連続テレビ小説『なつぞら』特集  vol. 10

Interview

夕見子、かけおちで『なつぞら』に再登場!役を超えて福地桃子が抱く、まっすぐな思い

夕見子、かけおちで『なつぞら』に再登場!役を超えて福地桃子が抱く、まっすぐな思い

節目となる100作目、そして平成最後にして令和最初の“朝ドラ”こと連続テレビ小説『なつぞら』。物語も中盤を過ぎて、広瀬すず演じるヒロイン・奥原なつをはじめとする登場人物たちも、それぞれに生き方の選択を迫られつつある。そんな中、前半の「十勝編」でいったんドラマから“退場”していた、北海道でのなつの姉妹・柴田夕見子がカムバック!
「東京編」に入った際は、“夕見子ロス”なる言葉もつぶやかれるなど反響の大きかったキャラクターが、またも物語をかき乱して、話題を呼んでいる。その夕見子を演じている福地桃子が、『なつぞら』出演後の環境の変化や、反対に変わることのない芝居と役へのまっすぐな思いを、熱っぽく語ってもらった。

取材・文 / 平田真人 撮影 / コザイリサ


まさか自分が朝ドラ恒例の「○○ロス」の当事者になれるとは思ってもみなかったです(笑)

『なつぞら』出演後、環境や状況は変わりました?

以前は普通に歩いていた場所での、みなさんの接し方などから、朝ドラの影響力の大きさを実感しています。ただ、夕見子のキャラクターが強烈だったぶん、普段も役と重ねてみていただいているなと思うことがあって、ビックリしています。でも、それだけ夕見子を応援してくださっている方の声を聞くことが多くて。そういうところで、たくさんの方が『なつぞら』を観てくださっているんだなというのを感じます。周りの人が言っていたんですけど、「あ……今、『夕見子ちゃんですか?』って聞けばよかったかな、でもちょっと聞きづらい……って言われてたよ」って教えてもらって。なんでだろう、怒られるんじゃないかと思ったのかな、はじめての体験でした(笑)。役が浸透していることはすごくうれしいし有難いことです。ただ普段とのギャップにがっかりされちゃうんじゃないかな、なんて思ったりもします…(笑)。

福地桃子 エンタメステーションインタビュー

物語の舞台が東京に移って間もなく、“夕見子ロス”というワードがTwitterでトレンドになったりもしたんですが、ご存じでしたか?

それは知らなかったです。よく、朝ドラで「○○ロス」っていう言葉を聞きますけど、まさか自分がその当事者になるとは思ってもみなかったので…とってもうれしいです(笑)。

夕見子が物語上通っている北海道大学でトークショーもしましたが、熱気を直に感じられたのではないですか?

はい、夕見子の”母校”北海道大学の「北大祭」に行かせていただきました…せっかくの機会ということで、在校生の皆さんの大先輩である夕見子としての気持ちでお邪魔させていただきました。北大生のみなさんと、前日に打ち合わせをしたんですけど、台本をはじめとして何から何まで、全部きちんと考えてくださったんですね。『なつぞら』への想いも聞かせていただいたり、ドラマの舞台となっている場所という事で関心も高く熱量を肌で感じました。それは、トークショーをさせていただいた時も、身内に話をしているような感覚でお話をさせてもらっていた時間でした。1000人の方が来てくださり、そんなにたくさんの方の前でお話をするのは初めてだったのですが、いざ始まってみたら、温かいまなざしをおくってくださって一緒に作っているという一体感がありました。ほんとうに有難いなぁと思いました。

福地桃子 エンタメステーションインタビュー

その北大に通っていた夕見子が、第16週では“かけおち”をして東京に出てきます。この展開を知った時、どう思われましたか?

「北大祭」におじゃました時も、「次はいつ出るんですか?」と聞いていただいたり、ありがたいことに、夕見子の再登場を待ってくださっている方もたくさんいらっしゃる中で、再び14週でのラストで登場させていただいて。柴田家に帰ってきた場面を読んだ時、まさに夕見子らしさを感じました。そこから第16週にかけて、「東京編」にまた新しい波を起こせるような存在になれたらいいなという気持ちでしたし、この先どんどん『なつぞら』の世界が広がっていったらなと思いました。

連続テレビ小説『なつぞら』

第91話より ©NHK
おでん店「風車」で働く夕見子。

夕見子も開拓民だった祖父・泰樹さん(草刈正雄)の血を引いていますが、福地さん自身の中にも開拓精神がある、と感じたことはありますか?

祖母が北海道の人だったので、景色だったり匂いだったり空気だったり、そういうものに触れる機会があったことが、どことなく今にもつながっている気がしています。北海道とゆかりのある場所がたくさんあることをありがたく思う瞬間は、お仕事をしていてもありますし、夕見子の「もっと広い世界を見てみたい」というセリフは自分の心の中に、常に持ち続けたい言葉だなっていう思いもあるんですね。自分とはペースも考え方も違うけれど、夕見子の芯の部分と自分が持っているものというのは、そんなに遠くないんだなと感じています。

性格が正反対の役を演じることの面白さや難しさについては、どのように感じているのでしょうか?

最初は、みなさんが思っていたであろう──「デリカシーがない」ようにみえる、夕見子の不器用な表現の仕方というのを、自分が演じるうえでという部分を沢山考えていました。「どうして、こういうことを今言うんだろう?」とか、家族との距離感に馴染める自信がなかった時期がありました。いくつかお芝居させてもらった中で、最もどう近づいたらいいんだろうと一番考えた役ではあると思います。実際、クランクインするまでの期間に、自信を持ててスタート出来たわけではなく、撮影が始まってから柴田家の居間でご飯を食べるシーンを1週間続けて同じ空間で過ごしているうちに、そこが居心地の良い場所になっていて。あんまり深く考えないようにしてみようと思ったんです。というのは、家族の中に入ってみたら、夕見子のセリフが不思議と馴染んでいて。家族の中だと、自分の発言もふくめてバランスをとっているんだなっていうことが、何となくわかったからなんです。

福地桃子 エンタメステーションインタビュー

みなさんがそれぞれの役のことを考えながらも、家族になろうとしていたので、私も自然体で出てくる言葉に身を任せてみようと思ったら、気持ちが楽になりましたし、家族の中にいると、夕見子の不器用な表現も愛情に変わる瞬間があるのを、自分自身も感じることができました。たぶん夕見子は(広瀬すず演じる奥原)なつのことを思っている時がいちばん生き生きしている時なんだと感じます。不器用な言い方だけど、なつに後悔してほしくないから伝える。人に対して自分のエネルギーを使える夕見子の強くて優しい部分が自覚できたんです。役を知れば知るほど夕見子の魅力をもっと表現したいと思うようになりました。お芝居をする中で演じる役を好きになることは、すごく大事なことなのかもしれないなと、教えてもらえたような気がしました。

夕見子のことを理解したことを踏まえて、第16週の「かけおち回」は、どのように消化してお芝居に臨んだのでしょうか?

台本を読んだ時、「夕見子らしく、また周りを引っかき回しているな」という印象を受けました。もしかするとトラブルメーカーのようなポジションなんだなと思ったりもしましたが、夕見子自身は、良くも悪くもまっすぐで、突拍子もない行動をとっているつもりはないんじゃないかな…まっすぐに自分の意思を信じ行動に移しているだけなんだと思いました。なので、すごくピュアな気持ちで意志を曲げずに演じたいなというのは大事にしました。ひねくれているとか、反抗したいといった意識はまったくなくて、ただただ思ったことに素直なだけなんす。

連続テレビ小説『なつぞら』

第94話より ©NHK
夕見子がかけおちして東京にやって来ていることを北海道の家族に報告したなつに対して「裏切ったしょ!」と夕見子。

長く演じてきた中で、かけおちをした夕見子の中に変化を感じた、ということはありますか?

そこは、すごく難しいなと思ったところなんです。かけおちをしている時期っていうのは、一歩社会に出てみようと決断をした時でもあると思っていて。さっき、意志を曲げずにとお話したのですが、そこがベースにありつつ…まっすぐすぎて目先のことしか見えずに突っ走ってしまう事は誰にでもあって、その、若さ特有の熱量を第16週では意識して演じていました。
思い切って発言してみたり行動してみることは、すごく勇気がいることだからこそ、夕見子を見て、挑戦するきっかけになってもらえたらうれしいなと思いました。女性が自分の意見を大きな声で発言するっていう環境があんまり整っていなかった時代に、じいちゃん(=泰樹)譲りの開拓者精神で、その時代の流れを改革したい、変えたいという、その時の夕見子の思いを表せていたらいいなと思いました。

福地桃子 エンタメステーションインタビュー

夕見子として、なつという“姉妹”の存在、そして、じいちゃんの偉大さに気付いた週でした

夕見子のかけおちの相手は、どことなく泰樹さんをほうふつさせる男性ですが、福地さんはその設定をすんなりと受け入れられたのでしょうか?

いつも夕見子が言っていることだったり、行動にしても、実はじいちゃんに似ていて……。
家族の中でも、それぞれじいちゃんとの距離感は違うんですが、みんながじいちゃんを尊敬しているところは絶対あると思います。それが夕見子の場合、かけおちの相手がジャズを追求している…志が明確な人に興味を持ったところに育った環境の影響が関係してるなと思いました。 夕見子とは内面的な部分でお互いに刺激を受けて、上京してきたんです。柴田家で育ったからこそ、その人と上京してきたんだなっていうのは、読んでいて面白いな部分だなと思いました。
目標がある人、何か明確に根拠があるわけじゃないんですけど、まずはやってみようという行動力が、すごく夕見子に近いなと感じています。

福地桃子 エンタメステーションインタビュー

夕見子自身も、どこかで東京への憧れを抱いていたということを、演じていく中で福地さん自身は感じたりもしましたか?

なつが東京から来たというところから、夕見子の東京への憧れというのはあったんじゃないかなと思います。夕見子は北海道の十勝しか知らないわけで、東京の景色を見たことがないという部分は、なつがいたから大きかったんじゃないかなって。だからこそ、「広い世界を見たい」とか「視野を広げたい」といった発言が出たのかもしれないと感じてもいます。いつか見てみたい世界の一つに東京の景色があったのだろうなって。第16週の出来事の中で、夕見子は相手のことを頑なに恋人だとはいわないんです。「そういう固定概念で物事を見るのはやめてよ」という思いは固くて、2人の関係を言葉でまとめる必要がないし縛られたくないと、セリフにない部分でも常に主張をしているなと思います。誰もやったことがないことを、自分たちの手で掘り下げてみたくなったから、上京してきたんだっていう…その気持ちだけが夕見子と相手の(須藤蓮 演じる)高山さんの行動だったんじゃないかなって思うんですよね。

連続テレビ小説『なつぞら』

第95話より ©NHK
迎えに来た泰樹に抱きつく夕見子。

誰に何を言われてもやめなかった行動に対して、なんとなく今の行動は正しくないかもしれないとも気がついていて、それを教えてくれるのはいつもじいちゃんなんです。じいちゃんが目の前に居た時、確信が持てたところがあるのかなって。そういう答え合わせをしてくれるのは、やっぱりじいちゃんなんだなっていうことを、すごく実感しましたし、夕見子のこれからの人生において、あの瞬間を──自分を理解しているなつの言葉、家族の存在、夕見子にとって素直になれる空間がありました。自分に寄り添ってくれる人がいること、その上でかけてくれた言葉というのは、一生この先も忘れられないものになったんじゃないかなと思いました。じいちゃんに会えた時は、北海道の家族の温もりを感じ、そのたびに涙が出てきてしまいました。じいちゃんや家族の存在って、自分にとってこんなに大きいものだったんだなって再認識させてもらったシーンでした。

そういったところもふくめて、夕見子に感情移入する視聴者も多いみたいなんですよ。

うれしいです。朝ドラにはいろいろな登場人物が出てくるので、誰かしらに重ねて見ていらっしゃることは、私の中でもイメージできるところがあるので。夕見子をみてくださっている方の人生において、共感できたり、懐かしさを感じていただけたり、重ね合わせることのできる存在としていられるのはとてもうれしいです。

福地桃子 エンタメステーションインタビュー

その夕見子が「かけおち」をしてくる第16週では、なつが自分のことのように夕見子のことで感情むき出しでぶつかってくるシーンもあります。あの場面については、どんな思いがありますか?

最初に台本を読んだとき涙が出てきたくらい印象的な場面で…いつもは謙虚ななつのストレートな言葉に力強さを感じました…なつは柴田家に来てから再び上京するまで、長い年月を本当の家族ではない空間で育ってきたからこその、優しさと気づかいを身につけたところがあると思うんです。それがなつの人柄、良さでもあるんです。本当の姉妹ではないけれど、だからこそ気が付けるお互いの部分、2人の関係性が築き上げられたんだなと、私は感じています。だから、第16週で夕見子が敢えてなつのいる場所へ行くというのは自然なこと、「頼りにしている」というふうに、すごく腑に落ちる選択だと思っていて。そういう意味でも、なつの存在の大きさをあらためて感じることができたシーンでした。

連続テレビ小説『なつぞら』

第95話より ©NHK
かけおち騒動が落ち着き、東京の街を歩くなつ、泰樹、夕見子。

あのシーンは台本を読んでいる時点で、すでにグッときました。

わたしもです。東京というまったく知らない土地に行くけれど、小さなころから一緒に育ったなつのいるところへ向かうっていうのは、夕見子がすごく信頼している証なんですよね。言葉にはしないけれど、たとえ離れていても、ほかの人とは築くことの出来ない信頼関係が、2人の間にはあるんだなと感じています。

連続テレビ小説『なつぞら』

第90話より ©NHK
決起集会を開く為おでん店「風車」にやってきたなつたち。

そういった中で、おでん屋の「風車」では「東京編」のキャスト陣とも共演を果たしました。みなさんの印象は、いかがでしたか?

「風車」での宴のシーンだったので、とても賑やかだったなという印象があります(笑)。今までは十勝と帯広、離れても札幌までしか行ったことのない夕見子だったので、東京の人たちはみんなキラキラしていました。でも、だからなのか、「風車」の中にいる自分に…たぶん夕見子もそう感じていたんだろうと思うんですけど、最後まで慣れなかったというか、東京に染まりきれなかったですね。やっぱり北海道のお家に帰った時には、「あぁ、ここが私の居場所だな」っていう安心感がありました。

福地桃子 エンタメステーションインタビュー

ただ、夕見子にとって東京に出てきたことは、けっして無駄ではなかったようにも思うんですよね。

「風車」では、東京で働くいろいろな方々と会うことができたので、夕見子にとっては新鮮な場所だったと思います。自分が大学へ行っている間に、なつや雪次郎(山田裕貴)が自分の夢をカタチにしているのを目の当たりにした時、ずっと同じように歩んできた幼なじみたちから、はかりしれないくらいの刺激を受けたのを、私自身も感じました。夕見子自身もいろいろな挑戦をしている中で、東京で頑張っている2人の姿に、新しい発見をしていると思わせるシーンもあるので、ちょっと大人になった3人の姿を見ていただけたら、うれしいです。
そして何と言っても、家族の偉大さをあらためて感じた週でもありました。夕見子にとって子供から大人へとなる、人生のターニングポイントになるような挑戦だったのではないのかなと思います。素直になれない自分にとって、素直に認めることのできた大きな第一歩だったと思います。

ヘアメイク / アオタマユミ
スタイリスト / 武久真理江

福地桃子 エンタメステーションインタビュー

福地桃子

1997年生まれ、東京都出身。
2016年に本格的に女優デビュー。
主な出演作に、主演映画『あまのがわ』(2019年)、映画『あの日のオルガン』(2019年)、TVドラマ『あなたには帰る家がある』,『チア☆ダン』(TBS系)など。

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2019年度前期
連続テレビ小説『なつぞら』

連続テレビ小説『なつぞら』

放送(全156回):
【総合】[月~土]午前8時~8時15分/午後0時45分~1時(再)
【BSプレミアム】
[月~土]午前7時30分~7時45分/午後11時30分~11時45分(再)
[土]午前9時30分~11時(1週間分)
【ダイジェスト放送】
「なつぞら一週間」(20分) 【総合】[日]午前11時~11時20分
「5分で『なつぞら』」 【総合】[日]午前5時45分~5時50分/午後5時55分~6時

作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人 /
岡田将生、吉沢 亮 /
安田 顕、音尾琢真 /
小林綾子、高畑淳子、草刈正雄 ほか

制作統括:磯 智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中 正、渡辺哲也、田中健二ほか

オフィシャルサイト
https://www.nhk.or.jp/natsuzora/
Twitter(@asadora_nhk)
Instagram(@natsuzora_nhk)

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