

Nazの圧倒的な歌声が、耳を、心をノックアウトする。1st EP「JUQCY」に至る彼女のルーツ

沖縄在住の19歳のシンガー、Naz(ナヅ)。今から6年前、13歳のときにワン・ダイレクションなどを輩出した音楽リアリティオーディション番組シリーズ〈X FACTOR OKINAWA JAPAN〉に出場。エイミー・ワインハウス「Rehab」やクリスティーナ・アギレラ「Something’s Got A Hold On Me」を歌唱し、審査員から“神に与えられた歌声”と称賛を受け、高校在学中にはデビュー前にも関わらずにNABOWAや冨田ラボの楽曲にフィーチャリングヴォーカリストとして抜擢された。
この春に高校を卒業し、冨田恵一や江﨑文武(WONK)らをプロデューサーに迎えた全編英語歌詞の1st EP「JUQCY」で本格的な活動を開始した彼女にデビューまでの道のりを振り返ってもらった。

取材・文 / 永堀アツオ


どんな歌も自分の解釈で歌っていいというある種の自信にはつながった

小さい頃から音楽が好きでしたか?

両親がUKロックとオルタナティブロックが好きで、ずっと音楽がある環境で育ってきたんですけど。最初の頃は、シンガーは歌がうまい人がなるものだと思っていたので、小さい頃はずっと、ただの聴く側でした。

意外ですね。ブラックミュージックがルーツにあるのかと思っていました。

ブラックミュージックはそんなに聴いてなかったんですけど、シンガーになりたいって思い始めた時期にちょうど映画『バーレスク』(2010年)が公開されて。そこでクリスティーナ・アギレラに初めて出会ってすごい衝撃を受けて、私も「ああいうふうになりたい」って思うようになり、そこから自分で探して聴くようになりました。

聴く側から歌う側へ、歌手になりたいって思ったのは何かきっかけがありました?

もともとは動物が大好きで獣医になりたいと思ってたんです。本当に小さい頃、最初に本で犬を見たときに母から「これが犬だよ」って教えてもらったら、もう、可愛すぎて衝撃を受けて(笑)。今でもそのときのことを覚えているくらい、初めて犬を見た瞬間から大好きになったんです。でも、小4くらいの頃かな……もしも自分が影響力のある人になったら、動物や環境の力にもなれるのかもしれないって思ったことがきっかけで、自分で歌うようになって。今は、聴く側だった頃よりも音楽に夢中になっているので、とても幸せを感じています。

そして、中学1年生のときにオーディション番組〈X FACTOR OKINAWA JAPAN〉に出演しました。

父が「歌のオーディション番組があるけど、応募してみる?」って誘ってくれて。それで応募したんですけど、当時はあんまり意味がわからなかったですね。レパートリーもなかったので、ステージが進んでいくごとに新しい曲を用意しないといけなくて。ただ、課題曲も含めていろんな歌を歌わせてもらったことで、どんな歌も自分の解釈で歌っていいというある種の自信にはつながっていったんじゃないかなって思います。

審査員から、日本人離れしたスモーキーでソウルフルな歌声を褒められてました。“人が持ってない声質”とか“神に与えられた声”と言われたときはどう感じました?

「そうなの〜!?」って感じでした。そうでもないと思うけどなって(笑)。

あはは! 人前で歌うことで感じたことは?

一曲を歌い上げるっていうバランスがすごく難しくて。テレビ出演も初めてだったし、緊張したときの自分の気持ちのコントロールもよくわからなかったので、最初から全力で歌ってしまっていたこともあって、力の調節が難しかったです。そういう面ではオーディションで成長できたと思います。

その当時、もう私は歌手になるんだと決めてました?

はい、決めてました。映画『バーレスク』の影響でアデルとか、エイミー・ワインハウスとかソウルミュージックを好きで聴いていたので、「ああいうシンガーになりたいな」と思ってました。

Naz エンタメステーションインタビュー

番組が終わってからはどんな活動をしてました?

オーディションに出たことがきっかけで、ライヴに誘ってもらうようになりました。それで高校1年生のときにNABOWAさんの「My Heatbeat(Belongs To You)」、高校2年生のときに冨田ラボさんの「OCEAN feat. Naz」にボーカルで参加させてもらって。「My Heatbeat(Belongs To You)」は初めて私に作ってもらえた曲だったんで、カバー曲とは違うので、自分の声でこの歌をどう表現するのかっていうことを考えるのも初めての経験で難しかったです。「OCEAN」はデモをいただいたときから毎日、家で歌っていましたね。それまでは、自分の低い声が生きる曲ばかりを選曲して歌ってたんですけど、この曲では、高いところでも自分の声の魅力を引き出してもらったので、新しい自分と出会えた曲だなと思います。

その後の進路はどう考えてました?

高校3年生になって、EP制作の話が具体的に進んだんです。自分が思っていた以上にいろいろな皆さんに協力していただいて。だから、シンガーになることに向けて「頑張っていこう」っていう気持ちがもっともっと高まっていって。皆さんの助けがあって、ようやく自信が持てるようになってきて、あとはもう頑張ろうっていうだけでしたね。

実際にデビューが決まったのはいつでした?

高校3年生の夏です。なんとなくシンガーになりたいっていうのはずっとあったんですけど、“いつ”っていう具体的なことは自分では考えていなかったので、「そんな時期がきたのか!!」ってびっくりしましたけど、とても嬉しかったです。

これからシンガーとして新しくスタートするんだっていう作品にしたい

デビューEPはどんな作品にしたいと思っていました?

小学校の高学年から歌い始めて、中学と高校のときにはライヴをするようになって。音楽活動をしていたときはずっと学生だったので、最後のケジメっていう時期でもあったし、これからシンガーとして新しくスタートするんだっていう作品にしたいと思ってました。

全編英語歌詞っていうのは最初から?

はい。生まれ育ってきた環境というか聴いてきた音楽もあるんですけど、どこかで“音楽=英語”だっていうのが自分の中にあって。そもそも日本語で歌うっていう発想がなかったんです。英語で歌うことしか頭になかったですね。

ちょっと横道にそれますけど、カラオケには行きます?

行きます。でも、苦手なんですよね。極力、歌いたくない……なんか、至近距離で見られるから恥ずかしいんですよ(笑)。みんな「いい」って言ってくれるんだけど、「どう思われてるんだろう?」「すごく期待されてるんじゃないか?」っていう心配のほうが大きくなっちゃうので。

引っ込み思案だけど、ステージに出ると迫力のある歌声を放つんですよね。

極度の人見知りなんです。でも、歌だけじゃなく、“逃げる”っていう選択肢は自分の中にはなくて。緊張してるからといって、パフォーマンスをダメなものにはできないと思っていますし。だからライヴのときは「人見知りしてる場合じゃないぞ」って自分に言い聞かせながら歌ってます。

ライヴはどんな場所になってます?

最初は失敗したらどうしようっていう心配ばかりしてたんですけど、ボイストレーニングとかをしたり、回数を重ねていくようになってからは自信も持てるようになりました。自分の気持ちを歌で表現することに喜びを感じ始めてからは、ライヴで皆さんが聴いてくれてるっていう空間が、私にとって幸せだなって感じてます。

荒れた天気が好き。台風とか、雨とか雷が

EP「JUQCY」には作詞作曲を自ら手がけた楽曲も収録されてますが、作詞作曲はいつ頃から始めました?

中学2年生のときに初めて作ったオリジナルが、EPの3曲目に収録されている「Rain Wash」なんです。学校でイヤになることや不安になることがあっても、雨が降っただけで、今日はいい日だなって思えたり、助けられてる部分があったので。“雨にありがとう”っていう意味の曲になってます。

晴れじゃなく、雨に感謝してる。

私、荒れた天気が好きなんです。沖縄の昼間の海は嫌いなんですけど、台風とか、雨とか雷が好きですね。窓に雨がついてる感じも綺麗だし、台風で停電して真っ暗になって、キャンドルを灯す雰囲気も好きです。

珍しいですよね(笑)。この曲は、冨田さんプロデュースで、アコギと歌がメイン。シンガーソングライターマナーのシンプルなアレンジになってます。

もとは自分でギターを弾いて歌ってるだけのデモで。冨田さんはいつもデモとめっちゃ変わるんですけど、自分のオリジナルそのままだったのですごく嬉しかったです。「これでいいんだ」っていう自信にもなりました。レコーディングには、ロリさん(Lori Fine / COLDFEET)もいらしてくれたんですけど、レコーディングの雰囲気を温かく作ってくれたので、すごくリラックスしてできましたし、環境作りという点でも勉強になりました。

冨田さんとはもう一曲、Lori Fineさん作詞のエレクトロポップ「Clear Skies」が収録されてます。

歌詞の内容は、冨田さんからデモをいただいたときに思いついた内容とか、フレーズをロリさんに伝えました。今の私の心……自分が言葉で表せてなかった部分を書いていただいて。楽曲自体も私が挑戦したことがなかった曲調だったので、「OCEAN」に続き、新しい自分に出会えた曲になったなって思います。

この曲にも雷雨が吹き荒れてますけど、特にご自身の心が表れてるなと感じたのは?

EP制作期間の心境がすごく出てると思います。今までは自分の意思を伝える場面があんまりなかったんですけど、どうしても言葉にして伝えないといけないっていう部分がたくさん出てきて。それは、EP制作期間も、友達やミュージシャンと普通に会話するときでも、大きく影響を受けたなって思います。自分の意思を伝えることで強くなったというか、受け身だった自分が“ちゃんと言葉を伝えられる私になった”っていう曲です。

1 2 >