Interview

徹底した原作再現…そのうえでファンが最も喜ぶアニメ化とは? 『炎炎ノ消防隊』制作陣に聞く、人気漫画原作だからこそ“埋もれない”ためのアプローチ

徹底した原作再現…そのうえでファンが最も喜ぶアニメ化とは? 『炎炎ノ消防隊』制作陣に聞く、人気漫画原作だからこそ“埋もれない”ためのアプローチ

何の変哲もない人が突如燃え出し、炎を操る怪物・焰(ほむら)ビトとなる人体発火現象、これに立ち向かう特殊消防隊員たちの姿を描いた“魂のダークバトルファンタジー”。『ソウルイーター』の大久保篤が「週刊少年マガジン」(講談社)にて大人気連載中のコミック『炎炎ノ消防隊』(えんえんのしょうぼうたい)が、TVアニメとなって2019年7月5日より放送がスタートした。

『ジョジョの奇妙な冒険』や『はたらく細胞』を手がけるdavid productionによるアニメ化ということもあり、多くの期待と注目を集める本作。ここでは八瀬祐樹監督、そしてdavid production 松永康佑プロデューサーに、『炎炎ノ消防隊』アニメ化へのこだわり、そして人気漫画原作のTVアニメ化に必要な要素や視点について聞く。

取材・文 / とみたまい 構成 / 柳 雄大


「できるかぎり、台詞を一語一句変えないでほしい」とオーダーした脚本

TVアニメ『炎炎ノ消防隊』

『炎炎ノ消防隊』のアニメ化にあたっては、松永プロデューサーから八瀬監督にお声がけがあったとのことですね。

八瀬監督 そうですね。松永さんからお話をいただいて、自分がいままでやったことのないタイプの作品だったので、ご一緒できればと思いました。原作を読んでみると非常に映像的で、やりたいこともわかりやすい作品だと思いましたし、一人ひとりのキャラクターが魅力的なので、自分がこれまでやってきたようなキャラの描き方を押し広げながらやっていけたらいいなと思いました。

こういったアクションアニメはアクションに目が行きがちですが、大久保さんの描くキャラの魅力ありきの物語になっているので、そこはしっかりと伝えたいと思いました。

松永さんが八瀬監督にお声がけした理由は?

松永プロデューサー 今までご一緒したなかで、八瀬さんは1クールのうちの尖った話数というか、シリーズを通して描かれる雰囲気とはあえて違うアイデアを入れて、視聴者に改めて作品を強く印象づけるような演出をされていて、それがそれがすごく良かったんです。

少年漫画原作のアクションアニメはたくさんあるので、ほかと同じようなアプローチをしても埋もれちゃうんじゃないか、『炎炎ノ消防隊』はなにか独自の作り方ができたらいいなと思っていたんです。そういった意味でも八瀬さんは『炎炎ノ消防隊』に向いていらっしゃるんじゃないかと思いました。大久保先生が描かれる原作の雰囲気を壊さないまま、八瀬さんならではの表現を散りばめていただけたらいいなと思い、ご依頼させていただきました。

TVアニメ『炎炎ノ消防隊』

本作は「一人ひとりのキャラクターが魅力的」というお話が先ほどありましたが、具体的には?

八瀬 キャラクターのデザインはもちろんですが、一人ひとりの個性がしっかりと立っているのも魅力だと思います。そういったところを活かして作ることができれば、キャラクターたちが魅力的に動いてくれるんじゃないかなと思いますね。

映像化にあたって、特にこだわったところは?

八瀬 『炎炎ノ消防隊』というタイトルですので、炎の表現をこだわれたらいいなと思っていたのですが、なかなか難しくて。ただ、キーアニメーターの三輪(和宏)さんや、メインアニメーターの大梶(博之)さん、松浦(力)さんといった方々に第1話でいろんな炎を描いていただいたときに……みなさんそれぞれの個性で炎を描いてくださって、カッコよかったんです。だからもう、みなさんが思う炎でやっていただければいいのかなと思いました。

TVアニメ『炎炎ノ消防隊』

脚本家の方にはどのような要望を伝えましたか?

八瀬 「できるかぎり、台詞を一語一句変えないでほしい」というぐらいですかね。あがってきたシナリオを見て違和感があったら直しますが、基本的には原作の通りにやりたいという話はしました。

松永 原作漫画は週刊連載なので、テンポよくシーンを変えたりしているのですが、アニメでは構成をシンプルにして、会話をなるべくまとまった形で見せたいということはお願いしました。

第1話のシナリオは特にページ数が多くて、かなり書き込まれているなと思ったのですが。

八瀬 あれは……コンテにするにあたって、「若干やりすぎかな?」という感じはありました(笑)。ただやはり、シナリオからコンテにする段階での振れ幅を少なくしたいという意図で書いて頂いたので、そのまま、通しました。それに、シナリオを受け取った人も……うるさいぐらい書いてあったら「わかったわかった、やりたいのね」って思ってくれるかな? という気持ちではあります(笑)。

魅力的な群像劇を描くため、こだわり抜いたキャスティング

TVアニメ『炎炎ノ消防隊』

キャスティングについて、監督から要望されたことは?

八瀬 シンラとアーサーは若手の声優さんでいきたいという話はしました。「この声優さんはこういうキャラクター」みたいな色がついていない人が良かったというのもあります。

音響さんから提案してもらった方たちのなかから、大久保さんにも意見を伺って選ばせていただいたんですが……シンラ(CV:梶原岳人)とアーサー(CV:小林裕介)はやはりこだわりどころなので最後までけっこう悩んでいましたね。

松永 キャスティングはけっこう難航しましたね。「キャラクターを魅力的に見せるためには、キャストをこだわらないといけない」と、大久保先生にもつねに確認しつつ、ちょっとずつ決まっていった感じでした。桜備をはじめ、大隊長たちを先に固めて、全体的な構図を考えながらシンラやアーサーを選んでいったところ……すごい豪華なキャストになりました(笑)。作品を作るうえで声優さんの芝居にもかなり助けられているので、非常に感謝しています。

シンラ役の梶原さんとアーサー役の小林さんのキャスティングの決め手は?

松永 みなさんおっしゃっていましたが、シンラとアーサーに関しては声のイメージが近いかどうかを基準としていたので、お二人はそこが決め手になったと思います。

八瀬 そうですね。大久保先生ともやり取りを重ねて、声のイメージをすり合わせていくような感じだったと思います。

数あるアクション漫画原作のなかで『炎炎ノ消防隊』がもつ独自性

TVアニメ『炎炎ノ消防隊』

アニメで『炎炎ノ消防隊』に初めて触れた方たちに対して、続けて観てもらうために工夫したところはどこでしょうか?

八瀬 最初のほうである程度の引っかかりを作っておいて、そこから何話か経ったときにわかるようなことを意識して作っています。一度観たときにはわからなくても、次に見返したらわかるようなものがあったりと、アニメはアニメの楽しみ方ができるといいなと思いますね。

松永 加えて、原作ではしっかりとページを割いて丁寧に説明されていたものが、アニメで観たら説明なしでパッとわかることもあるんですよ。段取り芝居、説明描写の分量を調整することでキャラクター同士の掛け合いに時間を割くように、監督には調整いただいています。そうすることで、よりキャラクター性が引き出されるんじゃないかと思っています。

たしかに、アニメではアーサーの寝かたがかなり強調されて出てきて、「そういえばアーサーってこうやって寝てた!」と思い出したのですが(笑)、そうやって一人ひとりのキャラクター性を印象づけるところにも時間を割くということですね。

TVアニメ『炎炎ノ消防隊』

八瀬 そうですね。漫画は週刊で連載されているので、徐々にキャラクターの個性が出てくるところもあると思いますが、自分たちはすでにある程度まで漫画で提示されている段階からアニメを作っているので、キャラの個性を印象づけるためにも「こういう子だよ」というのを先に出すような場合もあります。

松永 アクションものの少年漫画ではあるけれど、ギャグマンガでもあるというのが大久保先生の漫画の特徴だと思うんです。原作のコミカルな描写がめちゃくちゃいいんです!すごいこだわりを感じます。

八瀬 大久保先生はこだわっていますね。

松永 『炎炎ノ消防隊』をやるうえで、一番面白いと思っているのがそこで。そういった大久保先生の“こだわり”が、数あるアクションものの少年漫画のなかでの独自性につながっていくんじゃないかと思っているんです。アニメにする際も、アクションに関してはアニメーターさんたちが本当にカッコいいアクションを描いてくださるので、僕たちとしてはアクション以外でキャラの個性をどうやったら引き出せるかを考えるところに注力しています。

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