Interview

藤田 玲&中村優一が韓国の歴史ある傑作舞台に挑む。舞台『私に会いに来て』日本版、9月に初上陸

藤田 玲&中村優一が韓国の歴史ある傑作舞台に挑む。舞台『私に会いに来て』日本版、9月に初上陸

1996年に韓国で初演され、20年以上にわたり公演を続けている大ヒット舞台『私に会いに来て』の日本版が9月13日(金)より新国立劇場 小劇場にて上演される。
本作は、実際の未解決事件をモチーフに、次々と起こる猟奇的殺人事件を調査する刑事や新聞記者の人間模様を描いたストーリー。2003年に同作を下敷きにして公開された映画『殺人の追憶』は第72回カンヌ国際映画祭でパルムドールを獲得したポン・ジュノ監督の出世作としても有名だ。 本公演の上演台本訳は後藤温子が手がけ、『戦国BASARA』シリーズ、『BRAVE10』シリーズなどで知られるヨリコ ジュンが演出・映像を手がける。キャストは、藤田 玲、中村優一、兒玉 遥、西葉瑞希、グァンス、栗原英雄と若手から演技派まで揃った、個性豊かな少数精鋭の舞台となっている。
そこで本作で舞台初主演を務めるキム・インジュン刑事 役の藤田 玲とチョ・ナンホ刑事 役の中村優一に、歴史ある作品のこと、日本版の特徴、お互いの印象などを聞いた。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 増田慶


日本のキャストで何ができるのか期待している

1996年に韓国で初演された『私に会いに来て』は現在もロングランを続け、ポン・ジュノ監督の傑作映画『殺人の追憶』の原作としても有名です。その日本版の初演に出演する気持ちを聞かせてください。

藤田 玲 原作を元にした映画『殺人の追憶』は、韓国だけではなく日本でも映画ファンに愛されている作品ですし、日本版初演の舞台になりますから、僕たち日本のキャストで何ができるのか期待しています。原作はDVDで拝見しましたし、映画は昔の日本映画の要素もあって、独特の気持ち悪さと気持ち良さがバランス良く描かれている作品だと思います。

舞台 私に会いに来て 藤田 玲 エンタメステーションインタビュー

藤田 玲

中村優一 映画『殺人の追憶』は大好きな作品ですし、そんな原作の舞台の日本版の一員になることができて嬉しいです。

舞台 私に会いに来て 中村優一 エンタメステーションインタビュー

中村優一

藤田さんが演じるキム・インジュン刑事、中村さんが演じるチョ・ナンホ刑事はどんな人物だと思いますか。

藤田 ふたりは正反対の性格の刑事で、キムは自分の感情を抑えて寡黙で、人付き合いが得意ではなく、どんなときも自分の正義やプライバシーに他人が踏み込むことを嫌がるタイプです。同時に詩人なので、詩的な言葉で会話をしたり、確固とした自分の世界を持っている人物だと思います。

中村 (藤田)玲くんが言ったように、チョ・ナンホはどちらかといえば暴力的な刑事で、取調室で平気で犯人を殴る人物です。僕と玲くんが今まで演じてきた役どころと真逆なイメージがあるよね?

藤田 そうそう。

中村 僕はどちらかといえばおだやかな役が多くて、玲くんはバチバチにキレた役というか(笑)。10代から共演して見知っている仲ですが、今作で同じ刑事という役柄を演じるのは初めてです。

藤田 そうだよね。10代のときはライバル関係の役が多かったし、ちゃんなか(中村優一)が傍聴人で僕が被告人の舞台もあった。とにかく、交わることがなかったから、今作で同じ刑事役を演じることができるので楽しみです。

僕たちの関係性から生まれるお芝居を大切に

現時点での演技プランはありますか。

藤田 脚本は出来上がっていますが、おそらく実際に稽古をして役をつくっていくと思います。もちろん、脚本にある台詞やシーンの流れを大きく変えることはしないと思いますが、どんな役で、どういう見せ方をするのか、演出のヨリコ ジュンさんとつくっていきたいです。少人数の舞台でもあるので、僕たちの関係性から生まれるお芝居を大切にしたいと思います。

中村 原作の世界観を大事にしつつ、本当に起こった未解決事件を題材にしていますから、リアリティがあって生々しい役にしたいです。たとえば、僕が殴ったり蹴ったりするシーンもアクションとして観ていただくより、実際に目の前で起こっている暴力シーンのような迫力のあるものにしたいです。

藤田 人を殴るときにサンプルした効果音を劇場に流してしまうと、もしかしたら舞台の雰囲気が変わってしまうかもしれないね。

中村 ええ。大切にしたいのは、生々しい緊張感をお客様に伝えることだと思います。

藤田 ちゃんなかのチョ刑事も“本当に怖い”と思わせる真実味が必要だし、本作の重要人物であるミスキム(西葉瑞希)に対して、僕らが現実ではありえない行動をどうしてとってしまったのか感じてもらえるように演じたいです。

舞台 私に会いに来て エンタメステーションインタビュー

舞台も20年以上の歴史がありますし、映画は日本で衝撃を持って迎えられました。今作がここまで人を惹きつける理由をどう考えられていますか。

藤田 キャラクターすべてが際立っていて、完璧な人ばかりではなく、つねに心が揺れ動いているから、どこか憎めないし、愛することができる。つまり、普通の人間と変わらないんですね。それ以外にも、暴力で物事を解決しようとしてしまったり、それが警察では当たり前のように横行していたことに対する体制へのアンチテーゼというメッセージも多くの方に受け入れられたと思います。突き詰めれば、権力の無意味さや人と人との関係性を描いているので、普遍的なメッセージが備わっているし、なにより未解決事件の謎めいた部分に神秘性が加わっていることも大きいと思います。

中村 僕は映画の泥くささが好きで、男の子からするとかっこいい描写がたくさんあります。個人的には残酷で残虐な作品が好きなところがあるので……。

藤田 怖い、怖いよ! 大丈夫?(笑)

中村 大丈夫ですよ(笑)。ドキドキ・ハラハラする場面が多いし、未解決事件ということは忘れてはいけないことだから、この事件を風化させないように映画や舞台になったのだとも思います。観る人によっては胸が苦しくなるかもしれないけれど、この事件で起こった出来事をお芝居を通して再現してお客様の心に残る作品にしたいです。

舞台 私に会いに来て 中村優一 エンタメステーションインタビュー

今の時代だからこそできる『私に会いに来て』

演出・映像のヨリコ ジュンさんの印象はいかがですか。

藤田 舞台『戦国BASARA』でご一緒して、そのときは演出としてではなく映像を担当されていました。抽象的な映像をつくられてアーティスティックな方だと思っていたのですが、製作発表会のときにお話ししたら、「楽しみだね!」と気軽におっしゃってくれてフランクな方だと思いました。

中村 実は、舞台『BRAVE10』シリーズでご一緒したときに「ポン・ジュノの作品をやりたいね」という話をされていて、この作品に繋がっています。出発点にご一緒できて喜ばしいし、ヨリコさんは漫画やアニメ原作の映像をつくることが多いので、今回ではどんな映像をつけてくれるのかも楽しみですね。

藤田 映像と演出を担当されるので、どちらも密接に絡み合うはずだから、どんな表現になるのかワクワクしています。韓国版の舞台はしっかりセットを組んでいましたが、日本版は映像が加わるぶん、大きく変わると思います。おそらく、ヨリコさんならではの演出で、今の時代だからこそできる『私に会いに来て』になると思います。

舞台 私に会いに来て 藤田 玲 エンタメステーションインタビュー

たとえば、ヨリコさん以外の演出家とはどのようにお付き合いしていますか。

藤田 演出家の方によりますね。自分の中でプランが決まっている演出家にはできるだけ話を聞くようにしたり、逆に役者のほうから意見を出して提案していく場合もあります。演出家によって作品への考え方やアプローチが違うのでそれを見抜くことが役者にとっては大切になります。

中村 ヨリコさんは役者と話し合ってそこで生まれる反応を大切にされるタイプです。役者の中に“?(クエスチョンマーク)”があるのが嫌な方で、今作も役者とヨリコさんでディスカッションをしながらつくっていくと思います。

藤田 なるほど。それは役者にとって嬉しいよね。

中村 尊敬できるのは役者と演出家の距離感を保ってくれることです。決して“ナアナア”な関係にならない。適度な緊張感を持って毎日稽古に臨むことができます。

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