LIVE SHUTTLE  vol. 359

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藤井フミヤ 特別編成の“十音楽団”。朗読や演劇性も加味された、見たことのないフミヤのコンサートとは?

藤井フミヤ 特別編成の“十音楽団”。朗読や演劇性も加味された、見たことのないフミヤのコンサートとは?

35th ANNIVERSARY CONCERT 2019 藤井フミヤ“十音楽団”
2019年7月11日 中野サンプラザ

藤井フミヤの35thアニバーサリーでは、昨年から今年にかけて大きなツアーが2セット組まれた。去年9月にスタートした藤井フミヤ35th ANNIVERSARY TOUR 2018“35Years of Love”は、周年と同じ数の35本を数え、12月に終了。その後、平成最後の武道館カウントダウン・ライブをはさんで、今年は“十音楽団(とおんがくだん)”ツアーを敢行。大宮ソニックシティ大ホールからスタートしたこのツアーの3本目を、7月11日、中野サンプラザで観た。

藤井フミヤ エンタメステーションライブレポート

このツアーの最大の特長は、ツアーのために組まれた特別編成のバンドにある。パーカッションがリズムの中心になり、ギター、ベース、ピアノがその周囲を固める。そこに4人のストリングスと管楽器が一人加わり、ボーカルのフミヤと合わせて合計10名がステージを占める。ドラムがないことで、フミヤの歌の繊細な部分や、ストリングスの美しい響きが、ストレスなく味わえる。前回の“35Years of Love”がロックバンド・テイストのサウンドだったから、まったく正反対の印象だ。セットリストも前回がポップチューンが中心だったのに対して、今回はコンセプチャルな名曲が並ぶ。アニバーサリー・ツアーを二つの異なる見せ方で飾るのは、懐の深いアーティスト、藤井フミヤならではの快挙と言えるだろう。

間口の広いサンプラザのステージにはシンプルなオブジェが置かれ、開演を待っている。暗転になり、9人のメンバーが位置に着く。最後にフミヤが現われて、開演となった。

藤井フミヤ エンタメステーションライブレポート
藤井フミヤ エンタメステーションライブレポート 藤井フミヤ エンタメステーションライブレポート

このライブは、いくつかのテーマに沿って章立てられている。それらは愛と人生のドラマになっていて、1曲1曲をしっかり味わえるように構成されている。前回のツアー“35Years of Love”は、バラードのコーナーやエロティックな歌のコーナーなどで構成されていたが、この“十音楽団”ツアーは生命の誕生や恋、別れなど人の生き方の大切な節目節目がテーマをなして連なっている。スケールの大きな作りなので、観客は少し緊張しながらオープニングを迎えたのだった。

前半は「命の名前」などで、そうしたテーマを真正面から歌で伝える。この正攻法に、10人の楽団がピッタリ合っている。ストリングスの奏でる美しいハーモニーが、命の物語という荘厳なテーマをよく際立たせる。

フミヤはこれまでクラシックのオーケストラとのコラボレーション・コンサートをコンスタントに行なっているが、大編成のため、全国どこへでも行けるわけではない。だが“十音楽団”は、このシンフォニック・コンサートに通じるテイストを4人のストリングスが醸し出す。まだフミヤ&オーケストラのライブに行ったことのない人にとっては、“クラシカルなフミヤ”を体験できるチャンスとなっていて、きっと新鮮な印象を持つことだろう。

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一方で「下北以上 原宿未満」は、ストリングスをフィーチャーしたポップスとして非常に楽しめた。フミヤはポップなロックを得意としているが、ドラムなしで挑む今回のライブはより一層軽快で、“手練のポップスター”フミヤに出会うことができた。ストリングス・サウンドの明るさと壮大さは、想像以上に表現の幅をフミヤに与えていて特筆に値する。

さらにストリングスが素晴らしかったのは、ニューアルバム『フジイロック』からの新曲「ラブレター」だった。ジャズの要素を取り入れた洗練されたオーケストレーションが、会場いっぱいに響く。“十音楽団”ならではの魅力が爆発して、オーディエンスをうっとりさせたのだった。加えて岸田勇気のピアノが、フミヤの歌を完璧にフォローする。本当に今回のライブは、ボーカリスト藤井フミヤをたっぷり堪能できる内容になっている。

藤井フミヤ エンタメステーションライブレポート
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ライブの途中で、しばしば“フミヤの朗読”が進行役を果たす。これも今までになかった試みだ。朗読はテーマ性をわかり易く打ち出すと同時に、コンサートに演劇性を加味する。オーディエンスは最初、この朗読に戸惑っているように感じたが、次第に引き込まれライブの底に流れる物語を汲み取って楽しむようになった。ちなみにこの朗読部分は、フミヤ自身が書いているそうだ。

またフミヤのボディアクションも、いわゆるダンスではなく、パントマイムの要素が強く、“意味を伝えるアクション”になっていて、朗読とともに演劇性を高めていた。

藤井フミヤ エンタメステーションライブレポート
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フミヤとオーディエンスたちは、次第に一体化してライブを形作っていく。このゆったりしたペースは、最近のフミヤのライブにはなかったものだ。その証拠に、オーディエンスたちは座席に座ってこの繊細なライブを楽しんでいる。優雅なピアノ・リフとフミヤのボーカルのみで始まった「Another Orion」は、そんな雰囲気にピッタリ合っていて、終わると大きな拍手が巻き起こったのだった。

ライブは順調に盛り上がっていき、曲に応じてリズムが強調されると、オーディエンスは自然なタイミングで立ち上がる。そんな光景が、“十音楽団”によく似合っている。

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終盤はオーディエンスが全員立ち上がり、パーカッションに導かれて踊り出す。ストリングスもサックスも音量全開で、パワフルに演奏。あまりの楽しさに、フミヤはハーモニカと間違えてタンバリンを手に取って苦笑いするシーンも飛び出した。

「“十音楽団”、いかがでしたでしょうか? 見たことないようなコンサートだったでしょ?(笑) では、番号!」とフミヤが言うと、メンバーが端から「1!」「2!」「3!」と順番に叫び、最後にフミヤが「10! この10人でお送りしました。最後にとっておきのラブソングを!」と言って、ラストソングを心を込めて歌ったのだった。

藤井フミヤ エンタメステーションライブレポート
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セットリストは、これまであまりライブで歌ってこなかった曲が多く含まれている。昨年の“35Years of Love”でフミヤは「これまで発表した500曲の中から選んだ、ウニ、イクラ、マグロを丼にドーン!(笑)みたいなライブになるので、ご完食いただければと思います」と語っていたから、この“十音楽団”は35周年の完全な締めくくりになる。音楽監督をお馴染みのベーシスト有賀啓雄が務めていることも心強かった。

「自分の歌をどう届けるか」ということに集中するフミヤの心意気を感じたライブだった。この後、ツアーは9月16日の名古屋国際会議場センチュリーホールまで続く。

文 / 平山雄一

その他の藤井フミヤの作品はこちらへ。

ライブ情報

10人の演奏家で奏でる華やかなサウンド“十音楽団”
藤井フミヤ史上初の試み「フミヤ劇場」上演中!!

*スケジュールはオフィシャルサイトで

藤井フミヤ初となるライブハウスツアー、7大都市にて開催決定!!

11月2日(土) 宮城県 仙台PIT
11月4日(月・祝) 大阪府 Zepp Osaka Bayside
11月9日(土) 北海道 Zepp Sapporo
11月16日(土) 広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
11月17日(日) 福岡県 Zepp Fukuoka
11月23日(土・祝) 大阪府 Zepp Namba (OSAKA)
11月24日(日) 大阪府 Zepp Namba (OSAKA)
11月30日 (土) 東京都 豊洲PIT
12月1日(日) 東京都 豊洲PIT
12月6日(金) 愛知県 Zepp Nagoya
12月8日(日) 大阪府 Zepp Osaka Bayside
12月20日(金) 東京都 Zepp DiverCity (TOKYO)
12月21 日(土) 東京都 Zepp DiverCity (TOKYO)
12月27 日(金) 東京都 豊洲PIT
12月28日(土) 東京都 豊洲PIT
12月30日(月) 愛知県 Zepp Nagoya
*詳細はオフィシャルサイトで

藤井フミヤ

’83年 チェッカーズとしてデビュー。
’93年以降、ソロアーティストとして活動。ミリオンセラーとなった「TRUE LOVE」や「Another Orion」などは、幅広い世代から長く親しまれ続けている。
2013-2014年の2年間にわたり、『藤井フミヤ30TH ANNIVERSARY TOUR vol.1 青春』『藤井フミヤ30th Anniversary Tour vol.2 TRUE LOVE 』と題したデビュー30周年・ソロデビュー20周年記念の全国ツアーを展開。
また2013年の大晦日には日本武道館でのカウントダウンライブを5年振りに復活させた。
2015年、前年に好評を得たフルオーケストラとの『billboard classics FUMIYA FUJII PREMIUM SYMPHONIC CONCERT』のアンコール公演を開催。
2016年、4年振りのオリジナルアルバム『大人ロック』リリース、また2年振りの全国ツアー『Fumiya Fujii CONCERT TOUR 2016 大人ロック』、日本武道館でのカウントダウンライブを行う。
2017年、『billboard classics FUMIYA FUJII PREMIUM SYMPHONIC CONCERT』において、指揮者・西本智実氏とのコラボレーションが実現。西本氏とフミヤによる共作「あなたからの手紙」も演奏された。
そして、結成20周年を迎えたF-BLOODとして、6月にアルバム『POP ‘N’ ROLL』をリリース、9月からは『F-BLOOD 20th Anniversary POP ‘N’ ROLL TOUR 2017』と題した全国ライブハウスツアーを行った。
同年末にも日本武道館でのカウントダウンライブを開催している。
2018年、デビュー35周年イヤーに突入。ファン投票によるベストアルバム『FUMIYA FUJII ANNIVERSARY BEST “25/35” L盤&R盤』をリリースし、35周年前半の全国ツアーとして『ANNIVERSARY TOUR 2018 35 Years of Love』を開催。
大晦日には通算15回目となる『日本武道館LAST COUNTDOWN PARTY 2018-2019』を行い、この公演をもって日本武道館でのカウントダウン公演をラストとした。
2019年、35周年イヤーの後半を飾る全国ツアー『35th ANNIVERSARY CONCERT 2019 藤井フミヤ”十音楽団”』を7月6日よりスタート。また7月10日には、3年振りのオリジナルアルバム『フジイロック』をリリースした。

オフィシャルサイト
https://www.fumiyafujii.net

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