モリコメンド 一本釣り  vol. 128

Column

ひかりのなかに 現役高校3年生3ピースバンドがロックシーンに刺激を与えようとしてる理由とは?

ひかりのなかに 現役高校3年生3ピースバンドがロックシーンに刺激を与えようとしてる理由とは?

結成は2017年4月、つまり、いまから2年前の春。高校の軽音部で出会ったヤマシタカホ(Vo. / Gt.)、たけうちひより(Ba.)、ジョー(Dr.)による3ピースバンド“ひかりのなかに”は、結成1年半の2018年末に開催された「RO JACK for COUNTDOWN JAPAN 18/19」で優勝を飾り、「COUNTDOWN JAPAN 18/19」に出演。その後も都内のライブハウスを中心に経験を重ね、バンドキッズたちの熱い支持を獲得し始めている。現在高校3年生。無限の可能性を秘めた10代真っ只中の3人が日本のロックシーンに大きな刺激を与えようとしている——このバンドの楽曲に触れれば、誰もがそのことを実感するだろう。

“ひかりのなかに”は、A-Sketch内に新たにインディーレーベル「ひかりのレコード」を立ち上げ、6月26日に初の自主制作盤(ミニアルバム)をリリース。『放課後大戦争』とタイトルされた本作を1曲ずつ紹介したい。

『放課後大戦争』の1曲目を飾るのは、「冴えない僕らに灯火を」。ハイハットを勢いよく叩くカウントから疾走しはじめるこの曲は、爆発力と解放感を合わせ持ったギターリフ、エモーショナルとしか言いようがない熱量を含んだリズムが炸裂するアッパーチューン。感情の揺れをリアルに描き出すメロディラインとともに放たれるのは、“馬鹿らしい日常を飛び越えて”“大事なものだけを抱きしめて”未来に突き進んでいこうとする意志。「普段は冴えない生活をしている3人に見えるかもしれないけれど、音楽を鳴らして生活に灯火を灯そう」という気持ちを込めたこの曲は、エンディングの“ララララ〜”という大らかな響きをたたえたコーラスを含め、この先、ひかりのなかにの最初のアンセムとして浸透していくはずだ。

“瞬きよりも短い夏”というフレーズが聴こえてきた瞬間、10代の頃の夏の記憶がフッと蘇ってくる「瞬間プラトニック」は、“あの子”のことが気になってしょうがない“ぼく”の心情を夏の情景とともに描いたナンバー。全校集会、塩素の匂いといった映像や匂いを想起させるワードをちりばめながら、切なくて愛らしい片想いを映し出した歌詞がとにかく秀逸。身の回りの風景や人間関係、そのなかで生まれる感情を映像的に捉え、幅広い層のリスナーが共感できる歌に導くソングライティングは、すでにかなり高いレベルにある。ドラマティックかつポップなメロディにもぜひ注目してほしい。

シャッフルのリズムを瑞々しい感性で再構築した「潮風通り」は、3人の演奏が楽しめる1曲だ。シンプルにコードを鳴らし、楽曲の切なさ、温かさを演出するギター、つんのめるように前身し、心地よいグルーヴを生み出すドラム、オーソドックスなラインで演奏のボトムを支えるベース。生々しい音像を含めて、“ライブが見たい!”という気持ちを誘うナンバーと言えるだろう。“風をあつめて”“はっぴいえんどの / その先へ”という、バンドのルーツ(?)を感じさせるような歌詞も印象的だ。

ギターと歌からはじまる「満ちる月」は叙情的な雰囲気のミディアムチューン。年の瀬の風景とともに、“ずっと君と話していたい”という“僕”の切実な願いを綴ったこの曲からは、このバンドが持つ“歌心”が伝わってくる。ヤマシタカホの表情豊かなボーカルはもちろん、バンド全体で歌うという感覚が身についていることも、ひかりのなかにの魅力だろう。楽曲全体を包むフォーキーで素朴な手触りも印象的だ。

「舞台裏」は、ロックバンドに対する憧れ、退屈な日常のなかにいることの焦りや憤りを率直に吐き出したロックナンバー。お決まりの希望や夢を押しつけるような歌を燃やしたいと願い、“良い子ちゃんに成り下がってたまるか”と決意し、バンドを組んで“この声とギター掻き鳴らして”自分のようなヤツを救いたいという思いを放ちまくるこの曲は、3人がバンドをやっている意味と覚悟が強く刻み込まれている。遥か昔の話で恐縮だが、「ブルーハーツを初めて聴いたときって、こんな感じだったな」と思ってしまった。そして本作の最後を飾るのは、鋭利なギターフレーズに導かれた「オーケストラ」。壮大なスケールを備えたメロディライン、スリリングな緊張感と同時に、大らかな解放感を感じさせるバンドサウンドは、このバンドの未来——おそらく近い将来、ホールやアリーナでライブをやるようになる——を照らし出しているようだ。

「ROCK IN JAPAN FES. 2019」「TOKYO CALLING 2019」などの大型イベントへの出演も決定している3人。ひかりのなかに、という一度耳にすれば忘れない名前を持ったこのバンドのストーリーはいま始まったばかり。そのなかで生み出される楽曲の数々を多くの音楽ファンとともに体感し、共有したいと思う。

文 / 森朋之

その他のひかりのなかにの作品はこちらへ。

オフィシャルサイト
https://www.hikarinonakani.com

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