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「生きるとは? 死とは?」若者から圧倒的支持を集めるクリエイター・アボガド6の新作は、幸せを見つける道標だ

「生きるとは? 死とは?」若者から圧倒的支持を集めるクリエイター・アボガド6の新作は、幸せを見つける道標だ

今どきの若者は上昇志向がない、と言われるが、ただ闇雲にガツガツと働き、消費してきた結果が今の日本なのだと思うと、同じ轍は踏みたくない…と考えるのは、ごく自然かつクレバーな判断だといえる。
決して無気力なわけでも、絶望しているわけでもない。私たちはただ、誰かから押し付けられた「幸せ」ではなく、自分の望む「幸せ」を求めているだけなのだ。

アボガド6は、そんな若者たちの声なき声を具現化し、圧倒的支持を集めているクリエイターだ。インターネットを中心にイラスト・マンガ・映像などを発表し、Twitterのフォロワーは130万人超え。これまでにマンガ単行本として『空っぽのやつがいっぱい』『やさしさいっぱいの土の上で』、イラストを中心とした作品集として『果実』『剥製』を発表しており、累計発行部数15万部を突破している。

アボガド6 幸せをあなたに

「幸せをあなたに」より © Avogado6 / A-Sketch Inc.

『幸せをあなたに』は、そのアボガド6が今年7月に発売した短編集。「来世を決めるくじ引き会場」で出会った少年と少女の切なくもあたたかな交流と数奇な運命を描いた表題作『幸せをあなたに』、色んな性や色んな愛が認められた一方で、誰かを愛して共に寄り添い暮らすことを欲さない者は欠陥者として人間更生機関へ強制収容されるという近未来社会を描いた『独身』など、全15作品を収録した本作は、子供の貧困、虐待、いじめ、自殺、孤独死、世代間対立、自己責任社会…といった現代の諸問題を如実に反映したシュールな設定で、若者だけにとどまらない人々をハッとさせ、無限のイマジネーションを掻き立てる。

アボガド6 独身

「独身」より © Avogado6 / A-Sketch Inc.

シンプルで無機質なタッチの絵と淡々とした語り口の中に、繊細な叙情とロマンチシズムをたたえた独特の世界観は、いわゆる「セカイ系」とも一線を画しており、どこか星新一などの80年代SFを彷彿させる。終始シニカルな中にも「やさしさと希望」を漂わせるラストも素晴らしい。

世代も嗜好も思想も関係ない。「願うならば 邪魔をされず 邪魔をせず ただ静かに 少し幸せに これからも暮らしていけますように(『独身』より)」という一節に共感する人は必読だ。

文 / 井口啓子

アボガド6
『幸せをあなたに』

幸せをあなたに

発売:2019年7月9日
価格:¥1,300+税
ISBN:9784991084607
発売元:A-Sketch
生きるとは? 死とは? 世界の冷たさ、優しさを描き出し”ささやかな希望”をあなたに届ける心を揺さぶる15編。

アボガド6

2011年よりアボガド6として活動を開始。ミュージックビデオを始め、イラストや漫画の制作も行っている。
2015年、DVD「おばけフィルム」を発売。
2016年、DVD「おばけカタログ」を発売。
2017年6月、初の漫画作品となる「空っぽのやつでいっぱい」(KADOKAWA)を発売。
2018年3月、イラスト作品集「果実」(KADOKAWA)を発売。
2018年8月、漫画「やさしさいっぱいの土の上で」(KADOKAWA)を発売。
独特の世界観によって描かれたアボガド6の作品は多くの若者の心を掴み、支持を集めている。
2019年1月、イラスト作品集「剥製」(KADOKAWA)を発売。
2019年7月9日、漫画短編集「幸せをあなたに」(A-Sketch)を発売。
2019年7月19日~21日にアボガド6初となる個展「アボガド6 Art Gallery『肉眼』」を開催し、多くのファンが来場した。

© Avogado6 / A-Sketch Inc.