モリコメンド 一本釣り  vol. 127

Column

the engy 京都発4ピースバンドから届く“洗練されたサウンドメイクと感情豊かなボーカル”

the engy 京都発4ピースバンドから届く“洗練されたサウンドメイクと感情豊かなボーカル”

Suchmos、Nulbarichなどのブレイク、そして、Yogee New Waves、never young beach、PAELLAS、Tempalay、D.A.N.、The fin.、DYGL、LYCKY TAPES、シャムキャッツ、踊Foot Worksといった新たな価値観を持ったバンドが次々登場、確固たる存在感を示したことで、10年代後半のバンドシーンは大きく様変わりした。R&B、アシッドジャズ、ソウルなどをルーツに持ち、同時代のUK、USのインディーロックやインディーポップ、エレクトロ、ハウス、EDM、オルタナR&B、ヒップホップなどの要素を反映させつつ、生々しいバンドグルーヴと豊かな表現力をたたえた歌を鳴らすーーかなり乱暴だが、これらのバンドの共通点を挙げるとすれば、こういうことになるだろうか。また、海外のシーンとナチュラルに同調し、同時代性とユニバーサル的な感覚を備えてくるのも特徴のひとつ(DYGL、The fin.はUKに活動の拠点を移している)。音楽性の高さや独創的なサウンドはもちろん、国内だけに留まらず、アジアを含む海外に向けて意識が開いていることは、この先の日本の音楽シーンにとっても大きなポイントだろう。(すべてアナログ録音によるPAELLASの新作『sequential souls』、ロンドン移住後、初となるDYGLの新作『Songs of Innocence & Experience』も素晴らしいので、ぜひチェックしてほしい)

そしてもう一つ、10年代以降の音楽シーンの潮流を受け継ぎつつ、それをさらに深化、拡大させるポテンシャルを持ったバンドが注目を集めている。その名はthe engy。 2014年秋に山路洸至(Vo,Gt)と濱田周作(Ba)により、京都で結成。2017年の春に境井祐人(Dr)、藤田恭輔(E.Gt,Cho,Key) が加入し現体制となった4ピースバンドだ。

まずは2017年5月に自主制作盤の1st Ep「theengy」に収録された「Stay where you are」を聴いてみてほしい。ドラム、ベース、ギター、キーボードによるミニマムな構成によるソウルフルなバンドサウンド、そして、ゆったりと心地よいグルーヴを放つボーカルが印象的なこの曲には、the engyというバンドの根本的なスタイルがわかりやすく提示されている。

背景のあるのはブラックミュージックやエレクトロ、ヒップホップ。音数を抑え、洗練されたサウンドメイクのなかで、しなやかな色気をたたえたボーカルが響かせる。そんな彼らの音楽性は、自主制作盤ながら耳の早いバイヤーや音楽メディアの関心を集め、関西を中心に少しずつ注目度を高めていった。2018年5月に1stアナログ 7 inch「Say it」、8月には2nd 7inch「All about」をリリース。フジテレビ「Love Music」の“Come music”(2018.9.23)、 Spotify主催イベント「Early Noise Night」(2018.6.15)、Spincoaster主催イベント“SPIN.DISCOVERY”(2018.9.17)に出演するなど、活動の幅を確実に広げてきたthe engyは、昨年10月に1stミニアルバム『Call us whatever you want』を発表。アシッドジャズやR&Bの要素を感じさせるトラックとラップを交えたボーカルがひとつになった収録曲「Under the water」は既に新たなライブ・アンセムとして浸透しているようだ。

2019年6月にドロップされたデジタルシングル「Touch me」は、the engyの音楽性がさらに深みを増していることを告げている。ブレイクビーツ的なループ、トロピカルハウスとネオソウル、ファンクを取り入れたアレンジ、ソウルフルな手触りのメロディライン。“洗練されたサウンドメイクと感情豊かなボーカル”を軸にしたこのバンドのスタイルは、この曲によってさらに確かなものになっている。音数を抑え過ぎず、それぞれのメンバーが好きな音を自由に鳴らしたうえで、すべての音が有機的に絡み合っている構成も素晴らしい。

“僕を見つけてほしい”“僕に触れてくれないか?”と“あなた(≒ リスナー)”に訴えかけるようなリリックも印象的。彼らの歌詞はすべて英語で書かれているのだが、そのなかで描かれている思いやメッセージは、まったく違和感なく、ダイレクトに伝わってくる。その理由は山路の感情表現の質の高さ、そして、ボーカルを引き立てるアレンジの妙だろう。

さらに8月28日にはデジタルシングル「Still there?」のリリースも決定。

「僕らにしては夏っぽい曲なんじゃないかと思います!」(7月17日に投稿されたツイートより)というこの曲は、華やかなグルーヴとセクシーなボーカルが印象的なアッパーチューン。よりポップに開けたサウンドは、このバンドのさらなる飛躍のきっかけとなりそうだ。

マルーン5、エド・シーラン、トム・ミッシュといった海外のポップミュージックともリンクしながら、確かな独創性を体現しつつある彼らは現在、精力的にライブ活動を展開している。音源を聴くと“オシャレでクール”という印象もあるが、ライブでの彼らは想像以上にエモーショナルだ。現在のトレンドを表面的に取り入れるのではなく、ルーツミュージックや変化し続ける音楽的志向をしっかりと血肉化したうえで質の高い音源を生み出し、それをライブという場所で生々しく表出させるthe engy。

日本国内のみならず、海外での飛躍も期待したいニューカマーである。

文 / 森朋之

その他のthe engyの作品はこちらへ。

オフィシャルTwitter
@the_engy

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